ECサイト構築のAtoZ全28回
Lesson3 パートナー選定編
10ECサイトを作るためのコンペのやり方未学習
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「ECサイトを作りたいけど、どうやって制作会社を選べばいいの?」
と思っている方。
制作会社を選ぶときは、数社の提案書を見比べる「コンペ」の開催がおすすめです。コンペを開催することで、制作費用の相場や提案の良し悪しが分かります。
この記事では、
- コンペ前にNDAを結ぶことで、機密情報の漏えいが防げる
- RFP(提案依頼書)説明会を開くと、こちらの希望を上手く伝えることができる
- 制作会社と正しく連絡することで、公平なコンペができる
という、コンペの流れにそった、やるべきタスク(作業)をご紹介します。
コンペを開催するためのポイントはそこまで多くありません。
まずはこの記事でコンペの流れが理解して、効率よくコンペの準備を進めていきましょう。
コンペ前にNDAを結ぶことで、機密情報の漏えいが防げる
コンペの流れは、
- あなたから制作会社にRFPを渡す
- 制作会社に提案書を作ってもらう
- できた提案書を制作会社から受け取る
- 制作会社を比較して選ぶ
というように進みます。
RFPは、「どんなECサイトを構築したいか」をまとめたもので、事業計画に関わる内容を含むため、一般に公開できない機密情報です。しかし、RFPを見せずに提案書を作ってもらうことはできませんよね。そこで登場するのが、NDA(機密保持契約)です。このトピックでは、
- NDAを結ぶことで、機密情報の漏えいを防ぐことができる
- RFPを渡す前に、制作会社とNDAを結ぶ必要がある
- NDAの有無と結ぶ方法を法務部門に確認する
についてお伝えします。
NDAを結ぶことで、機密情報の漏えいを防ぐことができる
NDAには、
- これから伝えることは、機密情報です
- よって、外部に漏らしてはいけません
- 約束を破ることで、このようなペナルティーがあります
などの内容が書かれています。NDAを結ぶことで、「機密情報と知らずに外部へ伝えてしまった」など、情報の漏えいを防ぐことができるのです。
RFPを渡す前に、制作会社とNDAを結ぶ必要がある
制作会社とNDAを結ぶのは、「できるだけ速く」がおすすめです。
「できるだけ早く」とは、制作会社を調べて連絡を取り、打ち合わせをして、より具体的に話をしたい会社がいくつか絞れてきた時点です。どれだけ遅くてもRFPを渡す前にはNDAを結んで、情報の漏えいを防ぎましょう。
NDAの有無と結ぶ方法を法務部門に確認する
NDAを結ぶための準備として、NDAの有無と結ぶ方法を、法務部門に確認します。
法務部門には、
- ECサイトを作るためにNDAを結びたいこと
- 制作会社の正式な名前(株式会社○○のような)
- RFPを制作会社に渡す予定
を伝えてください。
法務部門では、自社とその制作会社の間に、NDAが結ばれた過去があるかどうかを調べてくれます。そして「新たに契約する必要はありません」「NDAを結ぶ必要があるので、このフォーマットに記入してください」というような回答が返ってくるので、法務部門の指示にそって対応してください。
トピックまとめ:NDAは、RFPを渡す前に締結する
ここまで、
- NDAを結ぶことで、機密情報の漏えいを防ぐことができる
- RFPを渡す前に、制作会社とNDAを結ぶ必要がある
- NDAの記録と結ぶ方法を法務部門に確認する
と、お伝えしました。これで、安心して制作会社へRFPを渡すことができる状態です。
RFP説明会を開くと、こちらの希望を上手く伝えることができる
RFPを渡しただけでは、こちらの「こういうECサイトが作りたい」という意図がうまく伝わらず、制作会社から意図にそった提案を受けることができないことがあります。そのようなときは、RFP説明会という形で、RFPの趣旨を説明したり、質疑に応答したりしてください。説明会によって、こちらの希望を制作会社へ伝えます。
ここでは、
- RFP説明会は、合同か個別かケースに応じて分ける
- RFP説明会にかかる時間は、予想より多く見積もる
- RFP説明会の日時とRFPをメールで送る
についてお伝えします。
RFP説明会は、合同か個別かケースに応じて分ける
RFPの詳しい内容を伝えるには、2つの説明会があります。
- 制作会社をすべて集めて、RFPの内容を詳しく伝える「合同説明会」
- 1社ずつに、RFPの内容を詳しく伝える「個別説明会」
