Eビジネスを推進するORANGEシリーズ

EC-ORANGE
お役立ち資料ダウンロード ニュースレター登録

オムニチャネルと物流の密接な関係~「オムニチャネル戦略」で知る日米最新事例~

2015年10月に発行された「オムニチャネル戦略」。発売時、ちょうどオムニ7がプレオープンしたこともあり、話題となった本です。
今回は「オムニチャネル戦略」で参考になった点や感じたことをまとめてみました。
Omni7で話題の新書「オムニチャネル戦略」を買ってみた

(引用元:日本経済新聞社
セブン&アイで本格稼働など注目を集めるオムニチャネル。Eコマースと実店舗の連携やアプリ活用、物流改革などビジネスモデルの根本的変化と、日米企業の最前線の具体例を、人気コンサルタントが紹介。
http://www.nikkeibook.com/book_detail/11343/

「オムニチャネル戦略」概要

著者は通販物流代行をメイン事業とするイー・ロジット社の代表取締役角井亮一氏。同社のチーフコンサルタントも兼ねる角井氏が、オムニチャネルについて多角的に解説しています。

本書の肝は以下のようになると思います。
  • オムニチャネル戦略は物流(ロジスティクス)戦略である
  • 徹底した顧客主義により、顧客の多様な要望に対応できるようにするのがオムニチャネル
  • 顧客接点を増やす施策である
  • 全社を巻き込むプロジェクトであり、組織作りや評価システムもオムニチャネル施策の一環となる

物流の品質は購買意欲に関わる

よく「ECで注文して実店舗で受け取る仕組み」だけを取り上げてオムニチャネルといわれがちですが、それはオムニチャネルの一部であり、包括する全社的、ひいては社会全体のインフラを整備することにつながるのだと、本書を読むことによって気づかされます。
「ネットで注文して、コンビニに届いたこの本は、ピッキング→包装→正確な配送情報の共有→配送という段階を経てきている」のです。当然ですが、物流にもコストがかかります。その部分をいかに無駄なく効率的に、そして「サービス」として提供できるかが重要であると書かれています。
物流の品質の良し悪しは他社との差別化になり、やがて顧客獲得へと繋がっていくのです。
たとえばオムニ7では無料で返品できるため、サイズ違いの服を家で試着することも可能。ECサイトでの購買では、実際に試せない、触れない不安が「カゴ落ち」を起こさせるのですが、返品しても無料なら、不安感のハードルは下がります。物流品質の高さがもたらす購買意欲の向上といえます。

日米の配送品質の違い

角井氏は、オムニチャネル先進国アメリカに何度も現地取材を行っています。アメリカは日本と違い国土が広く、スピードを重視すると物流コストが上がるため、配送スピードは通常料金なら一週間ほどみるのが普通。土日配送、時間指定配送はほとんどなく、在庫がないために買えないことも多いそうです。
それらは日本では「物流品質が低い」とみなされ、顧客離れにつながりかねません。
アメリカでは「そんなに急がなくてもいい」「在庫がないなら仕方ない」と許容されているようですので、これらは国民性の違いということでしょう。
しかし、Amazonは日本型の物流品質を世界に広めるための設備投資を続けていますし、高くても早く欲しい商品には送料をかけても届けてもらえるサービスもあります。
AmazonのPrimeNowや楽天の「楽びん!」がサービスインするなど、配送スピードはどんどん上がっている感覚があります。

アメリカの最新事例

物流品質をそれほど重視しないアメリカですが、配送サービスの最新事例は高齢化による需要の増加や人的資源の不足を補うアイデアが多いと感じました。注文した商品をドライブスルーで受け取れるウォルマート・ピックアップ・グロサリーやボタンを押すだけで注文が完了するアマゾン・ダッシュ・ボタンは、それぞれオムニチャネルを積極的に推進する二大小売企業が打ち出している施策です。配送を人間ではなくドローンが行うサービスも始まっています。
また、大企業だけでなく、革新的なアイデアで小売業に切り込む業者も進出しています。

Uber RUSH

タクシーの配車アプリとして有名になったUberが配送サービスを開始

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/101503391/
小売店やレストラン、eコマース事業者などの商品を、Uberと契約した一般人が自動車や自転車を使って配送する。

インスタカート

https://www.instacart.com/ スマホアプリから買い物を依頼すると、1時間以内に買い物代行人が品物を届けてくれるサービス


自宅の空き部屋を宿泊施設として提供するAirbnb、自宅駐車場を貸し駐車場にするakippaなどのシェアリングエコノミーが話題です。物流の新たな人的資源として、シェアリングエコノミーが活用されるようになるかもしれません。
加えて重要なのはスマホアプリで、決済までアプリ上で行える施策によって、買い物の効率は上がるでしょう。

日本のオムニチャネル事例

セブン&アイホールディングスやイオンリテールなど、大手小売業者が展開するオムニチャネル施策を紹介しています。
ヨドバシカメラでは「オムニチャネル」という考え方が広まる90年代から既に在庫の一元管理を始めていたというのは驚きです。顧客が買いやすいようにという考え方からスタートしているのが印象的でした。
どの企業でも目指すのは「顧客との接点を増やし、店のファンになってもらう」ことだと思います。単なる利便性の提供ではなく、生涯顧客になってもらうための「オムニ(様々な)チャネル(接点)」だからです。
しかし、日本ではオムニチャネルによって社会全体を動かすような施策はまだこれからといったところです。
アメリカでは高齢化による購買チャネルの変化が起こっていますが、日本ではさらに少子化が加わってきます。物流品質を上げつつ、人的資源に代わる物流施策が必要になってくるのかもしれません。

まとめ

本書は物流という切り口から、全社的な取り組みの重要性、それから高齢化による購買環境の変化など、これからのオムニチャネル施策を考える上で有効なアイデア、ヒントにあふれています。現地取材に基づく日米の豊富な事例を読むだけでも、かなり参考になるのではないでしょうか。