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【2023年版業界別分析】日本のEC市場規模とEC化率はこれからも伸びる?


ECサイトは、訪問者がいつでも・どこでも閲覧することができます。そして、企業の営業日/時間外に関わらず、売上を増大させることに貢献する役割を果たします。



さらに、SNS等をECサイトと連携して活用すれば、潜在的な顧客を掘り起こす可能性も秘めています。コロナの巣篭もり需要によって急速に規模が拡大したEC市場ですが、ECの利用ユーザーが増えたことで、より幅広い世代に使いやすいユーザビリティが求められるようになっています。



本記事では、BtoB(Business to Business=企業間取引)、BtoC(Business to Consumer=企業と顧客間の取引)、CtoC(Consumer to Consumer=一般消費者間の取引)の市場規模とEC化率の変遷について触れてから、業界別のEC状況について、コロナの前後でどれだけ「常識」が変わったのか、最新のトレンドを交えて分析していきたいと思います。



現在だけでなく、すぐそこに来ているECの未来をデータから読み解いてみましょう。








BtoBのEC市場規模とEC化率



経済産業省の資料『令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)』には、BtoBにおけるEC市場規模とEC化率についての数字があります。



出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」




2022年(令和4年)のBtoB-EC市場規模は420.2兆円、前年比12.8%増(前年372.7兆円)となっています。BtoB-ECのEC化率は、37.5%で、こちらも前年比1.9ポイント増となっています。



「EC化率」とは、対面販売およびEC取引等すべての商取引全体で見たときの、ECの商取引の割合のことです。この割合が高くなるほど、ECサイトが全商取引に占める売上が高いということになります。



ちなみに2020年における広義*のEC市場規模は334.9兆円、2021年の市場規模は、372.7兆円でした。実は、EC市場規模は2013年から2022年まで一貫して増加傾向にあります。



そして特に伸び率が高いのが2020年です。コロナ禍では、在宅ワークやオンライン授業等、社会全体でIT化が急速に進んだため、1年間で約10年分のデジタル化が達成されたとも言われています。この流れによってECの利用者も大幅に増加し、市場規模が一気に伸長したと考えられます。



* ここでの広義・狭義の定義について、広義は狭義も含めたコンピュータネットワークシステム(VAN、専用回線、従来型EDI)を介したオンライン・オフラインを問わないもの、狭義は公衆回線上のインターネットの他、エクストラネッ ト、インターネットVPN、IP-VPNを介したオンラインでの取引を指します。



BtoCのEC市場規模とEC化率



同じ資料の中で、2022年のBtoC-EC市場規模は22.7兆円と公表されています。2021年は20.7兆円だったため、前年比9.91%増となり、こちらも順調に規模が拡大しています。



出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」




BtoC-EC市場は、2013年以降ゆるやかな増加を続けてきました。市場規模が調査開始以降初のマイナスとなったのは、コロナウイルスが世界的な影響を及ぼした2020年のみです。



2020年は、感染症対策の一環で外食や旅行サービスの利用が大幅に縮小したため、BtoCの中でも、特にサービス系分野の市場規模が大きく減少しました。



とはいえ、巣篭もり需要によって今までECを利用してこなかった層にも利用が広がったため、壊滅的に大きな落ち込みを見せたわけではありません。



なお、BtoCのEC化率は9.13%(前年比0.35ポイント増)でした。



出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」




特にEC化率が高かった分野の内訳は、書籍、映像・音楽ソフトの52.16%、生活家電、AV機器、PC・周辺機器等の42.01%、次いで生活雑貨、家具、インテリアの29.59%となっています。


■特集:BtoB ECサイト■


CtoCのEC市場規模とEC化率



CtoCは一般消費者間でおこなわれる取引*のことで、オークションやフリマアプリを用いた物品の取引を指します。



オークションサイトが活発に利用され始めたのは2000年頃からですが、経産省の市場規模調査は、2016年から始まりました。



2022年のCtoC-ECの市場規模は推計2兆3,630億円で、前年比は6.8%増(2021年は1兆2,121億円)です。



調査を開始した2016年のCtoC-ECの市場規模は3,458億円だったので、この5〜6年間で市場規模が大きく拡大したのが分かります。



BtoB, BtoCと比べると市場規模は小さいように感じられますが、フリマアプリのような比較的新しいサービスは小さな改革を繰り返して進化しているので、今後もゆるやかに伸長していく可能性は高いと考えられます。



