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イオンが発表した「次世代ネットスーパー構想」とは?国内の現状と技術について

総合スーパーやスーパーマーケット事業で有名なイオン株式会社は、AIやロボティクスを駆使した「次世代ネットスーパー」を目指すと発表しました。そのために世界最大級のネットスーパーを運営するOcado(オカド)と独占パートナーシップ契約を結び、新会社も設立します。
イオンの目指す次世代スーパーやOcadoの概要、現在の国内ネットスーパー事情についてご紹介します。
目次:

イオンが「次世代ネットスーパー」を目指すとして海外企業と業務提携

AIやロボティクスで「次世代スーパー」を目指す

イオン株式会社は2019年12月、「次世代ネットスーパー」を目指すために「Ocado Group plc」の子会社「Ocado Solutions」と独占パートナーシップ契約を締結したことを発表しました。
業務提携を機に、イオンはAIやロボティクス機能の強化に注力します。さらに2020年3月までに新会社を設立して、ネットスーパー事業の徹底的な強化を図ることを宣言しました。
すでにネットスーパー事業に参入しているイオン。全国にネットスーパーを展開しており、商品は顧客の近隣にあるイオンから配送されます。商品のピックアップは売り場担当員が行っているため、現在はロボットではなく人が中心です。

イオンはこの“人手頼り”のネットスーパーの運営方法を見直し、ロボットやAIといった最先端の技術を導入することでさらにネットスーパーを躍進させようとしています。

イオンが考える「次世代ネットスーパー構想」とは

イオンが既存のネットスーパーを革新させ“次世代ネットスーパー”を目指す背景には、顧客の「いつでも、どこでも、何でも」というニーズがあります。

ECサイトをはじめ小売業が日々IT化を続け、今では多くの物が自宅に配送できるようになりました。

インターネットがあれば「家事や仕事で忙しく、店舗で買い物をする時間がない」「体調が悪く、必要な物が今すぐ欲しい」、そんな顧客のニーズにも柔軟に応えられます。だからこそ、ネットスーパーももっと柔軟に顧客のニーズに対応する必要があります。イオンはこの次世代ネットスーパー構想で、顧客がオンラインで快適に買い物できるネットスーパー環境の提供を目指します。

そこで必要になるのが、Ocadoの持つ世界最先端のネットスーパー技術なのです。すでに最新技術を持っているOcadoとパートナー契約することで体制を作り、イオンは2030年までに6,000億円の売り上げを目指します。
2019年11月時点で、イオンのネットスーパー事業の売上高は数百億円規模です。そのことを考えると、10年間で10倍以上市場を拡大させようというイオン大きな目標が感じられます。

イオンはこれからも国内外問わず最先端技術を取り入れ、世界水準の経営インフラを構築する意向を発表しました。

イオンが業務提携した「ocado(オカド)」は世界最大級のネットスーパー

イオンが独占パートナーシップを締結したocadoは、海外企業で日本では知名度はあまりありません。しかし英国ではネットスーパー事業で成功しており、世界的にも大規模な企業なのです。
Ocadoは2000年にイギリス発のオンライン型ネットスーパーとして誕生しました。オンライン特化型としては世界最大級で、2017年の売上は13億4,6000万ポンド、日本円にして1800億円を超えています。前年比率は12.4%と伸びており、2014年から毎年業績を上げています。

Ocadoの特徴は、店舗スペースがないことの強みを生かした圧倒的な商品数が挙げられます。グルテンフリーや完全菜食主義であるビーガン向け食品、高級ブランドの食品なども多く、その種類は49,000種類にも上ります。

そのため利用者層や高所得者も多く、そのほかは若年層やロンドン市内、近郊者といった都会に近い人が中心で、2017年は64万5,000人もの顧客が利用しました。

OcadoはOcado Smart Platform独自のネットスーパー運営ソリューションを開発しました。さらに、プラットフォームやマーケティングサポートといった人的支援を行うOcado Solutions(オカドソリューション)という事業も行っており、今回イオンが契約したのはこちらのソリューション事業となります。
参照:日本貿易振興機構(ジェトロ) 英国のネットスーパー市場に関する調査
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/af3d253a6ebee696/br_super.pdf

OcadoはAmazonと同じ中央集約型倉庫が特徴

イオンが顧客の最寄り店舗から配送されている仕組みに対して、Ocadoのネットスーパーは中央集約型倉庫から配送しています。前述のOcado Smart Platformはこの中央集約型倉庫で力を発揮しており、AIやロボティクスを備えた最新設備でピッキングは配送を行うのです。
中央集約型倉庫といえば、Amazonのフルフィルメントセンターを思い出す方もいるのではないでしょうか。Amazonの独自技術が詰め込まれたフルフィルメントセンターは国内にも10か所以上あり、Ocadoと同じくロボティクスなどで徹底的に効率化されています。

