Eビジネスを推進するORANGEシリーズ

EC-ORANGE
お役立ち資料ダウンロード ニュースレター登録

【2024年版業界別分析】日本のEC市場規模とEC化率はこれからも伸びる?


ECサイトは、訪問者がいつでも・どこでも閲覧することができます。そして、企業の営業日/時間に関わらず、商品やサービスを提供できます。



2023年のEC市場規模は国内外で伸長しており、今後も緩やかに成長を遂げていくことが予測されます。



本記事では、BtoB(Business to Business=企業間取引)、BtoC(Business to Consumer=企業と顧客間の取引)、CtoC(Consumer to Consumer=一般消費者間の取引)の市場規模とEC化率の変遷について触れてから、業界別のEC状況について、最新のトレンドを交えて分析します。



物流の2024年問題について市場はどのように動いているのか、ECのためのリアル店舗活用法にはどのようなものがあるのか、など現在だけでなく、すぐそこに来ているECの未来をデータから読み解いてみましょう。








BtoBのEC市場規模とEC化率



経済産業省の『令和5年度電子商取引に関する市場調査』が今年も公表され、BtoBのEC市場規模とEC化率は前年に続き成長しています。



出典:経済産業省 令和5年度電子商取引に関する市場調査




2023年(令和5年)のBtoB-EC市場規模は465兆2,372円で、前年比10.7%増です。



前年は420兆2,354円、前々年は372兆7,073円だったので、順調に増加しているといえるでしょう。



なお、BtoB-ECのEC化率は40%(前年比2.5ポイント増)です。



「EC化率」とは、対面販売・EC取引などのすべての商取引における、EC取引の割合を指します。EC化率が高くなるほど、ECサイトが全商取引に占める売上が高く、ECサイトの重要性が増します。



* ここでの広義・狭義の定義について、広義は狭義も含めたコンピュータネットワークシステム(VAN、専用回線、従来型EDI)を介したオンライン・オフラインを問わないもの、狭義は公衆回線上のインターネットの他、エクストラネッ ト、インターネットVPN、IP-VPNを介したオンラインでの取引を指します。



BtoCのEC市場規模とEC化率



2023年のBtoC-EC市場規模は、24兆8,435億円と公表されています。2022年は22兆7,449億円だったため、こちらも順調に規模が拡大していることが分かります。



出典:経済産業省 令和5年度電子商取引に関する市場調査




BtoC-EC市場は、この10年でゆるやかに規模を増大させてきました。市場規模が調査開始以降初のマイナスとなったのは、コロナウイルスが世界的な影響を及ぼした2020年のみです。



BtoC市場では、特にサービス系分野が前年から22.27%増の7兆5,169億円と大きく拡大しました。



物販系分野の市場規模は14兆6,760億円とサービス系のほぼ2倍ですが、増減率では物販系(4.83%増)、デジタル系(2.05%増)を大きく上回っています。


■特集:BtoB ECサイト■


CtoCのEC市場規模とEC化率



CtoCは一般消費者間でおこなわれる取引*のことで、オークションやフリマアプリを用いた物品の取引を指します。



オークションサイトが活発に利用され始めたのは2000年頃からですが、経産省の市場規模調査は、2016年から始まりました。



出典:経済産業省 令和5年度電子商取引に関する市場調査




2023年のCtoC-ECの市場規模は推計2兆4,817億円で、前年比は5.0%増でした。



CtoC-ECの市場規模は、2021年(1兆2,121億円)から2022年(2兆3,630円)にかけて急拡大しましたが、2022〜2023年は微増です。調査を開始した2016年のCtoC-ECの市場規模は3,458億円でした。



市場の拡大が限度を迎えているとみるか、今年度以降にテクノロジーの進化や世相の変化が規模の伸長を促すかどうか、注視したいところです。



*CtoC取引には、個人間取引だけでなくBtoBやBtoC取引も含まれています。そのため、本記事で言及している数値にはこれらの取引も含まれています。



各業界におけるECの市場規模とEC化率の割合



物販分野の市場規模及びEC化率については、さらに詳しく業界別に見ることができます。



市場規模の内訳は、「食品、飲料、酒類(2兆9,299億円)」、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等(2兆6,838億円)」、「衣類・服装雑貨等(2兆6,712億円)」、「生活雑貨、家具、インテリア(2兆4,721億円)」が大きな割合を占めています。



特に伸びが顕著だったのは、「化粧品等」の分野です。2020年から2022年は自粛傾向によって需要が低下していましたが、2023年は2019年の水準を上回って増加に転じました。



一方で、「医薬品等」は、マスクや消毒液といった衛生関連用品の需要が一旦落ち着いたためか、消費者の支出額が減少しています。



出典:経済産業省 令和5年度電子商取引に関する市場調査




家電(生活家電、AV機器、PC・周辺機器等)のECの状況



家電は型番や品番等を指定して購入できるため、ECと親和性が高いと考えられてきました。



1世帯あたりの「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」に関する年間平均支出は64,020円で、2022年より2.8%、2019年より11.7%増加しています。



