エコシステムとは?ビジネス用語をわかりやすく解説します
昨今、インターネットの発達によって提供できるビジネスモデルやサービスが巨大化し、エコシステムの必要性が高まっています。
「エコシステム」というと、環境に関する言葉と思われがちですが、例えば「ITにおけるエコシステム」は、デベロッパーやベンダーが平等に利益を得られるビジネス上の協業形式をいいます。
AppleやAmazon、シリコンバレーは巨大なエコシステムを形成しており、その影響力は世界中に及びます。
今回は「エコシステム」に関する解説をお届けします。
- エコシステムの意味
- ビジネスエコシステムの企業事例
- イノベーションのプラットフォームとしてデジタルエコシステムが必要
- 成功事例からみるデジタルエコシステム
- 日本ではエコシステム実現に向けてグローバル拠点都市が誕生
- エコシステムは市場の影響を受ける
- 買収によってエコシステムの一部が独占されることも
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エコシステムの意味
エコシステム(Ecosystem)は、言い換えるなら「生態系」で、もともと生物をとりまく環境を意味するワードでした。ですが、現在はビジネスやITの業界で使われています。
マーケティングにおけるエコシステムから、実際の成功事例までエコシステムのすべてをご紹介します。
生物をとりまく環境としてのエコシステム
生態系という意味においてのエコシステムとは、ある一部の地域や空間において、生きている動植物が互いに依存して生態を維持する環境をさします。
例えば、植物が無機物から有機物を生産し、それを食べて動物が活動、動物の排泄物は菌類が分解して植物の栄養になる、というものです。
つまり、
- 生産者
- 消費者
- 分解者
という物質循環によって、自然が保たれている状態のことを意味します。
経済におけるエコシステム(ビジネスエコシステム)
対して、経済やビジネスにおけるエコシステムは、業界の枠および国境を超えて、企業同士が共存していく仕組みを意味します。系列の異なる複数の企業やライバル関係にある同業他社が手を取り合うこともあります。
コラボキャンペーンのように限定的な共存もエコシステムに含まれますが、生産業者と物流業者が連携するアライアンスや、共同開発はエコシステムには含まれません。
これは「ビジネスエコシステム」と1つの用語として呼ばれることもあります。
ITにおけるエコシステム(デジタルエコシステム)
ITにおけるエコシステムも、
- 基本OS
- デベロッパー
- ベンダー
- サードパーティ
- ユーザー
- ベンチャー
といった異分野がそれぞれの環境を維持させ、収益を上げるモデルのことをさします。
ITのエコシステムで重要なのは、それぞれの構成要素となっているパーツが、なるべく平等に利益を得られる仕組みになっていることです。
またITのエコシステムは「デジタルエコシステム」と呼ばれることもあります。
ビジネスエコシステムの企業事例
ビジネスにおけるエコシステムがどのようなものなのかは、実例をみるのが一番分かりやすいでしょう。
まずは、身近なエコシステムの成功例としてマーケティング分野から紹介します。
ビジネスエコシステムの企業事例1. 日本コカ・コーラと日産自動車
エコシステムのもっとも先駆的な例の一つとして知られるのが、2008年におこなわれた「Coca-Cola×CUBEハートフルキャンペーン」です。
クイズやゲームによって「コカ・コーラゴールド」を貯めて、日産の新型キューブプレゼントに応募するこのキャンペーンは、70万人が参加しました。
サンタクロースの赤いコスチュームを広めるきっかけとして広く知られているように、コカ・コーラは毎年冬にキャンペーンをおこなってきました。2008年の企画は、恒例キャンペーンと、日産キューブのモデルチェンジが重なったことがきっかけといわれています。
このキャンペーンの画期的なポイントは、
- 清涼飲料水メーカーと自動車会社という珍しい組み合わせによるインパクト
- 社外秘のデータを互いに持ち寄って企画をよりよいものにした
の2つです。単に名前だけをコラボしたわけではなく、キャンペーンが大きな成功をおさめられるよう、議論を重ねてのぞんだことが成功につながったといわれています。
ビジネスエコシステムの企業事例2. ネスレとル・パティシエ・タカギ
ネスレの人気商品のひとつである「キットカット」と、人気パティシエの高木康政氏のコラボレーションとして生まれたのが、「キットカットショコラトリー」です。
気軽なおやつとして認識されている価格帯のキットカットに対し、高級なチョコレートとして知られる「ル・パティシエ・タカギ」は、同じくチョコレートを扱うライバル関係にあるともいえます。しかし、協業によってどちらにも重複しない価格帯のチョコレート「キットカットショコラトリー」を開発、ECサイトや百貨店で好調な売れ行きをみせています。「キットカットショコラトリー」の売れ行きは、両者のブランド認知度を高めることにもつながっているため、販売利益以外のビジネスメリットが新たに創出されているといえるでしょう。
