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食品通販市場の2025年予測 成長の鈍化をUGCとDX化で乗り越える


2025年は、続く物価高と物流の2024年問題もあり、食品通販市場の成長は鈍化すると見込まれます。
しかし、自分へのご褒美、日常の食事の効率化など中食需要は依然として高く、節約志向が高まっても「購入したい」と思わせる工夫が求められています。



消費者はUGC(ユーザー生成コンテンツ)を重視する傾向が強まっており、特に画像や動画と共に投稿されるレビューは支持されやすくなっています。消費者のリアルな声をいかにプロモーションに活用するかが鍵となるでしょう。
さらに、誤認を招く広告への苦情対策や、機能性食品の規制への対応準備も求められます。



本稿では、2026年9月から義務化される「GMP(適正製造規範)による製造管理(品質)」と「健康被害報告(安全性)」にも言及しながら、2025年の食品通販業界の状況を予測しています。


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2025年の食品通販市場の展望



2025年の食品通販市場は、続く物価高の影響とSNSの影響力がキーワードになります。
いくつかの専門機関は、2022年度の国内食品通販の総市場規模は、前年比0.3%減の4兆5,752億円と推計しています。



これは、物価高と、コロナ禍の制限解除による食品通販の需要の落ち着きが原因とみられています。この2つの要因は2023年度も市場規模に影響を及ぼすと推定されているため、2025年も成長が鈍化する可能性があります。
さらに、物流の2024年問題に端を発する配送料の値上げが与える影響も少なくありません。



しかし、誕生日など特別なイベント時に贅沢を楽しむいわゆるギフト需要、値上げによる販売価格上昇といった要因を加味すると、市場規模は1.0%程度増加するのではないかという予測もあります。



中食の傾向はどう変化したか



中食は、共働き世帯の増加と、ステイホーム時の需要によって急速にシェアを拡大してきました。食品通販の利用頻度はここ数年一定の水準を維持していて、中食が一般化されたことがうかがえます。
現在では、日常的な購入に加えて、「自分へのご褒美」としてお取り寄せ食品を購入する人も増えてきました。
ある調査によると、自分や家族の誕生日や、クリスマス、お正月といった日に特別感を求めて「お取り寄せ」を購入する消費者数は、2019年比で増加傾向がみられます。



購入商品の決定においては、SNSの果たす役割が大きくなっています。特にインスタグラムの影響は大きく、X(Twitter)、YouTubeなど視覚的なコンテンツが購買意欲を高めています。
コロナ前の2019年には、ショッピングサイトやメールマガジンが食品通販の商品認知に役立っていました。
コロナ禍以降は、ショッピングサイトよりも、SNSの影響力が増しています。



物価高による節約志向の影響



自分へのご褒美にお取り寄せを購入する動きは高まっているものの、続く物価高で節約志向も強まっています。



この傾向は、2019年と2024年に実施された「お取り寄せを1年にどれくらい利用するか」といったある調査にもあらわれています。「1ヶ月に一回以上」という回答はどちらの年も30%で変わらないものの、「3ヶ月に一回以上」との回答は33%(2019年)から減少して26%(2024年)となり、代わりに「1年に一回以上」と回答した人は2019年比で6ポイント増加しました。



使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています




食品通販の起点は消費者起点のUGC



UGCは「User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)」の略で、消費者が自発的に作ったSNSや口コミの投稿、ブログ記事などがその具体例です。
特に、SNS上のレビューは他の消費者の購買意欲に大きく影響するといわれています。視覚的な情報が強みのインスタグラムは、購買判断に影響を与えやすいとされています。



食品ロス削減を掲げるサービスやアプリと消費者の関係が、UGCの具体例として挙げられます。農林水産省のデータによると、日本の1人あたり年間食品ロス量は約41kgとされており、対策として賞味期限が近い食品や規格外の食品と、購入したい消費者をつなぐプラットフォームがいくつか登場しています。



こうしたプラットフォームは、ユーザーの商品購入体験やSNSに投稿したレビューが他の購入者を呼び込んでおり、消費者起点で売上が伸びている分野です。



・農林水産省「食品ロス量」

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口コミの影響力は大きい



食品通販の購入を検討する際、ある調査では、消費者の多くが口コミを最も重視するといわれています。
特に食べた感想や、中身や商品パッケージの画像が添付されている口コミは信頼度が高く、購入の後押しをしやすいレビューです。口コミをもとに購入した消費者の多くが、期待通りだったと感じる傾向があります。



