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リアルな2020年の小売はこうなった!過去(2016年)のトレンド予測記事の結果を大検証

今から遡ること3年前の2016年。「ECのミライを考えるメディア」では、「2020年はこうなる!小売業界のトレンド予測7選」と題して、2020年の小売業界がどのように変化しているかを予測する記事を掲載しました。

2020年をいよいよ来年に控え、予測した未来は一体どれぐらい現実のものとなっているのでしょうか?2016年当時の記事を引用しながら検証していきたいと思います。
目次:
  1. 人工知能チャットでショップとやりとり 判定:◎
  2. ウェアラブル決済が可能にする「手ぶらショッピング」 判定:△
  3. 仮想通貨が国境を超える 判定:△
  4. 家の庭に着地するドローン配送 判定:△
  5. 自動翻訳で言葉の壁がなくなる 判定:〇
  6. 音声注文で自動でオーダーが通る?  判定:〇
  7. 無人の店舗でお買い物、これならインバウンド対策も完璧! 判定:△
  8. さいごに

1.人工知能チャットでショップとやりとり 判定:◎

LINEやFacebook、TwitterなどのSNSではチャットbotアプリがリリースされ、巨大な集合知が生まれようとしています。これをカスタマーサポートに活用し、顧客とのやりとりを人工知能を搭載したチャットbotに任せる店舗が増えると予測
こちらの記事掲載直後、2017年における対話型AIシステムの市場規模は11億円程度でした。それが2019年時点では約51億円になる見通しで、この先も市場は加速度的に拡大され続けて、2022年には132億円規模になると予想されています。

出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1946


AIチャットの市場規模グラフ引用:矢野経済研究所

また、AIチャットbotサービスの数は88にも登り、ユニクロが導入した「UNIQLO IQ」やイオンモールの「AIさくらさん」、中古車販売を手がけるガリバーの「クルマコネクト」など、実際の接客をチャットbotが担当する実例も枚挙にいとまがありません。

出典:AI専門メディア「AINOW」


これは3年前の予測通り、事実上普及したと言えるでしょう。

2.ウェアラブル決済が可能にする「手ぶらショッピング」 判定:△

東京五輪が開催される2020年には、ウェアラブル端末の普及が全世界で2億台を超えると予測され、スマートフォンのように身近な端末になっているでしょう。ウェアラブル端末だけを身につけ、買い物に行くのに、財布や手帳、スマホすら持たずに手ぶらで出かける未来に
IDCが発行する「Worldwide Quarterly Wearable Device Tracker」によると、2019年第一四半期における世界のウェアラブルデバイス出荷台数は4958万台。これは3年前に予測した2億台という数字の1/4程度であり、全世界的に大きく普及した、とは言い難い状況です。
実際に街中での人々の行動を眺めてみても、スマートフォンを手放すどころか、むしろスマートフォンこそが全ての行動の起点となっており、それは、徐々に浸透しつつあるキャッシュレス決済においても同様です。

しかしながら、アップルウォッチを用いてApple Payで決済をしたり、駅の改札を通過する生活者も徐々に見かけるようになっており、この先はさらにその人数も増えていくのではないでしょうか。

3.仮想通貨が国境を超える  判定:△

2016年2月の法改正案で、仮想通貨を「貨幣」と認定すると発表がありました。(中略)前項のウェアラブル決済とも親和性が高く、ECサイトなどでも導入が始まっています。
ウォレットアプリの入ったウェアラブル端末を使い、仮想通貨で決済という未来はすぐそこまで来ています。
上記の通り、日本は世界に先駆けて仮想通貨に関する法整備を行った国です。この法整備によって、仮想通貨および仮想通貨交換業についての定義や規制が明確になりましたが、多くの人はその事実を知りません。むしろ、いまだに仮想通貨が何であるのか、どんな種類の仮想通貨が存在するのかなど、全くと言っていいほどわからないという人もいるでしょう。

