ECチャネルはなぜ必要?重要性や取り組み方を解説します
新型コロナウイルス感染症の影響で、消費者の生活様式は大きく変化しています。その結果小売店はECチャネルの整備が急務となり、増え続けるチャネルに戸惑う企業も少なくありません。
この記事では、複数のECチャネルを活用する重要性やECチャネルの種類、意識すべきポイントを解説します。
複数のECチャネル活用の重要性
コロナ禍における生活様式の変化で、小売店がECチャネルを活用する重要性は急激に高まりました。実店舗の時短営業を強いられオンライン消費が急速に拡大した今、1つといわず複数のECチャネル運営が求められているのです。
オンライン消費の拡大
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オンライン消費の拡大が止まりません。コロナ禍によって、ECチャネルは「便利なもの」から「必要なもの」へとなりました。
FullStory社の調査によると、10人に9人と91%のユーザーが、2021年も2020年度と同じかそれ以上のギフトショッピングをオンラインで行うと回答しました。そしてその大半が、PCではなくスマートフォンを使用しているのです。
※参照:https://www.digitalcommerce360.com/article/merkle-quarterly-digital-marketing-report/
またスマートフォンのヘビーユーザーの1/3以上である34%が、2020年より2021年の方がオンラインショッピングを行うと回答しています。
オンライン消費をけん引しているのはやはりAmazon。Amazonは前年比売上40%を記録しており、ホリデーギフトもAmazonで探す人が増えています。
実店舗以外のECチャネルを活用
実店舗以外のECチャネルである程度収益を確保していた企業は、新型コロナウイルスのパンデミックによる被害が少ないことが分かっています。これは、ECサイトを販売チャネルの主流としたことが勝因です。
中小企業が活用しているECチャネルは、以下となっています。
- ・1位(41%):ECモール(Amazon、楽天など)
- ・2位(36%):自社ECサイト
- ・3位(26%):自社プラットフォーム(公式アプリやECサイト以外)
ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査
https://newsroom.jp.paypal-corp.com/2021-12-09-SMB-Survey
2019年から新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、2020年からは数々の実店舗他自粛を余儀なくされました。実店舗を中心として売り上げを立てていた店舗の多くが大打撃を受け、閉店に至った企業も少なくありません。
調査によると、中小企業の64%と半数以上がコロナ禍でマイナスの影響を受けました。しかし、3社に1社以上である36%はパンデミックによるビジネスの影響がなく、むしろプラスの影響を受けたと回答しています。この勝因こそが、ECチャネルの拡充です。
消費者がいつでも購入できるECチャネルを運営することは、もはや企業存続のための重要な手段といえるでしょう。
越境EC、ライブコマース、ソーシャルコマースなど
ECチャネルといえばECモールだけではありません。越境ECやライブコマース、ソーシャルコマースなど、オンライン上ではすでに様々なチャネルが登場しています。
日本は少子高齢化が進んだことで様々な市場が縮小しはじめ、越境ECによって海外市場を拓く企業も増えています。新型コロナウイルスのパンデミックが収束しても、国内の消費者減少が解決するわけではありません。日本の市場は年々減少傾向にあり、パンデミック以外にも課題があるのです。
すでに越境ECを始める中小企業の約4割は、コロナ禍で進出を果たしています。パンデミックだけではなく、すでに始まっている日本の人口減少も見越して対策を始めているのです。
またECチャネルはオンラインが基盤となるため、消費者は実店舗のようにリアルな接客が受けられません。そこで企業は、オンラインでリアルさながらの接客を行う「ライブコマース」を導入するケースも増えています。
さらにソーシャルメディア(SNS)とEコマースを融合させた「ソーシャルコマース」というチャネルもあります。インフルエンサーやSNS上の口コミによる影響力が大きく、特に若年層に有効です。日本は海外よりも普及が進んでいませんが、スマートフォンユーザーの増加を鑑みると十分有力なチャネルでしょう。
消費者行動の変化を捉えEC売上向上を
コロナ禍でオンラインショッピング利用者が増えたことで、EC事業者に対する期待値が高まりました。もはや「EC化すればいい」という段階ではなく、消費者の行動や意識の変化を捉え、より満足度を高めるよう成長しかなければいけません。
チャネル間を「ホップ」するデジタル消費者
スマートフォンによるオンライン消費が拡大した今、消費者はチャネル間を自由に「ホップ」するようになりました。
朝はスマートフォンを開いてデジタル版の新聞を購読し、その後はゲームをしたりSNSをしたりする。消費者のスマートフォンには、ビジネスや娯楽が集約されている状態です。
消費者はスマートフォンで気になる商品を見つけたら、ブラウザアプリでECサイトをチェックして、口コミサイトで評判を調べます。キャッシュレスが進んだ今、気に入ればスマートフォン上で決済まで終わり、後日自宅で商品を受け取るのです。
以前のECチャネルの捉え方としては、「自宅にいるときはECチャネル、外出先では実店舗」というものでした。しかしスマートフォンによるオンライン消費が拡大した今、この発想は古いと言わざるを得ません。
