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食品ロス削減で社会貢献を。SDGsな「食」のこれから

今や、食品ロスの問題は、飲食業の問題だけではありません。食品ロスを減らすことは環境保全にもつながり、全世界的な動きとなっているSDGsにもつながります。

本記事では、多角的な視点で食品ロス削減の取り組みについて検討し、実際に行われている事例を紹介します。

また、業界別に取り組む姿勢や課題について紹介し、事業者がもつべきサスティナビリティのマインドについても掘り下げています。

数字で見る食品ロス削減の目標

農林水産省は食品ロス削減について、2030年度までにサプライチェーン全体で2000年度の半減という目標を掲げています。

また、再生利用等実施率目標については業界別に達成パーセンテージを示しています。

  • 食品製造業‥‥95%
  • 食品卸売業‥‥75%
  • 食品小売業‥‥60%
  • 外食産業‥‥‥50%

2030年までに半減という目標は、SDGsに挙げられた世界的な目標とも概ね一致しています。

世界的には、フードロス(food loss=フードサプライチェーンの中で起こる、供給者の決定や行動を原因とする食品の料や質の低下)と、フードウェイスト(food waste=消費者の決定や行動を原因とする食品の無駄)は別の課題であり、SDGsにおいても損失と廃棄は別々の要素として改善が叫ばれています。

しかし、国内ではフードロスとフードウェイスト(損失と廃棄)は包括的に取り組むべき「食品ロス」として扱われることが多く、本記事でもそのように取り上げています。

食品ロス削減への取り組み

食品ロスの定義は諸説ありますが、日本では一般的に「まだ食べられるのに、何らかの理由によって廃棄される食品」を意味します。

2018年の食品ロス量は600万トンで、前年よりも12万トン減りました。しかし、依然として食べられるにも関わらず廃棄される食品の量は多く、業界を超えて大きな課題となっていることは間違いありません。

食品ロス削減の取り組みは、企業イメージを高める効果も期待できます。というのも、消費者の環境保全やSDGsに対する意識は、近年急速に高まっているからです。

コロナ禍で、高齢者を含めた幅広い層にEC利用が広がったことはすでに周知の事実ですが、併せて「ものを大事にする」マインドも高まっています。

緊急事態宣言、ステイホーム推奨によってなるべく短時間で買い物をすませる人が増え、食べきれる分だけ、食べられる量だけを購入する消費者もまた増えてきました。

その過程で、なるべく食品ロスが出ないように気をつけている消費者も増加しています。レジ袋有料化をきっかけとして消費者の意識向上が進み、環境に配慮した取り組みを行っている企業に対する評価も高まっており、今後もこの傾向は続くと想定されます。ゆえに、企業はより一層の食品ロス削減について検討していくべきでしょう。

食品ロスを削減するためには、コールドチェーンつまり低温・冷蔵・冷凍などの一定温度を保つ流通のマネジメントと、賞味期限の管理といったサプライチェーン全体のシステム改革が必要なケースもあります。

また、今まで廃棄していたものを活用する、外注するなど、新商品、新サービスを利用することで達成されることもあります。

一例として現在実際に取り組まれているケースを見ていきましょう。

ミールキットや加工品で食品ロス削減-食品宅配サービス

野菜で廃棄されることが多いのは、根に近い部分や規格からはずれた不揃いな形のものです。食品宅配サービスでは、これらの素材を使ったミールキットや加工食品を販売することで食品ロスを削減する取り組みを行っています。

ふぞろいな野菜は、生産者の顔が見えるレシピアイデアを発行することで、消費者に「食」への興味を促し、親しみをもってもらう工夫もされています。

切迫品、在庫処分を引き取り販売-食品の在庫買取サービス

賞味期限の迫った食品や、リニューアル前の売れ残り商品などを買い取る法人向けの買取・販売代行サービスも登場しています。買い取った食品は、会員限定のクローズドなECサイトで販売される仕組みになっており、リニューアル前の一般公開できない商品や、限定販売期間の過ぎた食品も買い取ってもらうことができます。

売れ残りや廃棄品をブランド毀損なく、そして無駄なく売却するためには、こうしたBtoBのサービスも有効な手段です。

サプライチェーンで食品ロスに取り組む流れを構築-全国型スーパー

全国に何百店舗も展開するようなスーパーマーケットでは、サプライヤーを巻き込み、サプライチェーン全体で食品ロスを削減する取り組みを行うことが効果を発揮します。

農作物の育生環境、売り場まで運ばれてきた物流の経緯などをQRコードでアクセス可能な情報としてまとめるDX化したシステムは、消費者も食品ロス削減の取り組みをチェックできるという意味で、企業イメージの向上にも直結します。

賞味期限表示を変更-食品業

容器を改善する、製法を変更するといった取り組みで賞味期限自体を延長させることに成功した加工品もあります。

また、賞味期限を「年月日表示」ではなく「年月表示」にすることでより長期間の販売を可能にするといった取り組みも食品ロスを削減する手法といえます。

また、今まで常温で提供していた果物や野菜を、冷凍など長期保存ができるように加工して販売するのも、賞味期限を長くして期限切れの廃棄を減らす手法として有効です。

店頭で売り切るのが難しい食品をECで購入するサービス-外食産業

まだ美味しく食べられるけれど店頭で売り切ることが難しい、そんな食品をECで販売するフードシェアリングサービスも、作られた料理、加工食品を無駄なく流通させるために有効な食品ロス削減の取り組みです。

