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「個客」に切り込むOMOと価値提供するDXの真髄


DXコンサルタントの村上です。



これまでの購買とは、数多ある既存の商品やサービスの中から、コンシューマーがその時々のニーズにマッチした商品を選ぶ、というプロセスが必ず必要な行為でした。



しかし、これからの時代の購買はそうではなくなるかも知れません。



今まで当たり前すぎて誰もが意識することすらなかった「既存の商品を選ぶ」という行為が、根底から覆る可能性さえあるのです。



それは、リテールテクノロジーの急激な進化によって、これまで以上にコンシューマーを「個客」と捉えることが大きな意味を持ち始めていることを意味しています。






目次:





購買行動に正解はない



購買行動を「既存の商品の中から、その時点における自分のニーズにマッチした商品を選び取る行為」だと定義すると、ある意味、全ての人にとってそれは永遠に正解のないものであると捉えることができます。



単価の小さな商品であれば、「購買の決め手」はシチュエーションごとに全く変わってくるものです。価格を重視する場面もあれば、選択肢がない場合は価格を気にせずとにかくニーズを即満たしてくれることが決め手の場合もあります。通勤や通学の動線上にあるから、といった理由もあるでしょう。そこには、選択の対象となる商品が、必ずしも100%満足できるものではない、という暗黙の了解が前提として織り込まれているものです。



商品の価格が大きくなればなるほど、商品に対して100%の満足度を抱くことは難しくなり、自身の中でプライオリティの高い要件をいくつ満たせるか考慮しつつ、購買に至る閾値を設定する、という行為を意識的にせよ無意識的にせよ実行する必要があります。



「いやいや、自分は特定の商品を指名買いし続けている」という人でも、その人の全購買行動の中の比率で言えば、指名買いするのはせいぜい1〜2%といったところでしょう。







コンシューマーは常に「購買の意思決定に伴うストレス」に晒され続けている



人々は、衣食住、そして仕事に関わる全てにおいて、毎日膨大な意思決定のプロセスを経て生活しています。実は、これはかなりのストレスに毎日晒され続けている状態と言えます。かのスティーブ・ジョブズが、日常生活の意思決定ストレスを低減するために、いつも黒いタートルネックにデニムを着用していたという話は有名ですよね。



そのストレスは、購買においても例外なく人々に負担を与えます。



たとえば「食」に関して言えば、家族で外食する店を決めるとき、「何食べたい?」という問いかけに対して「なんでもいいよ」と答える、というのはよく見かける場面です。この時、「なんでもいいよ」と答えた方は、このストレスから逃れるために意思決定のプロセスを相手に丸投げしているのです。しかも、本当の意味で丸投げするのではなく、相手に「自分の嗜好性を考慮した上で、店を決定してほしい」という、かなりワガママな期待を込めて丸投げしていることがほとんどです。



たとえば「(●●が入っていない料理なら)なんでもいいよ」「(中華は昨日食べたからそれ以外なら)なんでもいいよ」「(雰囲気がいいオシャレなお店なら)なんでもいいよ」、といった具合です。



私の場合、もう少し自分の意思を強く表に出すので、妻から「何が食べたい?」と問われると必ず「ラーメン」と答えるのですが、必ず却下されます。自分の意思が通らないのもまた、大きなストレスとなります。そしてそれは、何が食べたいかを聞いた妻にとっても、納得のいく提案を受けられないというストレスに毎回晒されることを意味しています。



今、与えられているのは「既存商品を効率よく選ぶ方法」まで



このようなストレスを軽減してくれるものとして、食のカテゴリーではUberEatsや出前館といったサービスが存在します。



これらは、数多ある飲食店の商品群を一堂に集めて一覧性を持たせ、コンシューマーがそれらの中から、最もその時点のニーズを満たせる商品を効率よく選び取るサポートをしてくれることに加えて、食のニーズとして重要な即時配達を可能にしてくれるビジネスモデルです。



確かに、これらのサービスを利用することで「バラバラに存在している選択肢を自分で集める」というストレスからは解放されます。これだけでもかなり利便性が高まった感覚を得られ、心が軽くなる経験は皆さんにもあると思います。



しかし、最終的に購入するのは、やはり既存の商品であることに変わりはなく、冒頭で申し上げたように、それら既存商品で、その時の自分のニーズを100%満たせるケースは非常に稀であると言えるのではないでしょうか(結果的に満足度が高かった場合でも、細かい部分を挙げれば、「こうだったらもっとよかった」という部分は必ず出てくるはずです)。



コンシューマーのニーズを100%満たすための方法は、たった一つしかありません。それは、「商品そのもの」を個人の顧客に合わせてその都度ゼロから作る、ということです。







OMO時代にアップセル/クロスセルを生み出すのは「個客」に対応するサービス



「食」のカテゴリーで言えば、コンシューマーの嗜好や現在のコンディション、直近に食べたメニューなどを考慮してメニューを決定し、好きな時間に届けてくれる、そしてそのメニューが不思議なほど今の気分にピッタリで美味しい——そんな「個客」に対応した完全受注生産のサービスを、多くの人が使えるようにすることは不可能でしょうか?



