アフター2020に日本企業が生き残るには?創造的破壊への備えと企業の将来価値を高めよ
2019年6月17日、アクセンチュア株式会社はアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京にて「デジタル時代に日本企業が勝ち残るための指針について」と題した記者発表会を行いました。
日本企業が今後生き残るために必要な課題認識と、改革を実行に移す際のポイントをお伝えします。
【目次】
「日本企業が行うべき改革」について提言をさせていただきます。
多くの日本企業が漠然と感じている、2020年以降への不安は、労働人口の減少、国内市場の成熟化による飽和など、様々な要因が元になっています。こうした中、デジタルやイノベーションで爆発的に業績を改善した、時価総額が上がったという企業はあまりありません。
2018年に発表した「ディスラプタビリティ・インデックス調査」では、63%の経営者の方が何らかの創造的破壊に直面しているという結果が出ています。44%の企業の方が創造的破壊の兆候を感じているとおっしゃっています。
時価総額ではグローバル企業の顔ぶれは10年の間にだいぶ変わりました。たとえば現在の1位はアップルで、10年前から7~8倍の向上があります。
ところが日本企業の顔ぶれはほとんど変わっていません。大企業が頑張っているという側面もありますが、時価総額の伸び率もグローバル企業に比べて鈍い傾向です。
日本の製造流通業は、従来の「企画、設計、生産、組み立て、アフターサービス」といった業務オペレーションの向上よりも、顧客接点に重きをおくという方に競争力の源泉が移っているように感じます。
産業構造の破壊もすすみ、これまでの「モノ売り」からサービス型にシフトするなど、企業側でもいろいろな取り組みをされていますが、劇的な変化はない状態です。
自動車、消費財、化学、産業機器といった製造業はディスラプションのステージは小売や金融などに比べるとまだまだ低く、創造的破壊は起こっていない業界です。
今までのようにゆっくりとイノベーションが起こるのではなく、突然新しいプラットフォーム、ビジネス、サービスの機会が開かれ、そして閉じるタイミングは思っているより早いでしょう。新しいプラットフォーム、新しいエコシステムの一員になるには、このオポチュニティが開いている間に、いかにそこに入っていくか。今後の企業の勝負だと思います。
創造的破壊が起こる前に先手を打つためには、CEO、社長の方がCMO、CTO、CIOといった方々といかにバランスをとってコアビジネスに対して投資をし、変革させ、新規事業をスケールさせるか、という仕組みを作らなくてはなりません。
しかも、一過性ではなく永続的にサイクルを回す必要がありますので、その構造を企業内に組み込むことが重要になってきます。
日本企業の経営者の方は、長らく「変化を生み出す」ということをおっしゃっていますが、なかなか変化が見られないという現状があります。
WISE PIVOTという概念は、同時に進めていくものなので、企業体力があるうちに行わないと、何度も試すチャンスもなくなってきます。
しかし、WISE PIVOTの成功を阻む5つの壁が存在し、創造的破壊が起こった時に壁を超えることができないと事業は失敗に終わってしまうでしょう。
不確実性の高い事象が起こった時に、スピーディな動きができず思考停止に陥ってしまったり、思い切って舵を切ったときに同じ方向を全員が向くことができなかったり、不足ケイパビリティを補足しても異物として排除、あるいは同化させてしまったりと、WISE PIVOTを成功させるには、こうした日本企業の体質から改善していく必要があります。
では、どういう形でここを抜け出せるのか。アクセンチュアではいくつかの指針を提言します。
意思決定の重さは、どんどん「スピーディーにみんなで決める」、未来志向型の戦略アプローチに変えていきます。検討・承認のフローを、討論&結論へ変えていくことで、スピード感が生まれます。さらに、決めたことはアジャイルで改善を加えていきます。
さらにより高次元なデータ蓄積とアナリティクスによって、不確実性や曖昧さを回避し、スピード感のある意思決定を継続していくことができるでしょう。