イオンもOcadoにならって中央集約型倉庫を建設する予定ですが、完成は2023年頃としています。現時点ではイオンとOcado両社の違いを活かし、補完しあいながら日本でのビジネスを展開していく予定です。

参照:msnニュース 英オカド「日本のネットスーパーの機は熟した」 イオン提携、CEOが確信する日本市場の可能性
https://www.msn.com/ja-jp/money/news/%E8%8B%B1%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%89%EF%BD%A2%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%A9%9F%E3%81%AF%E7%86%9F%E3%81%97%E3%81%9F%EF%BD%A3-%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E6%8F%90%E6%90%BA%EF%BD%A4ceo%E3%81%8C%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E3%81%99%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AE%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7/ar-BBXCaL0

オカドとAmazonフレッシュは競合関係にある

Ocadoは2017年からAmazon製のAIスピーカー注文にも対応していますが、実は競合関係にあります。

Amazonもネットスーパー「Amazonフレッシュ」を世界的に進出させており、すでにOcadoの本拠地イギリスでは長い間競い合いを見せています。

Amazonフレッシュは朝8時から深夜0時まで受け取り時間が指定でき、最短4時間で配送可能。すでにプライム会員なら追加料金なしで利用でき、2017年から日本でもサービス提供が始まっています。

すでに国内でも小売業で大成功しているAmazon。Ocado代表は「今後もAmazonフレッシュは伸びる」としながらも、「イギリスでの2018年の成長率はOcadoが上回っている。日本でのAmazonフレッシュの競合はイオンになる」と断言しています。

参照:東洋経済ONLINE 英オカド「日本のネットスーパーの機は熟した」
https://toyokeizai.net/articles/-/317306?page=3

日本は苦戦中?国内のネットスーパー事情

日本の食品通販市場

イオンやAmazonフレッシュを見ると明るいように感じるネットスーパー市場ですが、実は国内での状況は芳しくありません。

国内の食品通販市場規模は2018年度で3兆円を超えています。しかし“お取り寄せ”などの食品通販も含めた規模であり、そのうちネットスーパーが占める割合はわずか3.8%です。

1位は生協の38.7%、2位がショッピングサイトの38.4%となっている状況を見ると、決して盛り上がってるとは言えない状況にあります。

参照:流通ニュース「食品通販市場/2018年は3.3%増の3兆7138億円、生協が1位維持」
https://www.ryutsuu.biz/ec/l071148.html

利益が出ない・事業撤退…苦戦を強いられる国内ネットスーパー

「お米やペットボトルといった重いものを玄関まで運んでくれる」「外出しなくていい」など、ネットスーパーのメリットは多数あります。しかし国内でのネットスーパー利用率は決して高いとはいえず、大手企業でも苦戦している状態です。
ある調べによると、スーパー側がネットスーパーで利益を出すためには客単価で5,000円以上の売上を立てなくてはいけません。スーパーで5,000円以上となると、単身世帯にとってはたやすく超える金額ではないでしょう。

実際ネットスーパーは送料が発生するケースが基本です。たとえばAmazonフレッシュの場合は最低注文金額が4,000円で配送料は390円。送料無料にするためには、10,000円以上購注文しなくてはいけません。

日常的にスーパーを利用している顧客にはハードルが高く、「ネットスーパーで送料がかかるくらいなら、コンビニや近所のスーパーに行こう」という思考になるのも自然なことです。

一時は大手コンビニチェーンであるファミリーマートやローソンもネットショップ市場に参入しました。しかし利益が見込めず、両社とも2018年には撤退しています。

ネットスーパーが苦戦する理由は、人の手がかかるという背景があります。イオンのように商品のピックアップや梱包も人が行っていては手間がかかり、1回あたり1,000円近くもコストが発生するといわれています。

実店舗があるスーパーのように単価の低い買い物では黒字化が見込めず、「ネットスーパーは儲からない」というのが現状です。

しかし、だからこそイオンはOcadoと提携して本格的な効率化を図ったのでしょう。最新技術で人件費を削減することで、イオンの目指す「次世代ネットスーパー」が実現する可能性が高いのです。

ネットスーパーの浸透を阻む3大要因

日本政策金融公庫の調べによると、消費者側にもネットスーパーを利用するデメリットが複数あります。

「ネットスーパー・ショッピングサイト」を利用しない主な理由として、上位3位は以下の結果となりました。

1位:実際に商品を見て選べない(60%)
2位:価格が高い(33.4%)
3位:受け取りが面倒(24.1%)

