システムの内製化はDX推進と共にある
経産相による「DXレポート2.2」の中には、デジタル産業宣言があります。
この宣言では、DX化は単なる業務改善や効率化のみを目指すのではなく、収益の向上や次世代の価値観をや行動指針を発信するために行われるべきと示されています。
システムの内製化も業務改善・効率化にとどまらず、収益向上や企業成長を期待できる施策の一つです。現在、国内企業や自治体ではDX推進と共にシステムの内製化に対する機運が高まっており、実際にDX化と併せて成果を出す企業が増えています。
人材確保や完全内製化への不安といった課題もありますが、内製化に適した開発手法やツールを導入することで、不安を低減していける可能性があります。
システムの内製化の実現には、まず小さな成功を積み上げる、ベンダーと提携して社内に内製化チームを作る等して実績を作り、その成果を元に内製化の人材育成、新たな人材確保を行なっていくのが良いとされています。
本稿では、システムの内製化における現時点での課題と、アジャイル開発やDevOpsといった課題を解決し得る開発の手法について紹介しています。
さらに、完全内製化ではなく、必要な時に外部ベンダーと提携することで得られる成果を、事例で示しました。
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システムの内製化で企業もマインドチェンジを
Slerやベンダーに外注していたシステム開発を自社内で行う「内製化」は、DX推進と併せて注目されています。
ある調査では、「ソフトウェアを外製化する(し続ける)」と回答した企業が35.4%に止まった一方で、「ソフトウェアの内製化を推進する(したい)」と回答した企業は54.4%にのぼることが明らかになりました。
システムの内製化は、システムの開発スピードを速めるだけでなく、自社のマインドチェンジの推進や、専門性の獲得につながるといったメリットがあります。
しかし、企業方針としてシステムの内製化を進めようとしても、スムーズに外製から移行できているかというと、現状はそうではないようです。
まず圧倒的に不足しているのは、社内でシステム開発を担う人材です。また、エンジニアが在籍していてもスキル不足であったり新しい技術に追従するのが難しかったりという面から内製化が進められないという課題を抱えている企業も少なくありません。
内製化の課題は人材確保
日本社会全体が慢性的な働き手不足という課題を抱えていますが、ひときわ顕著なのがシステムの内製化人材も含めたDX人材の不足です。
DX人材の確保・育成においては、これから、産学連携と越境、そして内製が重要なキーワードになります。
大学や各種研究機関が保持している技術やノウハウを企業が活用していく試みは、すでによく行われているものです。大学と企業をつなぐ仲介役は行政が担うケースが多く、自治体でもDX化やシステムの内製化への機運が高まっているのは、こうした事情との相互作用によるところもあるでしょう。
システム内製化の趣旨からは少し離れるかもしれませんが、他分野の技術やノウハウを積極的に取り入れることで、社内の人材育成の多角化を実現できる可能性は高くなるはずです。
さらにこれと並行して、部門や企業間を「越境」して社員が学びスキルを身につけていくというスタイルも注目を集め始めています。越境というと日本と海外の境を超えることを思い浮かべますが、人材育成の観点からみる越境の定義は、今いる場所とは異なる文化や価値観の中で活動することとされています。
この越境の概念を内製化に応用すると、DX人材の確保も展望が見えてくるかもしれません。
アジャイル開発とDevOps
DX推進を成功させている企業は、その約半数がウォーターフォール型の開発をやめています。DX化の成果が見られる企業は、ウォーターフォール型開発の代わりに、アジャイル開発とDevOps(デプオプス)を採用していて、システムの内製化にも一定の効果が上がっています。
DX化は、オリジナリティのあるアイデアをまずアプリケーション化して、そこから得られた結果を製品・サービスに反映させていくことが重要です。
ゆえに小さな単位で計画を進められるアジャイル開発は、DXと相性がよいとされています。
Development(開発)とOperations(運用)を組み合わせた造語であるDevOpsも、開発と運用が連携することで柔軟な対応ができるシステム開発という意味で、DX化と相性の良い開発手法です。
前述の通り、DXとシステムの内製化は関連が深く、システム内製化の成功はDXの成果の一つと捉えることができます。
今後、社内で内製化を進めるならば、アジャイル開発とDevOpsの手法を取っていくことが求められます。
完全内製を目指さないことが内製化成功のカギとなる
内製化といっても、完全に自社メンバーだけで開発を完結させる必要はありません。
自社が主導権を取った状態なら、むしろ積極的に外部エンジニアの力を借りた方が開発がスムーズに進む可能性があります。
この場合、スムーズな開発のために重要なのはチーム体制です。
Slerと共同開発チームを作る場合、柔軟でスピーディな開発のためには自律型のチーム編成を行う必要があります。
Slerと自社が何らかの階層型となったチームは、意思決定に時間がかかる傾向にあり、メンバー同士で自由なコミュニケーションを取るのが難しくなりがちです。
