AIは未来予測に活用すべき:SoftBank World 2019基調講演レポート
2019年7月18~19日に開催された「SoftBank World 2019」では、ソフトバンクグループの孫正義氏が基調講演を行いました。
情報革命はAI革命である、と昨年に続き強く訴えた孫氏の講演及び、ソフトバンク・ビジョン・ファンドで投資を行う世界のイノベーション企業のゲスト登壇レポートをお伝えします。
【目次】
技術開発は人間の推論から生まれました。星の動きを観測し、地動説を唱えたコペルニクス。鳥が飛ぶ様子を見て飛行機の原型を編み出したダ・ヴィンチ。光を見て、相対性理論を考えたアインシュタイン。
人類は昔から推論しながら進化をしてきました。
推論をする上で重要なのはデータであり、データをどのように取るか、どのくらい取るか。
インターネットが始まって、30年間で100万倍のトラフィック量になったが、今後30年間でもう100万倍になると予測しています。
自動運転車のドライバーやカメラ、IoTチップから莫大なデータが生まれ、やがてモノとモノがデータをやり取りし始める。
人間の脳だけでは100万倍のデータは処理できなくなり、膨大なデータはAIで分析・予測が行われるようになるでしょう。
2020年は5Gになりますが、10G、それ以上に通信速度やレイテンシが改善し、トラフィックは増加していきます。
これから30年後には、AIがデータを集め、プリディクション(予測)した方が当たる、という未来になっているでしょう。
AIになんでもかんでもやらせようというのはアプローチとして間違っています。
人間と同じで、適材適所です。AIの最も得意なこと、プリディクションに使うべきだと考えます。
この在り方も一つのビジネスモデルの革新です。そしてアーリーステージの会社に投資するのではなく、レイトステージ、ユニコーン企業、その国の大手企業に投資していくことで、より確実にビジネスを大きくしていくことができます。
Agarwal氏は、OYOでは「AIで従来のホテル企業の36倍のスピードで契約を行い、1日5000万件の価格調整や客室清掃管理アプリ活用で生産性を2.5倍に向上させた」など、ホテル業界をAIやデジタルテクノロジーで変革しています。
天気や交通量、ホットスポット(需要がある場所)などをAIが予測し、どこに行くべきかをドライバーにレコメンド。渋滞を避け家に戻ることができます。渋滞の克服によりインドネシアでは400億ドルのコストダウンになるといいます。
配車アプリだけでなく、フードデリバリー、決済、スコアリングサービスといった隣接事業もNo.1になっています。
インドは日本と同じく現金主義の人が多かったものの、利用者が4年で2000%増加。
決済データを元に店舗にお客様を誘導したり、お客様がよく使うよく買う商品のクーポンを発行するなど、店舗とユーザー間でのリアルタイムクレジット決済を行います。
Paytmが蓄積した膨大なデータを活用したローン審査によって、リアルタイムでローン審査ができます。
Paytmは2015年に銀行も作り、1年間でインドで最大のモバイルバンクになりました。
栽培レシピは64億通り以上、AIによって最適な栽培方法を判断します。また、生産工場は消費地の近郊に展開しているため、需要と供給をAIで予測・判断、最適な出荷を行うことができます。
「農作物の栄養、味覚、収穫高を向上させ、人間と地球を両方健康にする」とCEOのMatt Barnard氏は語りました。
孫氏は、日本企業へ以下のようなメッセージを送っています。
AIに特化したエンジニアが1000人以上いる企業は、日本にはないと思います。
フトバンク・ビジョン・ファンドをやってよかったのは、AIを活用して変革を推進している企業が集まったことです。AI革命による新たな世界の創造が始まっています。
日本の会社に投資しないのは、AIのユニコーン企業が日本にいないからです。投資したくてもできない、そのチャンスがない状態なのです。
しかし、AIの革命は始まったばかり。まだチャンスはあります。
