新テクノロジー「EMVカード」の特長と重要性
ここ数カ月ほど前から、各銀行は従来の磁気カードからよりセキュリティの強いEMVカードへの移行を進めていますが、それに伴って小売業者側としてもカード読み取りの機器を新しいEMVテクロノジー対応版へアップデートさせる必要が出てきています。しかし、実際にはこのEMV(Europay/Mastercard/Visaの頭文字を取ったもの)カードへの移行準備を進めている企業は全体の20%程度に留まっているのが現状です。
この背景には、最新機器を搭載して対応したとしても、今のところカード詐欺の被害に遭った場合は従来のようにカード決済サービス提供会社が対処するのではなく、小売業者自らがその負担を負わなければいけないことになるという現実があります。
さて、EMVのテクノロジー自体は以前から世界中で普及しており、アメリカ国内での普及はむしろ遅い部類に入ります。導入効果に関して他国の例を見てみると過去4年間でカナダでは79%、そしてイギリスでは75%のカード詐欺被害の減少効果が報告されています。
アメリカ国内では過去にクレジットカード関連のデータ漏えいの事件が多く報告されており、特に2013年のTarget社による4000万人分にも上るクレジットカードデータの情報漏えい事件は、企業の重要個人データの取り扱い方に対して大きな疑問を投げかけました。同社は2015年8月になってようやくVisaカードとの間で670万ドル分を回収することに成功しましたが、マスターカードとの間ではいまでも調整が行われています。
こういった大失態を犯したTarget社ですが、その後はいち早くEMVテクノロジーを導入し、現在ではセキュリティ面において業界ナンバーワンの地位を築くまでになりました。具体的には同社の買い物用クレジット・デビットカードであるRedカードシステムのアップグレードに1000億ドルを投資してセキュリティ対策に万全を期したのです。
残念ながらアメリカ国内におけるEMVシステムへの移行は予想よりも進んでおらず、現時点での移行完了率は10%に留まっています。しかし10月の移行完了期限を過ぎるとペナルティーが処せられるため、今後駆け込みで対応化を進めるケースが多く出てくると予想されます。
ただ、ここで問題となってくるのは中小企業の多くが今回の移行への動きについてあまり情報を得られていないという事で、中には全く知らなかったという場合もあります。具体的には調査対象となった中小企業500社のうち、42%がEMVテクノロジー移行期限について知らなかったと答えています。また、移行するかどうか決めていない、もしくは移行しないと答えた企業でも、そのうちの86%は万が一カードの不正利用の被害に見舞われた際に法的・経済的な対応が困難であると答えています。
このように、移行の義務を知っていながらあえて実施を行わないとする企業が多く見られますが、その理由としては48%が「EMVテクロノジーに変えても効果は無いと思う」とし、36%は「システム移行を義務付けるというのは一方的でフェアではない」と答えています。
加えて、移行にかかる費用も多くの企業にとっては実施に二の足を踏む要因となっており、採用しているPOSシステムにもよりますが、場合によっては何万ドルにも上るケースも考えられます。こういった実態を受けて、モバイル決済サービスを提供するSquare社はチップカード・近距離無線支払いシステム両方を搭載したカードリーダー25万台を同社のクライエント各社に無料配布するなど工夫を凝らした対処を行っています。
現在、40%の消費者はTargetやHome Depotなどの個人情報漏えい事件を受けて「自分の個人情報が買い物時にしっかりと守られているのか不安だ」と答えています。従って、EMVテクノロジーへの移行は単に新しいスタンダードに追従するという事だけでなく、顧客管理という点においても必要不可欠なものとなってくるのです。特に中小企業にとって、すでに価格競争で後塵を拝すことの多い大企業にこの先も対抗していくにはEMVテクノロジーへの対応の可否はまさに死活問題と言えるでしょう。
年末年始の買い物シーズンを控え、EMVテクノロジーへの対応を実施するということは、自社が「消費者の声に耳を傾ける姿勢を持っている」という事を明確に示し、そのまま消費者の信頼を勝ち取る事にもつながるということを忘れずにいたいものです。
つまり、実店舗であってもオンラインショップであっても、チップ式カードへの移行は長い目で見ると大変重要な販売戦略の一つとして捉えられるべきなのです。
この背景には、最新機器を搭載して対応したとしても、今のところカード詐欺の被害に遭った場合は従来のようにカード決済サービス提供会社が対処するのではなく、小売業者自らがその負担を負わなければいけないことになるという現実があります。
クレジットカード詐欺の長い歴史
