顧客が生み出す「UGC」をマーケティングに生かす方法
「もっと顧客のニーズを汲んだEC戦略を展開したい」 「Web広告以外で、ECに有効なマーケティングをしたい」 と考える マーケティング担当者、EC担当者の悩みは尽きません。
User Generated Contentsの略であるUGCは、ユーザーが作り出すコンテンツのことで、小売店をはじめ多くの企業がこのUGCを活用したマーケティングに注目しています。
この記事では、UGCがもたらす顧客体験やUGCを活用した成功事例、これからの時代に有効なマーケティング手法について解説します。
UGCマーケティングがもたらす「顧客体験」
ユーザー生成コンテンツを意味するUGCは消費者という一般ユーザーが投稿するコンテンツのことを指す言葉で、企業や企業が依頼したインフルエンサーが介在しない点が特徴です。
一般的にUGCといえば、以下のようなコンテンツが挙げられます。
- 消費者のSNS投稿
- ナレッジコミュニティ(Cookpadなど)
- ECサイトにおけるレビューや口コミサイトの投稿
- ブログ
UGCは企業がコントロールできない「顧客」という立場から発信されるコンテンツのため、読み手は安心感を覚えます。リアルな意見だからこそ信頼感があり、消費者に購買行動に強い影響を与える点が特徴です。
基本的にはスタッフから対面での接客を受けられない・商品を手に取れない・購入前に試せないというECでは、UGCのようなリアルな意見を無視することはできません。多くの消費者は、ECサイトで購入する前にレビューなどUGCをチェックして、品質や使用感に問題ないかという判断材料にしているのです。
UGCが生まれた背景には、スマートフォンの普及とSNSの浸透があります。SNSが発達したことで、消費者が発信するコンテンツの質が変わってきました。またCookieの規制強化などでWebの広告運用も変わり始めており、新たな広告手法が検討されています。
そこで今注目されているのが、UGCなのです。
UGCマーケティングでファンと新しいつながりが生まれる
UGCマーケティングなら、デジタル上で新しい顧客接点を作ることが可能です。公式SNSアカウントを持っていれば、InstagramやツイッターでUGCを見つけ、公式にコメントすることで接点が生まれます。
質のいいUGCを公式アカウントでリツイートしたりECサイトで使いたかったりする場合、該当の投稿に対し、公式アカウントから直接確認を取ることが暗黙のルールです。すると消費者は「自分の投稿を見てくれているんだ」と気づき、自社ブランドをより深く認識してもらえます。
例えばクラフトビールのメーカーヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)では、UGCに注力してECサイトの売り上げを高めています。
ヤッホーでは許諾を得たUGCをInstagramの公式アカウントに掲載し、サイト訪問者の購入を後押しする仕組みを作りました。
またUGCに対して公式アカウントから「素敵な投稿ありがとうございます」などとメッセージを送るだけでも、顧客接点を作ることができます。UGCは顧客の投稿に個別に対応することで、1to1マーケティングにもつながるのです。
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SNSキャンペーンとの連携でUGCを増やす
UGCをマーケティングに活用するためには、絶対量を増やさなければなりません。UGCという重要なコンテンツを増やす方法として注目されているのが、SNSキャンペーンです。
商品やサービスについてSNSで発信したことがあるユーザーは「ある」が26.81%、「ない」が73.16%とない方が多い状況でした。しかし調査によると、約5割がUGCを生成するきっかけがキャンペーンだったと回答しています。
特にアンケート・クイズ形式はユーザーが参加しやすく、有効なキャンペーンといえるでしょう。自社商品・サービスについてのUGCが少ないなら、まずはキャンペーンを企画してUGCの量を増やす方法が有効です。
消費者のニーズの発掘
Instagramの投稿など、UGCは消費者のリアルな声を集められます。その商品やブランドのどこに価値を感じたか、今後どのように利用していきたいか、といった部分をUGCから読み解くことは、消費者のニーズ発掘に直結します。
マーケティングでペルソナを作ったり入念にリサーチしたりしても、自社と消費者のニーズが一致しているとは限りません。UGCを収集することは、企業が把握できていなかった消費者ニーズの発見にもつながるのです。
UGCの活用実績
日々投稿されるUGCを有効活用することで、多くの企業が実績を上げています。4種類のUGC別に、活用実績をご紹介します。
食品:GREEN SPOONはおしゃれなUGCを活用
スープやスムージーといった食品のサブスクリプションサービスを提供するGREEN
SPOONも、UGCを有効活用することで実績を上げました。
GREEN SPOONが活用したUGCは、Instagramのコンテンツです。グリーンスープに興味を持ったタレントやインフルエンサーがインスタに投稿する機会が多く、おしゃれ・非日常感をテーマにインスタの投稿をUGCとして活用し、自社サイトや広告に掲載しました。
GREEN SPOONはUGCのさらなる活用を目指し、活用ツールも導入しました。スープのLPにUGCを掲載し、さらに購入率向上につなげています。
UGCとして利用する写真は、お皿に盛りつけてあったりスプーンで食べようとしたりしている日常感のあるものが中心です。野菜の大きさや顧客の姿が映ることで、よりリアルな情報を伝え信頼を獲得しています。
Greenspoonは、ユーザーの食生活やアレルギー、苦手な食材などの情報を分析し、最適なスープやサラダを提供するサービスです。20~40代の働く女性がメインターゲットで、レンジで温めるだけで健康的な食事を準備できます。
