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DXの本質がイメージできていない人必読の一冊『2025年、人は「買い物」をしなくなる』

デジタルトランスフォーメーション(以下DX)って結局、テクノロジーを活用して何をすればDXになるのだろうか?——「DXが必要」ということだけは毎日聞くけれど、この問いに対して(自社なりの)明確な答えを出せない、という流通小売業関係者は、まだまだ多いのではないでしょうか。

その状況が、とりあえず導入しただけのデジタルツールや、「AIで“何か”をやりなさい」といった「目的なきDX」を多数生んでいることの遠因になっている可能性は否めません。

何をすれば自社にとって有益なDXになるのか、あるいは目指すべきDXの本質とは何かが分からない場合、それは流通小売業界に近い将来必ず訪れる“未来像”が見えていない、ということでもあると言えます。

そんな流通小売業関係者にオススメしたいのが、2019年11月15日に刊行された『2025年、人は「買い物」をしなくなる』(クロスメディア・パブリッシング)です。

目次:

読めば小売の未来が鮮明にイメージできる

https://itsumo365.co.jp/2025kaimono

『2025年、人は「買い物」をしなくなる』の著者は、国内外でのEC事業支援を行う株式会社いつも.の取締役副社長、望月智之氏です(企画協力に、同じく株式会社いつも.の立川哲夫氏)。

望月氏は、東証一部上場のコンサルティング会社勤務を経て、2007年に同社を共同創業。デジタル消費トレンドの第一人者として、消費財・ファッション・食品・化粧品などのライフスタイル領域を中心に企業に対するデジタルシフトやEC戦略などのコンサルティングを手がけており、その知見を最大限に注ぎ込んで本書を執筆されています。

「買い物」が時代とともにどのように変化してきたのか、そして、これからの時代に、モノを買うという行為は人々にとってどういう存在になっていくのかについて、今流通小売業界に起きていることの概要を一通り掴めるだけでなく事例も豊富に掲載されているため、一読すれば流通小売業の未来を鮮明にイメージできるようになる一冊となっています。

今からほんの5年先に人々が買い物をしなくなるというタイトルには、なかなかセンセーショナルな印象を受けますが、決して消費者が「モノを買わなくなる」、ということを言っているわけではありません。

本書が本質的に伝えているのは、「買い物にまつわる面倒なプロセスがなくなっていく」ということなのです。それを理解するために、本書で重要なキーワードとなっているのが「デジタルシェルフ」です。

ありとあらゆるものが“商品棚”に——「デジタルシェルフ」とは

商品を販売するあらゆる企業にとって、販売チャネルで「棚」を取ることの重要性は昔も今も、そして未来においてさえ変わることはありません。ただし、「棚」そのものの捉え方は、時代とともに変化しています。

かつてはリアル店舗にある、文字通り「商品棚」の一等地をいかに押さえるかが、メーカーにとっての勝負ポイントだったものが、インターネットが普及し、スマホが生活の必需品となった今、「棚」はEコマースなどデジタルにまでその範囲が広がったのは、みなさんご承知の通りです。

しかし、本書でいう「デジタルシェルフ」の定義は、さらにその範囲を広げています。

“デジタルシェルフとは、「世の中の電子化が進む中で、日常の身の回りにある、ありとあらゆるものがシェルフ(商品棚)になること」を意味する。”

テクノロジーとデジタル活用の進化によって、“消費者の自覚のあるなしにかかわらず、日常のあらゆるシーンに、買い物が組み込まれていく。”この意味を正しく捉えることこそ、流通小売業の未来像を鮮明にイメージすることに直結するのです。(※傍線部引用)

これはある意味、今年話題となった「アフターデジタル」な世界の到来を、異口同音に告げる内容であるとも言えます。

「デジタルシェルフ」でシェアを取るためのキーワード

本書には、今後デジタルシェルフでシェアを獲得していくにあたった意識するべきキーワードが散りばめられています。この項では、それらの中から特に重要なものをピックアップしておきたいと思います。

顧客データ

これは、改めて言うまでもないキーワードかも知れませんが、今後流通小売業がOMOを実現し、デジタルシェルフのシェアを獲得していくためには、オンラインだけでなく、店舗などオフライン上での行動データを取得し、それらを1IDで見られる仕組みを整えることが必須となってきます。

インフルエンサー

本書内では「自分で気づかないマーケットの開拓」という言葉が出てきます。その起点の一つがインフルエンサーです。今や圧倒的な情報過多な時代であり、消費者はますますマスプロモーションを信じなくなりました。人々は服や持ち物、インテリアだけでなく、SNSなどで取得する情報も、自分の好きなものだけに触れられる環境を作ります。その中でインフルエンサーは重要な役割を果たすのです。SNS上だけの話ではありません。リアル店舗に立つ販売スタッフ自体にインフルエンサーとしての発信力を持たせるという戦略を取る小売企業も今後増えていくでしょう。

D2C(Direct to Consumer)

これからは商品のスペックや品質で差が付きにくい(=買う理由にならない)時代です。そのような中で、消費者の買う理由となり得るのは、商品にまつわるストーリーへの「共感」です。なぜそれが商品化されたのか、その背景にあるカルチャーはどんなものか、ブランドの社会課題に対する姿勢——このようなストーリーは、インフルエンサーがそうであるのと同様に、消費者に「好きだ」「自分のものである」と感じてもらうことが重要です。したがってD2Cで成功するためにはターゲティングやペルソナの作り込み、そしてストーリーの拡散のされ方に至るまでを含めて商品開発する必要があるでしょう。