25年前にyahoo!が生まれました。そのころはまだFacebookもgoogleもなく、Amazonは生まれたばかりでした。そこから世界のNo.1カンパニーになった事例もたくさんあるのは皆さん既にご存知の通りです。
まだ遅くありませんが、今やらなければなりません。
それと同じで、AIは仕事を奪うのではなく、新しい世界に踏み出すきっかけになると考えます。
AI革命は人間を幸せにするためにやるのであり、不幸せにするためにやるのではありません。
情報革命を進めていくこと、AIが人をより幸せにするために、人間の幸せのための情報革命を迎えていかなくてはなりません。そのチャンスが目の前に来ているのです。
情報革命はAI革命である、と昨年に続き強く訴えた孫氏の講演及び、ソフトバンク・ビジョン・ファンドで投資を行う世界のイノベーション企業のゲスト登壇レポートをお伝えします。
【目次】
- 未来を予見する水晶玉・AIを使いこなせ
- AIシフトで人類はさらに進化する
- ソフトバンクビジョンファンドは業界を革新する企業に出資
- 海外ユニコーン企業が各業界をAIで変革していく
- AI後進国となった日本に活路は
- 日本は一日も早く目を覚まし、情報のキャッチアップを
- 情報革命=AI革命
未来を予見する水晶玉・AIを使いこなせ
未来を予見する水晶玉があらわれようとしています。それがAIです。技術開発は人間の推論から生まれました。星の動きを観測し、地動説を唱えたコペルニクス。鳥が飛ぶ様子を見て飛行機の原型を編み出したダ・ヴィンチ。光を見て、相対性理論を考えたアインシュタイン。
人類は昔から推論しながら進化をしてきました。
推論をする上で重要なのはデータであり、データをどのように取るか、どのくらい取るか。
インターネットが始まって、30年間で100万倍のトラフィック量になったが、今後30年間でもう100万倍になると予測しています。
自動運転車のドライバーやカメラ、IoTチップから莫大なデータが生まれ、やがてモノとモノがデータをやり取りし始める。
人間の脳だけでは100万倍のデータは処理できなくなり、膨大なデータはAIで分析・予測が行われるようになるでしょう。
2020年は5Gになりますが、10G、それ以上に通信速度やレイテンシが改善し、トラフィックは増加していきます。
AIシフトで人類はさらに進化する
勘と経験と度胸によって行ってきた判断を、AIシフトすることによって人類の進化が加速していきます。これから30年後には、AIがデータを集め、プリディクション(予測)した方が当たる、という未来になっているでしょう。
AIになんでもかんでもやらせようというのはアプローチとして間違っています。
人間と同じで、適材適所です。AIの最も得意なこと、プリディクションに使うべきだと考えます。
ソフトバンクビジョンファンドは業界を革新する企業に出資
ソフトバンクは10兆円規模の資金を集め、AI革命に同時多発的に出資しています。この在り方も一つのビジネスモデルの革新です。そしてアーリーステージの会社に投資するのではなく、レイトステージ、ユニコーン企業、その国の大手企業に投資していくことで、より確実にビジネスを大きくしていくことができます。
海外ユニコーン企業が各業界をAIで変革していく
ここから、ソフトバンクビジョンファンドが出資する海外ユニコーン企業のセッションが行われました。32億を超える世界中のミドルクラスの人々の暮らしに変革を:OYO
インドの格安ホテル予約サービス「OYO」の創業者Ritesh Agarwal氏は2012年に起業し、あと数か月で世界一のホテル王になるとされている25歳の青年です。Agarwal氏は、OYOでは「AIで従来のホテル企業の36倍のスピードで契約を行い、1日5000万件の価格調整や客室清掃管理アプリ活用で生産性を2.5倍に向上させた」など、ホテル業界をAIやデジタルテクノロジーで変革しています。
東南アジアをよりよい場所に、SUPER APP:Grab
シンガポールの配車アプリ運営企業Grabは、2012年に創業後、Uberの東南アジア事業を引き継ぐまでに成長しました。天気や交通量、ホットスポット(需要がある場所)などをAIが予測し、どこに行くべきかをドライバーにレコメンド。渋滞を避け家に戻ることができます。渋滞の克服によりインドネシアでは400億ドルのコストダウンになるといいます。
