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百貨店の復権はなるか?売上拡大に向けたオムニチャネル化戦略

百貨店各社が店頭、ネット、カタログなどチャネルを問わない売り場づくりを目指す「オムニチャネル化」に本腰を入れ始めています。
今回はオムニチャネルに対する百貨店各社の取り組みをご紹介するとともに、百貨店業界の現状、今後の課題を整理してみたいと思います。

百貨店を取り巻く小売業界の現状

右肩下がりの百貨店と右肩上がりの通信販売

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まず前提として、百貨店の売上は平成13年の8.6兆円から平成22年には6.3兆円まで減少しています。百貨店が売上回復のために通販の強化、ひいてはオムニチャネル化などを検討するのは必然と言えるでしょう。

百貨店は通販専門企業に打ち勝てるのか?

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こちらは2011年6月〜2012年5月までの通信販売業者の売上高ランキングです。百貨店では唯一、三越伊勢丹が32位につけています。
扱う商品はまちまちなので、すべての企業が互いに競合しているわけではありません。
しかし、百貨店は総合的に商品を扱うため、家電製品を扱うヨドバシカメラ(27位)、アパレルECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ(28位)などといった特定の商品に強みを持った企業と競合することになります。

それぞれの商品分野・販売チャネルでひしめくライバル企業

また、百貨店はリアルの世界においても多くのライバルに囲まれています。食料品においてはイオンのような総合スーパー、家電においてはヤマダ電機、ファッションにおいてはユニクロなど、特定分野に強みを持った巨大企業がひしめいています。

そうした、それぞれの商品分野、販売チャネルにおいて強力な強みを持つ企業に顧客を奪われていることは百貨店業界低迷の一因になっています。

しかし、言い換えれば、衣食住の商品分野を網羅し、リアル・カタログ・ウェブにおいてもそれぞれ販売チャネルを持っている点が、百貨店独自の強みといえます。
複数のチャネルを横断した一貫性のある購買体験を提供する「オムニチャネル」に取り組むことは百貨店の強みを活かすためには当然の流れであり、これまでばらばらに行ってきた各種の取り組みを「オムニチャネル戦略」という一つのコンセプトの下で統合することが可能になったと言えるでしょう。

オムニチャネルに取り組む百貨店の事例

オムニチャネル戦略を宣言する高島屋

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品揃え、顧客コミュニケーション、売り場における買い物体験を向上することで顧客満足の最大化を目指しています。
そのために商品データベース、顧客データベース、ICTといった情報基盤を整備し、実店舗とネットのチャネル融合を積極的に推進しています。

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具体的な取り組みとして
  • ・オンライン会員86万人と百貨店のハウスカード会員210万人の顧客データを一元化
  • ・品ぞろえの共通化と在庫一元管理
  • ・通販サイトに店頭在庫表示機能を導入予定
  • ・デジタルサイネージによるバーチャル試着や、ハンガーを手にとると商品のコーディネート写真や動画情報が表示されるインタラクティブハンガーの導入
5年間で総額130億円を投資する予定であり、中期的には百貨店で扱う商品をすべてネットで販売できるようにするため、顧客データベース、商品データベース、ロジスティクスなどをゼロから組み立て直すことも視野に入れているようです。

公式アプリを導入する東急百貨店

東急百貨店は実店舗内でのスマートフォンを使った「O2O型ショッピングスタイル」を促進する、公式スマートフォンアプリを導入しました。

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アプリでは店舗内でリアルタイムの催事情報やフロアガイド、特典(クーポン)といった機能を提供し、オンラインによって従来の販売サービスでは実現が難しかった街中・店内の顧客に対する販売サービスの提供を目指します。
東急電鉄と連携し、一部コンテンツはグループ共通として展開を行います。

主な機能

  • ・フロアガイド(各店のフロアガイドを閲覧できる)
  • ・Facebook/ Twitter(各店が展開するソーシャルメディア(Twitter/Facebook)を閲覧できる)
  • ・特典(クーポン、引換券、など、各種特典を提供する機能。東急電鉄グループ内で共通化されており、他社のクーポンも取得可能)
  • ・ショッピング(東急百貨店ECでの買い物を楽しめる機能)

