EC3.0時代に備えて考えておきたいEコマースの将来について
小売業が店舗主体からEC主体へとシフトしていく時代の中で、新たに生まれつつあるのが「EC3.0」というキーワードです。
たとえ同じ単語であっても、時代の変化に応じて微妙にその言葉が指す意味や、それを取り巻く環境が変わっていくときに「2.0」や「3.0」と言ったナンバリングで意味を区別することがトレンドとなっています。
インターネットの登場によって、Eコマースにもある程度その時代に応じた意味の違いが現れるようになってきました。それだけECが私たちの生活に浸透し、そのあり方に多様性が生まれたとも捉えられますが、これから到来を迎えるというEC3.0とはどのような時代なのでしょうか。
今回はそんなEC3.0についての説明や、それ以前のECとの違い、そして日本のECは今どの段階に位置していて、3.0の時代に向けてどのような施策に取り組むべきなのかを考えていきたいと思います。
とはいえこれは必ずしも消費が落ち込んでいることや、人口が減少しているということに原因があるわけではありません。主な原因は、やはりインターネットを通じての消費がアメリカにおいて激増していることが大きな原因として挙げられます。
★「アメリカの小売業低迷の理由は本当にAmazonだけ? 相次ぐ米・小売業の大量閉店の原因とは」もぜひご覧ください。
そしてこのような動きはアメリカだけでなく、電子決済が進む中国でも進んでおり、流通環境が良好な日本においても遅かれ早かれそのような時代が到来すると予見されています。
それではこのようなEC3.0の時代が到来する以前、ECはどのようなツールとして用いられてきたのでしょうか。EC3.0の前段階として、EC1.0、そしてEC2.0という言葉を使って、改めて以前の環境を捉え直して整理する動きも見られます。
店頭在庫がなかった場合、公式のオンラインショップから購入し、自宅に配送してもらうための役割が大きかったのがこの時代の特徴です。
まだスマートフォンが普及していなかったり、インターネット環境が今ほど整備されていない頃は1.0に分類されると考えられ、個人のネット環境が充実してきた2010年代より2.0の時代へとシフトしていったと言えます。
またAmazonや楽天、ZOZOTOWNのように、大型のECサイトがポピュラーになることで、消費者にとってもオンラインショッピングが当たり前となっていきます。「店舗にないからオンラインで」ではなく、「オンラインで買えるならこっちで」という風に、店舗で購入するインセンティブが小さくなり始めるのもこの段階の特徴と言えるでしょう。
そしてBtoCだけでなく、フリマアプリに代表されるようなCtoCサービスの増加や、SNSの発達によるインフルエンサーマーケティングの影響力増大により、消費欲求の喚起から購入までがインターネットで完結する時代に突入していきます。ここにはすでに実店舗の立ち入る余地はなく、消費サイクルがネット上で完結しているのがこれまでの時代との大きな違いです。
EC3.0とはまさにそのような時代のことを指しており、店舗が消費に介在しない消費活動(Pre Store,プレストア)に移行したことで、これまでにない新しい施策が求められていると言えます。
検索エンジン最適化、いわゆるSEOですが、これは自社サイトで商品を購入してもらうためには不可欠とされています。現状ではオンラインショッピングにおいて実物を触ることはできず、PC画面やスマートフォンの画面から商品の良し悪しや、そのショップの信頼度を図らなければならないため、できる限り検索上位に現れるサイト、つまり注目度と信頼性の高いECサイトで購入したいと考えるのです。
店舗に沿った言い方をすれば、売りたい商品をお客さんの目に届きやすい場所においてもらうために工夫を凝らすのが、SEOというわけです。
どのような商品を販売するかにもよりますが、より多くの消費者の心をネット上のみで捉えるためには検索エンジンで上位に表示されるだけでなく、SNSなどで積極的に発信を行い、様々なチャンネルから自社ECサイトヘ辿り着けるよう手を打っておく必要があります。
これまでは若年層にのみ見られた消費サイクルとされてきましたが、最近では徐々に30代以降の消費者にもこの傾向が見られ、このサイクルが定着した層の年齢が高くなるにつれ、遅かれ早かれ日常的かつ全年齢に見られる消費動向となる可能性は高いと言えるでしょう。
