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越境ECの攻略法を売れ筋商品から探る


日本での消費者が減少している今、海外の消費ニーズを求めて越境ECに乗り出す企業は年々増えています。越境ECを成功させるためには、売れ筋商品や現地ユーザーを理解した戦略が必要です。



この記事では越境ECを検討している企業に向けて、越境ECの需要が高い国や売れ筋の商品、留意点をご紹介します。



越境ECで注目の地域は中国・アメリカ・東南アジア



EC化が進んでいる国といえば、中国とアメリカです。しかし最近では東南アジアもECサイトが盛り上がっており、ターゲットとする企業も増えています。まずは越境ECで注目の国から見ていきましょう。



EC天国の中国とアメリカ



まずは2020年の各国ECサイトの市場規模をご覧ください。



国名
市場規模(単位:億ドル)
中国
18,015
アメリカ
6,017
イギリス
1,339
日本
1,235




引用: 経済産業省 電子商取引に関する市場調査

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf


市場規模で見ると、アメリカは日本の4倍以上、中国はなんと14倍以上の規模があります。中国とアメリカはEC先進国であり、EC天国と言っても過言ではありません。



中国でECが発達した背景



中国がEC先進国となった理由は、独身の日・中流階級の増加・キャッシュレス決済の普及が挙げられます。中国には11月11日を「独身の日」(ダブルイレブン)としており、もともと独身者を祝う習慣がありました。



そこで2009年にアリババグループが独身の日に大規模な販促イベント「天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル」を開催したことで、多くの百貨店やスーパーが参加して一台商戦の日となったのです。アリババが運営するECモール「天猫」では、2017年における独身の日の取引額は1,683億元、日本円で2兆円を超える莫大な売り上げを出しています。


■特集:ECモール■


[Note]2021年「独身の日」の流通総額は過去最高の9兆円



2021年で13回目になるアリババグループの独身の日イベントでは、流通総額(GMV)が日本円で約9兆6,173億円に達したと発表されました。
参加ブランドは約29万で、約65%は中小企業や工業地帯の製品メーカー、新ブランド等です。1,600以上のブランドがECモールにおいて新規獲得キャンペーンに参加し、のべ9,700万人以上の新規顧客獲得につながっています。
ただ、2021年の伸び率は8.5%で過去最低でした。2020年の伸び率は26%で、大きく失速していることがわかります。これは規制強化や供給制約という逆風があったことや、電力不足やロックダウンを鑑み元々大々的な宣伝を控えていた点が大きな原因とみられています。
2021年の伸び率は芳しくなかったものの、流通総額は過去最高を記録。新興ブランドや若年顧客も順調に増加しており、今後も市場は拡大すると予想されます。



アメリカでECが発達した背景



アメリカの場合、ECが普及した背景には、サイバーマンデー、「ネットの方がお得」という意識の浸透、返品のしやすさがあります。



アメリカでは毎年2月~3月に謝肉祭が行われますが、その翌月曜日を「サイバーマンデー」と呼ぶようになりAmazonを始めECサイトやオフラインでビッグセールが行われます。



ECサイトではクーポンが直接配信されており、「確実にリアル店舗より安い」「クーポンがあるかチェックしよう」という思考によってECを利用する習慣が浸透しました。



さらにアメリカでは日本よりも圧倒的に返品のハードルが低く、「とりあえず買ってみよう」「ダメなら返品すればいい」と購入のハードルが低いという特徴があります。



注目は東南アジア



最近では東南アジアが注目されています。その理由は、伸びしろの長さと日本への信頼の高さ、スマートフォンの普及が挙げられます。



東南アジアが発展途上というイメージは昔の話で、すでにインターネットユーザーは4億人ほどいます。さらにECの市場規模では、2025年までに1700億米ドルという大規模な市場になると予想されています。経済規模では2030年までに世界4位にランクインする見通しで、今後越境ECとして大注目のエリアとなっているのです。



さらに東南アジアの小売業界では、ECサイトが占める割合は総売り上げのわずか5%ほど。つまり伸びしろがかなり長く、注目株となっているのです。



また東南アジアから見た日本は「衛生的」「安心安全」というイメージが強く、食品や化粧品、ベビー用品の人気も高くなっています。PCよりスマートフォンの普及率が高く、ECサイトと親和性が高い点も魅力です。



中でもインドネシア・マレーシア・シンガポールの3国は特に期待値が高く、2019年頃からは越境ECのサービスも多くスタートしています。これらの国は日本製品の知名度が高く、大変見込みがあるエリアです。