物価高や実質賃金低下が買い控えの要因となった一方、省エネニーズは高まり、高価格帯の家電品の需要が増加傾向にあります。



衣類・服装雑貨等のECの状況業



1世帯あたりの「衣類・服装雑貨等」の年間平均支出は、119,393円でした。



2022年と比較すると1.5%、2019年と比較すると15.7%もの減少が見られました。



在宅ワークの浸透によって外出着を着用する機会が減ったり、暖冬傾向でアウターウェアの売上が低迷したりしたことが影響と考えられています。



しかし支出額こそ減少していますが、サステナビリティやSDGsへの共感が購買行動に影響を与えているほか、AIや技術を活用した新たな購入体験が求められています。



2023年は、メタバースやNFTの分野でも衣類やファッション小物が販売され、VR上の服と実際の服をセットで販売するなどの新たな取り組みが進んでいます。この分野が今後、EC市場にどのような影響を与えるか注目されています。



食品、飲料・酒類分野のECの状況



食品、飲料・酒類分野の市場規模は2兆9,299億円で、2022年と比較すると6.52%、2019年と比較すると7.7%増加しました。



EC化率は4.29%で微増しています。



鮮度や質感を直接手に取って確認したい消費者が多い食料品は、ECには向かないとされてきましたが、わずかながらEC化率は増大しています。



ネットスーパー事業へすでに参入している事業者が、物流拠点への投資を積極的に行っていること、スーパー事業への新規参入を計画している事業者が控えていることから、今後の成長の可能性は期待されています。



サービス系・デジタル系分野のECの状況



サービス系分野は、BtoC-ECの市場規模が7兆5,169億円と、前年比で22.27%の大幅な増加が見られました。アフターコロナに伴う外出需要の高まりにより、旅行や飲食、チケット販売の市場が拡大したことが主な要因です。



コロナ以前の2019年には市場規模が7兆1,672億円だったため、2023年には感染症拡大前の水準を上回りました。



デジタル系分野では、2022年が前年比マイナスであったのに対し、2023年は2.05%の増加で市場規模は2兆6,506億円となりました。



オンラインゲームの市場はやや縮小しましたが、電子出版や動画・音楽の有料配信が拡大しました。



出典:経済産業省 令和5年度電子商取引に関する市場調査




国内BtoC-ECの傾向



国内BtoC-ECは、既存の役割から脱却した店舗のあり方を模索する傾向が見られます。



物流の課題、いわゆる2024年問題の解決についても、さまざまな戦略が展開しています。



ショールーミング化店舗



ショールーミング化は、リアル店舗で商品をチェックしてからECを通じて注文をするという購買体験です。



過去には、店舗をショールームとしてのみ利用する消費行動は、「接客をしても売上につながらない」とネガティブに捉えられることもありました。



しかし、近年は積極的にリアル店舗をショールームとして活用し「体験型店舗」として運用、成功するケースも増えています。



ショールーミング型店舗は、たくさんの在庫をストックしておく必要がないため、省スペースでも営業できる、体験をSNSなどに口コミ投稿してもらうことでバイラルマーケティング(口コミマーケティング)を展開できるといったメリットがあります。



EC購入品の店舗受け取り



店舗に新しい役割を与える施策には、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)もあります。



BOPISは、ECで購入した商品をリアル店舗で受け取るシステムのことで、消費者にとって送料を負担しなくて良い、好きなタイミングで商品を受け取れる、万が一気に入らなかった時に返品が容易であるというメリットがあります。



事業者にとっても、物流コストを低減できる、ECとリアル店舗で接客機会(タッチポイント)を創出できるというメリットがあります。



オンライン接客



ネットを通じて、リアル店舗で行っているような接客を実施する「オンライン接客」はアパレル業界、コスメ販売を皮切りに、家電や食品の販売にも利用され始めています。



リアル店舗の従業員をインフルエンサーのように登用し、売上に貢献した分のインセンティブを支払うというシステムを備えている企業もあります。



2024年問題の解決



2024年問題により、物流コストは上昇しています。



企業はこれに対応するため、送料の見直し、送料無料や即日配送といった商習慣の改定を行い、コストを転嫁・相殺してきました。



しかし、これからは人手不足が加速するために、より抜本的な対策が必要になってくるでしょう。



AIを活用した配送ルートの効率化、業界を超えた合同配送のシステム整備など、新しい取り組みもこれからますます活発になっていくかもしれません。



世界のEC化率と越境ECの可能性



日本、米国、中国の3カ国間の越境ECは、いずれも伸長しています。



中国からの越境EC購入額は2兆4,301億円、米国からの越境EC購入額は2兆9,610億円でいずれも前年比7.7%増となりました。



2023年は訪日外国人旅行者が2,500万人超となり、2024年6月には過去最多を更新するなど、インバウンド需要は今年も堅調です。



モノ消費からコト消費にトレンドが移り変わったことで、「爆買い」も落ち着いたと思われがちですが、円安傾向も相まってショッピングを好む傾向が再燃しています。



旅行で購入した商品を気に入った場合、越境ECでリピート購入するという流れが期待できます。また、日本に注目が集まることで、日本独自の工芸品や日用品が脚光を浴びることもあります。



日本政府は、2030年までに訪日外国人旅行消費を15兆円まで成長させる目標を掲げていますが、越境ECも同じように成長が見込める分野と言えるでしょう。



まとめ



ここ数年で特にEC化率が伸長したのは2020年です。この年は緊急事態宣言により、オンライン授業や在宅ワークの必要性が高まって、IT化が急速に進みました。1年間で約10年分に相当するほどのデジタル化が進み、ECの利用者も増大しました。



2023年のデータからは、アフターコロナとしてECが新たな局面を迎えていることが読み取れます。顕在化した2024年問題への対処や、インバウンド需要に即した越境ECの構築が、今後のECを考える上での重要なポイントになるでしょう。