中国に向けたマーケティングの理解に欠かせないKOL、またMCNとは何か?
越境ECやインバウンドによって訪日外国人客は年々増加傾向にあります。日本へ訪れるのは中国、韓国、台湾を筆頭としたアジアからの旅行客が多いです。
2017年の1年間の訪日外国人客数は全体で約2,869万人でしたが、中国からの訪日客は約735万人と全体の4分の1を占めています。また同年の訪日外国人客の国別消費金額を見ると、中国だけで1兆6,946億円を日本で消費していることがわかりました。
これに伴い、訪日中国人や、中華圏にむけてマーケティングを行いたい企業や個人も増えています。しかし、中国人に向けたマーケティングは日本人に行うものとは大きく異なります。
どのような点が異なるのか、具体的に解説していきたいと思います。
中国でのデジタルマーケティングは日本とは大きく異なる
中国に向けてデジタルマーケティングを行う際、理解しておかなければいけないことがあります。
中国では私たちが日常的に利用しているYoutubeやFacebook、Twitter、 WhatsAppといったソーシャルネットワークサービスを使うことができません。中国では「グレートファイアウォール」と呼ばれる検閲システムにより、これらのサービスを利用することに制限があります。
では中国人は普段どのツールを使っているのでしょうか。中国で有名なSNSとして、コミュニケーションアプリは「WeChat」で、動画は「ヨウク(优酷)」、「トゥドウ(土豆)」、Twitterのようなソーシャルネットワークは「ウェイポー(微博)」、Facebookに似たソーシャルネットワークサービスでは「レンレン(人人网)」といったものがよく利用されています。
日本では中国のような政府による情報統制がないため、こうした制限があること自体に驚いてしまいますが、中国でデジタルマーケティングを行うにはこういった事情も理解しておく必要があります。
中国人の購買行動は個人のレビューを重要視する傾向
中国で広く利用されているSNS以外でも理解しておくことがあります。
中国の人たちは商品を購入する際、広告や宣伝のみを鵜呑みにすることはありません。商品購入の前には他人の評価を参考にします。それも誰でもいいわけではなく、信用のできる個人の発言です。良し悪しを判断するために多くの人が口コミの基準にしているのが「KOL」と呼ばれる人たちです。
KOLとは?
KOLはKey Opinion Leaderの略で、インフルエンサーを指します。中国語では網紅(ワンホン)と呼ばれています。
テレビや雑誌に出ている芸能人や有名人もそうですが、SNSで絶大な人気を集めている一般人もこれに含まれます。KOLは親しみやすいキャラクターや必要な情報を与えてくれる存在として主にソーシャルネットワークにおいて多くのフォロワーがいます。
それぞれ特化しているジャンルがあり、旅行・美容・ファッション・食べ物・ゲームといったわかりやすいものから、ニッチなジャンルなど様々です。
KOLのマーケティング効果は絶大
中国では商品購入の際の決め手として口コミが最も重要視されます。その理由として、中国のECサイトでは商品ページに掲載されている商品画像と全く違うデザインのものや明らかな偽物が届いたり、商品が送られなかったりというトラブルが頻繁に起こるため、購入前に口コミを調べることは欠かせません。
KOLにはフォロワーから絶大な信頼を寄せられているため、レビューする商品は飛ぶように売れます。最近中国ではライブコマースが人気で、動画の放送中に商品を紹介しながら同時に商品を購入することが可能です。一昔前のテレビショッピングがネット動画に移行したものと考えれば理解しやすいかと思います。企業がKOLを起用してライブコマースで商品を販売することも珍しいことではなくなりました。
中国で有名なKOL
中国で有名なKOLは誰なのでしょうか。
ニューヨークに本社を構えるBomodaはソーシャルサービスやeコマースについての分析などを行なっている企業です。同社は様々な角度から2017年における中国のKOLの調査を実施しました。
