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成功するプロジェクトは、こんな風に進んでいる。チェックすべき11のポイント

ECサイトやPOSのリプレース、オムニチャネル化、etc——時代の変化とともに小売業界の各企業が必要とするシステムの在り方は複雑さを増し、当然のようにそれに伴って各プロジェクトの進行自体も難易度が上がっています。

予算も決まっていた、スケジュールもしっかり引いて、やるべきことも明確だった……はずなのに、いざプロジェクトを進めようとすると、なぜか上手くいかない……という状況は避けたいものですよね。特に企業の命運がかかったプロジェクトであれば、なおさらです。

本項では、スムーズに進行し、成果を発揮できている流通小売業のITプロジェクトに共通している重要なキーポイントを、ITコンサルタントの視点で紐解いていきたいと思います。
目次:
  1. 部署を横断したプロジェクトチームが組まれている
  2. プロジェクトにリソースを割ける環境がある
  3. プロジェクトチームに部署を横断して意思決定できる権限がある
  4. プロジェクトチーム自体が決裁権限を持っている
  5. 総務・経理系の人間も巻き込んでいる
  6. 外部コンサルにプロジェクトのハンドリングを委託している
  7. 全てのタスクで「5W1H」が徹底されている
  8. 誰が答えるべき質問なのかが全てにおいて明確になっている
  9. 「予算ありき」や「要件ありき」ではなく、「目的ドリブン」である
  10. 部署単体の利害を超えて正しい取捨選択ができている
  11. トップの過剰な越権は控える

1、部署を横断したプロジェクトチームが組まれている

そのプロジェクトが成功するかしないかは、実はキックオフする前の段階にもいくつかのポイントが存在します。その中で、最も重要なポイントの一つが、プロジェクトチームの存在です。

上手くいくプロジェクトでは事前に部署を横断した形でプロジェクトチームが組まれているケースがほとんどです。そこで根本要件を徹底的に詰めた上でRFPに落とし込まれている場合は、プロジェクトの意図がずれることなく進行できています。

さらに言うと、RFPに事業者側のプロジェクトチームの体制までが記載されていると、ベンダー側としても事業者のプロジェクトに対する「本気度」と言うものを肌で感じる上に、様々な場面で適切なカウンターパートを当てることができるため、比較的スムーズに進行上の課題を解決していくことができます。

逆に言えば、プロジェクトの取りまとめを単一の部署(例えば情報システム部門など)に背負わせているような場合は、進行でつまずく確率が比較的高いと言えるでしょう。

プロジェクトチームも、ただ立ち上げるだけでは名ばかりのチームになってしまいます。企業の事情によってプロジェクトチームの在り方は様々だと思いますが、総じてしっかりとプロジェクトを推進できる理想のチームは、以下のような性質を持っているのではないでしょうか。

2、プロジェクトにリソースを割ける環境がある

どんな企業においても、一時的なプロジェクトを専門に請け負う部署というのは存在しないでしょう。様々な通常業務をこなしながら、システム開発に関するプロジェクトにも参画することになります。

大抵の場合、個人や部署の評価は通常業務に紐づいているため、どうしても臨時のプロジェクトは優先度が低くなりがちですが、成功しているプロジェクトでは重要性が社内で十分に啓蒙され、通常業務のバックアップ体制含めて、プライオリティを高めてそれぞれの担当者が参画しやすい環境を作っていると言えます。

3、プロジェクトチームに部署を横断して意思決定できる権限がある

要件を固めていく際は、システムの技術的な要素と、業務のオペレーション的な要素の両側面をマッチングさせていく必要があります。
成功するプロジェクトチームには、必ずと言っていいほど、システム部門の人間だけでなく業務部門側の人間も参画しています。

EC部門、店舗部門、あるいはマーケティング部門、経営企画室など、事業に携わるあらゆる部門からプロジェクトメンバーが選出されているケースもあります。もう一点、大切なポイントは、そのプロジェクトチームでの決定事項は絶対であるという強い権限が与えられており、各部署の利害を超えて意思決定がスムーズにできることでしょう。

4、プロジェクトチーム自体が決裁権限を持っている

大抵のプロジェクトでは、どんなに事前に緻密に予算を見積もっていたとしても、見えていなかった細かい部分がたくさん出てきて予算が膨らむ場合がほとんどです。その際、最終金額のゴールイメージはもちろんなのですが、はみ出た分の決裁権限をプロジェクトチームで持てる(あるいは、経営サイドが正しい投資判断が可能なように説得できる)のが理想的です。
中には、プロジェクトチームにその権限がなく、経営サイドに上申しても却下された結果、非常に中途半端なシステム開発に陥ってしまうケースも散見されます。

5、総務・経理系の人間も巻き込んでいる

プロジェクトチームを編成する際に見落とされがちなのが、総務・経理系部署からのメンバー選出です。特に、キャッシュレス決済化を進めようとしていたり、クレジットの決済料率を変更するようなプロジェクトだった場合、それらの業務はただでさえ複雑なため、現場の温度感がわかるメンバーを巻き込んでプロジェクトを進行することで、比較的スムーズに進行できるはずです。

6、外部コンサルにプロジェクトのハンドリングを委託している

仮にプロジェクトチームを編成することはできても、社内でプロジェクト推進の先頭に立てる人材がいないというケースもあるでしょう。その場合、外部のコンサルティング会社にプロジェクトのハンドリングを委託することでスムーズな進行を実現している企業も多く存在します。社内の工数ではなく、コストをかけることでリスクを最小化するという考え方です。

