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ECにおける後払い決済の市場動向:業務効率化とトラブル対策まで


止まらない物価高の影響で、新NISAをはじめとした資産形成、すなわち「お金をどのように運用するか」は多くの人にとって身近なトピックになっています。



さらに、今後は運用と同じように「どのように支払うか」もますます大きな関心を集めるようになりそうです。この風潮にあって、商品が手元に届いてから料金を支払う後払い決済サービス(BNPL)は、新しい決済方法として浸透しつつあります。
特に、世界では4年間で利用額が10倍に伸長するなど、急速に普及しています。日本でもクレジットカードの併用という形で、徐々に利用者が増えてきました。



そこで今回は、決済方法の多様化に伴う変化と、後払い決済の特徴、トラブルを未然に防ぐスムーズなシステム整備のためのトピックについてまとめました。
なお、「後払い決済」は、広義ではクレジット払いを含むことがありますが、本記事はコンビニや郵便局などで後から支払う狭義における「後払い決済」について書いています。



後払い決済は今後も発展が見込まれる



そもそも後払いは新しい概念ではなく、江戸時代ではお盆と年末にまとめて代金を支払う「掛け売り」が一般的でした。
これは常連客など信頼関係が築けている間柄だからこそできる商売の方法ですが、現代では与信や信用スコアによって客観的に支払い能力を推定することができます。



「信頼」に相当する支払い能力を数値化すること、そしてフィンテックの進化により、後払いサービスは利便性を高めながらじわじわと普及していく可能性があります。



10年前はレアだった電子マネー決済。今は主流に



ある調査によると、2023年時点ではECで最もよく利用されている決済手段はクレジットカードでした。クレジットカード決済は全体の74.7%に相当し、次点の電子マネー決済の38.5%を大きく引き離しています。



しかし、その10年前(2013年)に遡ると、クレジットカード決済は全体の59.5%で、電子マネー決済はわずか4.1%でした。また、2013年は代引きが全体の40.9%でしたが、2023年には17.8%まで減少しています。



この数字を見ると、主流となる決済方法は時代のトレンドに合わせて大きく変わっていくことが分かります。



フィンテックの進化と「組込型金融」



10年ほどの間にスマホ送金などのフィンテック(金融サービスと情報技術を組み合わせた動き)が大きな進化を遂げたことを考えると、支払い能力の見極めはますます容易になり、それに伴って後払い決済も主流となっていくことが予想されます。



さらに、組込型金融(埋込型金融)という意味のエンベデッドファイナンスを活用すると、「今はお金がないけれど欲しい」という潜在顧客に、後払いのメリットを最大限活かしたアプローチができるようになります。エンベデッドファイナンスでは、EC事業者が金融仲介業者に登録するだけで、さまざまな金融サービスをシームレスに利用することができます。
例えば、自社ECに金融機能を組み込んだり、APIをアプリに埋め込んだりすることで、多様な決済を消費者に提供しやすくなります。



潜在顧客の顕在化や新規顧客開拓といったマーケティングにも、新たな風が吹くかもしれません。



決済方法の多様化と特徴



ECサイトでは、多様な決済手段に対応することで顧客に利便性を提供することができます。近年注目が集まっているのは「Buy Now, Pay Later(今買って、後で支払う)」の頭文字をとってBNPLと呼ばれている「後払いサービス」です。



この決済では、消費者は商品を購入した後に代金を払います。商品とともに請求書が届けられ、期限内にコンビニや郵便局、銀行で決済を行うのが一般的です。消費者は商品を受け取ってから料金を支払えるという安心感があり、手元にお金がなくても欲しい商品を欲しい時に購入できるというメリットがあります。



一方で、ECサイトの事業者にも、売上アップや新規顧客獲得のチャンスが生まれます。また、クレジットカード情報を入力することなく決済を完了させられるため、消費者と事業者双方に、カード情報の漏洩リスクを懸念する必要がないというメリットが生じます。



ECサイトが後払い決済を導入する際は、決済代行サービスと契約するか、請求管理システムを整備するかのいずれかの方法を選ぶ必要があります。



市場拡大が見込まれる後払い決済



後払いサービスの市場規模は拡大しつつあり、2028年度には約2兆8,000億円まで拡大するという予測もあります。



世界の市場規模はさらに急速に拡大しています。出典や調査によって若干幅があるものの、海外の市場規模は、2019年の約340億ドルから2023年の約3,000億ドル以上の規模と、4年間で約10倍にふくらんでいるというデータがあります。



もっともこれは、海外はリボ払いが主流であり、手数料のいらない後払いが代替手段として求められるという背景があるため、日本も同じような急拡大をするわけではないかもしれません。しかし、キャッシュレス決済が主流になりつつある現代では、「支払い方法」が大きく変わっていることは事実です。



後払いサービスは、当初クレジットカードを持っていない若者や主婦層を中心に利用されると考えられていました。最近ではクレジットカードを所持していても、ECでは後払い決済サービスを利用するという消費者も増えており、カードと併用する動きがみられます。