女性KOLで最も有名なのはYang,Mi (杨幂)で、その他にもSun, Yi(孙怡)、Tan, Song Yun (谭松韵)などが挙げらています。男性KOLではLu, Han(鹿晗)、Kris Wu(吴亦凡)Xu, Wei Zhou(许魏洲)などです。こちらのレポートではKOLのジャンルや社会への影響力などをインデックス化しわかりやすく図示されているので、中国のKOLの調査に役立つでしょう。
参考:BOMODA
http://313ct818yszd3xd6xa2z47nm-wpengine.netdna-ssl.com/wp-content/uploads/2017/08/Bomoda-1H-2017-KOL-Index-1.pdf
近年はライブコマースや動画による宣伝が盛ん
2005年にYouTubeがスタートしてから13年がたちます。YouTubeは世界中で最も利用される動画配信サイトに成長し、また様々なタイプの動画配信サイトが登場しました。
動画配信はただコンテンツを見るだけではなく、買い物もできるようになりました。ライブコマースです。ライブコマースは動画配信中に購入可能な商品を表示させる機能を備えています。
ライブコマースは動画サイトから直接ECサイトに飛ぶことができるため、商品を欲しいと思ったらクリックしてすぐに注文することができます。
中国ではライブコマースが爆発的に人気となりました。中国で利用者が急激に増加した理由として、KOLが動画配信中にフォロワーの質問に応えるとで双方のコミュニケーションが取りやすくなったことから、実際に商品を購入した際のイメージがしやすくなったこと挙げられます。
例えば、服であれば着用サイズ感や着心地といった質問をユーザがするとKOLがこれに答えてくれます。リアルな感想を確認することができるため、ライブコマースはKOLのフォロワーにとっても便利であるだけではなく、商品を販売している企業にとっても利益につながります。
ところで、企業や個人が中国に向けた宣伝を行いたい場合、どうすれば良いのでしょうか。
KOLに宣伝を依頼したい場合、間接的にリーチできるMCNに連絡をとるのが手っ取り早いかもしれません。
MCNとは?
MCNはMulti Channel Networkの略です。MCNを一言で表すと、「動画のまとめ」です。
現在世界中の様々な動画配信サイトで、膨大な数の動画がアップロードされています。MCNは動画をまとめる役割を果たしており、KOLをひとつの企業や第三者機関に集約することで依頼主に効果的な広告の提案を行うことができます。
日本で有名なMCNとしては「UUUM(ウーム)」が挙げられます。日本で最も有名なYoutuberであるヒカキンや、はじめしゃちょーなど多数の有名なYoutuberが所属しています。UUUMの事業内容は企業や個人が希望する広告やプロモーション内容に合わせて最適なYouTuberを紹介したりイベントの企画などを行います。
中国で有名なMCNとは?
中国で有名なMCNとして、抖音(Douyin)が挙げられます。抖音は短い動画共有アプリで、AI関連企業のByteDanceが開発しました。Douyinの海外版がTikTokで、こちらは日本でも若者を中心に利用者が多いのでご存知の方もいるでしょう。
抖音には中国で有名なKOLが所属しており、また積極的にインフルエンサーの育成も行なっています。
抖音のユーザーにはこのような特徴があります。
- ユーザの50%が24歳以上
- 60%が女性
- 60%以上が大学の学位を保有している
- 40%以上が一級都市か二級都市※に居住している
※中国の行政区分。一級都市は上海や北京、天津、重慶。二級都市は長春、南京などの15都市。
このようなユーザ属性を利用して宣伝に生かすことも可能です。
まとめ
以上、中国に向けたマーケティングに欠かせないKOLとMCNについての解説でした。日本にも日本人に向けた最適なマーケティング手法があるように、中国の人たちの関心を惹きつけるマーケティング手法があります。
現在は動画配信やライブコマースによるマーケティングが流行しており、この傾向はしばらく続くでしょう。中国人に向けた越境ECやインバウンド対策の参考にしてみてはいかがでしょうか。