こうしたフードシェアリングの輪は、飲食店や企業とサイトユーザーだけでなく、自治体や他の分野の事業者とも連携することで、より効果が高められるケースもあります。

各業界が取り組む食品ロス問題

食品ロス削減は、飲食業や食品業だけに限定されている課題ではありません。消費者のエシカル消費傾向やサスティナビリティ意識の向上、これらはすべての事業者が注目すべき大きな動きといえます。これからの消費者に選ばれるブランドでい続けるためには、SDGsの目標に準拠した短期的取り組み、中長期的な取り組みを複合的に行っていく必要があります。

食品ロス削減やエシカル消費といった時代の流れを、企業の打ち出すシステムとして構築していくことで企業イメージの向上も期待できるでしょう。

旅気分で取り寄せ-生産者直販ECサイト

農畜産物、海産物を生産者が直売所のように販売するECサイトは、コロナ禍で旅行気分を味わえるという特別感もあり、人気を集めています。

生産者にとっては流通の過程での無駄や廃棄を防げるという利点があり、消費者にとっては生産者とコミュニケーションを取りながらスーパーには流通していない食品を購入できるという利点があります。

納品期限超過の商品を格安で-無人販売所

出荷されずに納品期限を迎えてしまった商品を専用に扱うサイトも、流通で生じる食品ロスを削減する取り組みです。

納品期限を過ぎたお菓子やコーヒーは割引価格で販売されており、利用者はサイト通じて購入、好きなタイミングで無人販売所から受け取れるシステムになっています。

賞味期限の近い商品を無料で試す-サンプリングサービス

新商品や新しい味を試せるサンプリングサービスにも、食品ロスを削減する取り組みが加わりつつあります。賞味期限が短い商品の提供を受け入れることで、本来廃棄されるはずの商品に新たな光を当てる取り組みで、消費者は送料のみでそれらの食品を手に入れることができます。

賞味期限が 迫るほど安くなる-割引率の管理システム

廃棄が少なくなるシステムを構築することで、効率よく食品を販売する手法もあります。

ECサイトに賞味期限が近づくほど割引率が上がるシステムを搭載することで、廃棄されそうな食品を売れやすい状態にする、この自動化により長期的に廃棄量を減らすことが期待されます。

繰り返し使える容器で流通量を予測

使い捨て容器を繰り返し使える容器に変更することでCO2を削減する取り組みは、食品ロスの削減だけでなく、SDGsの目標に掲げられたCO2を含む温室効果ガス排出削減にも関わるものです。

なお、繰り返し自社商品を購入する消費者の存在は、生産量や流通量の予測に役立ちます。

繰り返し使える容器はそのデザインや機能性でブランドイメージを再構築するにも役立つため、企業イメージの向上、サスティナビリティの意識喚起にも有効な手段となるでしょう。

流通業界のシェアリングエコノミー

緊急事態宣言下では、人々が商品を求めてスーパーに殺到し、「密」な状況が作られることもありました。これを解消しつつ、卸業者や青果店、精肉店などの物流をシェアすることに成功したのが、ドライブスルー方式の販売所です。

時短営業やクローズの影響で働けない飲食店の従業員が販売員として接客するなど、多方面の連携することでより一層サスティナブルな取り組みになります。

野菜のサブスクリプションでニーズを最適化

一定の料金で聴き放題、見放題のサブスクリプションサービスを、食品ロスの解決策として実施するのも良いアイデアです。

サブスクリプションは、定額制にすることで安定した収益を得ることが期待できるのが大きなメリットですが、消費期限のある食品の場合は顧客のニーズを掴みやすいというのも利点になります。

欲しいもの、買われやすい商品に品揃えを最適化することで、売れ残りや廃棄を減らすことが期待できます。

事業者はサスティナビリティの考え方を持つべき

2021年もっとも重要なのは、事業者自身がサスティナビリティの思考をもち施策を講じていくことです。

SDGsの削減目標数値を表面上で追いかけるだけでは、エシカル消費を意識し始めた消費者のマインドをつかむことはできないでしょう。スピード勝負のファスト消費を煽る商品、無駄が出ても特別な価値が提供できるなら良いのだという施策は、すでに過去のものになりつつあります。事業のあり方を抜本的に見直し、次世代にバトンを渡すための行動様式を身につけることこそが、企業として躍進するカギとなります。

現在のところ、食品ロスの課題について積極的に取り組まなくても罰則やペナルティはありません。しかし、時代の変化に合わせてそれらが導入される可能性もまったくゼロとは言い切れないでしょう。海外ではすでに、SDGsの目標にも含まれる二酸化炭素の排出量削減を目指すために増税されたり、制裁金制度が発表されたりといった動きが出ています。

SDGsが世界的な共通目標である以上、日本を拠点として活動する事業者であっても、ワールドスタンダードな視点で食品ロスの問題に取り組んでいく姿勢が求められます。

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