そこでPaypalやAmazon Payなどの決済サービスを導入したり、会員登録制の撤廃を行うなどして、購入までのクリック数や入力回数をできる限り減らすこと、いわゆるフリクションレスな購入経路が今後必要になっていくとされています。
季節や新商品の到着に合わせた販売促進も大事ですが、今現在訪問しているユーザーはどのようなアイテムを欲しがっていて、いくらぐらいの商品をどれくらい欲しいのかなどを様々なデータベースから自動で読み取り、顧客に最適の商品をリコメンドする機能が求められています。
アパレルで言うと、「手のひらにスタイリストを」のキャッチコピーで有名な「Sensy」はその代表的な例と言えます。このアプリでは、人工知能を用いてユーザーの好みのコーディネートを自動で生成、ショップ情報とともに商品情報を提示してくれます。
何を買うべきかをあらかじめ提示してあげることで、考え込むことによって生じる「今度にしよう」という心理も生まれにくくなるので、すぐに導入しやすい施策と言えます。
今はまだ店舗での購入を好む人が増えていますが、ZOZOTOWNの浸透やAmazonの伸張を背景に、若年層を中心に消費の中心地が現実からオンラインへと移行しつつあります。
そしてその移行スピードは年々加速しており、これから5年~10年ほどの間で予想もしないほどECの立ち位置が変わっていたとしてもおかしくない時代であると言えるでしょう。
たとえ同じ単語であっても、時代の変化に応じて微妙にその言葉が指す意味や、それを取り巻く環境が変わっていくときに「2.0」や「3.0」と言ったナンバリングで意味を区別することがトレンドとなっています。
インターネットの登場によって、Eコマースにもある程度その時代に応じた意味の違いが現れるようになってきました。それだけECが私たちの生活に浸透し、そのあり方に多様性が生まれたとも捉えられますが、これから到来を迎えるというEC3.0とはどのような時代なのでしょうか。
今回はそんなEC3.0についての説明や、それ以前のECとの違い、そして日本のECは今どの段階に位置していて、3.0の時代に向けてどのような施策に取り組むべきなのかを考えていきたいと思います。
EC3.0時代とは?
EC3.0の時代とは、オンラインショップが消費者にとっての買い物の場所の一つであるだけでなく、あらゆる買い物行動のプラットフォームとして機能する時代のことを指しているとされています。消費行動に店舗が介在しない時代
EC化の波が著しいアメリカでは、小売業界において実店舗の閉鎖が相次いでいます。2018年には推定で3800店舗もの店舗がアメリカ国内において閉鎖され、ショッピングモールのような商業施設からも相次いだ撤退、そして閉鎖の動きが加速しつつあるということです。参考:https://www.businessinsider.jp/post-1440Kマートやメイシーズといった、実店舗を中心として売り上げを重ねてきたモールや百貨店はいずれも縮小傾向にあり、最終的には消えてしまうとされているのが現状です。
とはいえこれは必ずしも消費が落ち込んでいることや、人口が減少しているということに原因があるわけではありません。主な原因は、やはりインターネットを通じての消費がアメリカにおいて激増していることが大きな原因として挙げられます。
★「アメリカの小売業低迷の理由は本当にAmazonだけ? 相次ぐ米・小売業の大量閉店の原因とは」もぜひご覧ください。
EC3.0はライフスタイルの変化がもたらした
そして単に商品をオンライン上に並べるEC化だけでなく、ネットショッピングでの購買を促進するための施策も欧米では拡充が進んでいます。店舗での購入ではなく、ネットで購入することのインセンティブを大きくし、消費者にECでの消費を生活習慣として定着させることで、実店舗での購入がライフスタイルからはじき出されつつあるのがこの時代の特徴と言えるでしょう。そしてこのような動きはアメリカだけでなく、電子決済が進む中国でも進んでおり、流通環境が良好な日本においても遅かれ早かれそのような時代が到来すると予見されています。
それではこのようなEC3.0の時代が到来する以前、ECはどのようなツールとして用いられてきたのでしょうか。EC3.0の前段階として、EC1.0、そしてEC2.0という言葉を使って、改めて以前の環境を捉え直して整理する動きも見られます。
EC1.0の時代を振り返る
