AIアシスタント、スマートスピーカーが変える購買行動の未来
- AIアシスタントは、スマートスピーカーに搭載されているAIである。
- スマートスピーカーのシェア争いは始まったばかり。各社は、独自のインターフェースをもつスマートスピーカーを発表しているが、それぞれはほぼ横並び状態である。
- 音声でのやりとりに特化したスマートスピーカーは、普及すればこれまでのキーボード入力による検索や購入の図式を大きく変える可能性も。
AIアシスタント、スマートスピーカーとは
AIアシスタントは、バーチャルアシスタントとも呼ばれているソフトウェアエージェントです。AppleのSiriやGoogleのGoogleアシスタントなどが、これに該当します。「Hey, Siri」や「OK、Google」といったキーワードで起動し、音声や短いテキスト、写真でコミュニケーションをとることができます。このAIアシスタントを搭載しているサービスの一つが、購買行動を大きく変えるかもしれないスマートスピーカーです。
スマートスピーカーとは
スマートスピーカー(AIスピーカー)は、AIアシスタントによる音声操作が可能なスピーカーです。Wi-FiやBluetoothといった無線通信接続によって、さまざまなものとつながる「万能リモコン」の究極進化系といってもいいかもしれません。大きな革新をもたらすツールとしてはスマートフォン級のインパクトがあるとみられており、各社がそれぞれ独自のインターフェイスをもつスマートスピーカーを発表しています。ちなみに、「スマートアシスタント」などと表記されていることもありますが、これは搭載エンジンであるAIアシスタント(バーチャルアシスタント)と、スマートスピーカーが混ざってうまれた呼び方のよう。スマートスピーカーが正確な名称です。
まずは、スマートスピーカーが具体的にどのようなものとコネクトし、何を実行してくれるのか見てみましょう。
スマートスピーカーができること
スマートスピーカーにできることの基本ともいえるのが「質問と回答」です。人に向けて話すように質問することで、スマートスピーカーが返事をしてくれるというもの。ベーシックな質問では「今何時?」「今日の天気は?」など。ほかに、アラームの設定、音楽の再生やニュースの読み上げ、他デバイスと同期させてスケジュール管理をしたり、メッセージの送受信をおこなうこともできます。
AI家電全般に共通することですが、スマートスピーカーの性能は、日々進化していきます。将来的には新しく開発されるアプリとの連携や各企業の提携により、さらに多くの機能が追加されることが予想されます。
国内で販売されている主なスマートスピーカー
Google Home(グーグル・ホーム)
Google Home(グーグル・ホーム)は、2016年に北米で発売され、現在は国内でも購入可能なスマートスピーカーです。Google Assistant(グーグル・アシスタント)をAIとして搭載しており、比較的日本語を理解する精度が高いといわれています。
好きな音楽をかける、ニュースや天気予報を読み上げるといった基本的なスマートスピーカーの機能にくわえて、「Actions on Google」というシステムのアプリと連携した使い方ができることが特徴です。
サードパーティ連携機能「Actions on Google」によるアプリは、国内でも開発可能で、個人用として搭載することもできます。
Amazon Echo(アマゾン・エコー)
Amazon Echo(アマゾン・エコー)は、AmazonのAIであるAlexa(アレクサ)を搭載しています。2014年に登場し、国内では2018年現在、プライム会員のみが購入可能です。このスマートスピーカーはマイクの精度が高く、部屋のどこに置いても言葉を拾ってくれるというのが特徴で、アマゾンも聞き取り精度の高さを売りにしています。
こちらのアプリ開発は、「スキル」と呼ばれる機能拡張のシステムでおこなうことができます。
Clova WAVE
Clova WAVE(クローバ・ウェーブ)は、LINE(ライン)が開発したAI「Clova(クローバ)」を搭載したスマートスピーカーです。他のモデルと比較するとマイクの集音性が低いという声もきかれていますが、LINEメッセージを音声入力できるなど、LINEと連携したさまざまな機能を使用可能。将来的には、さらに日本向けに便利な機能が拡張されていくと考えられています。
スマートスピーカーと購買行動
スマートスピーカーがもたらす可能性1:音声による検索と購入
スマートスピーカーは、音声による問いかけに対して音声による回答を返すマシンです。この構造は、消費者がものを購入する際の検索行動を大きく変える可能性があります。現在は、特殊な当て字を用いたり珍しい外国語をブランド名として用いても、PCやスマートフォンで検索すれば読み方が出てきたり探しているブランドが出てくることが多いかと思います。
しかし、音声検索での買物が主流になると、消費者は音声入力しやすいブランドを選択する可能性が高くなります。
スマートスピーカーがもたらす可能性2:想起による購入
スマートスピーカーにはキーボードで商品名を検索したり決済ボタンをクリックするという動作がありません。「タオルが古くなったから買って」、「お茶を買わなくちゃ」という日常会話がそのまま購買行動になります。 つまり、「いつも使っているアイテム名、メーカー名、店舗」をスマートスピーカーが学習することで、購買行動における選択肢がせまくなる可能性があるということです。そのため、いくつかの商品を検索して比較したり、新製品や新ブランドを試しに探してみたりといった行動が少なくなる可能性があります。もっとも、従来のメルマガや、SNS上でのプロモーションのような宣伝をスマートスピーカーにおいても展開することで、選択肢を広げる働きかけが可能なパターンも想定できます。
スマートスピーカーがもたらす可能性3:AIスピーカーとカスタマーサービスの融合
カスタマーセンターや商品説明書の存在は、スマートスピーカーが代わりを担うかもしれません。「この商品の使い方を教えて」、「壊れた部品を交換したいけど、まだ在庫あるかな?」といった消費者の相談は、AIスピーカーに商品知識を学習させることで24時間かんたんに対応可能となるでしょう。
むしろ、カスタマー対応をスマートスピーカー向けに整備することこそ、「便利で使いやすい」とされる商品の指標になる可能性もあります。
まとめ
スマートスピーカーのシェア争いはまだ始まったばかりで、サードパーティによるアプリの開発も、現在一強と呼べるようなサービスは登場していません。しかし、10年前にスマートフォンがこれほど当たり前になる未来が予測しづらかったように、新技術の革新はひとつ大きな出来事が起こると、従来までの世界が一変してしまうこともあります。日用品を注文することなく補充購入できるアマゾンのダッシュボタンや、ネットと実生活をつなぐIoT家電などは、実際に世に出ており、今後普及率が高まるのではないかと予想されています。
ECサイトを運営するにあたっては、いつスマートスピーカーが爆発的に普及しても対応できるよう、音声認識の未来や、消費者との次世代的なコミュニケーションについて、計画的かつ柔軟な反応が求められます。