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インドにおける小売販売の実情~その可能性と課題~

小売業者にとって、インドの小売マーケットは中国にはない魅力もあるチャンスに満ちた未開のエリアであると言えるでしょう。特に中国に関しては経済成長のスピードに陰りが見え始めてきており、小売マーケットとしての未来が以前ほど楽観視できないという現実もあります。

このような現状を反映して、すでにインドには海外企業が多く進出しており、国別の内訳はアメリカの企業が35%、続いてUKが12%、さらにイタリア・フランス(8%)、日本・スイス・ドイツ(5%)となっており、Appleも近頃インド国内で事業を開始するための各種手続きに着手したことが報じられ、同社もインドのマーケットの持つ可能性に着目していることが見て取れます。
graf LatentView Analytics社の創始者であるベンカット・ビスワナサン氏は「この先10年間でインド国内の小売業界は大きな変化を遂げると思います」と話し、「ここにきてインドの持つ可能性に多くの企業が着目してきており、将来的には小売業界にとって世界規模で重要な役割を果たすようになると確信しています」と力を込めます。

英語が公用語であるメリット

インドでは中心都市をはじめとして英語が幅広く公用語として使われていますから、海外の企業が国内のビジネスに参入する際にもハードルは高くありません。

さらに、中国には「中国版」のFacebook、Twitterが存在するのに対し、インドではFacebookなどがそのまま普及しており、それどころかアメリカに次ぐ世界2位の利用者数を誇っていることを考えると、マーケット戦略の面でもインド国内の消費者にはたらきかけること自体はそれほど難しくはないのです。

また、インド政府が発表するインド国内事情に関する各種データの信頼度は「アメリカほどではない(前出のビスワナサン氏)」ものの、一般的に信憑性は限りなく低いと言われている中国のものに比べると雲泥の差があります。

ビスワナサン氏によると、インドの政府当局は信頼度の高さに加えオープンかつ民主的な政府システム、さらにはビジネス分野全般においても発達しており、海外からの参入組がしっかりとした基盤を作れる要素が揃っているのは大きなプラスであるということです。

成長ののびしろ

しかし、何にも増して専門家が着目するのはモバイル機器に精通した若い世代が多いという点で、中流家庭層の増加と合わせて小売業界にとって大きなビジネスの可能性を秘めているのがこの国の魅力です。

インド国内のインターネット関連調査期間の発表によると、2015年の上半期だけで5200万人もの新規インターネットユーザーが記録されており、6月時点で国内総計3億5200万人ものインターネットユーザーを抱えていることになります。そしてこのうち60%にあたる2億1300万人がモバイル機器を通してウェブサイトにアクセスしている事も分かっています。

インターネットやモバイル機器の普及に伴って、当然ながらEコマースも大きな成長を遂げてきています。インド国内のマーケットでは上位25社が全体のトラフィックのうち62%を支配しており(SimilarWeb社調べ)、Eコマース自体はインド国内における小売販売分野では現在のところ4~6%に留まっていますが、この先数年の間に急速に成長のスピードが上がっていく事が予想されています。

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Amazonのインド進出

オンライン小売の世界的大手Amazonはインドでも大きな影響を及ぼしており、インド国内マーケットに進出後わずか2年にして、それまで国内で圧倒的なシェアを誇っていたFlipkartを完全に追い越してしまいました。具体的には昨年12月のFlipkartのサイト訪問数は1億2280万人であるのに対し、Amazonは1億6310万人となっています。Flipkartとしては、モバイルマーケットにおいて唯一優勢を保っているのが精いっぱいといったところです。
ビスワナサン氏いわく「Amazonはインド国内の業者にとっては大きな脅威で、少しずつPrimeサービスなどといったアメリカ式の新しいコンセプトを市場に導入し、今年は国内マーケットにさらに大きな変革をもたらすことになるでしょう」ということです。

インドにおける課題

これまでのところインド国内においては多くの新規企業の登場が注目を集めてきていますが、ビスワナサン氏の見解としてはこの「ミニバブル状態」は今後投資家の見る目が厳しくなるにつれ近いうちにはじけることになると予想されます。

しかし、現在最大の課題としては商品を的確に素早く配送するインフラのシステムの整備であると言えます。例えばアメリカやヨーロッパでは2日以内での配送が当たり前になってきていますが、インドの多くの地域ではそれが難しいのが現状です。

「一般的に、新規参入業者はインドでも他の国や地域と同様の配送サービスを提供できるだろうという憶測でビジネスをはじめますが、すぐにこの国の「現実」に直面することになるのです」(ビスワナサン氏)

しかし、こういった状況にドローンなどを駆使したサービスを使って対応できれば、他社に先駆けてビジネス面において大きな差をつけることも不可能ではありません。



この記事はRetail in India: The opportunities—and challenges—retailers can expectの記事を海外小売最前線が日本向けに編集したものです。