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リアル店舗との連携メリットを活かした小売業の新しい取り組み~マルチチャネルからオムニチャネルへ

拡大し続けるEC市場。経済産業省の発表によると、国内の2011年のBtoC EC市場規模は8.5兆円、EC化率は前年より0.3ポイント増の2.8%となっており、スマートフォンやソーシャルサービスの一層の普及も後押しとなって今後もEC化は進むと予想されます。

※BtoC-EC市場規模は、8兆4,590億円(対前年比108.6%)に。成長はやや鈍化。EC化率は、0.37ポイント増の2.83%(対前年0.37ポイント増)/電子商取引に関する市場調査報告書 – 経済産業省 平成24年2月

現状はまだまだ数パーセントに満たないEC市場シェアですが、日用品、食品、衣料品から家具家電に至るまで様々な商品がネット上で取引されており、ますます「EC化」の流れが加速していると言える今日。既存の小売業を押し寄せるほどの勢いで売上を拡大するネットショップ専業のEC事業者も増えています。

このような状況で、多くの既存小売業者はEC施策・ネットへの対応に遅れをとっており、「とりあえずECサイトを立ち上げたものの思うように売上を伸ばせない」「ネット専業EC事業者との差別化ができない」といった声が多いのが現状です。

しかし、一方では一部の小売業者が、ネットとリアルの連携により新たな価値を見出し、リアル店舗のメリットを活かした施策を打ち出し始めています。

普及し始めた”ネットでの店頭在庫表示” ~マルチチャネルの取り組み

衣料品を扱うECサイトでは、各社それぞれのコンセプトや機能を充実させて進化しています。「マルチチャネル」の取り組みとして、リアルとの連携による顧客サービスを打ち出し、大きく流れを変えた事例の一つとして、2010年に丸井が始めたECサイトでの店頭在庫表示が挙げられます。

通販サイト「マルイウェブチャネル」では、商品詳細ページにある店頭在庫を「しらべる」ボタンから在庫のある店舗名やお問い合わせ用の型番が表示され、さらにその先のリンクで各店舗の地図や営業時間まで簡単に知ることができます。

同様のサービスはヨドバシカメラ東急ハンズなどのECサイトでも実施しており、企業やサイトによっては、店頭在庫表示だけにとどまらず店頭試着予約や商品取り置きといったサービスまで展開しています。

ECサイト利用者に”リアル店舗を構えているからこその利便性”を提供し、「ネットで下見・在庫確認をしてから店頭で実物を見て購入したい」「ネットで見つけた商品を今日すぐ使いたい」といったニーズに応えています。

リアル店舗との連携で新しい価値を生み出すヤマダ電機の取り組み ~オムニチャネルとは?

上記の”ネットで購入、店舗で受け取り”のような複数のチャネルをクロスさせた販売手法を「マルチチャネル(クロスチャネル)」と呼びますが、最近ではこれをさらに進化させた「オムニチャネル」という手法・キーワードが注目を集めています。

オムニチャネルとは、複数のチャネルを横断した一貫性のある購買体験を提供するもので、商品管理や顧客管理などをシームレスに行い、顧客へさらなる利便性、満足度を提供するものです。

ネットでの購買、リアルでの購買、それぞれの購買情報(顧客データ)を統合した本質的なネットとリアル連携という面では手探り状態の企業が多い中、新たな取り組みに早速着手している企業もあります。

1つの例が家電量販店最大手であるヤマダ電機です。
家電量販店といえば、いわゆるテレビ不況(地デジ放送への移行などでテレビの買い替え先行による近年のテレビ販売不振)やショールーミング(店舗で実物を見てネット上で購入という消費者の傾向)の流れにより苦戦を強いられている業界です。

その最大手であるヤマダ電機は”ネット企業に真似できない取り組み”として、「全国約760店舗を拠点とし、即日、販売員が商品を顧客宅へ送り届ける」という新サービスを開始しています。

▽社員お届けサービス(ヤマダ電機WEB.COM)
http://www.yamada-denkiweb.com/contents.php/special/guide3/

Amazonの大規模な物流拠点活用と全国当日配送サービス導入に対抗する面もあるようですが、ヤマダ電機ではデジタルカメラなど小型家電だけでなく、大型家電の設置や梱包材の廃棄まで手掛け、また、配送時に販売員が購入者とコミュニケーションを図りながら他の家電の使用状況・商品のニーズを聞き取り次の購買につなげるという点が注目すべきポイントです。

リアル店舗を持つ小売業者がネット専業EC事業者と単なる価格競争に陥ってしまうことは避けなければなりません。ネットをリアル店舗の補完という位置づけにするのではなく、リアル店舗を活用して顧客との接点を増やし、ネット専業企業にはできない全く新しい価値を提供するサービス設計が今後ますます必要になりそうです。