しかしながら、「Dalia Research(ダリア・リサーチ)」が昨年公表した調査結果によれば、日本人の仮想通貨保有率は11%となっており、これは仮想通貨の市場規模が大きい国の中ではトップの保有率です(米国、ドイツで9%、中国では3%)。

また、DMM.comなどのECサイトだけでなく、ビックカメラや飲食店などのリアル店舗においても、ビットコイン決済に対応する店舗は徐々に増え始めているのも事実であり、交換業者数の拡大も手伝って、さらに普及が進む機運は高まっていると言えます。

4.家の庭に着地するドローン配送 判定:△

日本ではAmazonに先駆けて楽天が千葉県のゴルフ場で商業利用をスタートさせています。広大な敷地のゴルフコースに、ピンポイントで届けられる荷物はまさに新しい配送の形です。このようなドローン配送は2020年には本格的な運用がされており、庭や駐車場にドローンが発着する様子があちこちでみられるようになるかもしれません。
過去の記事でも取り上げている楽天ドローンは、千葉県のゴルフ場に引き続き、2017年にはローソンとのコラボレーションで、ローソン南相馬小高店(福島県)を拠点とした移動販売とドローン配送を連携したサービスの実施を開始しました。さらに2019年の夏には、東京湾唯一の無人島であり、年間20万人が訪れる人気の観光スポットでもある「猿島」でドローン配送サービスを期間限定で実施しています。

また、日本郵便も2018年11月、福島県南相馬市小高区の小高郵便局と、浪江町の浪江郵便局の間でドローン配送を開始しています。

このように、各社が次々とサービスインを発表しているものの、それら全ては実証実験という位置付けです。上に挙げた事例で、同地区での実証実験が複数あることなどからもわかる通り、ドローンを飛ばせる地域の問題や安全性、ドローンが搭載するカメラに映り込むプライバシー保護など、課題はまだまだ山積しており、これらをクリアし、広く一般向けのサービスが普及するのにはもう少し時間がかかりそうです。

5.自動翻訳で言葉の壁がなくなる 判定:◯

注目なのが「自動翻訳」です。スマホや翻訳デバイスに話しかけると、リアルタイムで翻訳し、機械音声で発話されるものが発表されています。日本語は機械翻訳が難しいとされていますが、人工知能や機械学習での翻訳品質の向上などにより、言葉の壁は少しずつ低くなってくるはずです。
自動翻訳技術が深層学習をベースにした「ニューラル機械翻訳(NMT)」に切り替わり、翻訳精度が劇的に向上した今、様々なサービスを提供する場(特に観光分野)において、自動翻訳による接客の実証実験が行われています。これは、大部分が明らかに2020年のオリンピック開催時を視野に入れて進められているものと言えるでしょう。

過去の記事にもあるように、機械翻訳が難しいとされる日本語ですが、総務省は「グローバルコミュニケーション計画」において2020年までに訪日外国人が言葉の壁で困らない社会の実現を目指すとし、研究開発に力を注いでいます。そして、その成果の一つとして、情報通信研究機構(NICT)は、Googleなどのクラウドを用いない独自の多言語音声アプリ「VoiceTra」を開発しています。

VoiceTraの最新バージョンは31言語の文字翻訳、23言語の音声入力、17言語の音声出力に対応しており、NICTはさらなる精度向上に務めています。

民間企業が手がけるデバイスでも、ソースネクストの「POCKETALK」が大ヒットし、外国人観光客の来店が多い小売企業の店頭にも実際に導入され、接客に活用されるなど、「言葉の壁の崩壊」は着々と進められています。もちろん、完璧な精度を求めるにはもうしばらくの時間を要するかもしれませんが、簡単な接客や会話であればすでに満足できるものになっており、これについては予測通りの結果になっていると言えるのではないでしょうか。

