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試着とスタイリングを生体験!月額制ファッションレンタルサービスの課題と今後

毎日着ていく洋服を毎月レンタルできる月額制のファッションレンタルサービスが各社で展開されています。
その中でも会員数が20万人を超え、国内最大級とうたうのが「エアークローゼット」です。

通常はスマホアプリで完結するレンタルサービスですが実際に試着をすることが難しいため、サイズが合わない、好みではない、といった理由で着用せずに返却する方もいるといいます。

今回、アトレ恵比寿でスマートミラーを活用した遠隔パーソナルスタイリングイベントが行われると聞き、スタイリング体験をしてきました。
ファッションECサイトや月額ファッションレンタルサービスの弱点ともいえる「試着問題」を、IoTツールと共に解決する手法は有効でしょうか?
ぜひご覧ください。

【目次】

エアークローゼットとは

エアークローゼットは株式会社エアークローゼットが展開する月額制ファッションレンタルサービスです。

有料会員に対して250名以上のスタイリストが、ユーザーの登録した体型や好みのテイストの情報を元にスタイリングした3着をセットにして毎月借りることができます。

「いつも同じような服になってしまう」「季節ごとに流行を取り入れた服を買うのが大変」といった20代~30代女性の悩みを解決。プロのスタイリストが着回し術などをアドバイスしてくれるため、着こなしに自信がなくても新しいコーディネートに出会える可能性があり、気に入ったら買い取ることもできます。

月額費用はライトプラン6800円(税別)が返却期限なしでクリーニング込み、返送料は300円というベースプランで、レギュラープラン9800円(税別)は借り放題、あんしんレンタルサポートがついています。
さらに2019年12月からプラスサイズプラン12,800円(税別)が新しく登場します。

プラスサイズプランはL、2L、3Lと大きなサイズが選択でき、レギュラープランが1回につき3着のところ5着届くなど、従来のプランとの差別化がされています。

「atre EBISU Closet」で遠隔パーソナルスタイリングを体験

アトレ恵比寿はアパレルショップや雑貨店、書店、レストランなどが入居しているJR恵比寿駅直結の商業施設です。駅直結型のため、駅利用者が多く訪れるというメリットがあります。

「atre EBISU Closet」はアトレ恵比寿の27ショップからアパレルアイテムが集められ、スマートミラー越しにスタイリストからのスタイリングを受けられる体験イベントです。(※イベント期間は2019/10/25~27)

スタイリストと話ができるスマートミラーは2つ。鏡の右上に画面があり、別場所にいるスタイリストが体験ユーザーの顔やスタイルなどを見ながらコーディネートしてくれるというものです。

事前にスマホ等からメールアドレスやニックネーム、好みのスタイリングなどを登録します。もちろん体験スペース内でQRコードを読み取り、会員登録を行うことも可能です。エアークローゼットのスタッフの方とお話しながら登録を進めることができたので、疑問点はその場で質問して解決していきました。

スマートミラーの前ではiPadを操作し「よく履く靴のタイプ」「よく選ぶ色」「見られたい印象」など5つほどの質問に答え、簡易的なカルテを作ると、スタッフがその画面をキャプチャし、チャットツールでスタイリストに送信して、スタイリングがスタートします。

「スカートとパンツどちらが好きか」「どういう色味が好きか(ベーシックなものか派手なものか)」という質問に回答したところでスタイリストがトップス、ボトムスを一つずつ選び、それが鏡の中に表示されました。実物は現場のスタッフが持ってきて見せてくれます。

「気になるアイテムはありますか」と聞かれ、用意されている服の中から1点(ボトム)を選ぶと、それに合うトップスを紹介してくれました。「トップスの前だけインしてみるといいですよ」など着方も教えてくれます。

紹介された洋服は試着スペースで試着可能。普段は選ばないアイテムや色柄の服をおススメされることもあるため、新鮮な気持ちになれました。また、「ベルトの扱い方がわからない」など、こちらからの質問にもリアルタイムで答えてくれます。
プロのスタイリストに対応してもらっている満足感がありました。

ただし、オープンなスペースだったからかスタイリストの声が聞き取りにくく、またこちらの発言も聞こえていないことが何度かありました。もう少しコミュニケーションを取れている感じが欲しかったですね。

試着したアイテムのブランド名・商品名が記載されたカードがもらえるため、それを持ってアトレ内のお店に買いに行くこともできます。
サイズが合わなかったり、別の色を試してみたいと思った場合は、すぐに確認できるのは実店舗でのイベントの強みです。

またイベント用のクーポンコードを入力すると、有料会員レギュラープランの価格が9800円→7800円になる特典もありました。

会員登録は無料でも行えますが、アプリは有料会員でなくては利用できないため、アプリの中身はスタッフの方に教えてもらいました。
これまでの利用履歴や、スタイリストとのやりとりの記録、気に入ったアイテムの買取価格の確認などがマイページでできるようです。