RFPに書かれている文章の量や制作会社が多い場合は、時間を節約できる合同説明会がオススメです。ライバルとなる制作会社が顔を合わせることで、競争意識が高まります。
RFPに書かれている文章の量や制作会社が少ない場合は、個別説明会で自分たちのやりたいことを、制作会社にじっくり伝えましょう。
RFP説明会にかかる時間は、予想より多く見積もる
RFPの説明は、こちらが考えているより時間がかかります。なぜなら、こちらが何気なく使っている言葉に対しても、確認が入るからです。まずは、アジェンダ(話すことの目次)を作って、RFPの説明や質疑応答に、どのぐらいの時間がかかるかを計算します。たとえば、1時間かかるとするなら、その半分を多く見積もった1時間30分を用意しておくことがオススメです。
RFP説明会の日時とRFPをメールで送る
RFP説明会のやり方と、スケジュールが決まったところで、制作会社へメールを送ります。
メールには、
- RFP説明会に対して参加のお願い
- 説明会の日時と会場
- どのような役職の方に参加してほしいか(プロジェクトマネージャーなど)
- 合同説明会の場合は、他の会社が同席するという内容
を書くようにしましょう。そして、忘れずにRFPのファイルを添付します。
RFP説明会では、趣旨の説明と質疑応答を行います。そして最後に、いつ・どのような方法で提案書を出してほしいかを伝えましょう。この内容については、この記事の後半、「RFPの受け取り方」のトピックでご紹介しますね。
〈ここをチェック!〉RFP説明会で制作会社に趣旨の説明をする
ここまで、
- RFP説明会は、合同か個別かケースに応じて分ける
- RFP説明会にかかる時間は、予想より多く見積もる
- RFP説明会の日時とRFPをメールで送る
について、お伝えしました。
RFP説明会が終わると、制作会社は提案書の作りはじめます。次は、提案書を作っている途中で、あなたがコンペ事務局として行うべき、連絡の対応について理解しましょう。
制作会社と正しく連絡することで、公平なコンペができる
RFP説明会の後、制作会社は2~4週間ほどで提案書を作ります。この期間あなたはコンペの事務局として、制作会社の窓口となって連絡を取り合いましょう。それでは、連絡を対応する際に大切なポイントを、
- 回答すべき質問かどうかを判断する
- 正しておきたい内容や、こちらのミスは各社に共有する
- メールで履歴を残して、誤解を防ぐ
の順に見ていきます。
回答すべき質問かどうかを判断する
提案書の作るために必要な質問は、すぐに回答しましょう。具体的には、
- 「現在の在庫管理方法を教えてほしい」
- 「費用の内訳の書き方はこれで良いか」
などの内容です。一方で、
- 「コンペ採用の決め手となることは何かを知りたい」
- 「今後のECサイト運用の体制を教えてほしい」
など、答えることでコンペが不公平になったり、まさにそれが制作会社で検討・提案してほしい内容であったりした場合は、その旨を伝えて回答しない方がオススメです。回答すべきかどうかを判断できない場合は、RFPを作ったメンバーやプロジェクトマネージャーなどに相談してみましょう。
正しておきたい内容や、こちらのミスは各社に共有する
正しておきたい内容や、こちらのミスが質問された場合、質問してきた会社だけではなく、すべての制作会社にその質問と回答を共有しましょう。具体的には、
- 「こちらの意図とRFPの解釈が違う」
- 「書いてある内容に漏れがある」
という内容です。
情報を共有することで、同じような質問や指摘を防ぐことができます。また、RFPの書かれている内容にミスがあった場合、RFPを修正してから、最新のものを改めて送ることが望ましいです。
メールで履歴を残して、誤解を防ぐ
質問のやりとりは、電話ではなく、履歴が残るメールを活用しましょう。言ったかどうかの誤解や、RFPの解釈が違う問題を防ぐことができます。もし電話でやりとりをした場合は、議事録を書いたメールを相手に送りましょう。
トピックまとめ:質問の内容に応じて対応しよう
ここでは制作会社との連絡をする方法として、
【質問への回答】
- 質問は内容によって回答するかどうかを判断する
- 提案書を作ることに必要な質問は回答する
- コンペが不公平になるような質問は回答しない
- 制作会社に検討・提案してほしい内容は回答しない
【制作会社に共有すべき情報】
- RFPの解釈が違っていた場合、その情報をすべての制作会社に共有する
- RFPのミスを指摘された場合、RFPを修正して、すべての制作会社に配布する