EMVに代表されるマイクロチップ式カードへの移行の動きの背景には、世界中で増加の一途をたどるカード詐欺の存在があります。特にアメリカ国内におけるカード詐欺犯罪率は極めて高く、昨年はアメリカ国内だけで世界中のクレジットカード詐欺被害額の半分に当たる86億ドルの損失を記録しています。同国内のクレジットカード使用頻度は世界全体の24%に過ぎませんから、このことからも被害額自体の大きさがうかがえます。ちなみに仮にEMVカードが全く普及しないと想定した場合、2015年の被害額は100億ドルにまで上ることが予想されています。さて、EMVのテクノロジー自体は以前から世界中で普及しており、アメリカ国内での普及はむしろ遅い部類に入ります。導入効果に関して他国の例を見てみると過去4年間でカナダでは79%、そしてイギリスでは75%のカード詐欺被害の減少効果が報告されています。
アメリカ国内では過去にクレジットカード関連のデータ漏えいの事件が多く報告されており、特に2013年のTarget社による4000万人分にも上るクレジットカードデータの情報漏えい事件は、企業の重要個人データの取り扱い方に対して大きな疑問を投げかけました。同社は2015年8月になってようやくVisaカードとの間で670万ドル分を回収することに成功しましたが、マスターカードとの間ではいまでも調整が行われています。
こういった大失態を犯したTarget社ですが、その後はいち早くEMVテクノロジーを導入し、現在ではセキュリティ面において業界ナンバーワンの地位を築くまでになりました。具体的には同社の買い物用クレジット・デビットカードであるRedカードシステムのアップグレードに1000億ドルを投資してセキュリティ対策に万全を期したのです。
企業のサイズに関わらず有効
ビジネス規模の大小に関わらず、POSシステムを導入している企業であればマイクロチップ対応機器の導入は必須となります。簡単に複製ができてしまう従来の磁気カードと異なり、チップ式カードは支払いプロセスの間リーダーに接触したままになるシステムを取るためですが、その場で情報がその都度暗号化されて送信されるため情報漏えいという面に関しては安全であるという訳です。残念ながらアメリカ国内におけるEMVシステムへの移行は予想よりも進んでおらず、現時点での移行完了率は10%に留まっています。しかし10月の移行完了期限を過ぎるとペナルティーが処せられるため、今後駆け込みで対応化を進めるケースが多く出てくると予想されます。
ただ、ここで問題となってくるのは中小企業の多くが今回の移行への動きについてあまり情報を得られていないという事で、中には全く知らなかったという場合もあります。具体的には調査対象となった中小企業500社のうち、42%がEMVテクノロジー移行期限について知らなかったと答えています。また、移行するかどうか決めていない、もしくは移行しないと答えた企業でも、そのうちの86%は万が一カードの不正利用の被害に見舞われた際に法的・経済的な対応が困難であると答えています。
このように、移行の義務を知っていながらあえて実施を行わないとする企業が多く見られますが、その理由としては48%が「EMVテクロノジーに変えても効果は無いと思う」とし、36%は「システム移行を義務付けるというのは一方的でフェアではない」と答えています。
加えて、移行にかかる費用も多くの企業にとっては実施に二の足を踏む要因となっており、採用しているPOSシステムにもよりますが、場合によっては何万ドルにも上るケースも考えられます。こういった実態を受けて、モバイル決済サービスを提供するSquare社はチップカード・近距離無線支払いシステム両方を搭載したカードリーダー25万台を同社のクライエント各社に無料配布するなど工夫を凝らした対処を行っています。
オムニチャネル販売の最重要課題「セキュリティ整備」
先ほど触れたように、確かにEMVテクノロジーへの対応には少なからずコストがかさんできますが、それでもカスタマーサービスの視点から考えると軽視することはできません。事実、近い将来チップ式カードは当たり前のように普及することになり、消費者としてもEMVシステムは自分のクレジットカードに「入っていて当然」の認識が一般的になることが予想されます。現在、40%の消費者はTargetやHome Depotなどの個人情報漏えい事件を受けて「自分の個人情報が買い物時にしっかりと守られているのか不安だ」と答えています。従って、EMVテクノロジーへの移行は単に新しいスタンダードに追従するという事だけでなく、顧客管理という点においても必要不可欠なものとなってくるのです。特に中小企業にとって、すでに価格競争で後塵を拝すことの多い大企業にこの先も対抗していくにはEMVテクノロジーへの対応の可否はまさに死活問題と言えるでしょう。
年末年始の買い物シーズンを控え、EMVテクノロジーへの対応を実施するということは、自社が「消費者の声に耳を傾ける姿勢を持っている」という事を明確に示し、そのまま消費者の信頼を勝ち取る事にもつながるということを忘れずにいたいものです。
つまり、実店舗であってもオンラインショップであっても、チップ式カードへの移行は長い目で見ると大変重要な販売戦略の一つとして捉えられるべきなのです。
この記事はEMV Payment Cards: What SMBs Need to Know About the New Technology and Liabilitiesを海外小売最前線が日本向けに編集したものです。