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消費増税によるキャッシュレス決済ポイント還元:3大ECサイトの動向

2019年10月1日から、消費税は10%に上がりました(軽減税率適用商品をのぞく)。併せて実施されたのが「キャッシュレス・消費者還元事業」です。
カードや電子マネーなどで決済すると一部が還元されるこの制度はECサイトにも大きな影響を与えています。
Amazon、楽天、ヤフーという3大ECサイトは、どのような対応をとっているのでしょうか?
今回は、3大ECサイトが実施しているポイント還元制度とその違い、ヤフーとLINEの合併がEC業界に及ぼす影響について書いています。
目次:

消費増税前の駆け込み需要はECにも

消費増税前に、欲しかった高額な商品やストックしたい日用品を購入しておく、いわゆ2019年2月に実施した「全国1万人意識調査」によれば、約7割の人が何らかの商品を増税前に買いだめ、買い置きしておくと回答したそうです。そして、その約3割は、その購入方法としてECサイトの利用を想定していました。
しかし、実際に増税直前となってみると、駆け込み消費はそれほど加熱しなかったのでは?と思う方も多いのではないでしょうか。
それは増税と併せて実施されている「キャッシュレス・消費者還元事業」を待って買い物をしようと考える消費者が一定層いたためと考えられます。

キャッシュレス・消費者還元事業とは

キャッシュレス・消費者還元事業は、経済産業省が実施している事業です。
中小・小規模事業者の店舗が対象となっており、代金を現金以外で支払うと5%の還元が受けられる仕組みになっています。
キャッシュレス決済手段は、クレジットカード、QRコード決済、電子マネー(SuicaをはじめとするIC系カード)で、これらを利用して買い物をすれば消費税が8%だった2019年9月よりも、増税された10月以降の方が安く購入できる計算になります。 つまり、増税前に慌てて買い物をするよりも、お得に購入できるというわけで、駆け込み消費がさほど大きな話題にならなかったのはこれが理由のひとつとされています。

経済産業省「キャッシュレス・消費者還元事業」 https://cashless.go.jp/


三大ECサイトとキャッシュレス・消費者還元事業

三大ECサイト(Amazon、楽天、ヤフー)は、いずれもキャッシュレス・消費者還元事業を利用していますが、それぞれECサイトとしてのビジネスモデルが異なるため、割引対象、還元方法に違いが出ています。 市場は、三者の差異に接した場合のユーザーの対応や温度感によって、三大ECサイトの勢力が変わる可能性もあるとみています。
それぞれの対象や還元方法についてみてみましょう。


Amazonはマーケットプレイスの商品のみ還元対象

楽天やヤフーはオンラインのショッピングモールであり、サイトに出店しているそれぞれの店舗から商品を購入するかたちをとっています。
しかしAmazonは両者とは異なり、商品そのものを出品するかたちをとっています。そのため、Amazon内では事業者がAmazonマーケットプレイスで販売している商品のみが還元対象となります。

Amazonは、マーケットプレイスの対象商品について「即時充当」のシステムをとっています。これは、決済の段階でポイント還元分を付与することで実質的な値引きになっており、消費者にとっては安さを実感しやすい購入方法といえるかもしれません。その場で還元されればポイントの消費期限や◯◯◯円以上からポイントを使えるなどといった制約を気にする必要もないため、利便性の面においてもメリットを感じやすいはずです。
この仕組みによって、Amazonで対象商品を決済する時には、税込価格から5%引いた金額が提示されます。
なお、AmazonではクレジットカードだけでなくAmazonギフト券、Amazonポイントで支払いをした場合も「キャッシュレス対象」とみなされます。


楽天は楽天カード重視のキャンペーンで還元

楽天も金融機関の口座引き落とし時に還元分を差し引く店舗が多く、実質的に還元を「値引き」としておこなっています。 ポイント還元対象はクレジット決済に限られているため、Amazonやヤフーに比べると使い勝手がよくないと考える消費者も出てくるかもしれません。
しかし、楽天カードで決済した場合のサービスは手厚く、

  • キャッシュレス決済による還元(5%)分
  • 楽天会員通常ポイント(100円につき1ポイント)
  • カード利用特典につき、別途100円につき2ポイント
が付与されます。
楽天カード以外で決済すると「カード利用特典」分のポイントは付与されないため、楽天がECサイトでの勢力を強めれば同時に楽天カード加入者も増えていくかもしれません。

また、楽天では、スーパーポイントアッププログラムをはじめとした特典やキャンペーンが数多く実施されており、条件次第では最大16倍ものポイントアップが実現することもあります。
こうしたクレジットカードの差別化が、楽天提供の各種サービスの利用促進になるのではないかと、楽天の広報は発表しています。

ヤフーはPayPayを強力にプッシュ

ヤフーは、Amazonや楽天のような「値引き」型ではなく、還元分5%に相当するPayPayポイント「PayPayボーナスライト」を後ほど付与する手法をとっています。 いうまでもなく、ヤフーはPayPayを普及させ利用者数を増加させたいというもくろみがあり、強力にPayPayをキャッシュレス決済の手段としてプッシュしています。
「PayPayボーナスライト」は60日間の有効期限を有するPayPay残高のことで、使用期限のある電子マネーのようなものです。チャージした残高ではないためか、通常の購入支払いには利用できますが、一部の機能が利用できない制限がかかっています。

ほかに、PayPayにチャージできる唯一のクレジットカードであるYahoo!Japanの利用者限定の還元も用意されています。
  • 通常ポイント(1%)にくわえてカード利用分のポイント2%を付与
  • Yahoo!プレミアム会員なら会員特典としてさらに4%を付与
こうした特典によってヤフーは、今までPayPayを利用していたけれどYahoo!カードは所持していないというユーザーをカードの顧客として取り込める可能性が見込めます。