引用:平成29年 日本政策金融公庫「平成28年度下半期消費者動向調査」

https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_170308a.pdf


消費者の立場で考えると、「お肉は脂身が少ないものがいい」「程よく熟したバナナが欲しい」など、同じ食材であっても自分の目で良いものを選びたいという意識が根強く存在します。

特に中高年の女性ほど食材選びを人や機械に任せることに抵抗があり、「自分で食材を選べないネットスーパーより、近所のスーパーで買い物したい」という意識が強く、ネットスーパーの浸透を阻む大きな原因になっています。

だからこそ人の手によるピックアップを行っていたのですが、それではコストがかかり利益が発生しません。

厳しい背景が伺えるネットスーパー市場ですが、それでもOcadoは「国内ネットスーパーの機は熟した」と見ています。すでにイギリスで成功しているAIやロボティクス技術によって次世代ネットスーパーが実現すれば、消費者が納得する商品のピックアップも行えるかもしれません。

苦境に負けず新サービスに乗り出す企業

国内ネットスーパーでは、ボトルネックとなっている配送方法を工夫している企業もあります。

クックパッドは送料無料で保育園に商品をお届け
「クックパッドマート」を運営するクックパッドは、個人宅ではなく保育園への配送サービスをスタートしました。試験的に渋谷区の保育園に「マートステーション」という宅配ボックスを設置して、保護者がアプリで事前に注文した食品を届けています。

1円から注文できて送料無料、子供のお迎えのついでに商品を受け取れるなど保護者にとってメリットが大きい仕組みを実現しています。
参照:IT media NEWS「生鮮食品を保育園にお届け、クックパッドが新サービス お迎え時に受け取り可能、多忙な共働き世帯を支援」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/21/news086.html
楽天・西友はドローンによるロボティクス技術を導入
西友リヴィン横須賀店では、楽天と西友が提供している「ドローン商品配送」を行っています。配送場所はアウトドアを行っている公園で、主にBBQを楽しむ顧客がメインです。
「楽天ドローン」アプリをダウンロードして注文し、支払いは楽天ペイで行います。配送料は300円ですが、近くにスーパーがないアウトドアエリアでは重宝されるでしょう。

参照:MONOist 空を飛び地を駆ける、楽天と西友が推進するロボット商品配送サービス
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1910/02/news042.html

日本の人気ネットスーパー

生協

「生協さん」の愛称で親しまれている生協は、古くから一般家庭で利用されている宅配事業です。厚生労働省の消費者生活協同組合法で守られた消費者たちがつくる組織であり、一般の法人とは一線を画すのが特徴といえます。

https://www.coop-takuhai.jp/


楽天西友ネットスーパー

2018年から楽天と西友が提携した楽天西友ネットスーパーは、楽天IDと連携しており、最寄りの西友の実店舗から顧客へと配送されます。西友の品ぞろえや楽天スーパーポイントの利用など、両社のメリットを合わせたネットスーパーとして人気があります。

そんな楽天西友ネットスーパーは、2020年にネットスーパー専用の物流センターを横浜に新設しました。数万アイテムを取り扱っており、60%もの省人化が行われています。イオンと同じく物流の仕組みを見直し、より効率化を図っているものと思われます。

https://sm.rakuten.co.jp/


ネットスーパー成功のポイントは“買い物弱者”への寄り添い

国内で成功しにくいといわれるネットスーパーですが、それでも顧客のニーズはあります。

買い物といえば日常生活に欠かせない行為であり、ほぼすべての消費者に影響があるものです。妊娠やケガ、高齢者の1人暮らしなどで、その日常行為である買い物ができないユーザーは「買い物弱者」といえます。

「スーパーに行きたくても行けない」という消費者がネットスーパーのターゲットであることは、間違いないでしょう。
ECサイトの運営を同じく「顧客視点」を大事にして買い物弱者のニーズに寄り添えることができれば、苦境といわれるネットスーパー市場で売上を伸ばしていけるでしょう。

参照:商業界ONLINE「ネットスーパーで収益を上げる秘訣」
http://shogyokai.jp/articles/-/660

まとめ

イオンが発表した次世代ネットスーパーの概要と、国内の現状について解説しました。メリットも多いネットスーパーですが、配送や人件費などコストが高く企業は苦戦しています。

イオンが次世代スーパーとして金字塔を打ち立てれば、現在の国内ネットスーパーでは大きな成功事例となるでしょう。現在運営しているネットスーパーからどのように変わっていくのか、注目したいものです。

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