もちろん、社内でその役割を負える人材がいることが理想的ですが、社内リソースがないからといってプロジェクトを諦めることはありません。適切な棚卸しポイントを心得ているコンサルタントに介入してもらうことは、プロジェクトの進行をスムーズにするには効果覿面と言えますし、一度それを経験しておけば、社内に知見が溜まり、次のプロジェクトに活かせるという利点もあります。

7、全てのタスクで「5W1H」が徹底されている

ここからは、プロジェクトがいざキックオフした後のポイントを見ていきたいと思います。システム開発に関するタスク項目は想像以上に多岐に渡るため、いつまでに何を、誰がやる、という一見当たり前のことが、どこかで抜け落ちがちなものです。

特に、プロジェクトを進めるうちに、事業者側とベンダー側のメンバーの仲が良くなったりするとありがちなのがタスクの主語が抜けたり、共通認識を持っているようで実はそれがズレていたせいでトラブルに発展する(「これはここまでに終わると思っていました」など)というケースです。上手くいっているプロジェクトは、全ての細かいタスクにおいて徹底的に5W1Hが明らかにされているものなのです。

8、誰が答えるべき質問なのかが全てにおいて明確になっている

上記とも関連しますが、これはどちらかというとベンダー側の問題と言えるでしょう。多くのプロジェクトではWBSや課題管理表が存在します。その中でQ&Aで、大抵は質問者と回答日を書く欄があったりするのですが、きめ細かいプロジェクトでは「誰宛の質問なのか」までが明確です。
なぜなら、システム開発に関係する業務には、担当と担当の「隙間」になるようなものが多々あって、その隙間業務に該当するような質問に対して、全員が「自分は回答する担当ではない」と思ってしまった場合、そのタスクは宙に浮いたまま貴重な時間がどんどん過ぎ去っていく羽目になるからです。

例えば配送伝票の取り扱いはEC担当者なのか?物流担当者なのか?ピッキングの処理はどうするのか?など、複数の部署にまたがる業務に関する質問については特に注意が必要でしょう。

9、「予算ありき」や「要件ありき」ではなく、「目的ドリブン」である

プロジェクトの蓋を開けてみると想定より予算が膨らむ、という現象は当たり前のように起きるものだということは前述した通りです。その際に陥りがちなのが「予算ありき」でプロジェクトを進める or 「要件ありき」でプロジェクトを進める、という考え方です。

しかし、実はこれはどちらも正解ではありません。上手くいくプロジェクトは常に「目的ドリブン」になっています
予算に収まらなかった時に優先すべき事項は何であるのか。部署ごとに譲れないと思っている要件がずらりと並んでいる中で、どのような取捨選択をすべきなのか。それらを決定する最終的な拠り所は企業としての明確な目的しかありません。

成功しているプロジェクトには必ず明確な目的が存在し、なおかつそれが全社的に啓蒙されています。そのようなプロジェクトでは、短期的には見送った仕様があったとしても、その目的を果たすために次期の予算を早々に確保しにいく、という判断もできます。

10、部署単体の利害を超えて正しい取捨選択ができている

難しいのは、全社的な目的が明確でも、各部署がそれを目指した時に主張することは、それぞれ違うことも多い、ということです。特に大企業で縦割りの組織になっていたり、独立採算になっていたりすると、全社的なコンセンサスを得ることは難易度が高いでしょう。
その時に、目的に照らし合わせ、部署単体の利害を超えて正しい取捨選択ができるプロジェクトは上手くいくプロジェクトと言えます。

これは、家を建てたり、結婚式をどうプロデュースするか、という視点と同様です。どちらも金額のゴールイメージがありつつ、定義すべき要件は多岐に渡ります。そしてその結果、大抵は予算をはみ出すものです。その際、それをやる目的が明確に言語化されていればいるほど、夫婦間で前向きな妥協と合意形成できる、というのはイメージしやすいと思います。システム開発も、本質的にはそれと同じなのです。

11、トップの過剰な越権は控える

最近話題になった東京オリンピックのマラソン開催地の変更は、表から見ている限りでは「成功しないプロジェクト」の典型になってしまっていると感じます。

「選手の最高のパフォーマンスを最重要視する」という目的自体は、もともと各方面で共有できているはずです。プロジェクトチームがその目的に向かって要件定義を進め、道路の表面温度を約5度下げることにも成功して、スタート時間をずらすなどの「開発」も進めている中、ドーハにおける世界陸上で不安要素が出てきた途端、トップがプロジェクトチームの行動を全部飛ばして、「札幌開催」というオプション導入を決定してしまうという構図は、開発がある程度進んだプロジェクトで、企業のトップが突然、独断で別のオプションをベンダーに直接発注するようなものです。これでは、既にかかってしまっているコストも含めて現場では混乱の極みでしかありません。そもそも「東京オリンピック」である、という前提も崩れてしまっています。

正しいトップダウンは、あくまでプロジェクトチームから行われるべきであって、経営陣含めてコンセンサスを取った上で(つまり、プロジェクトチームの決定=経営の決定とした上で)、そのための権限をプロジェクトチームに対して与えられるのが理想の姿です。

さいごに

自社のプロジェクトをどのように進めていくか、11のポイントをお伝えしました。
流通小売業のITプロジェクトは経営戦略にも関わる大きな企画である場合もあります。多角的な視点と緻密な判断が求められ、チームが同じゴールを目指していく必要があるでしょう。
様々な困難を乗り越えてプロジェクトが成功を収められるよう、しっかりとポイントをおさえてプロジェクト開発を進めてください。

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