6.音声注文で自動でオーダーが通る? 判定:◯

今後、たとえば飲食店でオーダーするとき、「ハンバーグ定食、ごはん大盛り、ドリンクはコーヒーで」という注文を、音声認識してオーダーするシステムができるかもしれません。前項の自動翻訳でも使われている音声認識技術は、小売の世界でこれから様々に活躍しそうです。
過去の記事でも取り上げましたが、Amazonエコーという音声認識デバイスを通じて「Alexa(アレクサ)」というAIアシスタントに話しかけ、様々な操作を可能にする世界は、スマートホーム化を促進するAmazonによってすでに実現されています。

「アレクサ、◯◯をして」と、色々な要求を音声で伝えるAmazonエコーのテレビCMはたくさんのバリエーションが大量に放映されていますし、皆さんも一度は見たことがあるのではないでしょうか。あのCMによって、Amazonは「音声で機械を操作する」ということに対する心理的ハードルを下げ、エコーが普及する下地を作ったと言えると思います。

さらに実証実験という位置づけながら、過去の記事の通り、音声認識を用いたオーダーを可能にする飲食店も登場しています。それが、ロイヤルダイニングが展開する「天空の月」渋谷店です。ここでは、日本初となるアレクサによるオーダーが可能な席を実用化したことで話題となりました。

現時点ではその物珍しさ自体が集客に繋がっている部分もあります(アレクサにメニューを伝えるのではなく、あえてアレクサに店員を呼んでもらう、という遊びをするなど)。しかし、店舗側としては、アレクサを活用することによってタブレット端末などと違ってメニューが変わった時にメンテナンスがしやすかったり、英語モードに切り替えるだけで外国人とコミュニケーションがスムーズになるといったメリットも多いという特徴があります。

まだ全国的に普及している状態には至っていませんが、これらのポテンシャルを考えると、今後ますます音声オーダーを採用する店舗が増えていくのではないでしょうか。

7.無人の店舗でお買い物、これならインバウンド対策も完璧! 判定:△

こうしたスタッフのいない、あるいは一部を無人化した店舗は、インバウンド対策としても有効ではないでしょうか。また、サイネージをずらりと並べた店舗も多数出現するのではないかと予測しています。
過去の記事において、無人店舗はインバウンド対策の一環として位置付けられていましたが、その視点から言えば、インバウンド向け無人店舗の普及は実現には至っていないでしょう。

しかしながら、この記事が配信された後に、米国では無人店舗の実例としてあまりにも有名なAmazon Goがローンチされ、それを追随するように世界では様々な形態の無人店舗が発表されました。

国内においても「ロボットマート」や「JR赤羽駅のキオスク」、モバイルオーダー店の「Beeat Sushi Brito」、サントリーBOSSが展開する無人コーヒーショップ「TOUCH-AND-GO COFFEE」など、あくまで実証実験という位置付けの店舗が多いものの、様々な無人店舗が実際に稼働しています(一部、期間限定のものもあります)。

どのような形であれ、これら無人店舗を全国的に展開するためにはコストが莫大にかかるため、今しばらくは同じような状態が続くと思われます。しかしながら、技術としては確実に実用化が見えていますので、ビジネスとしてスケールすると判断されるサービスの登場を待ちたいところです。

ちなみに、過去の記事で予測したデジタルサイネージを活用した店舗についても、現時点でいくつかの実証実験店は存在するものの、大きく広まってはいません。これには様々な要因が考えられますが、一つには、サイネージを操作することがよほど便利か、あるいはエンターテインメントしていない限り、「スマホで事足りる」ことが挙げられると思います。

さいごに

全体を総括すると、どのテクノロジーも実用化する水準に達しているものの、ビジネス的にスケールするかどうか、実装するために必要なオペレーションや見えざる課題を解決する段階にある、というように見えます。

もう4年経ったパリオリンピックの時期に再度検証すると、ここで挙げたいくつかのテクノロジーは、当たり前に普及しているかも知れませんね。

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