ここまでは、B群に分類されている企業が実践すれば、WISE PIVOTを成功させる確率が高まる指針ですが、日本企業の多くが分類されているC群となると、もういくつか別の指針を実行する必要があると考えます。
それは創業経営者獲得のM&A、競合・異業種プレイヤーも交えた組織作り、新たな意思決定システムの構築といった内容です。
欧米中のディスラプター企業、主に流通小売企業は実際のCVに加え、このFVが非常に高くなっています。
日本の代表的な企業の評価が、実際のCVよりもEVが低くなっているのは、将来に期待される価値がマイナスだからです。
P/L視点でCVを上げていっても、将来価値がマイナスでは全体の価値が低くなっているのです。
-日本でもIT企業などは実践されている例も思い当たりますが、WISE PIVOTの考え方は、海外企業では既に常識となっているのでしょうか。
田村氏「大手海外企業では定着していると思います。そうした企業が実践することによって、中小企業にも徐々に波及していっている状態です」
日本でも流通小売業やIT企業がオピニオンリーダーとなって、意識変革の波を起こせばWISE PIVOTを成功させる企業が増えてくるかもしれません。
日本企業が今後生き残るために必要な課題認識と、改革を実行に移す際のポイントをお伝えします。
【目次】
日本企業は競争環境の変化に気付き、創造的破壊を行うべき
まず、常務執行役員 製造・流通本部 統括本部長、原口貴彰氏が登壇し、「競争環境の変化」について解説しました。「日本企業が行うべき改革」について提言をさせていただきます。
多くの日本企業が漠然と感じている、2020年以降への不安は、労働人口の減少、国内市場の成熟化による飽和など、様々な要因が元になっています。こうした中、デジタルやイノベーションで爆発的に業績を改善した、時価総額が上がったという企業はあまりありません。
2018年に発表した「ディスラプタビリティ・インデックス調査」では、63%の経営者の方が何らかの創造的破壊に直面しているという結果が出ています。44%の企業の方が創造的破壊の兆候を感じているとおっしゃっています。
時価総額ではグローバル企業の顔ぶれは10年の間にだいぶ変わりました。たとえば現在の1位はアップルで、10年前から7~8倍の向上があります。
ところが日本企業の顔ぶれはほとんど変わっていません。大企業が頑張っているという側面もありますが、時価総額の伸び率もグローバル企業に比べて鈍い傾向です。
日本の製造流通業は、従来の「企画、設計、生産、組み立て、アフターサービス」といった業務オペレーションの向上よりも、顧客接点に重きをおくという方に競争力の源泉が移っているように感じます。
産業構造の破壊もすすみ、これまでの「モノ売り」からサービス型にシフトするなど、企業側でもいろいろな取り組みをされていますが、劇的な変化はない状態です。
自動車、消費財、化学、産業機器といった製造業はディスラプションのステージは小売や金融などに比べるとまだまだ低く、創造的破壊は起こっていない業界です。
「機会の扉」は突然開く
今後、創造的破壊が起こった場合、すぐに対応できるように先手を打っておくことが重要です。今までのようにゆっくりとイノベーションが起こるのではなく、突然新しいプラットフォーム、ビジネス、サービスの機会が開かれ、そして閉じるタイミングは思っているより早いでしょう。新しいプラットフォーム、新しいエコシステムの一員になるには、このオポチュニティが開いている間に、いかにそこに入っていくか。今後の企業の勝負だと思います。
企業が立ち向かうべきWISE PIVOT(賢明な事業転換)とは
「GLOW THE CORE(中核事業に向けた投資)」「TRANSFORM THE CORE(中核事業の変革)」「SCALE THE NEW(新規事業を改革)」の3つの要素を同時に進行させることで、WISE PIVOT(賢明な事業転換)を成功させることができると考えます。創造的破壊が起こる前に先手を打つためには、CEO、社長の方がCMO、CTO、CIOといった方々といかにバランスをとってコアビジネスに対して投資をし、変革させ、新規事業をスケールさせるか、という仕組みを作らなくてはなりません。