いや、コンシューマーと常にオンラインで繋がり、様々なリテールテクノロジー(特にAI/IoT)が目覚ましい進化を遂げているOMOの時代、それは決して不可能ではない世界です。



そのようなサービスを実現するのにいったいいくら投資すればいいのか、という議論はここではひとまず置いておきますが、日常生活のあらゆる「場」がオンラインに繋がっている今、様々な顧客行動データを取得することは技術的には既に可能となっていますし、それらのデータを分析し、最適解を導き出すAIの精度も日進月歩です。



たとえば、これまでのECでの購買には必ず「検索」というコンシューマー側に課せられた工程が入っていましたが、いずれ精度の高いAIがそれすらも不要なものにしてくれるでしょう。



そのようなサービスは、おそらくサブスクリプションと相性がいいと思うのですが、「個客」に的確に対応することで満足度を高い状態で維持できれば、アップセル/クロスセルにも繋がり易いでしょう。例えば上で例に挙げた料理のサービスであれば、普段の食事だけでなく追加料金を支払って、誕生パーティのケータリングをお願いしたくなる、といった具合です。



時代は「商品のパーソナライゼーション」へ



そして、近未来の購買を表すキーワードのひとつが、「商品のパーソナライゼーション」でしょう。



アリババの創業者であるジャック・マーは、彼が提唱する「ニューリテール2.0」において、「これまでは1種類の商品を5分間で2000個作ることが大事だったが、これからは5分間で2000種類の商品を作ることが大事になってくる」という趣旨の発言をしています。



購買のプロセスをパーソナライズする技術や手法であれば、すでにOMOの実現を目指す様々な企業が挑戦していますが、コンシューマーが求める商品そのものを、注文を受けてからパーソナライズする(しかもどのようにパーソナライズするかのプロセスにコンシューマーが介入せずに)、というコンセプトはまだ実用化していません。



しかし、これは決して夢物語ではなく、確実に実現に向かっています。たとえば、3Dプリンタの進化は、様々な領域で商品のパーソナライゼーションを可能なものにしてくれると確信させてくれます。







3Dプリンターによる商品のパーソナライゼーション事例



薬剤のパーソナライズ



薬は、たとえ薬剤師が調剤し処方されるものであっても、そのベースとなる薬は量産されたものを使うしかありませんでした。本来であれば、体重だけでなく、患者それぞれの内臓機能や生活習慣を考慮し、それらを織り込んだ上で一人一人に最適な薬になるように微細な量を調整して製薬した方が効果が高いはず。そして、それを可能にしたのが、3Dプリンターなのです。



米国では、ノースカロライナ大学やウェイクフォレスト大学などが共同で薬剤のパーソナライズについて研究しており、実際の患者のデータに基づいて、同じ薬剤を細かく分量を調整しながら同時にプリントアウトすることに成功しています。



家のパーソナライズ



3Dプリンターがプリントできるものは、どんどん大型化しています。なんと、セメントを使った本物の「家」までプリントできるようになっているのをご存知でしたか?



2019年、サンフランシスコのデザイン会社Fuseprojectは、非営利団体のNew Storyや建設会社のICONと共に、ラテンアメリカのホームレス問題を解決するプロジェクトとして、3Dプリンターでプリントした家の提供を発表しています。



家一棟あたりの建築費用は約60万円ほど、建設にかかる時間はなんと、驚きの24時間だということです。



ここに挙げた事例は、まだ実証実験的な立ち位置のものですが、技術的な課題やコスト面の課題がクリアされれば、3Dプリンターを使ったtoC向けのサービスがどんどん実用化されていくことでしょう。



今ある資産と負債をいち早く整理し、未来へ一歩踏み出す準備を



3Dプリンター活用に限らず、このような商品のパーソナライゼーションは、衣食住のどの領域においても可能になってきていると考えておいた方がいいでしょう。つまり、あらゆるメーカーや小売業者にとって、ここで描いた未来像は、もはや他人事ではなくなりつつあるのです。



特に、最初から未来を見据えてテクノロジーに全力で投資しながら事業を立ち上げるスタートアップと比較すると、これまで続けてきたビジネスを時代の変化に合わせてフィットさせ続けなくてはならない企業にとって、それは簡単な道のりではないでしょう。



しかし、時代も、そしてコンシューマーたちも、企業ごとの事情を考慮することはありません。もはや「待った無し」という状態なのです。



リアル店舗、既存のサービス、それを支えているシステム、そして組織。未来を見据えた時に、何が自社の資産として活かせて、何が負債となり得るかをいち早く精査し、変化に向けて一歩を踏み出す準備をする必要があるでしょう。



OMOとDXの関係性



実際にそのようなサービスを提供することを考えた時に、最も重要な部分——どうやってコンシューマーの嗜好や現在のコンディションなどのデータを取得し、「個客」体験を設計するべきか、というテクニカルな側面には、DXの概念が必要になってきます。



「個客」体験はいわば企業の新しい価値創出であり、自社事業のビジネスモデル変革にもつながるからです。



デジタルトランスフォーメーション(DX)によってビジネスモデルを変革するためには、最適なデジタル活用の手段を用意し、パーソナライゼーションされた体験をオンラインでもオフラインでも提供していく必要があります。まさに、OMOの考え方をDXで実現することといえます。



ただし、「OMOをDXで実現する」ことは自社事業をビジネス設計から再構築しなくてはなりません。



自社事業にOMOの概念を導入するために、オムニチャネル/OMO領域のコンサルティング・SI・運用をメイン領域としたDX推進支援を行っているエスキュービズムに、ぜひご相談ください。


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この記事を書いた人

村上 永吉株式会社エスキュービズム DXコンサルティング部シニアコンサルタント
アミューズメント施設店舗責任者やエリアMGに6年従事した後、ORANGE POS販売拡大時期のエスキュービズムに入社。200社以上の店舗システム導入実績に由来する豊富な業務知識と理解に基づいたIT構想の実現提案を得意としている。趣味は麻雀。好きな役はドラが頭のメンタンピン一盃口三色で倍満。