- 質問のやりとりはメールで行い、履歴を残すことで誤解を防ぐ
を、お伝えしました。
こうしたやりとりを経て、制作会社はECサイト構築の提案書を作成します。最後に、提案書の受け取り方について見ていきましょう。
提案書を同じ日時・方法で受け取ることが、公平につながる
提案書は、
- すべての制作会社からもらう
- 提案書の〆切りは、どの会社も同じ日にする
- 提案書の添付はメールで、後日プレゼンテーションしてもらう
という流れでもらい、扱っていきましょう。
その理由は、制作会社ごとの公平さを保つためです。
コンペの目的は、提案書を見比べて、優れた提案をした制作会社を選ぶことです。この比較を正しく行うためには、制作会社ごとの公平さを保つことが必要です。
もし「毎週水曜日に1社ずつ、合計4社からプレゼンを受ける」という方法でRFPを受け取ると、1社目と4社目の間に、1ヶ月の差が生まれます。4社目は、1社目よりも長い時間をかけて提案書を作成できるので有利ですよね。これでは、提案書を正しく見比べることができません。
また、提案書を同じ日に受け取るメリットは、もう1つあります。それは、あらかじめ提案書の内容を確認して、プレゼンを聞けることです。
事前に提案書の内容をチェックすることで、「RFPへ書いたのに、提案書に書かれていない項目があるのはなぜか」「コンサルティング費用が他社の2倍になっている理由は何か」など、重要なポイントを確認できるのです。プレゼンを受ける時は、提案書のあいまいな部分をはっきりさせましょう。
コンペの目的や流れを意識すると、やるべきことが見えてくる
ここまで、コンペのやり方についてお伝えしました。
おさらいすると、コンペは、
- 自社から制作会社にRFPを渡す
- 制作会社に提案書を作ってもらう
- できた提案書を受け取る
という流れで進みます。
まずは、RFPを渡す前の準備として、NDA(機密保持契約)についてお伝えしました。
そして、見積り依頼書の出し方では、NDAについて
- RFPを渡すすべての制作会社と結ぶ
- 遅くてもRFPを渡す前に結ぶ
というポイントをお伝えしました。法務部門に相談して、締結の手続きを進めましょう。
次に、RFPの渡し方についてお伝えしました。
RFP説明会を開いて、制作会社に趣旨の説明をすることが大切です。
ポイントは、
- RFPの文書量や制作会社が多い場合は、合同説明会がオススメ
- RFPの文書量や制作会社が少ない場合は、個別説明会がオススメ
- アジェンダを作成して、どのくらいの時間がかかるか計算する
- 想定の50%増しの時間を確保する
- 説明会の日時とRFPをメールで送る
でしたね。
そして、提案書を作ってもらう段階では、コンペの事務局として、制作会社の窓口となる必要があると説明しました。
制作会社からの質問に対して、回答すべきかどうかを判断しましょう。
回答すべき質問は、
- 「現在の在庫管理方法を教えてほしい」
- 「費用の内訳の書き方はこれで良いか」
など、提案書の作成に必要な質問です。
理由を伝えて回答しない質問には、
- 「要求を優先する順位が知りたい」
- 「これから運用していく体制を教えてほしい」
など、答えることで公平ではなくなったり、制作会社に検討・提案してほしかったりする質問であるとお伝えしました。
他にも、
- 解釈が違っていれば、その情報を全ての制作会社に共有する
- RFPの不備を指摘されたときはRFPを修正し、全ての制作会社に配布する
- 質問のやりとりはメールを使い、履歴を残すことで誤解を防ぐ
も、ポイントとして紹介しました。
最後に、3つの提案書の受け取り方です。
提案書の受け取り方は、
- すべての制作会社からもらう
- 提案書の〆切りは、どの会社も同じ日にする
- 提案書の添付はメールで、後日プレゼンテーションしてもらう
です。
プレゼンの前に提案書を読み、プレゼンの質疑応答では、「RFPに記述したのに提案書に書かれていない項目があるのはなぜか」「コンサルティング費用が他社の2倍になっている理由は何か」など、提案書のあいまいな部分をはっきりさせましょう。
- 小テスト:提案書を作成期間中の質疑応答
- 【問題】制作会社からの質問対応として、正しいものを選びなさい。
-
- 【正解】4:メールを活用して履歴を残す
コンペを開催するには、やるべきことがたくさんあります。なので、すべてを覚えようとすると、対応が漏れたり勘違いが起こったりするのは明らかです。メールなどを活用して、履歴を残しましょう。そうすると、対応漏れや勘違いを防ぐことができます。