しかも、一過性ではなく永続的にサイクルを回す必要がありますので、その構造を企業内に組み込むことが重要になってきます。
日本企業が勝ち残るための指針
次に、製造・流通本部 デジタルイノベーショングループ統括マネジング・ディレクター、田村憲史郎氏が登壇。WISE PIVOTを成功させる鍵について解説しました。日本企業の経営者の方は、長らく「変化を生み出す」ということをおっしゃっていますが、なかなか変化が見られないという現状があります。
WISE PIVOTという概念は、同時に進めていくものなので、企業体力があるうちに行わないと、何度も試すチャンスもなくなってきます。
しかし、WISE PIVOTの成功を阻む5つの壁が存在し、創造的破壊が起こった時に壁を超えることができないと事業は失敗に終わってしまうでしょう。
- 不確実性のコントロール
- 経営スピードを加速させる
- 方向転換時に社員のベクトルを一致させる
- 不足しているケイパビリティ(組織的な能力)を満たす道筋の具体化
- 多様性のコントロール
日本企業の構造課題
P/L重視の経営目線の古さ、意思決定スピードの遅さ、外部活用をした時の異物排除傾向といったことが、日本企業の構造的な課題になっています。不確実性の高い事象が起こった時に、スピーディな動きができず思考停止に陥ってしまったり、思い切って舵を切ったときに同じ方向を全員が向くことができなかったり、不足ケイパビリティを補足しても異物として排除、あるいは同化させてしまったりと、WISE PIVOTを成功させるには、こうした日本企業の体質から改善していく必要があります。
危機感が薄い日本企業のCEO
危機感はあっても会社全体で変革を推進する能力の乏しい経営者はB群、組織としてWISE PIVOTを志向する経営者をA群とすると、日本企業の多くは危機感がなく、変革意志の薄いC群に分類されます。では、どういう形でここを抜け出せるのか。アクセンチュアではいくつかの指針を提言します。
壁を超えるための指針
まず、P/L視点をEV(Enterprise Value)視点に転換することです。EVは株式時価総額で判断します。意思決定の重さは、どんどん「スピーディーにみんなで決める」、未来志向型の戦略アプローチに変えていきます。検討・承認のフローを、討論&結論へ変えていくことで、スピード感が生まれます。さらに、決めたことはアジャイルで改善を加えていきます。
さらにより高次元なデータ蓄積とアナリティクスによって、不確実性や曖昧さを回避し、スピード感のある意思決定を継続していくことができるでしょう。
ここまでは、B群に分類されている企業が実践すれば、WISE PIVOTを成功させる確率が高まる指針ですが、日本企業の多くが分類されているC群となると、もういくつか別の指針を実行する必要があると考えます。
それは創業経営者獲得のM&A、競合・異業種プレイヤーも交えた組織作り、新たな意思決定システムの構築といった内容です。
日本企業の「将来価値」はマイナス
アップルやAmazonといったディスラプター企業と、日本企業の企業価値を比較した場合、明らかに違うのは「FV(Future Value)」です。EVからCV(Current Value)を差し引いた数値が将来に期待される価値になります。欧米中のディスラプター企業、主に流通小売企業は実際のCVに加え、このFVが非常に高くなっています。
日本の代表的な企業の評価が、実際のCVよりもEVが低くなっているのは、将来に期待される価値がマイナスだからです。
P/L視点でCVを上げていっても、将来価値がマイナスでは全体の価値が低くなっているのです。
「大手海外企業には既に定着している」WISE PIVOTの考え方
最後に、田村氏に質問をさせていただきました。-日本でもIT企業などは実践されている例も思い当たりますが、WISE PIVOTの考え方は、海外企業では既に常識となっているのでしょうか。
田村氏「大手海外企業では定着していると思います。そうした企業が実践することによって、中小企業にも徐々に波及していっている状態です」
日本でも流通小売業やIT企業がオピニオンリーダーとなって、意識変革の波を起こせばWISE PIVOTを成功させる企業が増えてくるかもしれません。