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デジタル時代の自社EC健康診断 〜消費者のストレスは“大病”に繋がるサイン〜


テクノロジーの進化と共に、ECの利便性は全世界的に底上げされています。しかし、その結果として、いち早く利便性の向上に投資をしてきた企業のサイトと、投資したくても何らかの事情でそれができなかった企業のサイトとの格差も広がりつつあります。



消費者が不便と感じるポイントは様々ですが、それらのストレスは少しずつ蓄積され、「そのECで買う決定的な理由」がない限り、あっさりと顧客を失うことに繋がりかねません。



あなたの企業のECサイトは、そんな「所見」を見逃していませんか?






目次:




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消費者のストレスになりやすいポイントを自社ECでチェック







以下で挙げた10項目は、ECサイトを利用する上で、特に消費者のストレスとなりやすいポイントです。デジタル時代のECとして、これら消費者のストレスを放置しておくことは、事業の存続を危機に陥らせるリスクとなる可能性すら秘めていると言えます。



それでは早速「自社ECの健康診断」を行なってみましょう。



配送が遅い、思い通りにならない



いつでもどこからでも買い物ができるECの、唯一の弱点が商品をその場で手にすることができないこと。そして、その弱点をカバーするために、Amazonなどの巨大ECプラットフォームでは決済終了後から宅配までの時間がどんどん短くなっています。



特に消費者のほとんどはAmazonでの買い物経験者(そのうち、さらに素早い配送サービスを受けられるプライム会員が約20%程度)であり、一度そのスピードを味わってしまうと、注文から受け取るまでの時間が長くなればなるほどストレスを感じるものです。



また、物流会社の努力により、商品の受取時間や場所を細かく指定できることがもはや当たり前になりつつあります。それらをチューニングできないとなると、取り扱う商品そのものに独自性がない限り、消費者がそのECサイトで買い物をする理由はかなり薄まると思った方がいいでしょう。



消費者にとって意味のないリターゲティング



これから迎えるアフターデジタルの時代、企業にとってますます重要になってくるのは様々な顧客行動データの取得と活用です。しかしながら、その活かし方を間違えると、それはそのまま消費者のストレスへと直結する諸刃の剣でもあります。



例えば、今でも横行している(そして嫌われている)のは、検索履歴などを根拠に行われるリターゲティング広告や商品レコメンドでしょう。もうすでに購入済みの商品やその関連商品を延々と目の前に突き出され続けることに辟易している消費者は多いのです。



また、GDPR(一般データ保護法)が2018年から施行されていることから見てもわかる通り、世界的に個人データの取り扱いにはデリケートになっており、現代の消費者は自身の個人データをなるべく自身でコントロールしたいと考えています。したがって、自分を苛立たせるようなデータの使い方をするようなECサイトに対してはいとも簡単に心象を悪くすることは想像に難くありません。



商品情報が不十分



D2CブランドがECを軸に台頭していることからもわかるように、現代の消費者は自分が購入する商品に対してストーリーを求める傾向にあります(消耗品などはその限りではありませんが)。その他にも、商品の使い方はもちろん、アパレルであれば着こなしの提案、カラーやサイズのバリエーションなど、動画、画像、テキスト、あらゆる手法を駆使して商品にまつわるコンテンツが用意されていることが必要です。



対象の商品を深く知るために他のサイトを見に行かななくてはならないとなると、その時点で、そのECサイトに顧客が戻ってくる可能性はかなり低くなっているでしょう。



検索機能が弱い







絶対にそんなことはあり得ないとわかっているのに、該当商品を探そうとして出てくる「検索結果 0件」に人々は心の底から失望します。サジェストワードが出ることもなく、何度もテキストを打ち替えて、一字一句合致したものしか表示されないようだと、かなりの販売機会を損失していると言わざるを得ないでしょう。



たとえ表記が揺れても、ズバリそのものの商品がなくても、AIが消費者の行動ログを解析し、近しい商品を表示することができるなど、検索エンジンの強化はECサイトの生命線とも言えます。