サブスクリプション

これまで買うことが当たり前だったモノも、購入・所有しない形でサービスを提供することが成立するかも知れません。もちろん、定額制にした時に市場にどのぐらいの需要があるのか、どれぐらいのコストを投資できるのか、慎重な検討が必要にはなりますが、もしサブスクリプションが成立するのであれば、それをテクノロジーで実現させることこそが本質的なDXとなるはずです。

「コミュニケーションがある場所全てが店舗」

エスキュービズムでは「クロスコマース」という、アフターデジタル時代の流通小売業の在り方を提唱していますが、本書におけるこの言葉はクロスコマースの本質を突いています。モノを売ることは、可処分所得の奪い合いから可処分時間の奪い合いになり、そして今や「可処分接点の奪い合い」へと移行しています。接点全てが「棚」となる、つまり、これからの時代を生き抜く流通小売業は「顧客に選ばれる接点づくり」が必須となるのです。それには従来の「モノを売る場所」という発想を捨てる必要があります。エンターテインメントかも知れないし、本当に顧客が必要としている情報を提供する場所かも知れません。それらの接点に人が集まりさえすれば、購買の仕組み自体はテクノロジーが補完してくれます。この仕組みを構築することも、DXの一つの方向性であると言えます。

PR:体験させて購買に結びつける「売れる」デジタルプロモーション!
x Commerce(クロスコマース)

目次紹介

本書は全部で5つの章から構成されています。以下に目次を割愛することなく引用しますが、それらに一通り目を通すだけでも、今後、あらゆる小売企業が目指すべき方向性というものが浮き彫りになってきます。そして、上記項目で挙げたキーワードを意識しながら本書を一読することで、そのイメージはより確かなものになるに違いありません。

第1章
ショッピング体験の進化で、人々は「買い物」をしなくなる
買い物はこんなに面倒くさい
人々は買い物のために店に行かなくなる
店舗離れを加速させたウェブルーミング
ネットを介して「情報につながる」
「品揃えのよさ」に価値はない
「体験型」の店舗が生き残る時代へ
「選ぶのが面倒」な人たちはAIを信じ始めた
テレビCMよりも口コミを信じる消費者たち
サブスクリプション(定額制)で音楽を聴く人が増えた理由
世の中のあらゆるものが「サブスク化」される
サブスクで利用メリットが大きいものの「ある共通点」とは?
「買っているのに所有しない」——われわれの概念を変えたメルカリ
アパレル業界へのメルカリの意外な影響
価格の最適化で比較サイトが消える!?
「楽しくない」のに選ばれるAmazon
買うプロセス省略でも残る楽しみは「開封の儀」
第2章
ショッピングはどう発展してきたのか
戦後に伸び続けた百貨店と個人商店
自動車の普及で台頭したスーパーマーケット
チェーンストア理論に夜大型専門店の登場
「ショッピング史」は棚を奪い合う歴史だった
インターネットの普及で棚が「家に来た」
現代人の生活スタイルを一変させた「レビュー」
スマートフォンの普及で棚が「手元に来た」
若者は「ググらない」
大企業もマス戦略から「スモールマス戦略」へ
プライベートブランドが席巻するカラクリ
棚を奪われたメーカーの「DtoC」という反撃
第3章
リーディングカンパニーたちが目指すもの
物流コスト上昇で見え始めたECの限界
「便利さ」に飽き始めた消費者が求めるもの
食品会社がいまや安全よりも重視するのも「時間」
棚の獲得競争からスマホの「時間獲得競争」へ
無人コンビニが「世界標準」になる時代
ウォルマートで車から降りずに買い物ができる
中国のラッキンコーヒーがスタバを超える日
世界一のIT先進国はもはやアメリカではない
グーグルが目をつけた「運転中」の時間
パーソナライズで攻勢をかけるリーバイス
自分で好みを見つけるAmazonの「Discover」
ロレアルがARの企業を買収したワケ
加速するインフルエンサーマーケティング
「うどんインスタグラマー」まで登場!?
第4章
さらなる進化、「デジタルシェルフ」へ
あらゆるデバイスが商品棚になる
データドリブンにより始まる「無意識の買い物」
データの活用で変わるメーカーの現場
映画のキャスティングも顧客データで決まる
日本がデータドリブン社会になりづらい事情
「自分で気づかないマーケット」の開拓
「コミュニケーションがある場所」がどこでも店舗になる
質よりも共感できるストーリーで売れていく
アメリカでは個人がつくった商品が大ヒット
共感を得るストーリーの2つのセオリー
日本でも個人がDtoCに目覚め始める
デジタルシェルフは5Gで加速する
第5章
「人々が「買い物」をしなくなる未来」の先にあるもの
買い物時間が「0秒」になって消えるもの
いつでも「バーチャルコンシェルジュ」が帯同
サブスクで人がモノを持たなくなる時代
ネットを「人が検索する」シーンはなくなる!?
行動がスコアリングされて個人情報が筒抜けに
買い物を楽しく創造的にするのは私たち消費者

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