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P&Gの例に見る、変わりゆく製造メーカーと小売販売業者の位置関係~販売網見直しがもたらす変化とは~

オハイオ州デイトンにあるアメリカの大手日用品メーカーであるProcter & Gamble(P&G)社の配送センターは、

これまで地元住民に雇用機会を提供するという意味でも大きな役割を担ってきていますが、ここ最近の「販売網の在り方を見直す」という同社の動きを受けて、そのシステムが大きな変革期に差し掛かっている事は間違いありません。

同社の商品サプライ担当、ヤニス・スコファロス氏は、配送センターはこの先「大きな変化を遂げることで、画期的なスタイルでお客様に商品を提供する」ことになると述べ、これまでにない形で消費者や商品納入先の要望に対応することが可能になるとしています。

この表現は一見するとどうもはっきりせず曖昧なように思えますが、簡単に言えばP&Gは消費者により直接販売ができるようなシステムを導入するという事になります。近年は大手小売業者による「コストカットの象徴」として捉えられるような新しい配送センターの活用方法が一般化されていく中で、セールス向上をもくろむP&Gとしては配送センターが持つポテンシャルをフル活用することでオンライン専門業者に対抗していこうとしている訳です。

まずは以下の各項目をご覧ください。

1.ウォールストリート・ジャーナル誌によると、P&Gは2010年を境にEコマースの大手Amazonへ在庫を供給していますが、この事によってP&G製品をそれまで販売してきた小売業者との関係が微妙なものとなってしまいました。例えばアメリカの大手小売販売業者のTargetなどはP&G商品を店舗から一時的に撤収しつつ、P&Gのライバル社の商品を安い価格で販売できるように働きかけています。

2.ここにきてP&Gはアメリカ・カナダ、および西ヨーロッパにおいて「消費者中心」の販売網を再構築する動きをみせています。2013年9月には同社CEO 、A.G.ラフリーが「販売網をまっさらな視点で販売側から購入者側に至る隅々まで見直す」ことを発表しました。

3.そして今年に入り、P&Gは同日配達可能圏内にアメリカ国内消費者の80%が入るように配送センターを配置するという計画を明らかにしています。そのためにはライバルであるAmazonの管理倉庫も共同利用しながらネットワークを広げていく姿勢を見せています。また、現在はAmazonとパートナーシップを結びながらも、近いうちに独自のネットワークを構築して消費者と近い距離での販売を実現する方向でいます。

実はこのような動きは今に始まったことではなく、P&Gは過去にも直接消費者にはたらきかけるオンライン販売システムとしてThe Essentialsを2008年に、また次世代型DTC(顧客直結)オンライン販売システムとしてP&G eStoreといったプロジェクトを立ち上げています。しかし今回のような大規模プロジェクトの実施の根底には、消費者の購買傾向において過去に類をみないほどの大きな変化があるのです。

基本的に、消費者は時間の節約を第一とし、その為であれば追加料金を払う事も辞さないのです。Amazon Primeなどは良い例で、今年3月にPrime年会費が$79から$99に引き上げられてもその需要は衰えていません。そしてPrime会員の消費者側としてみれば、2日以内の配送が簡単に実現出来るようになった今では、以前は店舗で購入していた洗濯機用洗剤、オムツ、紙タオルなどの商品もオンラインで購入するようになってきているのです。

Amazonはすでに家庭用品を定期的に購入すると割引が得られるようにするなどして、消費者の購買パターンを変えようとする試みを実施しています。Targetでも「定期購入」プログラムにおいて同じような割引を適用させており、対象商品数も昨年のサービス開始時の150商品から現在はその10倍にまで拡大しています。Amazonでは77個入りの洗濯洗剤ポッド「Tide Pods」は一度限りの購入の際は$19.22ですが、定期購入者は$18.26で購入が可能です。Targetも定期購入者には同様の5%割引を提供しており、このような大手同士の割引合戦は消費者にとってはありがたい限りですがP&Gなどの販売メーカー側にとっては利益面で影響を受けることになるのです。

