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マーケティング的観点から見るユーザーエクスペリエンスを分析する

ユーザーの購買決定には様々な理由が絡み合いますが、その理由の中でもユーザーエクスペリエンスは購買決定に大きな影響を与えます。
特に、似通った商品が市場に出回っているような昨今の状況では、「ユーザーエクスペリエンス」が購買決定の後押しになることは間違いありません。

【目次】

ユーザーエクスペリエンスとは

ユーザーエクスペリエンスは、製品、システム、サービスなどの利用を通じてユーザーが得る体験を言います。ただ、体験とは言うものの、体験前の状態もユーザーエクスペリエンスに含まれます。(後述)webサイトも実物商品もユーザーエクスペリエンスは商品を選ぶ時の決め手となりつつあります。

購買プロセスの変化

例えば、テレビを例にとってみましょう。昔、松下電器産業(現パナソニック)が日本でテレビを発売した時は、ユーザーの購買選択肢は松下電器産業のテレビ一択しかありませんでした。
その後シャープや三菱電機などの国産メーカーが松下電器産業に追随して、テレビを商品化するとユーザーは複数のメーカーのテレビから1つを選ぶようになりました。
さらに、ボーダレス化に伴い、海外からは安価なテレビもたくさん入るようになり、多様な画面サイズ、画質もフルHD(2K)、4K、8Kなどが登場しました。インターネットにつながるインタラクティブなテレビ、録画機能を持ったテレビなど、スペックや用途に応じた選び方ができるようになりました。

これだけ、多種多様なテレビが登場した現代では、ユーザーがどのように商品を選ぶかは様々な要因が絡んできます。価格の比較サイトや口コミを見ながら、できるだけ安価な商品の中から相応のスペックの商品を厳選したり、家電量販店で実物を見て確認したあとECサイトで購入したりといった具合に、オンラインとオフラインをまたいで購入をするユーザーが多くなってきています。

画一的な時代から多様性の時代に変化し、ユーザーは体験して購入するという購買プロセスを重要視するようになりました。そしてその体験はユーザーの購買決定に大きな影響を与えているのです。

価値あるユーザーエクスペリエンスは変化する

ユーザーが重視するユーザーエクスペリエンスはユーザー属性や時代によって異なります。
ユーザーによっては商品を利用した時の楽しさに価値を置くかもしれませんし、シンプルさに価値を置くかもしれません。美しさかもしれません。

例えばIT創成期の頃にWebサイトはたくさんの情報が掲載されていることが大事だったりしましたが、今はデザインの美しさやサイトの操作性(ボタンの位置やページ遷移など)などが重要になりつつあります。
また、昔はサイトの表示スピードがサイトの価値を上げる大事な要素でしたが、ネットワーク機器やネットワーク回線の進歩で自ずとスピーディーになったので、画面表示スピードの重要性は低下したように感じます。

ユーザーエクスペリエンスの時系列的分類

ユーザーエクスペリエンスは、2019年現在も明確な定義はありませんが、2010年にユーザーエクスペリエンスの専門家が集まり、ユーザーエクスペリエンスの核となる考え方を、ユーザエクスペリエンス白書として発表しました。

参考:http://www.allaboutux.org/uxwhitepaper(原文)
http://site.hcdvalue.org/docs(日本語訳)

その中で専門家は、「ユーザーエクスペリエンスが時間軸で大きく4種類に分かれる」と結論付けました。時系列に並べると、予期的、瞬間的、エピソード的、累積的の4つのユーザーエクスペリエンスです。

予期的ユーザーエクスペリエンス

体験前のユーザーエクスペリエンスです。他のユーザーエクスペリエンスはすべて体験後のエクスペリエンスですが、こちらは唯一、実体験前のユーザーエクスペリエンスです。
予期的ユーザーエクスペリエンスとは「ユーザーがその商品を知ったとき」の体験を指します。知った瞬間にユーザーは、その商品を頭の中でイメージし、「自分にとって必要な商品か、不要な商品か」を判断します。
必要だと感じたらその商品の情報を集めようとネット検索したり、友達に聞いたりするでしょう。体験前に商品を知って、想像する体験が予期的ユーザーエクスペリエンスです。

瞬間的ユーザーエクスペリエンス

瞬間的ユーザーエクスペリエンスとは、まさにその商品を使った瞬間です。商品の触り心地や使用感などまさにその商品を使っている時間です。
この瞬間的ユーザーエクスペリエンスがいわゆる、体験です。

エピソード的ユーザーエクスペリエンス

エピソード的ユーザーエクスペリエンスとは、利用した体験をエピソードとして家族や友人と語ったり、ブログやSNSなどに体験を書いたりするユーザーエクスペリエンスです。
感動した体験などは周りの人々に話したくなるし、逆に何も感じなかった体験は周りの人々に話すことがないように、感じ方次第でエピソード的ユーザーエクスペリエンスを体験するか否かは変わってきます。

累積的ユーザーエクスペリエンス

商品を購入して長期利用すると様々なエピソードが生まれたり、その商品を購入したことでライフスタイルが変化したりします。このように、長期的な体験を通じて体験するエクスペリエンスが累積的ユーザーエクスペリエンスです。長期で使わないと累積的ユーザーエクスペリエンスは生まれません。

ユーザーエクスペリエンス重視の戦略

では、このユーザーエクスペリエンスをマーケティング的に捉えてみます。
モノ消費からコト消費へ移りつつある現代では、人々の趣味嗜好は多岐に渡り、大ヒット商品が生まれにくくなってきています。そこで、一度体験して購入してもらう、つまりユーザーエクスペリエンス重視の戦略が効果を発揮するのです。

