Eビジネスを推進するORANGEシリーズ

EC-ORANGE
お役立ち資料ダウンロード ニュースレター登録

セミナー・レポート「新・オムニチャネル論2020」絶対に押さえておきたい成長を実現する企業の”New Normal”とは


2020/8/27に、b→dashとエスキュービズムの共催ウェビナー「「新・オムニチャネル論2020」絶対に押さえておきたい成長を実現する企業の”New Normal”とは」を開催いたしました。ウェビナーでは、



  • 1. Afterコロナで店舗を持つ企業の市場環境がどう変わるのか


  • 2. オムニチャネル化により成果を生み出している施策事例


  • 3. オムニチャネル実現のため必須のデータ活用のルール


をアジェンダとして、小売業のAfterコロナ対策について紐解きました。



オムニチャネルを今後どのようにとらえていくべきかについて、株式会社フロムスクラッチ マーケティングマネージャーの久住拓也氏と、Beforeコロナからデジタルシフトをワンストップ支援してきた弊社S-cubismエグゼクティブコンサルタントの岩井が解説しています。



本記事ではウェビナーのレポートをお送りいたします。




■無料メルマガ:デジタルシフトのヒントが届く■


コロナ時代に考えるオムニチャネル



2020年は、コロナ発生前に予想されてきた社会と大きく異なる年となりました。



Beforeコロナから切り替えて、新たな未来のあり方をみとめ、変化した消費者意識を理解していく必要があります。



コロナで変化した消費者意識



エスキュービズムでは、3〜4月の時期から、ECやコールセンターといった小売店の非接触部分をどう展開していくかという話し合いを重ねてきました。



そのなかでみえてきたのは、Afterコロナの消費者は、コロナ感染への予防から、行動欲求と感染リスクの両方を天秤にかけながら生活しているということです。



具体的に「感染予防を考えた行動」とは何かというと、次の3つにあたる行動を減らすことといえます。



  • リスクを負ってまでやる必要がない行動


  • 我慢できる行動


  • 他のことで代用できる行動


こうしたリスク回避の動きは、実際に数字にもあらわれてきています。



リアル店舗の利用というのは「リスクを負ってまでやるべきことではなく」、「我慢できる場合も多く」、「ECで代用できるもの」とすでに証明されてしまいました。リアル店舗でいろいろなものを見て購入するという体験は、我慢できると消費者は知ってしまっています。



もっとも大きかったのはショッピングセンターなどが3〜5月の間休業していたこと。



この流れのなかで、ECで商品を販売し、購入するという行動パターンは幅広い世代にとって当たり前のものとなりました。



さらに、この自粛期間中にはさまざまな行動がデジタル化しています。



今までであればその場に行かなければできなかったことも、家からディスプレイを通じてパソコンやスマホでできるようになりました。



リアルが一番という考え方から、「オンラインもあり」という考え方や、「オンラインの方が便利」という考え方に変わっています。



企業でも、自宅からテレワークをするスタイルが増えています。その結果として満員電車に揺られることもなくなり、睡眠時間が増えたというプラスの効果も生まれているでしょう。オンラインで大丈夫という風潮が社会全体に広がったという点を、理解する必要があります。



デジタル化したことで、Beforeコロナとは時間の使い方や働き方といったすべてが変わりました。まったく新しい社会に変容したのです。



実際に現場の声をきいてみると、物に触ることへの抵抗感が消費者の中に生まれているという意見が数多く挙げられます。



「貨幣や買い物カゴに触りたくない」、タッチパネルやドアや手すり、つり革も触りたくない、物に触れるリスクを減らしたいと消費者は考えています。



タッチパネルについては、すでに他社がホログラム化したパネルを商用化しているなど、触らないサイネージ、「触らない仕組み」が出始めています。



貨幣に関していえば、ニュージランドではロックダウン時から貨幣の使用がストップしました。キャッシュレスが日本よりも一般化していたという事情は背景にあるものの、ロックダウン中はほとんどのところで貨幣が使えず、キャッシュレスでないと物が買えないようになっていました。



これは極端な例ですが、感染リスクを考える上で「キャッシュレスでないと」という風潮が自然に出てくるということは押さえておくべきです。



これはIT業界ではチャンスともいえるでしょう。



コロナで変化した消費者意識をまとめると、ポジティブな点では、自粛期間中のオンライン体験により広い年齢層でデジタルへの敷居が下がったこと、感染リスクを下げるという着眼点に紐付けば、今までの習慣から新たな習慣に移行させることができるということが挙げられます。



ネガティブな要素では、感染を避けるという大前提がある以上「お店に来て商品を見てもらい買ってもらう」という行動に紐付いた購買が今までより難しくなるということ、そして先行き不安による買い控えや買い占めが起こるのではないかという懸念が挙げられます。



時代に合わせたオムニチャネル化の必要性



我々が思い描いていたオムニチャネルの世界は、コロナによって大きく変わったと考えるべきです。
すべての業種に対して適応可能な魔法の処方箋はありませんが、まずは小売業界にフォーカスしてみていきたいと思います。



コロナ発生前にも、DX(デジタルトランスフォーメーション)や、オムニチャネル化はその可能性が論じられてきましたが、その頃に想像されていた未来の社会と、コロナ発生後に実際訪れる社会は変わってしまったと考えるべきです。新しい未来に沿った戦略を立てなければなりません。



では、新しい時代に合わせたオムニチャネル化の必要性とは何でしょうか。
20〜30年前はデパートに行って買い物をするのは、それ自体が大きなエンタメ性を帯びていました。しかし、現在は多様な娯楽が増えており、物を買うことは単なる消費行動になっています。
実はこれがECを大きく拡大させた理由のひとつで、日本のEC化率が約30%まで進んだ理由だと思います。
つまり、単なる消費行動である以上、効率化していく、つまりユーザービリティを追求して、どこからでもいつでもどんな端末からも購買できる状況づくりがおこなわれ、今のEC化率につながっているのです。