EC1.0の時代は、いわゆる買い物ツールの一種としてオンラインショッピングを利用していた時代です。売り上げの中心は実店舗
オンラインショッピングがまだそこまで普及していなかった頃、消費者の購買におけるライフスタイルの中でも「インターネットでものを買う」ことは少し珍しかったものです。商品はお店で買うものであり、店舗を持たないオンラインショップは信頼性に欠けるとされていたのもこの時代に当てはまるでしょう。店頭在庫がなかった場合、公式のオンラインショップから購入し、自宅に配送してもらうための役割が大きかったのがこの時代の特徴です。
まだスマートフォンが普及していなかったり、インターネット環境が今ほど整備されていない頃は1.0に分類されると考えられ、個人のネット環境が充実してきた2010年代より2.0の時代へとシフトしていったと言えます。
EC2.0の時代に進歩
EC2.0の時代は1.0から少し進歩し、Eコマースが店舗と同様の地位を持つようになる段階です。スマートフォンが一人一台持たれるようになり、同時に高速インターネット回線も安価に楽しめるようになったことで、画像や動画メディアの閲覧、そしてサイト訪問が容易になりました。ECの利用が身近なものに
そのためECにおいても充実した情報を消費者は受け取ることができるようになり、実店舗と同等、あるいはそれ以上の商品知識をインターネット上で得ることが可能になったことで、ネットでの買い物のハードルがこの頃から大きく下がっていくようになります。またAmazonや楽天、ZOZOTOWNのように、大型のECサイトがポピュラーになることで、消費者にとってもオンラインショッピングが当たり前となっていきます。「店舗にないからオンラインで」ではなく、「オンラインで買えるならこっちで」という風に、店舗で購入するインセンティブが小さくなり始めるのもこの段階の特徴と言えるでしょう。
そしてBtoCだけでなく、フリマアプリに代表されるようなCtoCサービスの増加や、SNSの発達によるインフルエンサーマーケティングの影響力増大により、消費欲求の喚起から購入までがインターネットで完結する時代に突入していきます。ここにはすでに実店舗の立ち入る余地はなく、消費サイクルがネット上で完結しているのがこれまでの時代との大きな違いです。
EC3.0とはまさにそのような時代のことを指しており、店舗が消費に介在しない消費活動(Pre Store,プレストア)に移行したことで、これまでにない新しい施策が求められていると言えます。
EC3.0時代の消費者動向
ECが店頭に赴くのと変わらない時代となったEC3.0の段階において、まず意識しなければならないのはオンラインショップそのものが店頭の商品棚のような役割を果たしているという点です。EC3.0時代における検索流入の価値とSEO
一般に私たちが何かの商品における消費者となるためのプロセスとして、その商品の認知・理解、検討を通じ、そして実際に購入するというものが一般的です。インターネットでこの流れを全て完結させるEC3.0の時代においては、まず商品の認知度を向上させるために検索流入の施策を講じるのが一般的です。検索エンジン最適化、いわゆるSEOですが、これは自社サイトで商品を購入してもらうためには不可欠とされています。現状ではオンラインショッピングにおいて実物を触ることはできず、PC画面やスマートフォンの画面から商品の良し悪しや、そのショップの信頼度を図らなければならないため、できる限り検索上位に現れるサイト、つまり注目度と信頼性の高いECサイトで購入したいと考えるのです。
店舗に沿った言い方をすれば、売りたい商品をお客さんの目に届きやすい場所においてもらうために工夫を凝らすのが、SEOというわけです。
目に触れやすい=ブランド
また、同じインターネット上であってもできる限り多くの場所で消費者にそのサイトのことを認知してもらい、身近な存在であると意識されることもECのブランディングにおいては重要です。どのような商品を販売するかにもよりますが、より多くの消費者の心をネット上のみで捉えるためには検索エンジンで上位に表示されるだけでなく、SNSなどで積極的に発信を行い、様々なチャンネルから自社ECサイトヘ辿り着けるよう手を打っておく必要があります。
SNSを利用したリアルタイムトレンドの訴求
