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「オムニチャネルなんだよ、バカ!」~モバイル偏重マーケティングへの警鐘

「要は経済なんだよ、バカ!」というセリフは、1992年のアメリカ大統領選挙時に挑戦者のビル・クリントン陣営の選挙参謀であったジェームス・カービルが発案したスローガンとして知られています。

このスローガンには当時のブッシュ政権が陥った経済危機を厳しく指摘した上で、クリントン陣営内においてもこの経済の建て直しに焦点を置いた選挙戦を展開するための意思統一の徹底を行うという意図がありました。

これは当初は内々で使用するためだけのフレーズだったのですが、自然と世間に広まっていった結果、いつの間にか誰もが口にするほど良く知られるようになりました。

さて、このフレーズは今のモバイル時代にも当てはまるものであって、具体的には販売チャネルやマーケティング対象として「モバイル端末」のみに着目するのではなく、ここにきて多くの一般消費者ならびにビジネスクライエントが求めてきているオムニチャネルサービスの一部として捉えたうえで、広い視野でサービス形態そのものを考える必要があるのです。

消費者といえども結局は人間ですから、自分で発見やリサーチ、ディスカッションを通して商品を購入し、気に入った商品やサービスにはいつでもどこでもアクセスしたいものなのです。

確かにチャネルシステムを特定のエリアに絞って展開するということは、業務管理の面やコストパフォーマンスにおいては優れているかもしれませんが、長期的な視野で考えるとビジネス面ではあまり有効ではありません。

一方でオムニチャネル式サービスを上手に展開できる企業は、顧客確保や業績などの面において他社よりも大幅に優位に立つことが可能になってくるのです。


オムニチャネルの意味とその重要性

ウィキペディアによると、オムニチャネル(詳しくはオムニチャネル式小売販売)とは「複数のチャネルを通した小売販売の進化形であるが、特に全ての販売チャネルおいてよりスムースなカスタマーサービスの実現に重きを置くものである」と定義されています。

マーケット担当者がオムニチャネルという言葉を使う時には、基本的には実店舗・Eメール・ウェブサイト・Pinterest, Twitter, Facebook, InstagramやYouTubeといったソーシャルネットワーク、またスマホやタブレットといったような各種チャネルのことを指しており、場合によってはテレビ(特にアプリ「Shazam」のようにテレビとモバイル端末を関連付けて使用するツールを利用するケース)、QRコード付き屋外広告、さらにXboxのようなゲーム内での各種サービスも含まれることがあります。

実際に複数のチャネルに対応させたサービスを展開している企業は多いのですが、その中でチャネル同士を連携させた総合的なサービスを提供しているケースは稀です。

一部では複数チャネル全体においてソーシャルCRM(顧客管理マネジメント)を実施しているところがありますが、小売業者に対して消費者側は全てのチャネルを通して得られるデータを駆使したうえでより優れた商品情報やサービスの提供を求めていますから、このような形での顧客情報管理はこれからますます重要になっていくでしょう。

オムニチャネル化の重要性に関しては、世界的な大手会計事務所Deloitteが発表した統計によく表れており、「オムニチャネルを利用する買い物客は、店舗で直接、またはオンラインで買い物をする場合に比べて93%より多く消費し、「店舗で直接」のみのケースと比べるとその数字は208%にまで跳ね上がる」というはっきりとした傾向が示されています。


オムニチャネル化に必要な要素とは

オムニチャネル自体が急速に進化を遂げている最中ですので、どのような対応が一番優れているかということに関してはまだはっきりとした結論は出ていません。それでもオムニチャネル化を実施するに当たってどのような要素が必要不可欠であるかという点については、はっきりとした共通理解がなされている場合も多くあります。

ここで取り上げる例は必ずしも全ての必要要素を網羅してはいませんが、効果的なオムニチャネル式カスタマーサービスの実現の基盤となる大切なポイントであることに変わりはありません。

各デバイスに対応したシステム構成:ラップトップ、タブレット、携帯などの各デジタルデバイスに対応したデザイン・システム構成。
オンラインでのリアルなサービス:実店舗で買い物をしているかのようなリアルなサービスをデジタル・モバイル機器でも実現。 
ブランドイメージ戦略の徹底:一つの定型パターンで全てのチャネルを網羅しようとするのではなく、色使い、ロゴ、文体やビジュアルに統一性を持たせる。
カスタマーサービスの基本である使いやすいインターフェイス:3歳児やお年寄りでも簡単に使用できるほどシンプルで使いやすいユーザーインターフェイスの採用。
実用的な顧客情報管理:実店舗、デジタルソーシャルメディアなどを通して得られるデータは顧客情報として本当に実用的なものかどうかの確認。
消費者の行動傾向の把握:消費者が「商品発見」「商品知識取得」「比較」「購入」「使用」といったプロセスの中でどのような行動傾向を示すかの理解。 実際にはその傾向は多岐に渡るものであるが、おおよそ4-5種類に大別することが可能。

オムニチャネルサービスの成功例

オムニチャネルは現在のところ比較的新しいコンセプトですので成功例として挙げられるケースはまだ多くはありません。この状況が近いうちに改善されていくことは確実ですが、現在の段階ですでにオムニチャネルを利用した効果的なカスタマーサービスの実施に成功している企業の例を見て行きたいと思います。

この件に詳しい一部の私の知り合いに「オムニチャネル式サービスの実施に成功している企業」について質問したところ、スターバックス、REI、 Moosejaw、さらにCabelasといった名が挙げられました。基本的には私としてもこの意見に異論はありません。どの企業もオムニチャネルサービスの利点を完璧に活用しているとは言えないのは確かですが、少なくともここに名前の出た各企業は、携帯電話とタブレットといったモバイル関連のサービスの充実に力を入れているということがうかがえます。

また、これらの企業では通称「エンドレス・アイル」というサービス形態が充実しており、商品総数が少なくなりがちな小規模の店舗において店頭にはない商品(特定のサイズ・デザイン等)もその場で注文をして後日自宅に配送させるというサービスを実現しています。

また、これらの企業は顧客情報管理においても長けており、データを有効活用した上で消費者全体に適したサービスの提供を可能としています。つまり、有能なセールスマンが直感的に行うような「押し・引き」のタイミングをしっかりと理解できているのです。


果たして皆さんは「オムニチャネル式サービスを効果的に実施している企業」といって即座に思い当たるケースはあるでしょうか?

この記事はIt’s Omni-Channel, Stupid! Don’t Adopt Mobile-Focused Marketingを海外小売最前線が日本向けに編集したものです。