配車アプリだけでなく、フードデリバリー、決済、スコアリングサービスといった隣接事業もNo.1になっています。
1年でインド最大のモバイルバンクに:paytm
Paytmはインドの電子決済及び電子商取引企業です。PayPayはPaytmのプラットフォームを活用していることでも話題です。インドは日本と同じく現金主義の人が多かったものの、利用者が4年で2000%増加。
決済データを元に店舗にお客様を誘導したり、お客様がよく使うよく買う商品のクーポンを発行するなど、店舗とユーザー間でのリアルタイムクレジット決済を行います。
Paytmが蓄積した膨大なデータを活用したローン審査によって、リアルタイムでローン審査ができます。
Paytmは2015年に銀行も作り、1年間でインドで最大のモバイルバンクになりました。
人間と地球を両方健康に:Plenty
2014年、アメリカで創業された室内農業を行うスタートアップ企業。AIによって、味や成長速度をコントロールし、従来の屋外平面農法と比較して2~6倍の栽培スピードを実現しています。栽培レシピは64億通り以上、AIによって最適な栽培方法を判断します。また、生産工場は消費地の近郊に展開しているため、需要と供給をAIで予測・判断、最適な出荷を行うことができます。
「農作物の栄養、味覚、収穫高を向上させ、人間と地球を両方健康にする」とCEOのMatt Barnard氏は語りました。
AI後進国となった日本に活路は
ソフトバンクグループは、アメリカの経済紙の報道によれば「企業価値は1966億ドル(約21兆2000億円)となり、現在の時価総額(1000億ドル)を上回っている」と言われます。https://www.barrons.com/articles/investing-in-softbank-is-a-bet-on-the-future-of-tech-51563582602こうした世界的に見ても影響力の強い企業が、本社所在地である日本では投資先がないと語った部分がメディアで大きく報じられました。
孫氏は、日本企業へ以下のようなメッセージを送っています。
日本は一日も早く目を覚まし、情報のキャッチアップを
日本はいつの間にかAI後進国になっています。日本は技術の世界最先端だったはずですが、日本はこの数年でAI後進国、発展途上国になってしまいました。ゼロから起業した若者たちがAIを使ってビジネスモデルを変えていっています。日本の政府や学者、知識人、ビジネスマンは一日も早く目を覚まし、キャッチアップしないといけません。AIに特化したエンジニアが1000人以上いる企業は、日本にはないと思います。
フトバンク・ビジョン・ファンドをやってよかったのは、AIを活用して変革を推進している企業が集まったことです。AI革命による新たな世界の創造が始まっています。
日本の会社に投資しないのは、AIのユニコーン企業が日本にいないからです。投資したくてもできない、そのチャンスがない状態なのです。
しかし、AIの革命は始まったばかり。まだチャンスはあります。
25年前にyahoo!が生まれました。そのころはまだFacebookもgoogleもなく、Amazonは生まれたばかりでした。そこから世界のNo.1カンパニーになった事例もたくさんあるのは皆さん既にご存知の通りです。
まだ遅くありませんが、今やらなければなりません。
情報革命=AI革命
2000年近く、人類のほとんどは農業に従事していました。日本では現在5%。農業が機械化され、人は新しい仕事に就くようになりました。それと同じで、AIは仕事を奪うのではなく、新しい世界に踏み出すきっかけになると考えます。
AI革命は人間を幸せにするためにやるのであり、不幸せにするためにやるのではありません。
情報革命を進めていくこと、AIが人をより幸せにするために、人間の幸せのための情報革命を迎えていかなくてはなりません。そのチャンスが目の前に来ているのです。
SoftBank World 2019公式サイト:https://sbw.tm.softbank.jp/