SNSの利用が盛んな10~20代をターゲットとした商品を扱う場合、このような取り組みはさらに重要性を増します。最近の動向として、SNSであらゆる情報の検索が可能となったことで、リアルタイムのトレンド性が強い事柄に関しては検索エンジンではなくSNSを用いて調べ物をするというムーブメントも存在しています。検索エンジンも使い分ける
また、検索エンジン上は機械的なSEO対策が充実した記事ばかりが上位に上がり、本当に質の高い情報が手に入らなくなっているという話も少なくありません。消費者はこのようなトレンドに敏感で、検索エンジンとSNSをうまく使い分けて情報蒐集に当たっていることがほとんどなのです。新しい消費行動の流れ
アパレル関連ではInstagramの影響力は絶大で、Instagramで商品を認知し、公式アカウントなどから商品をそのまま購入。そして商品を着用した画像をインスタ上にあげ、飽きればメルカリで販売してしまうという、独特の消費サイクルを形成しつつあります。これまでは若年層にのみ見られた消費サイクルとされてきましたが、最近では徐々に30代以降の消費者にもこの傾向が見られ、このサイクルが定着した層の年齢が高くなるにつれ、遅かれ早かれ日常的かつ全年齢に見られる消費動向となる可能性は高いと言えるでしょう。
EC3.0において重要になる購買トリガー
オンラインでの買い物が普及したのは、つまるところ消費欲求が店舗と同様に刺激され、かつ購入までのストレスが少ないという点が大きいと言えます。EC3.0の時代においてはこれらをうまく内包した仕組みを整えているECサイトが成長していくと言われているのが現状です。ワンクリック購入などのシンプルな導線
オンラインショップの購買促進に大きく作用するのが購入までの導線という要素です。例えば商品の購入までの会員登録やメール確認、決済情報の入力をなんども行なっていてはストレスや不信感につながり、結局購入までつなげることができないということもあります。そこでPaypalやAmazon Payなどの決済サービスを導入したり、会員登録制の撤廃を行うなどして、購入までのクリック数や入力回数をできる限り減らすこと、いわゆるフリクションレスな購入経路が今後必要になっていくとされています。
パーソナライズされた情報の提供
EC3.0の時代に求められているのは、単に商品がサイトに陳列されているだけでなく、どの酥油品が訪問してくれたユーザーの一人一人に適しているかを説明できる機能です。季節や新商品の到着に合わせた販売促進も大事ですが、今現在訪問しているユーザーはどのようなアイテムを欲しがっていて、いくらぐらいの商品をどれくらい欲しいのかなどを様々なデータベースから自動で読み取り、顧客に最適の商品をリコメンドする機能が求められています。
アパレルで言うと、「手のひらにスタイリストを」のキャッチコピーで有名な「Sensy」はその代表的な例と言えます。このアプリでは、人工知能を用いてユーザーの好みのコーディネートを自動で生成、ショップ情報とともに商品情報を提示してくれます。
自由度をあえて制限
これもパーソナライズに近い販売方法かもしれませんが、ECという限られた空間であることを利用して、初めから商品点数を絞り、オススメのセットや松・竹・梅のように価格帯のみで商品を販売してしまう手段も有効とされています。何を買うべきかをあらかじめ提示してあげることで、考え込むことによって生じる「今度にしよう」という心理も生まれにくくなるので、すぐに導入しやすい施策と言えます。
シーズンイベントやキャンペーン
店舗ではよく行われているシーズンイベントですが、これもECにおいて有効とされています。特にSNSでの盛り上がりも最高潮に達するハロウインやクリスマスの時期、さらに中国の「独身の日」や米国発祥の「サイバーマンデー」などは、ECでの注文も増えやすいため、今後のリピーター獲得の大きなチャンスにもなるのです。日本はいつEC3.0に突入するのか?
比較的日本はEC化が遅れているとされている国ですが、そう遠くないうちに日本でも3.0の時代に突入することが予想されます。日本は先進国の中でも流通インフラが発達している国であるため、オンラインショッピングとの親和性はかなり高いためです。今はまだ店舗での購入を好む人が増えていますが、ZOZOTOWNの浸透やAmazonの伸張を背景に、若年層を中心に消費の中心地が現実からオンラインへと移行しつつあります。
そしてその移行スピードは年々加速しており、これから5年~10年ほどの間で予想もしないほどECの立ち位置が変わっていたとしてもおかしくない時代であると言えるでしょう。