越境ECで売れ筋の商品7選



12年以上越境EC事業を展開する「BEENOS」※の2021年上半期 越境EC商品別ランキング、世界最大級の越境ECを展開する「eBay」などのデータを基に、越境ECで人気の商品を7点ご紹介します。売れ筋の商品から、越境ECの可能性が見えてくるはずです。



※参照:2021年上半期 越境ECランキングを越境EC 流通総額 No.1(※1)のBEENOSが発表

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000260.000035599.html


※参照: イーベイ・ジャパン、2021 年第 2 四半期の越境 EC トレンドを公開

https://www.ebay.co.jp/image/preview/20210817005302907.pdf


1:食品・化粧品・ベビー用品



BEENOSでは、4位と8位に食品がランクインしました。4位は日清フーズ株式会社の「日清 スーパーカメリヤ
ドライイースト(お徳用)」、8位は昭和産業株式会社の「業務用パリッジュ~から揚げ粉」となっています。



上記はステイホームによるお菓子作りの需要増や、日本でもテイクアウトとして人気の唐揚げが海外で人気となっているのでしょう。



eBayでは2021年第2四半期(4-6月)における売れ筋商品ランキングで、日本でもプチプラメーカーとして人気のキャンメイク「マーメイドスキンジェル」が第2位にランクインしています。日本の日焼け止めは肌に優しく機能性や安全性も高いと、海外でも評価が高いアイテムです。



また安全性において高い信頼を持つ日本製品では、ベビー用品も需要があります。2020年にはベビー用品に特化した中国向けの出店型越境プラットフォーム「Himum (β版)」(ハイマム)が立ち上げられ、その人気の高さが伺えます。



2:ホビー・ジャパンコンテンツ



eBayで2021年第2四半期(4-6月)に売れ筋ランキングで1位となったのが、ポケモンカードです。5月の販売された「イーブイヒーローズ」が1位を獲得しており、ポケモンカードの新作は3期連続でトップとなっています。



また3位には「別冊少年マガジン」の2021年5月号がランクインしました。この商品は12年続いた「進撃の巨人」の最終掲載号で特製クリアファイルの付録が付いており、日本語版を集めるバイヤーも多かったことが影響しているようです。



日本では好きなアーティストやキャラクターを推す“推し活”が流行しました。海外でも同じような習慣が流行しており、日本のアニメやゲーム、VTuberといった自分の“推し”を応援するファンが多いことで、ジャパンコンテンツの人気が高まっています。コロナ禍におけるステイホームでDXが急速に進み、世界のファンが繋がったことも消費に大きく影響しました。



またBEENOSで1位にランクインしたのが、やおき工業株式会社の「パンフラワー用ハサミ」です。これは小麦粉の粘土細工パンフラワーの細工に特化した繊細なハサミで、手芸や刺繍、化粧などに使えます。ステイホームにおける、おうち時間の増加により需要が高まっているようです。



3:サスティナブル



ラクーンコマース株式会社が運営するB to Bの越境ECサイト「SD export」では、100%天然由来成分で作られた洗濯槽洗剤が最も売れています。(2019年1月~10月末時点)続いてエコバック、持ち運べるシリコン製ストローなどサスティナブルな製品が人気です。



SDGsの観点からもサスティナブルな製品は世界的に人気が高まっています。特に日本企業の商品は機能性の高さも評価されており、付加価値のあるサスティナブル商品として需要が高まっているのです。



4:中古ブランド、楽器



品質における信頼度が高い日本製品では、中古ブランドも人気です。他国では偽ブランド品が出回っていますが、出品国が日本なら「安全だ」と判断する消費者が少なくありません。



加えて日本人は商品を大事に扱いますし、日本のリサイクルショップでは商品を丁寧にクリーニングすることで新品に近い状態で販売するため非常に人気なのです。



参照:越境EC売れ筋商品と失敗しない独自サイトの作りかた

https://www.j-grab.co.jp/know-how/eczine-magento-ebay-crossbodertrade/


また楽器も人気があり、YAMAHAやROLANDといった日本製ギター、音響機器は特にアメリカで人気です。これはステイホームによって楽器を弾きたいという需要が高まったのに加え、アメリカの買い手が日本の売り手の丁寧さを認識したことが挙げられます。



eBayでは新たにManaged
Payments(マネージド・ペイメンツ)という独自決済サービスをスタートさせたことで、越境ECでも100万円を超える取引が可能になりました。これにより、1963年製のFenderストラトキャスターというギターが約163万円で取引されるなど、高値取引事例も増えています。



