「小売店は商業的なニーズだけでなく人間的なニーズを満たすもの」を合言葉に始まった
NRF 2014 ~2014年全米小売業協会年始会合~
ニューヨーク発— 今年度の全米小売業協会年始会合の冒頭基調講演に登場したのはスマホやウェブサイトまたは最新技術などが写った写真ではなく、1万7千年前に描かれた壁画の写真でした。
「いま一度基本を思い返すために」と銘打たれた講演の中で、小売業デベロッパーCaruso Affiliated社の創始者でありCEOでもあるリック・カルーソ氏はこれまで小売業界が辿った進化の過程に加え「人間が本来持っている他人との交わりを求める心」に焦点を当て、この事に小売業者が立ち返る必要性においての説明に多くの時間を費やしました。
初めに同氏は次のように述べています。
「現在我々は大きな変化の真っ只中にいるため、ややもすると“インターネット対実店舗”に関する熱い議論の方ばかりに意識が集中してしまいがちです。」
「しかしそんな今こそ、これまでもこれからも常にお客様に対して一番大切にしていかなくてはならないこと、つまりいつまでも記憶に残るような特別で素晴らしい体験をしていただくということにフォーカスしなくてはいけないのです。」
cc licensed ( BY ) flickr photo shared by MIKI Yoshihito
(引用元:cc licensed ( BY ) flickr photo by MIKI Yoshihito: http://flickr.com/photos/mujitra/9725080026/)
さらにカルーソ氏は南フランスに位置するラスコー洞窟にある世界的にも有名な旧石器時代の壁画の写真をいくつか見せ、当時は生き残りをかけた生活という点に関しては比較的安泰であったため人々が焚き火の周りに集まって物語を語ったり、それを絵に描いて残したりしていたという状況がこれらの写真に象徴されているということを説明しました。
また同氏は「人間というものは他人と一緒にいたいという望みを内に秘めているのです」と言い、小売業が盛況することで人々の幸福感までも増徴させている場所の例としてパリのシャンゼリゼ通りやシカゴのミシガン通り、さらには千年の歴史を持つモロッコのマラケシュなどを挙げています。つまりこういった場所は「商業的なニーズだけでなく人間的なニーズを満たしている(同氏)」と言えるのです。
1950年の時点ではアメリカで一人暮らしをしている家庭の割合は10%未満でしたが、今日ではその数字は25%にまで上がっています。さらにアメリカ人のうち40%が孤独を感じていると報告しています。
これを受けてカルーソ氏は「我々の暮らしの中で、他人と交わりを持つということが急激に減少してきています。コンピュータを通しては他人とつながっているのは確かですが、感情の部分においてはそれほどでもありません。実は様々な面において同じティーンエイジャーでもラスコー洞窟で焚き火を囲んで座っていた彼らの方が、一心不乱にテキストメッセージをやり取りしている現代の子達よりも他者とのつながりを持っていると言えるのです。」と指摘しています。
カルーソ氏は美しいデザインが見事に体現された販売店の展開に強い情熱を注いでおり、実際に自身の経営するアメリカ国内での個人不動産事業では最大級であるCaruso Affiliated社の所持する建物にこの事実を見て取ることが出来ます。代表的なところではロサンゼルスにある屋外モール「The Grove」や、カリフォルニア・グレンデールの「The Americana At Brand」などが挙げられます。カルーソ氏によると、この2つのモールはどちらも世界のショッピングセンターにおいて売上高トップ15に入る規模だということです。
カルーソ氏自身は従来の屋内型ショッピングモールの将来に対しては決して楽観視しておらず、「とうの昔に賞味期限が切れた」このようなスタイルのモールは何かしらのアクションを起こさない限り、向こう15年以内に「完全に時代遅れ」となってしまうと警告します。また、さらに掘り下げる形で、アメリカ国内においては新しい屋内型ショッピングモールは2006年以降一つも建築されていないという点も指摘しています。
こういった状況を踏まえて彼が取り組んだのは、優れた建築スタイルや、噴水などを取り込んだ緑豊かな環境の整備、さらにカスタマーサービスにも力を注ぎ込むといったことでした。
「実際のところ、私が取り扱っているのは生活必需品なのです」とカルーソ氏は話し、さらに「うちで取り扱う商品は近隣のたくさんのお店でも売っているものなのです。ただ、今も昔も我々の会社では“買い物をしてもらうため”に店舗をデザインしたことはなく、お客様に“楽しんでもらう”ことを第一に考えてきました。ですから我々が手がけた店舗施設は人間の生まれ持った行動傾向に上手く合わせて設計されており、太古の昔から変わらない自然なカタチでの交わりをお客様には体験していただけるよう趣向を凝らしています。」と続けます。
