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マーケティング4.0とは?デジタル時代を生き抜くECサイトの戦略について


「マーケティング業務とは何をすればいいのか?」と考える企業担当者は少なくありません。マーケティングの概念は年々進化しており、その時代に合った手法が重要となります。また、近年ではマーケティングは経営戦略の重要な要素となっており、マーケティング部門だけでなく企業全体の取り組みとして実施するケースも増えています。



「マーケティング4.0」は現在のデジタル社会に寄り添った手法であり、「顧客にいかに推薦してもらえるか?」がポイントになってきます。



マーケティングの進め方に悩む担当者やマーケティングを事業戦略に組み込む必要がある経営者に対し、マーケティング1.0~4.0の歴史、マーケティング4.0の考え方、ECサイトが成功するポイントについて解説します。また、2021年に発行された「マーケティング5.0」についても触れていきます。



目次:





ECサイトの生き残りにも欠かせないマーケティング



「マーケティング4.0」提唱者はマーケティングの神様コトラー



マーケティングとイノベーションの権威として知られるフィリップ・コトラー氏。マーケティング4.0は、コトラー氏の提唱するマーケティングの概念です。



「マーケティングの神様」と呼ばれるコトラー氏は、ノースウェスタン大学の教授を務め、IBMやミシュランといったアメリカなどのグローバル企業でマーケティング戦略を請け負い、成功へと導いています。



https://www.pkotler.org/




そもそもマーケティングとはなにか



ECサイト企業でも頻繁に行われる「マーケティング」ですが、マーケティングの本質を理解している人は少ないのではないでしょうか。



コトラー氏が来日した際、「マーケティングとは、企業の成長エンジンだ」と語っています。広告やプロモーション戦略といった狭い意味ではなく、広い意味で捉え直すべき、というのがコトラー氏の考えです。



「作ったものをどう売るのか?」という戦略はすでに古くなりました。



これからは「自分たちが顧客のために、どんなものを作るべきか?」「自社の商品は市場にふさわしいのか?」という商品の根本部分を考えることが、今のマーケティングで重要となります。



参照サイト:NEC business leaders square wisdom「フィリップ・コトラーが語る、これからのマーケティング」
https://wisdom.nec.com/ja/innovation/2018011701/index.html



コトラー氏の提唱するマーケティング1.0~4.0の概要



マーケティング1.0



1950~60年代ごろに確立したといわれるマーケティング1.0は、製品に重点を置いたマーケティングでした。マーケティング1.0で重視されるのは商品の品質や機能です。



とにかく多くの消費者に製品の存在や機能を伝えることが大事であり、戦略としては商品説明に力を入れるという手法がメインでした。



マーケティング1.0は大量消費・大量生産の中で生まれた概念で、最も初歩的な売り方です。



1900年代中頃は現代に比べて“物”の存在自体が少なく、消費者も選択肢を多く持っていません。つまり比較検討されるケースが少なく、今ほど工夫しなくても消費者が購入してくれる時代でした。



マーケティング2.0



マーケティング2.0では消費者を重視したマーケティングとなり、「いかに顧客を満足させるか?」が重視されました。マーケティング1.0の時代に比べると物が多くなり、消費者は選ぶ権利を手にしたのです。



企業主体で行っていたマーケティング1.0の時代に、一部の企業が健康被害を引き起こす食品添加物の使用や公害になる産業廃棄物などで問題を起こし、企業に不信感を抱く流れになったことも影響しているでしょう。



他社との差別化が重要視されるマーケティング2.0では、他社と似た機能を持った商品だけでは勝負できません。



「あなたのために作った商品」という訴求によるマーケティング方法がメインで、「いかに自社の製品が優れているか」という他社との差別化が最重要とされました。企業のポジショニング争いや、ニッチな戦略が生まれた時代です。



マーケティング3.0



1990年代から2000年にかけてマーケティング3.0の時代となり、「価値」が重視されるようになりました。マーケティング3.0における「価値」とは商品ではなく、企業そのものの価値なのです。



価格の安い商品であっても、「環境に悪い原料を使っている」「従業員を低賃金で雇用している」という事実があれば、消費者はその企業を評価しません。



1990年代後半になると、インターネットが本格的に普及し始めます。消費者は自ら情報を探しに行くことを覚え、企業の評判も広がりやすくなります。



上記の背景から、「商品の性能が良いだけではなく、社会的に良い活動をしている」という訴求が重視される時代でした。企業のミッションやビジョン、価値を共有することが重要でした。



マーケティング4.0



2010年代に入って生まれたのがマーケティング4.0です。2020年時点で最新のマーケティング4.0は、「自己実現」が重視されます。商品の価値や企業そのものの価値が重視される時代を経て、今は顧客の自己実現をいかに叶えるかがポイントとなっているのです。