理想は、自社と協力企業のエンジニアや専門家が同じ立場で並んで意見のやりとりを行うことです。
システムの内製化で自社がイニシアチブを取るとは、自社が即応力を持つということでもあります。
意思決定から実装のスピード然り、現場の声への対応然り、一つ一つを外部企業の返事待ちにしない状況を作ることが何より重要です。
弊社の開発したパッケージ「EC-ORANGE」は、お客様にソースを開示しており、クライアント社内や開発パートナーでシステム開発を行える体制が整っています。
システムがベンダーロックされた状態では、社内で急な不具合に対応することができない、またベンダーの作業を待っていてスピーディなアップデートができない、といった問題が残ったままです。
ベンダーロックされていないシステムであれば、社内メンバーのみで改修を行えるので、現場の声に素早く対応することもできます。
EC-ORANGE
https://ec-orange.jp/product/reason.html
以下に、弊社のパッケージによって内製化に成功した事例を挙げます。
■事例:カスタムオーダーに即応できるサイト構築を内製化
好みの色や味を何百通りにもカスタムオーダーできる製品・サービスは、選ぶ体験がコト消費にもつながり、人気は高まり続けています。
一方で、スムーズな注文を可能にするECサイトの構築は課題が多く、UX/UIとサプライチェーンの一元化の両面を解決するシステム開発を内製で完結させるのは不可能に近いと言えるでしょう。
弊社のパッケージは、ソースを開示することにより、現場で求められている機能をスピーディに搭載させることが可能になっています。
また、複雑な構造のサイトやシステム構築についてもフォローアップを行ない、お客様の目指すビジネスモデルに沿ったシステムを実現しました。
■事例:モール型ECサイトの短期開発をパッケージ提供と支援で実現
メーカーが出店するモール型の専門通販サイトは、BtoBtoCというフローをどのように構築するかが重要です。
モール運営企業とECに出品する事業者、そしてサイトを利用するユーザー全てが使いやすいサイト構築を短期間で開発するには、スピーディな意思決定を繰り返す必要があります。
サイトを公開して都度改善を行う、いわばプロジェクトを実際に走らせながら変更を加えていくという手法においては、ベンダーからパッケージの提供と支援を受け、自社の内製チームが主導権を握るという手法がもっとも効率的です。
エスキュービズム サービス導入事例
https://client.s-cubism.com/
ローコードツールでスピーディな開発を実現
システム内製化に役立つのが、開発期間を短縮して、コストを削減できる可能性を持つローコードツールやノーコードツールです。
開発期間の短縮は、人的コストの削減にもつながり、さらにスピード感のあるサービス提供にもつながっていきます。収益向上の結果がすぐに出るわけではありませんが、業務の省力化や効率化については一定の成果を見込むことができるでしょう。
ローコードツールはまた、エンジニアやIT部門以外の社員にも開発の裾野を広げやすいという利点があります。
自由に作成できる状況を社内に作っておいて、チャットツールでアイデアを出し合ったり作業できるようにしておいたりすることで、社内の業務改善意欲を活発化することもできます。
一人一人がDX化や内製化について意識を持つことで、社内全体の空気や方向性を一つのまとめることができるのではないでしょうか。
内製化でコストと生産性に改善が見込まれる
内製化における課題は、人材不足や人件費に対する懸念がよく聞かれますが、その他にも開発スケジュールの管理や、内製したアプリの品質に対する不安、開発リスクや完成責任を背負うことへの心配等、多岐にわたります。
しかし一方で、内製化を進めることで中長期的にコストと生産性に改善が見出せることも、また事実です。
必要な部分は外部の企業と連携していくことで社内負担を軽減し、アジャイル開発やDevOpsといった内製化に適した開発手法を実践していくことで、内製化は達成されます。
内製化をトップダウンでアプローチしていく場合、不可欠になるのがCTO(最高技術責任者)の設置です。経営側に開発経験者を採用して、開発体制を充実させていく必要があります。
ボトムアップで内製化推進を行なっていく場合は、内製化の可能性を実際のアプリケーションで証明するといった目に見える成果を提示することが重要になります。
社内全体が内製化の利点を共有して、経営側にプレゼンできるよう、内製化推進の賛同者を社内でまとめていくことも必要でしょう。なおこの場合、内製化推進のリーダーは開発経験者であることが望ましく、また適役となります。
システムの内製化とDX推進で次世代型の企業に
システムの内製化は、DX推進にとって欠かせない選択です。
すでに多くの日本企業が内製化に舵を切っていて、今後は優秀なDX人材、エンジニアの奪い合いがますます激化すると想定されます。
しかし、100%すべてを内製化する必要はありません。内製化の目的はスピーディで柔軟な開発の実現であり、それが実現できるならむしろ外部企業とうまく提携していく方が自社の負担を軽減することができます。
システムの内製化は目的ではなくDX推進を含めた企業成長の手段として、計画していくことが重要ではないでしょうか。