イノベーションのプラットフォームとしてデジタルエコシステムが必要
インターネット黎明期においては提供可能なサービスやシステムがまだ小さかったため、各分野は協業する必要性を感じていませんでした。しかし、提供できるインターネット関連のさまざまなサービスやシステムが多様化、巨大化していくにしたがって、1社では抱えきれないボリュームとなり健全な協業スタイルともいうべきエコシステムの必要性が高まっていきました。
現在では、イノベーションのプラットフォーム(基盤)としてエコシステムが必須だという声があちこちで聞かれるようになり、バズワード化している側面もあります。
では、企業のプロダクトが平等に収益を上げる仕組みについて、具体的な例をみていきましょう。
成功事例からみるデジタルエコシステム
実際にうまく連鎖しているITのエコシステムについて、代表的なものから最新のものまで例を挙げていきます。
デジタルエコシステムの事例1. Appleの製品と提供価値
もっとも代表的な例がAppleのエコシステムです。
Appleのエコシステムは2つの形態に分けることができるので、まずは製品群におけるエコシステムについてみてみましょう。
Appleが販売しているiPhone、iMac、iPadといった端末製品は、
- チップセット
- スクリーン
- カメラ
といった数多くのパーツから成り立っています。これらの部品を製作し組み立てるまでには多くの企業が関わっており、それぞれが利益を上げています。また、Apple Store以外の販売企業についてもAppleのエコシステムの一部といえるでしょう。
Appleのエコシステム2つめは、端末をはじめとするApple製品の提供価値におけるシステムです。AppleのiTunesでは、Apple以外によるアプリや映画、楽曲などのコンテンツが配信されています。コンテンツの活用は端末を提供しているApple、アプリをリリースした企業、アプリを活用するユーザーがエコシステムに組み込まれ、利益を得ている状態といえます。
どちらもエコシステムの中心にはAppleがいますが、Appleが独占的に利益を搾取しているわけではありません。こうした相互的利益が発生する協業スタイルが、エコシステムの代表例です。
デジタルエコシステムの事例2. Google
Appleと同様のエコシステムを形成しているのがGoogleです。
Googleは、
- 端末
- OS
- ネットワーク
- プラットフォーム
- コンテンツサービス
の各シーンでさまざまな企業と協業し、ともに収益を上げています。
少し古いデータですが、総務省による平成24年版の情報通信白書では、これらのエコシステム戦略が紹介されています。
・総務省「平成24年版情報通信白書」
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/index.html
デジタルエコシステムの事例3. Amazon
Amazonは、ECやクラウドサービスを提供するプラットフォームを強化することで、企業を呼び込む戦略をとっています。
- 端末(Amazon Echo、Kindle、Fire TV、Dash Buttonなど)
- OS
- ネットワーク
- プラットフォーム
- コンテンツサービス
といった各分野でエコシステムを形成しています。AIスピーカー「Amazon Echo」においては、他のAIスピーカーより一歩先をいくシステム作りを進めています。
AIスピーカーは、音声対話型のAI機器の総称で、
- ニュースや音楽の配信を聞く
- 音声でメモ入力をする
- 家電を操作する
- 音声で検索する
といったことができるツールです。現在は、Amazon「Amazon Echo」、Apple「Apple HomePod」、Google「Google Home」、LINE「LINE Clove WAVE」などがあり、各社が特徴を出しながら開発を進めています。
もともと、AmazonのAI開発は、Googleの発表したGoogleHomeと比較すると、後手に回っているといわれていました。それをカバーするためかどうかは分かりませんが、AmazonはAIスピーカーにおけるエコシステムの充実さで特徴を出しています。
まず、音声アシスタントである「Amazon Alexa」の機能拡張のための1万種類以上のスキルが挙げられます。
「Alexa」は、Amazonの配信するコンテンツを視聴するための「Fire TV」などにも搭載されており、両者の機能拡張はユーザーにとってのメリットと新たなサービスの創出に一役買っているといえます。
さらに、
- 小型スピーカー「Echo dot」
- スクリーン画面のついた「Echo Show」
- カメラ搭載の「Echo Look」
