「オムニチャネルカンファレンス2014」イベントレポート
当日は400人を超える参加者が集まり、オムニチャネルへの関心が高まってきていることを改めて実感しました。
そもそもオムニチャネルとは何か?オムニチャネルの実態はどうなっているのか?今後オムニチャネルはどうなっていくのか?
今回は「オムニチャネルカンファレンス2014」で語られた”小売の『今』と『未来』”についての最新動向をお届けします。当日ご来場できなかった皆様も、ぜひ一度ご覧ください。
「オムニチャネルカンファレンス2014」のレポートはこちらからもご覧いただけます。
基調講演:
「無印良品は仕組みが9割」
株式会社良品計画 代表取締役会長(兼)執行役員
松井忠三 氏
「オムニチャネルはいま一番旬なテーマなのでしょう」と語り始めた松井氏。
無印良品が1999年をピークに売上・利益が急激に下がった原因を『ブランドの弱体化が最大要因』と分析し、仕組み化、見える化、風土作りを中心に改革を進め、経営状態をV字回復させました。また、力を入れている人材教育では、アジアを中心に海外への実務体験派遣も行っており、「国によっても、お客様の嗜好はどんどん変わっていく。これにどう対応するのかが最大の課題。この仕組み化はそのなかの一例です。」と、小売界を生き抜くために必要なことを語りました。
導入事例公開セッション:
「クライアント事例から導き出すマトリックス×クライアントインタビュー」
株式会社エスキュービズム・テクノロジー 真田幹己
オムニチャネル化が進まない理由について、「組織と評価制度の改革に踏み出すことができないから」だと語る真田。自身の経験をもとに、丸善&ジュンク堂、ハードオフコーポレーションのインタビュー動画を交えながら解説しました。
オムニチャネルについて「年月とお金で解決できる問題ではない」とした上で、オムニチャネル化するためには全体に影響力がある人間のアテンド、組織と人事制度の改革、コンセプトを決める、それらを仕組みに落とし込むことが出来るかが重要だとまとめました。
丸善&ジュンク堂、ハードオフコーポレーションのインタビュー動画、および当日の資料はレポートページよりご覧いただけます。
特別講演:
「オムニチャネル最前線 ~ネットとリアル店舗融合の現状と今後の展開~」
ITアナリスト 松浦由美子 氏
オムニチャネル戦略は、「ネットだけでなく、リアル店舗をあわせ持つ強みを活かして、『おもてなし』を提供することが必要」とした上で、いつでも・どこでも・あなただけのサービスを提供して顧客満足度を最大化させることがオムニチャネル戦略だと語る松浦氏。企業目線での課題として、システム投資、組織体制の構造改革、店舗運用の強化、ECや物流の強化を挙げました。今後2020年までに、モバイル決済の進化などによるデータの多様化、機械学習による消費者に合わせたマーケティング手法の実施、各消費者にパーソナライズされた情報がリアルタイムに届けられる”究極のCRM”が実現すると予測しています。
パネルディスカッション:
「経営トップに聞く大規模のオムニチャネル事例!
大手チェーン店はなぜ全店舗に『Windows8タブレット』を採用したのか?」
「今回のタブレットPOSシステム導入で、コストが従来のPOSに比べて半分以下で導入でき、今後はオンラインビジネスとの連携に期待している。」と話すプラザクリエイトの大島氏。当初から『Windows8タブレット』にこだわっていた理由は、基幹系のシステムとの連携を考えた安定性とアプリの更新性が重要だと語る。また将来的に「商品が店舗にないチェーン店」が現れると予想し、既存の小売が衰退しないよう物流も含めた対策が必要だと話しました。
りらくの竹之内氏は当初タブレット導入には否定的でしたが、仕組みづくりを重視したうえで直感的に操作できるタブレットなら大丈夫だろうと導入を決めました。また、「オムニチャネルについて、今日知りました。」と正直に話したうえで、「同業でオムニチャネルに取り組む企業は少ないが、今後はオムニチャネルに取り組まないとダメなことなのではないかと思い始めた。」と話しました。
「タブレットは全ての利用用途に適しているとは限らない。しかし、業務効率を改善する、顧客接点の質を高くする、サイネージなどで情報発信してリアル店舗の魅力を高めるためにタブレットを活用するトレンドがある。」と話すのはマイクロソフトの榊原氏。
オムニチャネルは不可逆的なもので、いつの間にかオムニチャネルの時代が来ているといいます。時代の進化の早さにわくわくする一方、データの扱い方などが顧客が店舗・企業を選ぶ基準になるのではないかと予測しています。
クロージングセッション:
「~オムニチャネル時代の配送イノベーション~ 『スマート宅配BOX』」
株式会社エスキュービズム・テクノロジー 武下真典
「このままでは、本当の意味でのオムニチャネルは完成しないのでは?」というギモンを投げかけた武下。いつでもどこでも注文できる世の中になってきたが、いつでもどこでも商品を受け取る仕組みづくりはあまりされていないのが現状です。お客様に商品が届く部分”ラストワンマイル”での課題を解決するために、「スマート宅配BOX®」を開発しています。いままで宅配ボックスの設置が難しかった一軒家やマンション、オフィス、駅や空港などの公共施設など、荷物を受け取りたい場所に設置することも可能です。「スマート宅配BOX®」は、今年11月より実証実験を開始する予定しています。
”朝注文した商品が仕事帰りに受け取れる”そんな小売のミライを実現するために、企業や地域とのコラボレーションを呼びかけ、セッションを締めくくりました。
今回のカンファレンスの内容が、皆様の企業でのオムニチャネル戦略の手助けになれば幸いです。
この記事を書いた人
浜田 友世
エスキュービズムにて、デザイン・マーケティングを担当。自社製品プロモーションサイトやオウンドメディア、販促物などのディレクションやデザインを手がけています。