出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」




*CtoC取引には個人間だけでなく、BtoB、BtoCの取引も含まれています。そのため、本記事で言及する数値はこれらの取引を含んだ数値となっています。



各業界におけるECの市場規模とEC化率の割合



物販分野の市場規模及びEC化率については、さらに詳しく業界別に見ることができます。



市場規模の内訳は「食品、飲料、酒類」がもっとも高く、2兆7,505億円でした。



次に高いのは「生活家電・AV機器・PC・周辺機器」の2兆5,528億円で、「衣類・服装雑貨等(2兆5,499億円)」、「生活雑貨、家具、インテリア(2兆3,541億円)」と続いています。



これらの4分野はすべて2兆円を超過しており、BtoC-ECの物販系分野の73%を占めていました。



EC化率が高かったのは、「書籍、映像・音楽ソフト」の52.16%、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」の42.01%、「生活雑貨、家具、インテリア」の29.59%です。



出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」




以下では、これらの物販系分野で特に市場規模が大きかった分野においてトップシェアとなっている企業や、分野別の動向について見ていきたいと思います。



家電業界の動向



家電は、型番や品番等を指定して購入すれば間違いなく目的の商品が買えること、どこでも同じクオリティの製品が買えることから、ECと親和性が高いと考えられてきました。



事実、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」は5年連続でEC化率トップ3にランクインし続けています。コロナ禍では、在宅勤務やオンライン授業の環境整備といった必要性から特に需要が伸びました。



この反動からか、2022年は、ヤマダHDやケーズHD、エディオンといった家電量販店の大手企業が軒並み売上高を落としています。



しかし、コロナ禍によって学校や会社のデジタル化は大きく進んだため、全体的な需要は引き続き高いと見て良いでしょう。



引用:業界動向サーチ「家電量販店業界 売上トップ5(2021-2022年)」




衣類・服装雑貨等でトップシェアの企業



ファーストリテイリング、しまむら、アダストリアといったファッション通販の大手がトップに君臨していますが、同時にBtoCの市場におけるデジタル技術の向上をも担っているとされるのがこの業界です。



Instagramを始めとしたSNSとの親和性が高く、リアル店舗の従業員をモデルとして着用写真等の情報発信を行うマーケティング、インフルエンサーの起用といったプロモーションは、消費者からの手応えをスピーディに把握しやすいのが業界の特徴です。



デジタルを駆使した新しい購入体験やタッチポイントづくりが、消費者の心を掴み続けるためには求められていくでしょう。



引用:業界動向サーチ「アパレル業界 売上高ランキング(2020 – 2021年)」




食品、飲料・酒類分野における今後の動向



食品産業の実店舗とECの全商取引は、66兆1,180億円です。そのうち電子取引されているのは2兆7,505億円で、ここから計算されるEC化率は4.16%です。



この数字は、物販系分野の中でもっとも低い数字であり、食品産業は物販の中で最もEC化の進んでいない分野と言えます。



食品のEC化率が低い背景には、鮮度や品質を直接手に取って確かめたい消費者が大多数である、生活圏内にスーパーがあって自分で買いに行った方がECを使うより便利と感じる人が多い、といった理由があると考えられています。



しかし、コロナ後の今、その状況に少し変化が見えてきました。実際の数字を見て比較してみましょう。



2018年と2019年の「食品、飲料、酒類」のEC化率は、2.64%、2.89%でした。
2020年にはEC化率が3.31%に、2022年には4.16%となりました。



このように、わずかずつではありますが、着実にEC化は進んでいます。



これはコロナの外出自粛によってネットスーパーの利用が広がったことだけでなく、食品産業が物流の課題に取り組み、スピーディかつ効率的な配送システムを整備したことも関係しています。 ダークストアや多店舗間在庫管理システムといった技術を活用した物流の効率化は、2024年問題の解決という新たな課題もあります。