また同氏自身は、天気のいい日にのんびりブラブラと買い物を楽しむことや、友人とコーヒーなどを飲みながらおしゃべりに興じるなどといったインターネットでは味わうことの出来ない実世界での出来事を重要視しているので、オンライン販売ビジネスとの競争には目もくれていない上、次のようにも述べています。
「世間一般的には、オンライン販売は商品をショールーム的なスタイルで消費者にアピールできるため大変有利だという見方が強くあります。確かに去年の今頃は、大手家電販売店Best BuyなどはAmazonを使って買い物をする消費者が実際に商品を手にとって見るための場所としてのみ利用しているようなものだという専門家の声もありましたが、今ではBest Buyの店舗自体があえてショールーム色を前面に押し出しながら、いわばショールーム見学に来ただけだったはずの消費者に最終的には買い物をさせるための様々な工夫が凝らされているのです。」
講演の最後にカルーソ氏はもう一度石器時代の壁画を引き合いに出すべく、自身の知り合いの行きつけのマッサージ師の例を挙げています。それによるとこのマッサージ師の診療所は普段は何の変哲もない小さな部屋なのですが、BGMと照明に工夫を凝らすことで一瞬にして身も心もリラックスできる特別な空間を作り出すことに成功しているというのです。大手コーヒーチェーンのスターバックスもこのような手法を店舗内で効果的に用いていますが、結局のところはどちらのケースも石器時代で言えば大きな焚き火をくべた後でそこに人々を招待して、みんなが快適に過ごす事ができるように努力しているということと一緒だと言えるのです。
さらに同氏は最後にこのように述べて、講演を締めくくっています。
cc licensed ( BY ) flickr photo shared by Dick Johnson
(引用元:cc licensed ( BY ) flickr photo by Dick Johnson: http://flickr.com/photos/31029865@N06/7900363444/)
「実店舗で事業をするということはホスピタリティー業に携わることにもなるのです。ですから自分なりの“焚き火”をくべて、お客様をそこへ招待するような感じでお店を作り上げていきましょう。ウェブサイト上ではこのようなことは出来ません。要するにテクノロジーにそぐわないから活用できないと決め付けるのではなく、そこにあるアドバンテージを見出してしっかりと自分のものにすることが大切になってくるのです。」
ニューヨーク発— 今年度の全米小売業協会年始会合の冒頭基調講演に登場したのはスマホやウェブサイトまたは最新技術などが写った写真ではなく、1万7千年前に描かれた壁画の写真でした。
「いま一度基本を思い返すために」と銘打たれた講演の中で、小売業デベロッパーCaruso Affiliated社の創始者でありCEOでもあるリック・カルーソ氏はこれまで小売業界が辿った進化の過程に加え「人間が本来持っている他人との交わりを求める心」に焦点を当て、この事に小売業者が立ち返る必要性においての説明に多くの時間を費やしました。
初めに同氏は次のように述べています。
「現在我々は大きな変化の真っ只中にいるため、ややもすると“インターネット対実店舗”に関する熱い議論の方ばかりに意識が集中してしまいがちです。」
「しかしそんな今こそ、これまでもこれからも常にお客様に対して一番大切にしていかなくてはならないこと、つまりいつまでも記憶に残るような特別で素晴らしい体験をしていただくということにフォーカスしなくてはいけないのです。」
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(引用元:cc licensed ( BY ) flickr photo by MIKI Yoshihito: http://flickr.com/photos/mujitra/9725080026/)
また同氏は「人間というものは他人と一緒にいたいという望みを内に秘めているのです」と言い、小売業が盛況することで人々の幸福感までも増徴させている場所の例としてパリのシャンゼリゼ通りやシカゴのミシガン通り、さらには千年の歴史を持つモロッコのマラケシュなどを挙げています。つまりこういった場所は「商業的なニーズだけでなく人間的なニーズを満たしている(同氏)」と言えるのです。
1950年の時点ではアメリカで一人暮らしをしている家庭の割合は10%未満でしたが、今日ではその数字は25%にまで上がっています。さらにアメリカ人のうち40%が孤独を感じていると報告しています。