消費者がシーンに合わせて自分に合った支払い方法を選択するという動きは、すでに当たり前の購買行動になっているのではないでしょうか。



不正利用に対する不安も影響



クレジットカードの不正利用やカード情報の流出は、消費者がECサイトを利用する上で最も懸念することです。



CtoCのフリマアプリを悪用して総額1億円以上をだましとるクレジットカード不正利用事件の影響もあり、外部のサイトにクレジットカード情報を入力するのをためらう人は多くなっています。実際にある調査では、BNPLは10代〜60代まで幅広い世代で満遍なく利用されているという結果が出ています。



後払いは、急にお金が必要になったり、今は手元にお金がないけれど欲しいものがあったりする若者が使用するイメージがあるかもしれません。しかし、調査結果からはクレジットカード情報の入力をためらう人や、後払いに利便性を感じる人が後払い決済サービスを選択し、使用していることが分かります。



EC・店舗で「使える」決済サービスの増加



ECと店舗で利用できる決済サービスは、多様化しています。クレジットカード、電子マネー・ID決済、コンビニで支払い手続きを行うコンビニ決済、スマホのキャリア回線料金に請求されるキャリア決済、さらに銀行振込や代引き(代金引換)といった従来からある決済方法もまだ利用されています。



ECと店舗は多彩な決済方法に対応することで消費者の選択する余地を増やし、より高い利便性を提供することができます。



使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています




後払い決済のトラブルを防ぐには



後払い決済で確実に支払いをしてもらうためには、事前に起こりがちなトラブルを想定しておく必要があります。
「あるある」なトラブルへの対策を実施しておくことで、スムーズで確実な回収ができるようになります。



滞納や未回収



ECで購入した品物・サービスの料金滞納は、悪意のあるケースと、支払いを忘れているケースがあります。
いずれにせよ、代金回収に関わる確認と督促は企業にとって業務量を増やすことにつながるため、なるべくスムーズに回収したいところです。



一般的に、期日まで支払いがない場合はまずメールで購入者に連絡をとります。
メール送信のタイミングによっては購入者が入金を終えている可能性もあるため、末尾に「本メールがご入金と入れ違いになった場合はご容赦ください。」などの断りを入れておくとよいでしょう。



何度かメールや電話をしても入金が確認できない場合は、内容証明を送付します。
内容証明を使うことで「いつ、誰が、誰に、どのような内容で」手紙を送ったのかを公的に証明することができます。



内容証明を送っても代金の支払いがない場合は、簡易裁判所で「督促手続き」を、それでも支払いがない場合は少額訴訟に進みます。
なお、これらの手続きにかかる手数料は、原則として債務者(ここでは未払いの購入者)が負担することになります。



これら一連の手続きは煩雑かつ業務を圧迫します。
そのため、「決済代行サービス」や自社に合った請求管理システムを導入するのがおすすめです。請求書の発行、送付、消込と督促を自動で行う請求管理システムを運用すれば、上記の手続きはすべて自動で行うことができます。
また、会計システムや営業支援ツールとの連携によって、業務の効率化を大幅に進めたり、企業成長のための分析データを収集したりすることができます。



支払い能力の有無を把握



ここで取り上げる「支払い能力のない消費者」は、主に未成年のことです。
スマホ内のプリペイド式カードアプリに後払いチャージの機能があり、この機能を使って子どもが勝手に買い物をしてしまったという保護者の相談が話題になりました。



このアプリでは、保護者の同意を確認するチェック欄は設けられていますが、子どもが無断でチェックをしてしまうケースもあり、知らないうちに決済が実施されていたと驚く保護者が多いようです。
アプリに関してはその後、利用可能年齢を引き上げるなど、必要な対策が講じられました。
しかし、新しい決済サービスを導入するにあたり、未成年や支払い能力のない消費者が安易に利用できるようなシステムになっていないかを検討することは重要です。



後払い決済を導入する際は、リアルタイム与信機能を実装するなど支払い能力を見極める必要があります。
また、後払いは1回の利用金額が5万円程度を上限に設定されていることが一般的ですが、扱う商品によってはさらに少額にする、商品価格帯に合わせて高価格帯にするなど、適切な設定が必要です。



請求業務をシステム化すると、後払いは業務効率化につながる



後払いのデメリットには、滞納や未回収への対応、支払い能力の見極めなどがありますが、請求管理システムにこれらの対策をあらかじめ組み込むことでスムーズな会計処理が可能になります。



経済産業省と日本後払い決済サービス協会は、2022年、「加盟店審査に係る自主ルール」を施行していますが、サービスの普及や市場環境の変化に伴い、今後もガイドラインが見直される可能性があります。



時代に即した対策を講じ、クリーンなシステムを整備することで、トラブルを未然に防ぎ、利用者からの信頼向上にもつなげることができるでしょう。