小売(リテール)の業界において、Beforeコロナの時には戦略を立てる際、来店する消費者とウェブを使う消費者は違うという考え方がありました。
しかし、この常識はコロナによって覆り、今後はこれらの消費者を同一のものとして考えなければなりません。
60〜70代という、今までウェブであまり買い物をしていなかった層の消費者でさえ、まずはじめにウェブで欲しい商品を調べ、リアル店舗に行って実際に購入するという行動の流れができています。
今後は、オフラインの消費者は圧倒的多数であるオンラインの消費者の中の一人であると考えなければなりません。
これは「OMO」という概念です。「Online Merges with Offline(オフラインがオンラインに取り込まれる)」、つまり、消費者は必ずオンラインで情報を見てからリアル店舗に来ているという思考が、AfterコロナのNew Normalです。



Afterコロナでは、空いたリソースを有効活用していくことが求められます。
感染予防策によって従来よりも仕事が減ってしまった販売員、店舗に残る在庫などを、オンラインの世界で活かすことが成功につながります。



例えば、販売員を広告塔に変えるのは空いたリソースの活用といえます。ショップスタッフをインフルエンサー化することで、スタッフのファンを作るという集客法はBeforeコロナの時からよくおこなわれていましたが今後は動きが加速していくかもしれません。



また、在庫については店頭在庫をECサイトで販売する方法を考えていく必要があります。
インフルエンサー化したスタッフはECサイト集客のエンジンとして機能し、多くのユーザーを集めることができます。その上で、商品をどのように出していけば効果的にアプローチできるか、を考えていきます。



その次に考えるのが「宅配距離」の最適化です。
つまり、リアル店舗をある種の倉庫としてとらえれば、ユーザーに近い店舗から出荷できるシステムを構築することでスピーディに出荷し、さらに配送コストを圧縮できる可能性も出てくるでしょう。これをおこなうことでAmazonや楽天市場に対抗できる可能性も生まれてきます。



オンラインから実行していける施策やアプローチを考えていく「デジタルシフト」が重要になります。



オムニチャネル化の施策事例「有名雑貨チェーンA社」



オムニチャネルの定義はそれぞれですが、ここでは、



店舗・EC・アプリなど顧客接点をフル活用し顧客体験を改善することで、結果、事業成長を実現すること



と定義します。



全国80店舗の直営店とECアプリを運営しているA社の悩みは、顧客への働きかけが簡易的なセグメント配信にとどまっていることでした。



これを解決するため、顧客の属性や行動に合わせてコミュニケーションを変え、店舗、EC、アプリといった各チャネルを利用してもらってLTVを高めたいという要望がA社にはありました。



b→dash導入後は、顧客の属性と行動に合わせたOne to One施策の設計を実施し、それを多数展開することでPDCAを高速で回すようにしました。



結果として、オムニチャネルによるA社の「勝ちパターン」というもの視覚化されました。



例えば、性別、年齢、住所などの属性データと、購入チャネルや購入商品、購入金額などの行動データをかけ合わせることで、より各々に合わせたクーポン発行や商品訴求ができるようになりました。



あらゆるデータを顧客IDに紐づけて働きかけをおこない、顧客のメール開封状況などをセグメントの条件として複数のシナリオを描くことで、メール・アプリ経由の売上を1.6倍、平均顧客購買単価を1.2倍に引き上げることができました。



メールやアプリプッシュといったコミュニケーションによって、自社チャネルを最大限利用することができるようになり、顧客ベネフィット、体験の向上、他社との差別化をはかることができます。


■特集:ECから考えるオムニチャネル・OMO■


データ活用の必須ルール



なお、オムニチャネル化実現にあたっては、絶対に押さえておかなければいけないデータ活用のポイントが2つあります。



1つは、「One to Oneのためのデータ統合」、もうひとつは「分析・施策のためのデータ運用(データ処理)」です。



One to Oneのためのデータ統合については、統合基盤を用意する必要があります。



分析・施策のためのデータ運用は、ノーコードテクノロジーを活用していきます。



データ活用の全体像を見ていくと、土台に「取得」というプロセスがあります。広告データやアクセスログデータ、ビジネスデータといったさまざまなデータがあり、それを統合・運用することで、「活用」されるというわけです。



活用は、メールやレコメンド、LINE提携といった施策的なものと、RFM、バスケット、CPMといった分析的なものに大別することができます。



データの統合ができていれば、顧客の属性・行動データをセグメントで切っていくことができます。店舗で家具を、ECで小物を購入した顧客に対しておすすめの雑貨を訴求するという際には、統合されたデータから各項目を引き出して、施策を実行することができます。



統合できていないと、データがバラバラなので、紐付けしたい情報を探すのが煩雑になります。こうならないためにデータを一元管理する統合基盤(CDP)を使って効率よくデータを活用しましょう。



これがポイント1つめです。



ポイント2つめのデータ運用は、「データ取込・統合」と、「データ変換」に分けて考えます。これには、SQLやPythonといった専門スキルが必要になるため、人材工数もしくは莫大な費用が要求されます。



これをテクノロジーで解決しようというのがb→dashの提供する「Date Palette」の考え方です。これを使うことで、コストを10分の1、工数を数十分の一までに短縮できるようになりました。



まとめ



第1回のウェビナーでは、Afterコロナの現状と未来における小売業のあり方、施策の展開について基本的なことをご紹介しました。



次回のウェビナーでは、戦略レベルで具体的な事例を挙げつつデジタルシフトについて、さらに詳しく掘り下げる予定です。