従って、P&Gとしてはこのような利益ロスを減らすために独自の割引システムをP&G eStoreに適用させる必要が出てくるのです。例えばP&G eStoreでは前出の77個入りTide Podsが$19.99で販売されており、これはAmazonの「非定期購入者」価格よりも77セントも高い設定です。しかし、メーカーであるP&G自ら定期購入者割引を適用してAmazonやTargetに対抗できるほどの価格を打ち出すことが出来れば、そのインパクトは計り知れないものがある事が想像できます。

オンラインでの日用品販売量は毎年20%ずつ上昇しており、来年には日用品販売全体の売り上げの5%を占めることになると予想されていることを考えても、この販売戦略の意義は明らかですが、P&G eStoreのもつ最大の特徴は価格や配送サービス云々ではなく、P&G製品を他社の店舗で販売する代わりに「自社ショップで」まとめて販売することができるという点にあるのです。

確かにP&Gの売上の大半は卸先の実店舗からのものですが、ここにきて消費者がオンラインでの商品購入に対して違和感を持たなくなってきており、また実店舗に足を運ぶことにわずらわしさすら感じていることが多くなっている現状を考えると、このようにウェブサイトを中心にブランド拡大戦略を実施していくというのはごく自然の流れだと言えるのです。

(引用元:World Wide Web / Bull3t

先ごろ1500人の買い物客を対象に実施されたリサーチでは、94%がこれまでにAmazonで買い物をしたことがあり、そのうち3分の2は毎月必ず1回はAmazonで買い物をしていると答えています。また、オンライン購入で店舗引き渡しという、現在はまだ一般化し始めたばかりの購入法も94%の回答者が「よく知っている」として、86%は利用した感想は10点満点中8点以上だと答えています。しかし、DTC販売を展開しようとする企業にとって最も注目すべき調査結果と言えば、買い物客が「ドライブスルー」と「店先引き渡し」に高い満足度を示しているという点で、この場合店舗内には全く足を踏み入れなくても済んでしまうという事になるのです。

このように、「流れが変わってきている」のは確かです。つまりかつては小売業者が販売環境全体をコントロールする力を持っていましたが、今ではその決定権が消費者側に移りつつある中、製造メーカーにもマーケットの主導権を握るチャンスが到来しているのです。

つまり商品は今や店の棚に陳列するだけではなくコンピュータのスクリーン上にも陳列する時代なのです。また買い物客側の求める購入スタイルも変化してきており、実店舗で買い物をする場合でも事前にオンラインで商品のレビューをチェックしてから、というケースは珍しくはありません。従って、毎日の生活に必要なオムツやシェービングフォームなどの生活用品を購入してもらおうとするならば、消費者が一番時間を費やしているオンライン上におけるマーケティングを行う事が必要であるのは言うまでもありません。

P&GのグローバルEビジネス担当責任者、アレックス・トソリーニ氏はeMarketerの取材の中で「我々は消費者の行動そのもの変えようとしているのではなく、消費者の行動傾向に合わせる形でブランド戦略を展開するように心掛けているのです」と語り、ここからも同社の「買い物客が集まるところに出て行って商品を売る」という根本的な姿勢が見て取れます。

P&Gのこのような動きが果たして成功するかどうか、各方面で注目が集まっています。現代の消費者は時間に追われる生活の中で、オンラインショッピングの利用頻度は高まる一方であり、Amazonもそれに合わせるように最近では無人配達機の導入などを実施しながらマーケットでの地位を確実なものとしています。しかし、ここにきてP&Gも販売網見直しを通してより消費者に「近い」位置で商品の販売を実現させようとしているのです。

消費者の求めるサービスを提供すべくテクノロジーを駆使した販売競争の行く末に要注目、といったところでしょうか。

この記事はDoes P&G Need Retailers Anymore?を海外小売最前線が日本向けに編集したものです。

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