このように、消費者目線の口コミは他の消費者にとって有益な情報になっています。
最近では、節約傾向を受けて「コスパ」や「価格」に焦点を当てて投稿が購買を決定づけることが増えている印象です。



「苦情」対策は重要



公益社団法人日本広告審査機構(JARO)によると、2024年度上半期の苦情件数は前年同期比92.3%と減少しましたが、健康食品に関する苦情は133.8%と増加しています。
ちなみに、減少した業種はオンラインゲームや化粧品、買取・売買といった業種です。



医薬部外品は1回限りのはずが実際は定期購入契約だったり、解約に追加料金がかかる設定になっていたりといった事例が報告されています。
誤認させるような広告以外では、過度に露出が多い性的な広告も、消費者から生理的不快感を覚えるという苦情が寄せられることが増えています。



ひとつの声が他の多数の消費者に参考とされやすい時代だからこそ、広告表現は熟慮が必要です。苦情が寄せられた場合の対応についても、一定の方針を決めておくと安心でしょう。



機能性食品に対する規制も



機能性食品については、2026年9月から「GMP(適正製造規範)による製造管理(品質)」と「健康被害報告(安全性)」が届出要件に加えられ、義務化されます。
これは特定保健用食品、いわゆるトクホも同様の運用となります。



健康被害報告の義務化については2023年9月からすでに実施されており、報告しない場合は食品衛生法違反で営業停止を言い渡される可能性もあります。
健康被害は、因果関係が不明であっても医師の診断があれば保健所や消費者庁に報告しなければなりません。



これをスムーズに行うためには通常時の管理が重要ですが、対応の素早さや正確さは各企業によってばらつきがあるのが現状です。
万が一健康被害の申し出があった時に即応できるかどうかについては、顧客管理システムや窓口の会話データの記録など、日頃からどのように消費者について把握していくかがカギとなります。
理想は、健康被害や報告をカテゴリ化、番号化してトレース可能な状態を保っておくことです。



また、摂取者の性別や年齢といった情報や医療機関を受診した場合の症状、経過も適切に把握できるシステムを整備することも必要になってくるケースがあります。
ある調査では約7割の企業が健康被害報告の義務化を受けて、報告体制を見直す必要があると回答していることが明らかになっています。



現時点で、医師へのヒアリングを行うための専門知識を自社が有していると回答した企業は約半数でした。
また、消費者から受けた報告を迅速に把握するためには、そのフローの全体を見直す必要があると考えている企業も少なくありません。情報共有を迅速に行うためには、顧客窓口から管理部門への迅速な連携が求められます。



EC市場の一角を担う食品通販ジャンルの今後



食品通販の今後を考える上で成長要因となるのは、高齢者を含む幅広い世代がECモールを利用するようになったこと、ネットスーパーが一時鈍化しつつも一定の成長を遂げていることです。
一方で、物価高による節約傾向が続いていること、物流の2024年問題に伴って配送料が高騰していることは成長を阻む要因になっています。



食品は他の商品と比較すると単価が安く、配送料の比率が高くなりやすいことから、消費者が「割高感」を感じてしまうことも増えています。
消費行動の傾向として、中食需要は変わらず強くあらわれていますが、価格への敏感さが感じられます。



2025年は、これらの要素を把握した上で販売の施策を講じていく必要があるでしょう。
市場全体の成長率は、物流費の上昇や消費者の節約志向の影響を受け、緩やかになると予測されています。
実店舗がある場合は、オンライン注文+店舗受け取りのシステムを構築するなどして、できる対策をとっていく必要があるかもしれません。



さらには、リピーターを増やす施策や、データ活用を進めるDX化で、これに対応すると事業成長の可能性が見えてくるはずです。
リピーター増の施策として代表的なものは、会員制度やサブスクリプションです。定期的な配送で配送料の負担を下げつつ、同時に顧客の囲い込みを行うことができます。



また、DX化によって物流コストの効率化、これまで活用できていなかったデータを活かした潜在顧客の発掘などが期待されます。