など「Amazon Echo」をよりさまざまな用途で使える可能性のある商品によって、エコシステムを構築しています。
デジタルエコシステムの事例4. クラウド・エコシステム
クラウドサービスは、インターネット経由でデータベースやストレージ、アプリケーションといったITのリソースを利用するものです。オンデマンドで必要な分だけ利用できることから、自社のビジネスに合わせた活用が可能なことがメリットとなり、クラウド会計システム「freee」などは個人事業主やフリーランスの間でもよく使われるようになっています。
こうしたクラウドも一種のエコシステムといえます。
クラウドの構築にあたっては、ネットワークや仮想化の仕組みにおいて、多くの企業が協業して開発にあたっています。また、クラウドが開かれた環境であればあるほど、イノベーションが繰り返され、スピード感のある変化が常にもたらされているといえます。
この環境は、生物の進化や互いに与え合う影響による変化を思わせます。これが特定の企業でなくてもクラウドもエコシステムを形成しうると解釈される所以でしょう。
デジタルエコシステムの事例5. ECプラットフォームと開発パートナー
ECのエコシステム事例では、EC-CUBEやMagento、ShopifyなどのECプラットフォーマーと、そのパートナー企業が生み出すビジネス経済圏が挙げられます。
ECプラットフォーム単体で多様なECの機能要件を網羅することは困難なため、機能特化したアプリが多数パートナー企業によって開発されてきました。
このエコシステムは、既存のシステムやアプリを選択してプラットフォームに連携することで、都度開発コストをかけることなくECサイトの運営企業が必要とするきめ細やかな機能を実装することができるため、経験値の低い企業であってもオンラインビジネスに参入するハードルを下げられるという点が特長です。
ShopifyやMagentoなど海外発のECプラットフォームでは、日本の商習慣と異なる部分があり、海外のアプリでは希望要件を満たせないことから、配送日時指定など日本の事業者向けに開発されたアプリもあります。日本でのShopify導入の盛り上がりは、こうした開発パートナー、コンサルティング会社が支えているといってもよいでしょう。
デジタルエコシステムの事例6. シリコンバレー
米国カリフォルニア州サンフランシスコのシリコンバレーは、いわずと知れたITの拠点です。シリコンを主な原材料とする半導体メーカーが多く集まっていたことから、こう呼ばれるようになりました。実際の地名はサンタクララバレーなどですがIT企業の集まる周辺地域を、まとめてシリコンバレーと呼称しています。
- Apple
- インテル
- アドビシステムズ
など、多くのソフトウェアメーカー、インターネット企業が集まるこの地域は、一帯がエコシステムを形成しているという見方もあります。
ただし協業がどういった範囲をさすのか、またエコシステムというワード自体をどのように定義するのかといった点については意見の分かれるところです。
日本ではエコシステム実現に向けてグローバル拠点都市が誕生
シリコンバレーのスタートアップ企業が大学などの学術研究機関からの人材や投資家からの支援を受けて事業を拡大させていったように、民間企業だけでなく自治体まで含めたエコシステムの構築が始まっています。
シリコンバレーのようなエコシステムの拠点都市を日本でも作り上げるべく、政府は2019年に具体的な戦略を打ち出しました。これまでに、グローバル拠点都市として東京、愛知、大阪(京阪神)、福岡の4つの都市圏、推進拠点都市として札幌、仙台、広島、北九州市が指定されています。
スタートアップエコシステムの取り組みは日本ではまだ始まったばかりですが、長期的に支援が行われることで社会的にも拠点都市が醸成されていくことでしょう。
エコシステムは市場の影響を受ける
エコシステムは、外部からの干渉によっても変化します。
もっとも大きな干渉といえるのが市場規模です。マーケットが大きければ大きいほど、多くの企業が集まり、他社よりも優れたプロダクトを他社より低い価格で提供しようという動きが生み出されます。これは競争優位性といい、優位に立つために多くの企業が他社と協業しながら利益を最大化する方法を模索します。
この動きによってエコシステムはさらに巨大化し、多くの企業が関わり合って拡大していきます。
買収によってエコシステムの一部が独占されることも
エコシステムは関わる企業がともに利益を上げる仕組みだと説明しましたが、特定の企業やエコシステムを形成するある一部分が多大な収益を上げた場合、買収や吸収合併などによって一社に独占されることも起こり得ます。
こうした協業スタイルとしてのエコシステムを健全に機能させるためには、手を取り合う企業が互いのパフォーマンスを充分に発揮できる環境が大切です。一社の独占的な利益追及になったり、足を引っ張り合うようなプロジェクトにならないよう気をつける必要があります。