物流の課題を解決するためのイノベーションによって、今後さらなる伸長を見せるかもしれません。



サービス系分野・デジタル系分野のECの状況



サービス系分野は、旅行・飲食・宿泊等が含まれていますが、このすべてのカテゴリーが2022年に急回復しました。



経済活動と消費者行動の活発化によって、2020年のマイナス成長から大きく復活を遂げています。



旅行業界におけるチケット予約のEC化は早く、1990年代後半にはすでにサービスがスタートしていましたが、ここへきてチケットレスサービスも含めたEC化がさらに進んでいます。



引き続き対面予約のニーズはあるものの、EC利用に利便性を感じる消費者も多いため、今後はEC利用と対面予約の二極化が進むと予想されます。



飲食サービスも、食べログや一休.comといったレストラン予約サービスの利用が拡大しています。外食産業はコロナのパンデミック以降、苦戦を強いられてきましたが、ここへきて急回復の兆しが見られます。



出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」




デジタル系分野には、電子出版、有料音楽配信、有料動画配信、オンラインゲームといったカテゴリーが含まれています。



音楽や動画配信は、Netflix、Amazon Primeといった大手サービスが引き続きシェアを保っています。ニトリやドン・キホーテが、TV視聴のできないチューナーレステレビを発売する等、TV視聴に充てていた時間を、有料の音楽や動画に充てる消費者が増えているようです。



一方で、巣篭もり需要が高かったオンラインゲームは、大幅なマイナス成長となりました。これは、コロナの落ち着きにより消費行動が変化したことが理由と考えられます。



出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」




コロナ前と後で変化が加速するEC業界



コロナ禍の只中とされる2020年4〜6月の実質GDPは、マイナス27.8%でした。



これは、戦後最大の落ち込みとされていて、改めてコロナが経済に与えた影響の大きさがわかります。



しかし、いわゆる巣篭もり需要は追い風ともなりました。ECは利用者数が増加しただけでなく、一人あたりの利用金額も増加傾向が見られます。



コロナ以前は、ECを敬遠している層がユーザとして加わるまでには10年単位の時間がかかると考えられていました。ですが、コロナによってその予測は一変しました。



現在ECを利用しているユーザーの約20%は、コロナ禍の2020〜2022年に増加したユーザであると考えられています。



40代以降のEC利用者が増加して、それに伴いコロナ前にはスーパーで購入していた日用品や食品等を、ネットで購入する動きが顕著になりました。



2021〜2022年も同様の傾向は続き、コンビニやドラッグストアの売上が好調です。



コンビニは、在宅ワークから出社前提に切り替えた影響を受けて、ビジネス街での需要も復活しつつあり、レジャー先での需要も高くなっています。



百貨店も来客数が増えて売上は回復傾向にあります。



一方で、2022年半ば〜2023年にかけては、値上げラッシュが起こり落ち着く気配を見せていません。



原材料価格の高騰を転嫁しきれない事業者が多数を占める一方で、消費者は生活防衛意識が高まっているという傾向が見られます。



コロナ後の経済再開が加速する気配が見えにくいのは、商品の値上がりに消費者の購買意欲が削がれる形になっているからと考えられます。



とはいえ、節約しながらも自分の好きなものや特別なことにはお金をかけたいという、メリハリをつけた消費の傾向が窺えるため、決して買い控え一辺倒という世相ではありません。



2024年も引き続き、商品そのものだけでなく、購買体験も含めて消費者に魅力的と感じてもらえるECの構築が必要になってくるでしょう。



細分化したEC顧客に対応するシステム構築がコロナ後の鍵を握る



ECを幅広いユーザーが利用するようになった今こそ、細分化されたニーズを先読みしたシステム構築、EC設計が必要な時です。



ECを利用し始めたばかりの新規ユーザーは、初めこそモール型の大手サイトのみを利用しているかもしれませんが、いずれは大手ECサイト以外でも買い物をするようになります。