ユーザーエクスペリエンス重視の戦略を採る目的には、以下のようなものがあります。

  • 競合他社との差別化
  • ユーザー(消費者)の購買行動の変容
  • デジタルデバイスの多様化によるタッチポイントの増加

これまでは試供品の無料配布や割引体験といった施策を主に行ってきた企業ですが、デジタルテクノロジーの進化によって、ユーザーエクスペリエンスの提供内容も変化してきました。
ユーザーエクスペリエンスを重視する企業が行っている具体的な施策を紹介します。

バーチャル試乗体験

高価な商品である自動車はそう簡単に購入できるモノではありませんし、一度購入したら数年は買い替えることもありません。ですので、ユーザーは慎重に慎重を期して、自動車を選びたいところです。
これまでは、実際にショールームに足を運んでの試乗体験をして乗り心地を試していましたが、今後はVRでの試乗体験も盛んになるでしょう。
3Dデータを好みのエクステリアやインテリアにカスタマイズし、自宅で仮想体験をすることができます。また、A社の車とB社の車を比較する時にも、ショールームをはしごする時間や手間もかかりません。
ユーザーエクスペリエンスの仮想化として、バーチャルエクスペリエンスという言葉も生まれています。

ショールーミング店舗で試してECで買う

アパレルや家電、化粧品など、一度手に取ってみたい商品を取り扱うECサイトの最大の課題は「試着・試用できない」ことと言われます。
そこで、ショールーミング店舗を設置し、一度試着や試用し納得してからECサイトで購入するという購買ルートが増えています。

アプリを活用したGUの次世代型店舗「GU STYLE STUDIO原宿店」や、メガネを試着してAIが判定してくれる「JINS BRAIN Lab.」など、テクノロジーを活用したショールーミング店舗は、新しいユーザーエクスペリエンスを提供しています。

ARでブランド訴求

化粧品ブランドの「SK-II」はデザインや製品特色を津会えるため、ARを使ったブランド訴求を行いました。
スマホアプリを通じて様々なコンテンツを楽しむことで、ユーザーはブランドの世界観を体験し、さらにその体験はSNS等で共有・拡散が推奨されました。
体験を通じて新規ユーザーを取り込む戦略といえます。

ユーザーエクスペリエンスの難しさ

このように参入者が多い市場では、数ある商品の中に埋もれてしまわないように、まずは商品を使ってもらう、サービスやブランドを知ってもらうための戦略を取っています。一旦、使ってもらえば使い心地も分かり、親近感も沸いて購入してくれるだろうと思うかもしれません。
一度使ってもらいさえすればユーザーの商品購入率が大幅に上がっていた時代には、試供品を大量にばらまく、という施策がうまくいっていたこともあるでしょう。

しかし、ユーザーエクスペリエンス戦略を打ったとしても思ったほど効果が生まれない場合もあります。

ユーザーエクスペリエンスはターゲット選定が重要

ユーザーエクスペリエンスはユーザー属性によって大きく異なります。男性なのか、女性なのか、20歳なのか、60歳なのか、収入や住んでる地域、もっと言えば、同じ人でもその日の気分によって感じ方は異なります。
そのため、ユーザーが商品を体験できれば、「ユーザーエクスペリエンスはOK」と考えるのは早計です。

どのようなユーザー層が必要とする商品で、そのユーザーが体験すると喜ぶことは何か?を考えて施策を打つ必要があります。
ターゲットはある程度絞りつつも、なるべく多くのユーザーに商品を体験してもらい、購入につなげるのがユーザーエクスペリエンスの目的であることに変わりはありません。

商品によって重視すべきユーザーエクスペリエンスは異なる

冒頭に予期的、瞬間的、エピソード、累積的の4つのユーザーエクスペリエンスを紹介しましたが、この4つを意味的な観点から2つに大別すると予期的、瞬間的、エピソード的と累積的になります。

前半の予期的、瞬間的、エピソード的ユーザーエクスペリエンスは購入前だったり、購入した直後です。一方で累積的ユーザーエクスペリエンスユーザーエクスペリエンスは購入してしばらくその商品を使った後です。

つまり、とにかくまずはたくさんのユーザーに使ってもらいたい商品は、前半のユーザーエクスペリエンスの価値を感じられる施策を打つべきです。具体的には試乗や無料体験などです。そして、市場での認知度も増えて、リピーターが増えそうな頃からは、後半のユーザーエクスペリエンスに価値が感じられる施策を打つべきです。リピーター(お得意様)限定の案内や割引などです。

抽象的にユーザーエクスペリエンスを考える

予期的ユーザーエクスペリエンスがすべてのエクスペリエンスのきっかけで、エピソード的ユーザーエクスペリエンスが購入の決め手(瞬間的ユーザーエクスペリエンス=衝動買いの場合もあるが)となりますが、あまり細かく考えたくない場合は抽象的にユーザーエクスペリエンスの価値を考えてみても良いでしょう。

抽象的に考えると、ユーザーエクスペリエンスとは、「ユーザーがその商品のある幸せな未来が想像できる」ことです。
冒頭のテレビの話でイメージしてみましょう。自宅にテレビが必要になったとき、家電量販店にテレビを購入しに行きます。その時にたくさんあるテレビの中から1つを選択するわけです。そこでテレビを置く部屋が15帖の場合は、「家族みんなでワイワイとテレビが見れるな」とか、部屋が小さかったら、「コンパクトなテレビの方がスペースを取らなくていいな」など決め手はその商品で幸せな未来が描けるか、です。
ですので、メーカー側はその商品があれば未来が幸せになるユーザー層をターゲットにして、そのユーザーが快適に感じる体験を提供してあげるのが肝です。

最終的な購買決定はユーザー自身が行います。その特性を考えて、逆算的にユーザーエクスペリエンスを考えて、最適な体験が何かを考える必要があるでしょう。

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