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オンライン小売業者が実店舗進出へ

Amazon、Warby Parker、Bonobos、そしてCasperといった企業はオンライン小売業者として知られていますが、ここにきて実店舗展開を開始しています。実店舗の衰退が叫ばれて久しい中、オンラインで買える商品を家賃を払って実店舗で販売するというのは一見時代に逆行しているように思えますが、そこにはそれなりの理由があるのです。

小売は衰退している?

「小売は衰退しているという声を聞きますが、それは実店舗販売オンリーのビジネスモデルに限った話です」とKantar ConsultingのデジタルEコマース副社長リード・グリーンバーグ氏は話します。「ここにきて実店舗展開の動きが戻ってきていますが、それでも昔のようなスタイルとは少し変わったものになるでしょう」(同氏)

現時点で、全体のセールスの80~85%は実店舗を通してのもので、この状態は変わることはないとOracle + Brontoのマーケティングアナリスト、グレッグ・ザコウィクス氏は述べますが、小売の新しい形としては実店舗でも個別対応したデジタルベースのサービスを提供しながら、オンラインとオフラインの融合といった方向に向かっていっています。

その結果、セールスが全て在庫倉庫を通される企業にとっては、ビジネス形態全体を変更することにつながってくるのです。

Eコマース業者が実店舗展開に移行しているもう一つの理由としては、複数チャネルで販売することによる売り上げの増加が挙げられます。統計によると、2つ以上の販売チャネルで商品を購入する消費者は一般的に30%以上多くの金額を使うということが分かっています。

「リピーター顧客化、セールスアップ、ブランドとのつながりなど、メリットは計り知れません」と前出のグリーンバーグ氏は話します。コストがかかるため必ずしも全ての小売業者にとって当てはまるわけではありませんが、中規模の業者には現実的なオプションであるのは確かです。

新しい店舗のスタイル

オンラインショップから実店舗へと展開をする小売業者にはいくつかのアドバンテージがありますが、その理由としてはオンラインショップで培った経験(商品を見て回る際の効率や購入時の便利さやスピード感など)が生きるからです。

前述のザコウィスク氏も「より良いサービスを展開可能にするためには、従来の店舗スタイルからいろいろ学び、その上で消費者がどのような商品を求めているかを理解する事に尽きます」と語りますが、次にその例をいくつか見てみましょう。

1.個別対応サービス

個別に対応したサービスはミレニアル世代の消費者を取り込むうえで効果的です。簡単に言えば、彼らが望んでいるのは「自分の趣向を知っていてくれている」小売業者なのです。

※洋服のオンラインショップModClothは、オースティンの実店舗において1時間のスタイリストコンサルタント付きの試着サービスを提供しています。「フィットショップ」と呼ばれるこの店舗では、購入してそのまま持ち帰ることができる商品と後日配達される商品に分かれます。

2.ショールーム

このスタイルでは、その場で実際に商品に触れて確認することができるものの、実際に購入した商品は後日倉庫から発送されることになります。こうすることで店舗内の在庫を極限にまで減らし店舗をコンパクトなスペースに展開することが可能になるのです。

ここでは「ミニマリストかつクリーン」が合言葉になります。車のショールームをイメージすると分かるように、とにかく必要以上の商品を抱えないことが基本で、オンラインショップ上で人気の商品に絞って展開するなどコストカットと効率化に焦点を当てています。

※眼鏡やサングラスを販売するWarby Parkerは現在64店舗を展開しており、2018年末までには100店舗オープンを目指しています。消費者は眼鏡が購入時に試着してみたいものですし、カスタムされた商品に対しては待つことも苦ではありません。ただし半数の消費者は購入後すぐに商品を持ち帰りたいと考えているため、このショールーム式販売モデルではそこがマイナス点となりかねません。

最近の消費者はオンラインで購入して数日後に商品が届くというシステムに慣れていますが、ここではあえてスピーディーなサービスに固執しないブランド戦略が反映されることになります。

ですから、無理に「ショールーミングモデルが良いか、従来スタイルの店舗販売モデルが良いか」という議論にこだわらない方が健全ですし、最近では店舗に在庫が無い商品の場合は後日無料配送サービスを実施している業者も多くなってきています。