これからの主な購買層は、デジタルネイティブが大半を占めていきます。



ゆえに、ますます直感的にショッピングができる高い利便性を味わえるECサイトが求められていくでしょう。



これからは、そうした消費者が使いやすく、なおかつ長期的に使いたいと思えるECシステム作りが必要になっていくはずです。



スマホでも使いやすい購入手順を構築



コロナ前後にECを利用するようになった消費者の中には、デジタルリテラシーがあまり高くない人も多く、「スマホでスムーズに注文できる」ことが購入にいたるきっかけになることもあります。



動線が分かりやすく、少ないアクションで欲しい商品をすぐに購入できる仕組みづくりが肝要です。



ニーズに対応した決済システムを充実させる



EC利用に慣れていない場合、クレジットカード情報を記入することにためらいを覚えることもあります。ネット上でのクレジット決済が不安な層に向けては、多様な支払い方法をフォローすることも必要でしょう。



若年層にとっては、キャリア決済やコード決済(スマホ決済)の方が使いやすいケースもあります。



SNSも活用してダイレクトアクセスを意識



ECサイト内を検索して欲しい商品を探す消費者もいますが、SNSやブログを見ていて目についたアイテムが欲しくなった、という人も若年層を中心に増えています。



SNSの運営企業も、SNSを購買プラットフォームとして機能させることに意欲的で、Instagram、Facebook、TikTokでは商品の閲覧から購買までを完結させる「オン・プラットフォーム・コマース」のリリース準備が進められています。



これらを活用して目指す理想形は、ショッピングと意識させないまま購買へとつなげるシステムの構築です。



ヘッドレスコマースに転換する



ダイレクトアクセスを意識してたどり着く先が、このヘッドレスコマースです。



ECだけでなく、二次元コード、スマホアプリ、SNS、UGM(画像・動画・音声等のコンテンツ)といったすべての場所をショッピングの入り口にして、消費者の触れるすべてをECに変えてしまうというのがヘッドレスコマースの基本的な考え方です。



世界のEC化率と越境ECの可能性



世界のEC市場は、日本よりもさらに大きく成長を遂げています。



経産省の推定では、2022年の世界全体のBtoC市場のEC化率は19.3%です。



最もEC化率が高いのは中国(50.4%)で、次に米国(18.4%)、英国(4.5%)と続いています。



日本の2022年のEC化率は9.13%で、世界第4位にランクインしています。



世界全体のEC化率を見ると、日本はEC化が進んでいないように感じますが、国別のEC化率を見てみると決して遅れているわけではないことが分かります。



これに伴って、越境ECも年々その注目度を増しています。



中国・米国の越境ECが活発化



日本、中国、米国の3カ国間における越境ECの市場規模は、いずれの国でも増加しています。



特に市場規模が大きいのは中国で、EC全体の購入額は5兆68億円にものぼります。2022年に中国の消費者が日本事業者から購入した越境EC購入額は、2兆2,569億円で前年比5.6%増となりました。



米国の消費者が日本事業者から購入した越境EC購入額は、前年比6.8%増の1兆3,056億円です。



日本の2022年の中国・米国向け越境EC市場は、あわせて3兆5,625億円で、これは前年比6.0%増の規模です。



越境ECはAIを活用した翻訳システムの整備やさまざまな法整備によって、参入障壁が低くなりつつあります。



まとめ



ECサイトはBtoB、 BtoC、 CtoCいずれもまだ伸長の余地を充分に残している分野です。特に、BtoC-ECはDX化によって顧客のユーザビリティを高めることによって、新規ユーザを獲得する、顧客を育てる(ロイヤル化する)ことができるでしょう。



SNS各企業が、オン・プラットフォーム・コマースの準備を進めているなど、消費者が触れるすべてをショッピングの入り口へと変えるヘッドレス・コマースの概念が、今後はますます重要なものとなるでしょう。



さらに、扱う商品・サービスによっては、積極的に越境ECも検討することが重要になってきます。



これからのECは、コロナで変化した価値観を踏襲しながら、さらに消費者の利便性を追求していく、これが鍵となるはずです。