そしてマーケティング4.0では、「他社から推薦してもらうこと」が需要な戦略となります。



IT社会が進化を続け、消費者が当たり前にスマートフォンやパソコンを使うようになった今では、情報の“質”にこだわるようになりました。ECサイトでは企業から発信された広告情報ではなく、顧客の“生の声”を信頼するように変化したのです。



実はこのマーケティング1.0~4.0の遷移は、アメリカの心理学者マズロー氏が提唱した通称「マズローの欲求段階説」に沿うように進化しています。



マズローの欲求階層は、「生理的欲求」を基盤とした5段階になっています。



  1. 自己実現:自分の能力を発揮したい。理想とする自分になりたい
  2. 承認欲求:周りから自分を認めてほしい
  3. 親和欲求:周りと関わりたい。集団に属したい
  4. 安全欲求:命に関わることを排除し、安全に生活したい
  5. 生理的欲求:食欲や睡眠欲を満たし、不便なく生命活動を行いたい


参照:野村経済研究所 用語解説「マズローの欲求階層説」
https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/ma/maslow



マーケティング1.0の時代は物が少なく、消費者は生理的欲求を満たすために消費行動を起こしました。しかし次第に安全欲求を求め、今では自己実現欲求を満たすために消費行動を行っているのです。



日本はマーケティングが遅れている



上記のようにマーケティングの遷移を知ると、マーケティング担当者は「マーケティング4.0に追いつかなくては」と思うかもしれません。



しかし日本はマーケティングが発達しておらず、マーケティング先進国にくらべると「2段階」も遅れているという意見もあるのです。



日本は1970年代初めにベビーブームが起こり、人口が爆発的に増えました。その影響で「良い物さえ作れば売れる」という時代があり、企業が作りたいものを作るというプロダクトアウト思考が色濃く残っています。



上記の影響でマーケティングが軽視されやすく、マーケティング部門は発言力が弱いという現状があるのです。



参照:日経BizGate 「日本のマーケティング 進化を妨げるのは何か」
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4483002015052019000000



しかし今の日本は少子化が問題視されています。企業はプロダクト思考を払拭してマーケティングに注力しなければ、厳しいECサイト市場では勝ち残れません。







マーケティング4.0の「5Aフレームワーク」と具体的な消費者行動



認知(aware)



コトラー氏の提唱するマーケティング4.0では、A5フレームワークという概念があります。顧客の行動や心情の変化に寄り添ったマーケティングを行うことで、より大きな成果が見込めます。



まず第1のステップとなるのが、認知(aware)です。「購入したことはないが、なんとなくブランド名は聞いたことがある」「他の人がおすすめしていた」などの理由で、自社の存在を知ってもらいます。



認知(aware)における消費者の具体的な行動は、「過去の購入体験を思い出す」というものから、「他社からブランド名を聞く」という受動的なものがあります。



リスティング広告やSEO上位記事なども認知の段階で有効に働くでしょう。しかし認知の段階では、「○○の商品を買うならこのECサイトがいいらしい」という事前情報を持っている程度にすぎません。



訴求(APPEAL)



消費者に自社サイトを認知してもらえたら、広告の内容やプロモーションを通して企業が伝えたことが、消費者に刺さる段階となります。



消費者に対しての訴求が成功すれば、消費者はECサイトを好意的に捉えてくれるでしょう。「このECサイトもいいな」と、具体的な候補の1つに入れてもらえる段階です。



訴求の段階では、認知に比べて候補になるECサイト数は絞り込まれます。



調査(ASK)



調査の段階になると、消費者はさらに深堀りしてリサーチを行います。具体的な行動としては、商品購入ページのレビューをじっくり読む、周りの購入者に感想を聞くといった行動があります。



もちろん、価格もしっかりと調査します。ほかのECサイトを見くらべて、「価格が一番安いのはどこだろう?」「ポイント還元があるのか?」「送料無料なのか」なども調査を行います。



購入が目前に迫っており、消費者も厳しい目で調査を行うでしょう。レビューでは良い口コミばかり信用するのではなく、悪いレビューを見て商品の“本当の情報”を選定します。最近では、YouTubeで商品の紹介動画を見る消費者も増えています。



行動(ACT)



認知・訴求・調査を経て自社商品が選ばれると、いよいよ消費者は行動の段階にはいります。具体的には購入に至る段階となりますが、行動は購入以外にもあるのです。



たとえば購入した商品やサービスに不満があり、クレームを言うことも行動の1つとなります。



商品やサービスを始めて使う顧客は、最初の印象が強く残るものです。感動を覚えるほど気に入ってくれれば、今後も優良な顧客となってくれるでしょう。顧客にとって信頼できるブランドとなり、別の商品を購入するリピーターにつながる可能性があります。



推奨(ADVOCATE)



A5フレームワークの最終段階である推奨(ADVOCATE)は、マーケティング4.0においてもっとも重要な段階です。前述の通り「人に推薦してもらうこと」が要となるマーケティング4.0では、この推奨こそが他の消費者の動機につながります。