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スポーツ用品:ミズノはツール導入でUGCを分析
大手スポーツ用品メーカーミズノは、総合ポータルサイトでUGCの投稿活用を目的として「visumo」というツールを導入して成果を上げました。
visumoとはブランディングや商品アピールを強化するために、ビジュアルデータを一元管理するビジュアルマーケティングプラットフォームです。2017年のサービス提供から、国内で400社を超える企業が利用しています。
visumo公式サイト:https://visumo.asia/
フリマ:メルカリはInstagramの運用でUGCの増加に成功
大手フリマサイトメルカリは、2019年2月からInstagramのアカウント運営を強化しました。2022年4月にはフォロワーが6万人を超え、メルカリに対するUGCも増加しています。
メルカリは、メルカリの悩み解消につながるハウツーの発信のほかに、「メルカリでこんな使い方をしている」というUGCをユーザーに発信してほしいと思い運用を始めました。コンテンツ検証やキャンペーンで運用を加速させ、UGCの増加に努めています。
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口コミレビューを運用するツールも登場
UGCを活用したい企業に向けて、新しいツールも開発されています。運用型UGCソリューション「Letro」は、UGC生成→掲載→効果測定→最適化というサイクルを一気通貫でできる国内唯一の運用型UGCツールです。
EC業界で新規参入企業の増加や広告単価の高騰などで多くのECサイトが苦戦している中、顧客体験向上の見直しが必要とされています。
そこでUGCを運用できるLetroを使うことで、記事LP上で顧客の購買力に影響を与えるUGCの生成や掲載がスムーズになります。前述したGREEN SPOONもこのツールを導入しており、EC運用において成果を上げています。
自社アプリ
北九州北部や山口でホームセンターを展開しているグッデイは「創業祭2022」において、植物コミュニティアプリ「GreenSnap」を運営するGreenSnap株式会社と共同で店頭販促施策を行いました。その結果、対象商品の売り上げ前年比が126%アップと大きな成果を上げました。
UGCを活用するために行った施策は、ユーザー投稿画像のサイネージ投稿・店頭QRコードによるアプリ誘導・キャンペーンの実施・Instagramでのライブ発信などです。
まずGreenSnapユーザーの投稿画像(UGC)を活用した動画を、グッデイ全店舗の売り場サイネージに表示。来店者が購入した植物をその後どうしているかイメージしてもらうことで、購入につなげました。
また店頭に、Green Snapアプリに誘導するQRコードを設置。育て方を詳しく紹介することで、購入後の具体的なイメージを配信しました。
UGC増加に効果的なキャンペーンも実施しています。ユーザー参加型キャンペーンとして、「多肉植物の寄せ植えフォトコンテスト」を実施。投稿者同士のコミュニケーションという体験も生まれ、リピーター増加を狙っています。
Instagramでは、園芸専門スタッフとGreen Snapオフィシャルアンバサダーがグッデイの魅力を発信するインスタライブを実施しました。店頭の商品を紹介したり新鮮な植物の入荷スケジュールを配信したりして、店舗の楽しみ方を伝えることで来店を促しています。
TikTok
資生堂の日焼け止めANESSA(アネッサ)は、2021年夏に実施した「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」がユーザーに注目され、同年の上半期TikTokで最も投稿されたハッシュタグとなりました。
ANESSAのブランドエフェクトを利用して投稿するこのフォトチャレンジは、投稿動画数が7,600回以上、再生回数は約2億5,200万回です。結果として、ANESSAは2021年上半期でもっとも高い数値を出しました。
メイン商材は“自分の肌をトーンアップできる”というもので、TikTokで疑似体験できる点がターゲットに受けたのでしょう。たくさんのユーザーが楽しんで参加したことで、多くのUGC生成に成功しています。
TikTokといえば、2021年にトラフィック量が多いドメインランキングで1位を記録しています。消費者の情報消費がテキストや画像から動画に替わったことで、動画コンテンツをメインとするTikTokが人気になったのでしょう。
In 2021, the Internet went for TikTok, space and beyond
https://blog.cloudflare.com/popular-domains-year-in-review-2021/
TikTokはYouTubeより投稿のハードルも低く、UGCマーケティングに注力する企業が押さえておきたいSNSです。
UGCで「映える」マーケティング
顧客が作り出してくれるUGCは、すでに多くの小売店ブランドも利用しています。Web広告の規制や運用コストが上がる中、商品の信頼性や安心感のあるUGCをマーケティングに活かさない手はありません。
「インスタ映え」という言葉が流行したように、Instagramがユーザー発信のコンテンツの質を変えました。消費者の撮影技術向上やデバイスの進化により、より他の消費者を引き付ける商品画像の投稿が増えています。
2015年あたりから一般化してきたUGCは、今や専用のツールが開発されるほどの注目ぶりです。ツールの活用でトラフィックが10%アップした事例もあり、今後も注力すべきマーケティングの1つでしょう。
ITやデバイスの進化は、マーケティングの手法にも影響を与えています。顧客が生み出すUGCを活用し、ぜひ顧客に喜ばれるビジネスを展開していきましょう。
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