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ショールーミング型店舗のこれから。OMOで顧客体験を掘り下げる


以前は「売上が他社ECに流れてしまう」とされてきたショールーミングですが、最近では感染予防やアパレルの実店舗離れの対策として注目されています。



販売員を置かない無人店舗、その場でネット注文してもらえるようなWi-fi環境の整備、二次元コードやICタグの活用等、ショールーミングを新たな販売機会の創出として前向きに捉える動きが広がり、「食」のシーンにも拡大しています。



本稿では、ショールーミングの過去の姿と、ショールーミング型店舗が目指すべき今後のあり方についてOMOの視点からご紹介します。





ショールーミングのこれまでとこれから



ショールーミングは、売り場や販売員といったコストを必要としないために安売りできるECに売上を取られてしまう、厄介な消費行動と思われていました。



ですが、そのイメージを覆して新しい生活様式に即した販売スタイルとして確立する取り組みが行われています。



例えば、あえてフィッティング用の商品のみを置いて在庫は置かずに省スペースで運営、販売員の数を絞って人件費を抑える代わりに、無料のWi-fi環境を提供して自社サイトでの購入を促すなど。商品を売るよりもむしろ、試す、宣伝するといったポイントに特化したこのような店舗は「ショールーミング型店舗」と呼ばれています。



これまでショールーミングといえば消費者が店舗より優位に立つ購買行動とみなされてきましたが、ショールーミング型店舗なら、消費者のリアルとオンラインの動線を把握することによって店舗が新しい顧客体験を提供できる可能性も秘めています。



価格比較のためのショールーミング



元来、ショールーミングを行うのは、人件費や賃料を抑えられるECの方が同じ商品を安く提供しているという点に着目した消費者で「賢く買い物をしたい」という消費者心理から発したものでした。



しかし、2020年以降は非接触で買い物ができるECの方が安心という、コロナ禍ならではの事情もあいまってECへの流入が増加している背景もあります。



「厄介な消費者行動」という意識を変えるべき



「店舗で使用感や見た目を確かめてネットで購入する」というショールーミングは、消費者にとって「お得なショッピング」と見なされていますが、店舗にとってはその場での購入や自社サイトでの注文につながらない限り、メリットはありません。



むしろ、販売員が商品説明をしたり接客をしたりすることで人的なコストがかかり、商品在庫を揃えておかなければならない等デメリットの方が多いのが現実です。リアル店舗にとって、直接的な利益につながらないショールーミングは歓迎されざる消費者行動でした。



しかし、ステイホームや外出自粛といった事態によって、実店舗離れとEC利用は加速しています。そこで、ショールーミングを店舗にとってポジティブな販売機会に変えようという動きが活発化してきました。



店舗側の意識変革と、企業全体での売上評価の改革が必要になってきたのです。



購買環境に変化が起きつつある



ショールーミングが注目されている背景には、消費者のライフスタイルの変化にもあります。



共働きが当たり前になった時代において、ショッピングに費やす可処分時間は男女ともにどんどん減少していると考えられています。店舗に何度も足を運んで商品を買うかどうか悩んだり、複数の店舗をじっくりと見て回ったりといった行動をする人は少なくなり、通勤時間やちょっとした休憩時間にスマホを見て商品の検討をする「ウェブルーミング」も多くの消費者にとって当たり前の行動となりました。



とはいえ、消費者がショールーミングに魅力を感じていないかといえば、そうではありません。



東京を含めたアジアの10都市のオンラインショッピング利用動向を調査したアンケートでは、ショールーミングは「実際に見たり触ったりすれば安心」、「店舗の方が欲しい商品を探しやすい」、「時間をかけて(店舗を)見てまわるのが好き」という点で魅力を感じている消費者が多くみられました。



また、ウェブルーミングについては「ネットでレビューを確認すれば安心」、「ネットの方が欲しい商品を探しやすい」という声がきかれました。



ショールーミングにもウェブルーミングにも共通しているのは、よりよい購買体験を得るために行われるアクションであるという点です。特に東京以外の消費者は、ショールーミングとウェブルーミングの両方を積極的に行うことで、自らの購買体験を高めようとする傾向があらわれていました。



ここから、より良い購買体験を提供することができればショールーミングで他社のECサイトで購入されてしまうような機会損失を避けられるという予測が見えてきます。



例えば、新発売されたばかりの化粧品や文房具の使用感を試すという「楽しい体験」を提供する、店舗を無人化して試着だけに特化したスペースにする、といった価値創出によりショールーミングを店舗にとってポジティブなものへと転換できます。







ショールーミングの変化と拡大



ショールーミングの取り組みは、実験的なものも含めて多様になりつつあります。



ECへの購買につなげるための「試食」ショールーミングや、VRとライブコマース等デジタル技術を活用した試みも始まっています。



食品のショールーミング



「試食」に特化した店舗は、ECではできないことをショールーミング型店舗で行い、購買につなげる動きのひとつです。



食品のショールーミングは、ECサイトで売られている調味料やスイーツ、生鮮品等をリアル店舗に「試食品」として陳列し、購入は二次元コードからECサイトにアクセスする仕組みになっています。