アパレルのサブスクリプションモデル比較

エアークローゼット以外にも、いくつか月額制のファッションレンタルサービスがあります。

EDIST. CLOSET

オリジナルのシンプルなデザインの服で着回しがしやすいのがEDIST. CLOSET。3ヶ月間8600円のレギュラープラン、6か月間7900円のゴールドプランなど契約期間によって月額費用が変わる4つの会員プランで試しやすいのが特徴です。
プロのスタイリストが選んだ「フェミニンスカートセット」「洗練通勤スタイルセット」といったテーマの旬のコーディネートセットが届きます。

メチャカリ

earth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー)、Koeなどのアパレルブランドを展開するストライプインターナショナルが提供しているのが「メチャカリ」。ファッションサブスクの中でも黒字化を公表している数少ないサービスです。

メチャカリの強みは「新品をレンタルできる」点。レンタルから返却された商品はクリーニング後に「ユーズド品」として販売します。有料会員からの月額料金以外にもマネタイズがしやすいビジネスフローになっています。また、60日間返却しなかった場合はそのまま自分の手元に残すことができます。

レディース、メンズ両方のラインがあるのも特徴です。


leeap

メンズファッション専用のサブスクリプションサービスもあります。
男性はスーツスタイルも多いと思いますが、ジャケットやパンツを何着も買いそろえるのはなかなか大変。ジャケパンプラン13800円で毎月違ったスーツスタイルを試せるのはお得ではないでしょうか。

https://leeap.jp/


robes

「毎月返送作業を行うのは手間だし、季節ごとに服が届くだけでもいい」…という方には新品で3ヶ月に1回5着届く新しい定額サービス「robes」がローンチされています。
こちらも現在はメンズのみのラインナップとなっています。

https://robes.jp/


月額制ファッションレンタル、黒字化させるのは難しい?

このように、月額制ファッションレンタルやファッションサブスクはいくつかサービスが展開されていますが、事業として黒字化を達成しているサービスはまだ少ない状況です。唯一メチャカリが黒字化達成を公表していますが、広告費を除く、という条件付きです。

ファッションレンタルが抱える黒字化が難しい理由は、運用のコスト>月額利用料×有料会員数の図式がなかなか逆転しにくいところにあります。

運用のコストは以下のような内容です。

  • 配送料(返送料の負担もある)
  • クリーニング代(返却商品は必ずクリーニングしなくてはならない)
  • スタッフの人件費

この他、在庫を管理するコストに加え商品バリエーション、サイズバリエーションを揃える必要性など、顧客満足を得るための初期投資が必要になってきます。

売上を上げるには有料会員を増やし、物理的な収入を増やすことがポイントになりますが、サービスの認知度が上がらなければ収益化の道筋も見えてきません。サービスの認知度を上げるには広告コストが必要…となかなかコストの比重が下がらないのが黒字化が難しい原因といえます。

月額料金を単純に上げるだけでは有料会員の離脱につながり、事業から撤退した例も少なくありません。

ファッションレンタルの「お試し」イベントは有効か

顧客側としてはなるべくコストをかけずに、好みのレンタルサービスを選びたいと考えるのが当然です。
しかし「どんなアイテムが送られてくるのかわからない」「サイズ感が合わなかったり好みのデザインが届かなかったりしたら返却の手間ばかりかかってしまうのでは」といったユーザー側のネガティブな先入観を払拭しなければ有料会員へのハードルは高いままではないでしょうか。

EDIST. CLOSETでは1ヶ月のお試しプランを、メチャカリは3ヶ月間月額39円という破格のお試し価格を提示しています。
さらに今回のエアークローゼットのように、実際にどんな服がラインナップされているのかが試せれば会員登録のハードルが一つ下がると思われます。

もし実店舗があるのであれば受け取りを店舗にして物流コストと配送の時短を図るというのも手段の一つかもしれません。

所有から共有へ。ファッションレンタルの可能性

2014年頃にUberやAirbnbなどのシェアリングエコノミーが注目を集め始めてから5年ほど。企業を介在させるケースと個人間での取引になるケースとではビジネスモデルが異なるものの、モノを所有することから共有へと価値観が少しずつ変わり始めています。
テクノロジーの進化と価値観の変化によって新たな需要が生まれていることは確かです。

これまでレンタルサービスといえばCDやDVD、車など経年で商品の劣化がしにくいものがほとんどでしたが、ファッションレンタルサービス以外でもシェアリングエコノミーの概念を取り込み、バッグ、時計、家具といった高額商品のレンタルサービスを事業化する企業が増えてきています。

他社のサービスと差別化を図り、顧客の利便性向上を追求してレンタルビジネスを継続していくには、収集したデータをしっかりと分析してサービスに反映していくことが重要です。
スマホアプリを介して情報を集められる現代にこそ、より多様なレンタルサービスが生まれてくるのではないでしょうか。