具体的な行動としては、「商品レビューに好意的な感想を寄せる」「SNSや周りの知人に紹介する」などがあります。



顧客から推奨されて他の消費者が自社を認知すれば、マーケティング4.0の最初のステップ「認知」へとつながり、新たな顧客の登場へとつながるのです。



参照:宣伝会議 AdverTimes マーケティング4.0の「究極の目標」は、顧客を推奨者にすること
https://www.advertimes.com/20180215/article265817/



ECサイトがマーケティング4.0時代を勝ち抜くポイントとは



顧客が本当に求めているものを見抜く



マーケティング学では、「顧客はドリルが欲しいのではない。“穴”が欲しいのである」という格言があります。



この言葉はレビット博士という人が「マーケティング発想法」という著書の中で記した言葉であり、今なお多くのマーケティング学で認識されています。
参照:マーケティングの因数分解 3つの「C」とは (1/3)
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1609/07/news053.html



マーケティングでは上記の発想がとくに重要であり、「顧客が自社の商品・サービスを通して何を実現したいのか?」という視点が重要です。



顧客が商品やサービスに求めるものは自己実現であり、購入するものは自己実現を叶顧客が商品やサービスに求めるものは自己実現であり、購入するものは自己実現を叶えるためのツールに過ぎません。自己実現欲求を満たせるかどうかを重点項目として購入の選択を行います。



つまり、顧客の実現したい“理想像”を企業側が見抜き、顧客目線の戦略を立てることで顧客の信頼を勝ち取ることがポイントとなるのです。



驚きや感動の創造や提案を行う



顧客から信頼を得て確固たる“ファン”を創るには、顧客のニーズの本質を見抜くだけでは足りません。顧客が思いも付かなかった価値を提供することで「驚き」を生むことも重要です。



顧客の驚きを生むことについて、東京大学院准教授の水越氏は「Wow!」を作り出すことと解説しています。
参照:IT media マーケティング 「マーケティング4.0」とは結局どういうことなのか? (1/2)
https://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/1708/14/news039.html



顧客が驚きの声を上げるほど素晴らしい体験をすれば、ECサイトに対する信頼は急上昇します。「このサイトなら、自分の欲しいものが見つかる(自己実現欲求が満たされる)」という信頼を勝ち取れば、根強いファンになってくれるでしょう。



つまりマーケティング4.0では、顧客の気づかないニーズを満たす商品・サービスの提供も考える必要があります。また、今後は顧客ニーズの発掘からさらに発展させ、心理的な分析を経て顧客ニーズの予測を行うことがデジタルマーケティングにおいては重要になっていくでしょう。



マーケティング4.0時代は伝統とデジタルの融合が鍵となる



前述した東京大学院准教授の水越氏は、マーケティング4.0では「デジタルエコノミー」に焦点を当てることもポイントの1つとしています。デジタルエコノミーとは、ITによっておこる経済現象のことです。



インターネット社会となった今、マーケィングでもデジタルツールの活用が不可欠となりました。ECサイトもデジタルツールですし、マーケティングでもインターネットが欠かせません。



ただ、A5フレームワークの「推奨(ADVOCATE)」段階でも行われるレビューといった口コミは最新ではなく、伝統的なマーケティング手法です。また顧客と信頼関係を築くためには、オンラインに限らずオフラインでの交流も効果的です。



上記のように、マーケティング4.0ではデジタルだけにこだわらず、伝統的な手法との融合も検討するようにしましょう。







マーケティング5.0でどのように理論が変化したか



マーケティング4.0に続く「マーケティング5.0」が2021年2月にアメリカで発行されました。マーケティング4.0までは和訳が発行されていますが、2021年12月現在、翻訳版は日本で発行されていません。



マーケティング5.0では、デジタルテクノロジーを駆使してマーケティング活動に反映し、顧客の多様なニーズに対応する必要があるとしてマーケティング4.0の進化系を提示しています。



顔認識、音声技術、IoT、ブロックチェーンといったIT技術を活用し、顧客行動を分析してマーケティングに用いることをさらに求めています。人工知能(AI)によるマーケティングオートメーションや、仮想現実、拡張現実までマーケティングの分野として拡大していきます。マーケティングとテクノロジーをかけ合わせた「Martech」という造語も生まれています。



もはや経営戦略といえるまでに領域が拡大しつつあるマーケティング分野は、ビジネスモデルの変革を促すものとなっていることが、マーケティング5.0では解説されています。



■関連記事:マーケティング分析MarTechはDX化の飛躍の鍵となる



まとめ



マーケティング4.0は、顧客に商品・サービスを推薦してもらうことがゴールとなります。成功すれば顧客の輪が広がり、プロモーション費用を抑えながら売り上げを伸ばすことができます。



できる部分からマーケティング4.0の導入をはじめ、マーケティングで企業を成功させましょう。



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