5:高齢者向け商品



中国などでも、高齢者をターゲットとしてシルバーマーケット商品は人気があります。これは日本がすでに高齢化社会を迎えており、高齢者のニーズに合った高品質な商品が流通していることが影響しているのでしょう。



eBayでは、日本のサプリメントブランドファインの「鮫軟骨エキス約52日分」が5位にランクインしました。鮫軟骨エキスは関節などの動きをサポートする効果があるとされ、高齢者にも人気です。



6:地方の名産品



BEENOSでは株式会社あづま商店の「豆皿 7.5cm 淡ピンク 和食器」が10位にランクインしました。満足に旅行できない今、お皿だけでも購入して日本気分を味わいたい消費者が多いのかもしれません。



また2021年3月より、農林水産省の補助事業としてシンガポールに食品輸出拡大を始める「日本食冷凍ミールキット販売プロジェクト」が始まっています。



主に予定している商材は、冷凍フルーツ大福や冷凍押しずし、冷凍漬け丼セットなどです。産地から消費者に至る付加価値の高い商品づくりシステムを構築することで、輸出拡大を目指しています。



※参照: 日系3社が地方名産品を冷凍で輸出販売、越境ECも

https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/03/ec9640a28ffb15e0.html


7:アパレル



BEENOS 2021年上半期 越境EC二大ジャンルは、「ホビー」と「ファッション」です。越境ECではストリートファッションブランドや日本のデザイナーズブランドの人気が特に高いことがわかっています。



実は国内におけるアパレル市場はすでに成長がとまり、市場では何十億という隠し在庫があるともいわれています。しかし中国の富裕層では日本のファッションブランドが人気No.1になるなど海外での需要は高く、アパレル業界はこの機会を逃すわけにはいきません。



越境ECの一例:https://tokyofreshdirect.com/




越境ECでの留意点



越境ECでは、現地の商習慣やコミュニケーション、現実味のある目標設定などが必要です。日本と異なる環境で成果を出すために、留意したいポイントを解説します。



世界の商戦カレンダーを考慮する



EC天国である中国・アメリカも、それぞれ「独身の日」と「サイバーマンデー」というイベントで大きく市場が伸びています。イベントは現地の消費者の購買意欲が高まる時なので、越境ECでは商戦カレンダーの考慮を忘れてはいけません。



クリスマスやもちろんハロウィン(10月31日)も世界各国で浸透しており、日本でも割引セールが開催されます。またAmazonを中心にサイバーマンデーも売り上げが伸びます。



注目エリアである東南アジアでは、シンガポールで「ディーパバリ」(11月4日)という大規模なイベントがあります。進出するエリアのイベントを細かく把握することで、より勝機を見出すことができるでしょう。



海外ユーザーとのコミュニケーション



越境ECでは、多言語対応が欠かせません。言語の壁は高く、現地ユーザーには「問い合わせをしても上手くコミュニケーションが取れなかった」という人も多いものです。



どんなにいい商材でも、言葉が通じなければ消費者は不安を抱きます。「国境を越えて無事に届くだろうか」と考えると、越境ECを諦める人も多いでしょう。



商品説明や問合せ対応など、消費者が目にする部分はなるべく現地の言語で対応します。リソースに余裕があれば、時差を考慮して24時間体制の顧客支援ができれば理想ですが、ヘルプデスク業務を現地企業に委託するなどの対応も有効です。



また越境ECでは「注文した商品と違う」というトラブルが多く、検品体制も手を抜けません。発送直前に開封してチェックするなど、細やかなサービスを徹底することでミスを防ぎます。



現実を理解したプロジェクトの実行



越境ECは新たなチャレンジであり、担当者と経営者の間で現実を理解したプロジェクトを共有する必要があります。商材の特性や活用するプラットフォーム、すでに卸として海外で流通しているかどうかなどによって成果が出るスピードは異なります。



例えばすでに人気が高いサプリやメイクなどなら、初年度から国内売り上げを基準として数億円の売り上げを期待するケースも少なくありません。しかし実は難易度が高く、担当者は「不可能だ」と感じている場合も多いのです。



輸出から現地配送まで含めた物流体制の構築や、現地でのPR・マーケティング活動についても信頼のおけるパートナー開拓を行い、まずは自社商品を海外へ送り出してみることが重要です。



すでに市場に参入している競合のECサイトや実績を分析して、現実を理解したプロジェクトを進める必要があるでしょう。