チャネルやデバイスごとに情報が分断されている



オムニチャネル化がもはや当たり前となりつつある今、会員情報やポイント情報などが店舗とECでバラバラに管理されていたり、複数のデバイスを利用している時にデバイスを横断してカートが連携されていないのは、消費者にとって致命的なストレスとなります。



また、在庫情報についてもECとリアル店舗で連携して一元管理され、スマートフォンから欲しい商品の在庫状況を確認できたり、取り置きできたりすることを多くの消費者が期待するようになっていると考えておいた方がよいでしょう。



サイトが遅い



配送だけでなく、ECサイトにはその反応速度にもスピードが求められます。消費者は信じられないぐらいせっかちで忙しいのです。サイトの表示速度が1秒遅くなるとコンバージョンレートが0.7%下がり、ページビューでも11%、顧客満足度は16%も低下すると言われています。



大量の負荷がかかっても表示速度を下げないよう、サーバやネットワークを強化することに投資することを惜しんではいけません。



カスタマーサポートが脆弱



カスタマーサポートは、ただのクレーム処理班や御用聞きではありません。なぜなら、その部門は文字通り直接顧客と対峙しながら日々顧客体験を生み出し、そこでの経験を毎日蓄積しているからです。



もちろん、問い合わせに対して十分な回答ができない、不測の事態に対して杓子定規な対応しかできない(返品・交換に応じないなど)、一つ一つの対応が悪ければ直接的に消費者のストレス(運が悪ければ憎悪)になりますし、カスタマーサポートが吸い上げた様々な声を集約し、商品やサービスにフィードバックできる体制を整えられていない場合、事業として成長する材料をみすみす無駄にしていることにもなり得ます。



オンラインセールスで急激な成長を遂げてきたアンカー・ジャパンのカスタマーサポート部門は年間25万件にも登る問い合わせを定量的・定性的に分析し、常に消費者やサービスにフィードバックするために、当該部門の発言権はセールスやマーケティングと同等であると言います。



チェックアウトまでのプロセスが多い



これはセキュリティとの兼ね合いにもなってきますが、消費者心理としては当然、商品をカートに入れてから購入完了までのプロセスは少なければ少ないほど嬉しいものです。Amazonプライム会員であれば、該当商品をサイトに表示してから最短2クリックで商品が手元に届きます(もちろん、住所や決済情報を事前登録する必要はありますが)。



これに慣れていると、もはや、たとえ最低限の情報であっても、フォームに入力することすら億劫になるのが消費者の本音です。



BOPISに対応していない



Buy Onlien Pick-up In Store(オンラインで購入し、店舗で受け取る)は、OMO時代の今や米国などではスタンダードとなった購買行動であり、店舗には専用のカウンターが設けられていたりするものです。



そして日本の小売業でも東急ハンズやヨドバシカメラなど同様のサービスが広がり始めており、それに乗じて消費者が新たにECサイトに対して期待する項目として浮上してきているのです。



BOPISも、ECサイト唯一の弱点である、商品を即入手できないという部分をカバーする施策の一つであり、それはある意味で、多くのリアル店舗を展開している小売業にとって、もはやECサイト単体で物事を考える時代は終わりつつあることを象徴している、とも言えるのではないでしょうか。







さいごに



消費者たちは様々なテクノロジーやそれに基づいたサービスを難なく使いこなします。そして企業側にどんな事情があろうとも、一度利便性を体感してしまった消費者は、非情にも全てのECサイトで同じものを求めるものです。



目先の事象に追われて、これら「所見」の対策を怠っていると、気づかないうちに手遅れになりかねないというあたりは、まさに人間の体と同じと言えます。



もちろん最も効果的な改善ポイントは企業ごとに異なりますし、時代の変化やテクノロジーの進化と共に消費者がストレスと感じるポイントも変化していきます。それらを敏感に察知し常に時代にフィットしたECを運営するためにも、定期的にチェック項目を見直し、「健康診断」を行っていくべきでしょう。





※本記事は、米国に基盤を置くEコマースに特化したメディアおよび研究機関である「Digital Commerce 360」のリサーチおよびレポート「The Shopper Speaks: The 2020 oppotunity」内における「Shoppers’ 2020 wish list(買い物客が2020年、ECに望むこと)」の上位項目に基づき編集部でアレンジし作成しています。