このシステムでは、消費者は味見をしたい商品のカードを従業員のいるカウンターに持っていき、試食してサイトに掲載された商品の味を実際に確かめることができます。



また、ふるさと納税に特化した見て触れて味わうことができるショールーミング型店舗も運用されています。試食だけでなく、各地域と双方向のイベントを組んだりカフェを併設するなど、より「体験」に特化した店舗づくりが注目されています。



AR/VRショップやライブコマースと連動



ARやVRを活用して、実際にリアル店舗を訪れたような体験をさせるバーチャルショップも、新たなかたちのショールーミング型店舗といえるでしょう。



VRを使うことで、360度視点による店舗再現が可能になり、消費者は実際に店舗を見て回っている(ショールーミング)しているように商品を見ることができます。



ARで部屋にいながらにして仮想的な家具を置いたり、靴や服のサイズ感を確認したりとECの弱点をカバーする活用方法もあります。



また、店舗の従業員がライバー(ライブ配信を行う人)となって商品を紹介したり使用感を試して見せたりできるライブコマースを、ショールーミング型店舗として取り入れる動きもみられます。従業員であるライバーにファンがつくことで、「このスタッフがいるリアル店舗に足を運んでみたい」、「このスタッフに接客してもらいたい」と実店舗へ足を運ぶ動機を作り出すことも可能になります。



これらはいわば、リアル店舗の強みである「自由に歩き回って商品を見てもらう」、「接客によって商品の良さを伝える」をオンラインで実現する施策です。



視線計測で購入プロセスを分析する試みも



中央大学と京王電鉄は、11月にショールーミング型店舗における消費者の視線計測実証実験を行いました。



これは、店頭の商品を見て触れて、気に入ったら二次元コードからECサイトにアクセスして購入するという一連のプロセスにおいて、来店者の視線がどのように移動するのかを分析するものです。



こうした視線の動線を分析することにより、二次元コードの効果的な配置や商品の陳列方法、リアル店舗とECサイト(オンライン)をシームレスに移動させるコツが可視化されるはずです。



非接触での購買を可能に



「非接触」はアフターコロナの必須キーワードといえます。



2020年にECサイトの利用が大きく伸長したのは、外出自粛や巣篭もり需要だけではありません。人や物との接触を最小限にできる購買方法として通販が選択されたためでもあります。



接触を避ける傾向は、新しい生活様式として定着しつつあり、今後の消費行動においても重視される要素のひとつといえます。



ゆえに、ショールーミング型店舗においても、焦点はいかに非接触での購買を可能にするかという部分にあるのではないでしょうか。



非接触で購買できることは、アフターコロナの消費者にとってメリットであり、利便性や安心感に直結することでもあります。



オンラインとオフラインのデータ活用



これまで厄介な行動とされてきたショールーミングは、むしろ積極的に戦略として取り入れていくべき局面にきています。



施策を検討する上でキーワードとなるのはやはりOMOで、リアルとEC間をスムーズに移動できるかどうかが戦略成功のかなめとなることは間違いありません。



顧客の「個」に着目して満足度向上を図る



オンラインとオフラインのデータを融合することは、膨大な顧客データによって顧客一人ひとりの実像をよりリアルに浮かび上がらせることにもつながります。



例えば、スマホやPCからのウェブルーミングとリアル店舗でのショールーミングのデータを統合すると、顧客の好みや購買傾向がより鮮明に見えてきます。オフラインの行動データは、実店舗にチェックインしたことを確認できるアプリや筐体をシステムに組み込むことで実現します。



顧客の望む接客や体験をデータによって導き出し、顧客それぞれに合った対応をすることで顧客満足度を高め、ブランドや企業イメージを向上させることができます。



消費者が今接客を求めているのか、はたまた声をかけられることなく自由に商品を見たいのかといった点についても、オンラインとオフラインのデータを総合的に分析することで傾向として可視化されると想定されています。



顧客と商品の接点を強固にする



積極的なショールーミング展開においては、消費者と商品をどのようにエンゲージメントさせるかを検討すべきです。



米国ではすでに2015年から消費者と商品の接点創出を提供する企業b8ta(ベータ)が成功をおさめています。こうした企業が運営するリアル店舗は、前述の視点計測の実証実験のように来店者の動きが記録されていて、どの商品にどれくらいの顧客が立ち止まり視線を向けたのかがデータ化されます。b8taの実店舗に商品を出品した出品者は、自社の商品が消費者にとってどのように認知されているかを知ることができるわけです。



b8taは日本にも2020年から実店舗がオープンしており、一部食品の取り扱いもあります。



このやり方は、オンライン広告をリアル店舗に持ち込んだような手法ともいえます。



自社の製品がどれくらい消費者の視線を集めているか、というデータはオンライン広告のクリック数等の分析と似ています。



これからは、リアル店舗をオンラインで再現するバーチャルオフィスやVRといった取り組みだけでなく、オンラインのアピール手法をリアルに持ってくる、そんな双方向的な考え方や取り組みがますます重要になるでしょう。



積極的なショールーミング展開がOMOを発展させる



発展的なショールーミングやショールーミング型店舗とは、オンラインとオフラインで得られる顧客データを融合して活用するとともに、顧客にもECとリアル店舗の行き来をスムーズに行ってもらうという点が重要です。



店舗で見て自社ECで購入するといった流れを基本として、 オンラインの手法をオフラインの領域へ、またその逆も然りといった流動的な施策とEC購買の動線設計が強く求められます。