3.テクノロジーとの融合

新しい実店舗業者は、顧客サービスの個別対応化やデータ分析を目指してテクノロジーを活用しています。中には店舗に足を踏み入れたと同時にログインして認識され、店員やアプリが過去の購入商品を基におススメ商品を提示することができるようになっています。

「これらの業者は、テクノロジーがいかに新しい店舗サービスに効果的かということを良く理解しているのです」とグリーンバーグ氏は語ります。

この他にも、データを活用してどのエリアに自社の顧客となる消費者が存在するかを割り出して、店舗展開に役立てているケースもありますが、そのエリアも必ずしも巨大ショッピングモールとは限りません。オンラインアクティブウェアショップとしてスタートしたFableticsは近年24店舗を新しくオープンさせ、さらに多くの新店舗のオープンを目指しています。

同社は試着室の外に設置された特殊スクリーンで買い物客が試着した商品を記録し、オンラインショップ上の買い物かごに転送することで、その場で購入しない場合でもいつでも後日購入することができるよう工夫をしています。

※Amazonの実店舗では買い物客はAmazonのアプリやAmazonアカウントに登録されたメールアドレスを使って支払いをすることができ、PrimeメンバーはPrime特別価格で買い物もすることが可能です。
※イギリスのメークアップブランド、Charlotte TilburyはEコマースとして事業をスタートしたわけでは無いものの、デパート事業から分岐して現在では拡張現実機能搭載の鏡を活用しており、10種類の異なるメークアップスタイルを試しながらその場で購入して自宅へ配送もできるようになっています。

4.人気ショップとの一体化

事業を新規スタートさせるもう一つの方法としては、自社ブランド商品を他の会社の小売ショップに置かせてもらう事があります。

※The Honest Companyは現在商品のいくつかをTarget またはCostcoで販売しています。
※CasperマットレスはTargetと業務提携を結び、Targetの店舗で購入することができます。

オンライン・実店舗融合型販売モデルが供給チェーンにもたらす影響

わずか数店舗を実店舗展開するだけのオンライン小売業者にとっては、輸送システムや在庫保管方法などに大きな変化は出てきません。その代わりに在庫管理システムに変化が必要となり、実店舗での在庫を倉庫側が同時にしっかりと管理することが不可欠となってきます。

支払いのほとんどはオンラインを通して実行され、データ分析に秀でた業者は実店舗で得た情報をオンラインでの販売に活かすことが可能になってきますし、その逆も然りです。

従来の小売業者が学べる点

従来の小売業者はEコマース企業の実店舗展開からどのような事が学べるでしょうか。

前出のザコウィスク氏は「それは大きな意味を持った質問ですが、答えはカスタマーサービスと言えるでしょう」と語ります。つまり店舗内でのプロセスを簡潔化させることで、例えばオンライン上で購入して店舗で受け取りを実施する際は必ず専門の担当を配置してスムースにサービスを展開するということになりますし、可能であればタブレットを活用してスピードアップできれば最高です。

また、アプリを持ったお店であれば実店舗においてもアプリを通して購入が簡単に可能ですし発送もカバーできます。裏を返せば、テクノロジーを活用した総合サービスを実施できない小売業者は生き残りが難しくなってきます。Home Depot、Kroger、Walmartといった老舗の小売業者は、消費者の携帯電話に最初の接点があるという事実に気付いてきており、アプリを入店と同時に起動させてクーポンやおススメを提示するなどの対応を見せています。

Home Depotの例を見ると、アプリ上で「チャットボット」や拡張現実の技術を取り入れて、写真から探している商品の陳列場所を探したり、例え写真が無い場合でも拡張現実テクノロジーを使ってその商品を見つけ出すことを可能にしています。

中には例外的に全くこういったテクノロジーを取り入れずに成長を続けるTJ MaxxやHome Goodsのケースもありますが、これらのブランドのフォーカスは「良い商品を格安で販売する」という一点に尽きます。しかしながら、デジタルエリアでの対応を念頭に置いて設立されたブランドはより素早く成長を遂げることができ、従来のスタイルとは一線を画した実店舗展開に移行することでさらにセールスを強化することも視野に入れることができるメリットがあるのは忘れないでおきたいところです。

この記事は4 ways online retailers are going from clicks to bricksを本ブログが日本向けに編集したものです。

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