PayPayボーナスライトの付与は、週一回(現在は木曜日)におこなわれます。そのため、消費者がキャッシュレス決済によるポイント還元を受け取れるのは、最短で注文日の翌週木曜日となります。
しかし、付与する日を週2回、ないし3回に増やす案も検討されており、今後はさらに使い勝手のよいポイント付与が実施されるかもしれません。

キャッシュレス決済によるポイント還元は20年6月まで

キャッシュレス決済を浸透させるためのポイント還元制度は、10月25日時点で1日平均10億円分のポイントが消費者に還元されていると発表されています。
もともとポイント還元制度は、2020年6月いっぱいまでの限定的な制度ですが、期日を待たず3月末に原資が不足してしまうおそれが指摘されています。 政府は、追加予算を検討するとしたものの、具体的な金額やどこから予算を調達するかといった問題は明確にしていません。

キャッシュレス決済を優遇するポイント還元制度は、もともと我が国のキャッシュレス化を推進するために整備されました。多くの消費者が電子マネーやQRコード決済を優遇する制度の恩恵を享受することが、キャッシュレス決済を普及するために必要といいかえてもいいでしょう。
キャッシュレス決済は世界各国で便利な支払い方法として定着しつつありますが、日本は他の先進国と比較すると現金の支払い率が高い傾向にあります。

つまり、制度がある程度長期に渡って存続しないと、政府が思うような普及率を達成できないかもしれません。
そのため、どのように予算を調達するか今後の舵取りに注目が集まっています。

前回の消費増税でECサイトは集客減だった

消費税が5%から8%に引き上げられた2014年4月、ECサイトの集客はどのような推移をみせたのでしょうか。
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズによると、主要なECサイトは、2013年4月と比較して6.1ポイントの集客減少でした。特に集客が減少したのは、化粧品や日用品、雑貨で、反対に食品や飲料は前年比111.9%と上回っています。

2014年と2019年では、消費者のECサイト依存度は異なっていることにくわえて、2019年の増税では軽減税率の導入やキャッシュレス決済によるポイント還元制度といったイレギュラーな要素が存在しています。同じ増税後といっても状況は大きく異なるため、安易に2014年と現状とを比較することはできないでしょう。

とはいえ、嗜好品に近い化粧品や日用品は集客が減少し、定期便やまとめ購入で割引されるような食品や飲料はかえって集客を伸ばしたというのは、今回の増税においてもひとつのヒントになるかもしれません。

・マナミナ「消費税増税後のECサイト集客動向レポート」
https://manamina.valuesccg.com/articles/180

ヤフーとLINEのタッグによってECサイトの勢力図はどうなるか

ヤフーとLINEとの合併は、大々的に報じられました。2019年12月に最終契約を締結するよう、協議されていくようです。
一方市場では、はやくもPayPayとLINE Payが合体することによる影響について議論が沸騰しています。両社が合併すれば1億人規模のユーザーを抱える巨大サービスが登場するからです。
キャッシュレス決済だけを見ても、その利用者数は圧倒的。PayPayのユーザー数は1,500万人といわれており、LINE Payのユーザー数約3,700万人を単純に足して合わせると、日本最大規模のキャッシュレス決済ツールが誕生することになります。
ただでさえ、乱立気味だと指摘されていた国内キャッシュレスサービスですが、ヤフーとLINEによって淘汰される可能性も濃厚になってきました。多すぎるキャッシュレス決済サービスは、端末の使い分けなど実店舗の負担が増えるだけでなく、消費者の混乱をも招くからです。消費者がキャッシュレス決済を敬遠すれば、ECサイトでの利用も消極的になりかねません。事業者、消費者双方のために、決済方法やサービスは利便性を追求したいところです。

ヤフーとLINEがタッグを組むことによって達成される可能性があるのは、「あらゆる年齢層をカバーしたデジタルサービス網の構築」です。30代以上がそのサービスを利用していることが多いヤフーと、若年層に人気のLINEが経営統合することにより、老若男女を問わないユーザーの情報がひとつの企業に集まることになるでしょう。
これによってキャッシュレス決済が一気に多くの消費者の身近なものとなり、ECサイトの勢力図を大きく変える可能性もあります。


3大ECサイトの勢力争い、その先に世界が広がる

ヤフーとLINEの経営統合の立役者となっているのがソフトバンク創業者であり、さまざまな役職を兼任する実業家、孫正義です。
孫氏は、GAFAやBATといった世界的な巨大プラットフォーム企業を見すえた上で、国内での消耗戦に決着をつけるべき時であるという認識をさまざまな場所で表明しています。
GAFAは、

  • Google
  • Amazon
  • Facebook
  • Apple
という米国に拠点を置く世界的な企業の頭文字で、BATは、

  • バイドゥ
  • アリババ
  • テンセント
という中国の巨大企業の頭文字をとったワードです。
これらの世界的な企業と比較すると、国内の狭い市場で展開することには限界があり、合併によって対抗姿勢を整える必要があると考えられています。
デジタル企業のトップが世界をみすえた戦略をとっている以上、ECサイトにおいても変化の時が訪れるのは想像にかたくありません。
ヤフーとLINEの今後が、キャッシュレス決済のあり方をまた違ったものにする可能性があります。

まとめ

Amazon、楽天、ヤフーは、国内の制度であるキャッシュレス決済のポイント還元に対し、それぞれのシステムを構築しています。
今後は消費者がどのサイトの制度を好み、積極的に利用していくかに注目していきましょう。

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