これを受けてカルーソ氏は「我々の暮らしの中で、他人と交わりを持つということが急激に減少してきています。コンピュータを通しては他人とつながっているのは確かですが、感情の部分においてはそれほどでもありません。実は様々な面において同じティーンエイジャーでもラスコー洞窟で焚き火を囲んで座っていた彼らの方が、一心不乱にテキストメッセージをやり取りしている現代の子達よりも他者とのつながりを持っていると言えるのです。」と指摘しています。
カルーソ氏は美しいデザインが見事に体現された販売店の展開に強い情熱を注いでおり、実際に自身の経営するアメリカ国内での個人不動産事業では最大級であるCaruso Affiliated社の所持する建物にこの事実を見て取ることが出来ます。代表的なところではロサンゼルスにある屋外モール「The Grove」や、カリフォルニア・グレンデールの「The Americana At Brand」などが挙げられます。カルーソ氏によると、この2つのモールはどちらも世界のショッピングセンターにおいて売上高トップ15に入る規模だということです。
カルーソ氏自身は従来の屋内型ショッピングモールの将来に対しては決して楽観視しておらず、「とうの昔に賞味期限が切れた」このようなスタイルのモールは何かしらのアクションを起こさない限り、向こう15年以内に「完全に時代遅れ」となってしまうと警告します。また、さらに掘り下げる形で、アメリカ国内においては新しい屋内型ショッピングモールは2006年以降一つも建築されていないという点も指摘しています。
こういった状況を踏まえて彼が取り組んだのは、優れた建築スタイルや、噴水などを取り込んだ緑豊かな環境の整備、さらにカスタマーサービスにも力を注ぎ込むといったことでした。
「実際のところ、私が取り扱っているのは生活必需品なのです」とカルーソ氏は話し、さらに「うちで取り扱う商品は近隣のたくさんのお店でも売っているものなのです。ただ、今も昔も我々の会社では“買い物をしてもらうため”に店舗をデザインしたことはなく、お客様に“楽しんでもらう”ことを第一に考えてきました。ですから我々が手がけた店舗施設は人間の生まれ持った行動傾向に上手く合わせて設計されており、太古の昔から変わらない自然なカタチでの交わりをお客様には体験していただけるよう趣向を凝らしています。」と続けます。
また同氏自身は、天気のいい日にのんびりブラブラと買い物を楽しむことや、友人とコーヒーなどを飲みながらおしゃべりに興じるなどといったインターネットでは味わうことの出来ない実世界での出来事を重要視しているので、オンライン販売ビジネスとの競争には目もくれていない上、次のようにも述べています。
「世間一般的には、オンライン販売は商品をショールーム的なスタイルで消費者にアピールできるため大変有利だという見方が強くあります。確かに去年の今頃は、大手家電販売店Best BuyなどはAmazonを使って買い物をする消費者が実際に商品を手にとって見るための場所としてのみ利用しているようなものだという専門家の声もありましたが、今ではBest Buyの店舗自体があえてショールーム色を前面に押し出しながら、いわばショールーム見学に来ただけだったはずの消費者に最終的には買い物をさせるための様々な工夫が凝らされているのです。」
講演の最後にカルーソ氏はもう一度石器時代の壁画を引き合いに出すべく、自身の知り合いの行きつけのマッサージ師の例を挙げています。それによるとこのマッサージ師の診療所は普段は何の変哲もない小さな部屋なのですが、BGMと照明に工夫を凝らすことで一瞬にして身も心もリラックスできる特別な空間を作り出すことに成功しているというのです。大手コーヒーチェーンのスターバックスもこのような手法を店舗内で効果的に用いていますが、結局のところはどちらのケースも石器時代で言えば大きな焚き火をくべた後でそこに人々を招待して、みんなが快適に過ごす事ができるように努力しているということと一緒だと言えるのです。
さらに同氏は最後にこのように述べて、講演を締めくくっています。
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(引用元:cc licensed ( BY ) flickr photo by Dick Johnson: http://flickr.com/photos/31029865@N06/7900363444/)
この記事はNRF 2014 opener: Retail stores ‘meet a human need, not just a commercial one’をOrange Blogが日本向けに編集したものです。