消費者は「スマートフォン」というツールを介して、ECを携帯して行動しているのです。小売店はデジタル戦略を立てる上で、消費者のこの行動を把握しておく必要があります。
例えばアパレルアイテムの靴や服は、サイズが分かっても使用感は試してみなければ明確にわかりません。そのため消費者は実店舗で実物を見たり試着したりします。しかし商品を気に入ったからといって、自社ECサイトで購入するとは限らないのです。
メルカリなど二次流通で安く購入することもあれば、より安価な類似アイテムを選ぶこともあります。
デジタル消費者は上記のようにチャネル間をホップすることで、より自分が納得できる購買活動を行っているのです。
スマートフォン中心・モバイルファーストの購買へ
消費者行動で顕著な変化といえば、やはりスマートフォン中心になっている点です。ECチャネルを拡大する時には、モバイルファーストを意識した戦略が必要です。
ECサイトへのアクセスは、9割近くがスマートフォンといわれています。※ソファやベッド、電車の中など思いついた時にアクセスできるスマートフォンは、PCよりもカジュアルなツールです。
上記の購買行動は、小売店から見ると販売チャンスが急増したことを意味します。ECチャネルが正常に稼働すれば、24時間販売機会を失うことがありません。スムーズな購買体験を提供できれば、顧客満足度はさらに向上するでしょう。
モバイルユーザーの6割は不具合を感じたECサイトに戻らない
スマートフォンなどモバイルファーストの購買体験を提供するためには、様々な課題があります。特筆すべきは以下の3つです。
- ・モバイルサイトのサイトスピードアップ
- ・モバイルサイトの操作性アップ
- ・決済エラーの改善
調査によるとユーザーの約6割は、良くない体験をしたECサイトには戻らないことが分かっています。不具合によって「今購入したい」と思う消費者の気持ちに応えられなければ、半分近くが二度と自社のECチャネルを使わないのです。
加えてアプリの不具合やエラー、操作性の悪さといった不具合は、PCよりモバイルの方が多く報告されています。「サイトの読み込みに時間がかかりすぎる」「サーバーがダウンしてアクセスできない」といった不具合が出ないよう、モバイルサイトのスピードアップが必要です。
そしてモバイル消費者は、配送情報や商品レイアウトの見やすさを重視します。パソコンより画面が小さいモバイルに対応したサイト構造や、スマートフォンでもわかりやすい商品レイアウトといった意識が必要です。
ちょっとした不具合で、顧客は競合へ流れてしまいます。小売店は顧客の流出を防ぐためにも、モバイルサイトの操作性にこだわらなければいけません。
オンラインでの接客、カスタマーサポートを充実
ECチャネルは販売スタッフが直接接客できず、接客面の不十分さが課題とされきました。最終的なオムニチャネルの在り方として、接客やコールセンターなどのカスタマーサポートもチャネル統合の対象とするべきです。
その理由としては、顧客接点として優れたチャネルであることや、顧客と深く関わるため情報連携がしやすい点が挙げられます。
デジタル顧客を含め顧客が深い接点を持ちたいと思った時、まず選ぶのがコールセンターなどのカスタマーサポートです。深く接点を持つと多くの情報を得られるため、顧客情報を統一することでよりよいデータ活用ができます。
例えばリーズナブルな北欧家具を提供するIKEAでは、コロナ禍によってオンラインユーザーからカスタマーサポートセンターへの相談が爆発的に増加しました。主な内容はオンラインでの購入方法や在庫確認、複雑な組み立て家具の問合せといった内容です。
そこでIKEAは、急遽インテリアアドバイスやプランニングをビデオ通話相談できるようにしたり、電話注文サービスを始めたりしました。「スタッフに直接相談できない」というECチャネルの不便さを解消できるよう、オンラインとオフラインのギャップを埋める努力をしているのです。
増加する顧客接点を「つなぐ」ために
ECチャネルは顧客満足度の向上や販売機会の損失を防ぐ目的がありますが、もっとも重要なことは増加する顧客接点をつなぐことです。
顧客接点をつなぎスムーズな購入体験を提供するためには、オムニチャネルへの取り組みが欠かせません。
オムニチャネルの推進は避けられない取り組みである
オンラインとオフラインで顧客と接点を持ち、統一した購買体験を提供する「オムニチャネル」。小売店において、この取り組みは避けることができません。
オムニチャネル化が重要である最大の理由は、消費者の生活様式の変化です。自由にショッピングを楽しめない生活が続きいてオンラインとオフラインをホップするようになった今、消費者がどこからでも購入できる仕組みが求められます。その仕組みこそが、オムニチャネルなのです。
オンラインとオフラインをシームレスに接続
オムニチャネル化を進めてオンラインとオフラインをシームレスに接続するために、具体的には以下のような取り組みが挙げられます。
- ・在庫の一元管理
- ・顧客データの統合
- ・自社アプリ開発
- ・ポイント連携
- ・BOPIS(店頭受け取り)
消費者がオンラインとオフラインを行き来するなら、店舗はこの2つを包括的に捉えシームレスに接続できる仕組みが必要です。
例えば来店を促すクーポン1つをとっても、ECサイト限定で店頭で使えなければ、利便性が高いとはいえません。店頭で在庫切れの商品がECサイトにあれば、顧客は店舗に来るメリットを感じないでしょう。
オンラインでの行動が活発になった結果カスタマージャーニーはますます複雑になり、もはや企業が追い切れないとまで言われています。
しかし競合としのぎを削り顧客を獲得し続けるためには、時代や商習慣の変化についていかなければいけません。システム投資やスタッフの評価制度の整備、店舗運営の見直しなど大掛かりな対応が求められます。
今の顧客に寄り添った運営ができれば、今後も大きな成長が期待できるでしょう。