ネット通販を最重要事項と位置付ける三越伊勢丹

百貨店では唯一、通信販売業者の売上高ランキング40位内に入った三越伊勢丹はWEB事業部を新設し、オムニチャネル化を推進しています。

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三越と伊勢丹の通販サイト自体は10年以上前に開始していますが、専門知識のないスタッフが運営する状態でした。WEB事業部になるとともにシステムに詳しい人材を採用し、スピーディーな変革を進めています。

取扱い商品を増やす

現状では実店舗にある商品の中からウェブで売れそうなアイテムを選んで販売していますが、最終的には実店舗の商品をすべてウェブ上に登録することを視野に入れています。現状の5万SKUを15万SKUに増やす予定です。
これまで通販サイトへの商品登録数が少なかった理由は、商品寿命が短かったり、在庫自体が少ないということもありましたが、登録に手間がかかるという面もありました。
三越伊勢丹はこのようなオペレーションも併せて改善していく予定です。

通販サイトのシステム統合

三越と伊勢丹でそれぞれ持っている通販サイトを、入口は別にしてひとつのIDサイトで行き来できるようにシステム統合を行う予定です。
システム統合を待たずに情報の更新頻度を高め、コンテンツの見せ方を少しずつ変えるなどして消費者に飽きられない工夫をして売り上げ拡大を目指します。

ウェブやリアルだけでなく、カタログ販売も強化する百貨店

大丸や松坂屋をグループ企業に持つJフロントリテイリングは新たなミッションとして、”オムニチャネル化"をキーワードにウェブと店頭とで顧客を送客し合う体制を整備し、グループ全体として売り上げを高める施策の具体化を急いでいます。

カタログでは新客の開拓に向け、ライフスタイル切りの新媒体を初めて展開しました。4月25日に創刊した「おいしさキッチン」では、台所で過ごす時間が楽しくなるような調理用品やキッチン雑貨、ファッション商材、食品などを消費者の生活様式に合わせて提案しています。

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新カタログは若手メンバーが中心となって取り組み、新しい取引先や商材を開拓して主要顧客層よりも少し若い世代の獲得にもつなげる意向です。そのため、カタログはスマホなどのタブレット端末にも対応し、気になる商品があれば「Dmall」サイトに遷移して購入できるようにしています。

これはカタログ→ネットというチャネル横断の一例として興味深い取り組みと言えます。
オムニチャネルにおいてはネットがクローズアップされることが多いですが、従来のカタログ通信販売のニーズはまだまだ高齢者を中心に残っています。そうしたカタログ販売とネット販売の垣根をなくすことが世代を超えて顧客を取り組むことにつながると言えます。

成長の可能性を秘めた百貨店の今後

販売チャネルを統合する百貨店

これまでにも百貨店はECサイトを持っていましたが、実店舗に比べると品揃えは少なく、店舗との連携もできていない状態でした。
オムニチャネル化が進む中で、店頭ではECサイトでも販売している商品にマークを付けたり、通販サイトでも店頭に取り扱いのある場合は表示するなどしています。
百貨店は最終的には店舗の商品すべてをECサイトで買えるような体制作りを進めています。

オムニチャネルの目的は単なるECサイト売上拡大ではない

百貨店業界のネット通販比率は1%に満たない状況であり、米国の4.7%と比較すれば、まだ大きな成長の余地があると考えられます。
しかし、この指標はオムニチャネル化においてあくまで一側面であり、最終目的ではありません。
ネットだけで顧客を囲い込むのではなく、店舗と併用してもらう中で顧客の体験価値を最大化することが重要です。

売り場担当者はどこにどの商品を置くか、どうやって商品の良さを顧客に伝えるかなどを日々考えています。同じ商品でも置き場所を変えたりして新鮮さを失わないようにしますが、それはECサイトでも変わりません。
店舗とネットを運営するスタッフがそれぞれ互いに触発しあい、学び合うことで店舗とネットが共存することが重要になります。

通販売上が大きい企業を見ると、一部の会社を除けば紙媒体の活用や実店舗を持つ企業がほとんどです。最近、ネット専業であっても実店舗を持とうとする動きが盛んです。
そうした企業が実店舗を持つよりは、百貨店がオンラインを強化する方が簡単と言えます。
百貨店が商品分野だけでなく、複数のチャネルを横断したオムニチャネルを通じて真の意味での総合力を手に入れたとき、小売業界の地図はまた大きく変化するかもしれません。

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