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いよいよ5G時代の幕開け、キャリア各社が商用サービスをスタートへ

2020年3月27日、ソフトバンクによる「SoftBank 5G」のスタートを皮切りに、今年は国内キャリア各社が次々と5Gの商用サービスを開始する、いわば5G元年です。

「超高速」「超大容量」「超低遅延」「多接続」を特長とする5Gは以前から大きな話題となっているだけに、実際にサービスインした際の人々の暮らしや社会にどんな変化が起きるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

本稿では、キャリア各社の5Gに対する取組の現状と、5Gの特性を活かしたサービス事例などをまとめていきます。
目次:

商用サービス化に向けキャリア各社に割り当てられた周波数帯

2019年4月、総務省がキャリア各社が5Gで用いる周波数帯の割り当てを決めました。各社が割り当てられた周波数帯は以下の通りです。
キャリア 割り当て枠数 周波数帯
NTTドコモ 3枠 3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯
au 3枠 3.7GHz帯×2枠、28GHz帯
ソフトバンク 2枠 3.7GHz帯、28GHz帯
楽天モバイル 2枠 3.7GHz帯、28GHz帯
総務省による割り当ての基準は、人口カバー率ではなく「基盤展開率」となっています。基盤展開率とは、日本全国を10km四方に区切った時にどれだけ広いエリアをカバーできているかを測る指標であり、これは、人口が集中する都市部を重視するのではなく、超高速、超大容量、低遅延、多接続という特徴を持つ5Gを、過疎などの課題を抱える地方都市の課題解決に役立てるべき、という政府の意思の現れとも言えるでしょう。

NTTドコモやauは、今後5年のの5G基地局設置計画においてエリアカバー率の広さ(NTTドコモ97%、au93.2%)を示していることから、今回、3枠ずつの周波数帯を割り当てられたと思われます。

一方ソフトバンクは、5G立ち上がり初期は都市部に重点を置き、基盤展開率ではなく、早期の人口カバー率90%以上を目指しています。

いずれのキャリアも、まずは5Gに対応する基地局や設備の整備を進めていかなければサービスの充実が図れない状況ですが、その点楽天モバイルは、市場への新規参入者であることから、最初から5Gに最適化されたインフラを構築できることが強みとなりそうです。

5G対応機種の販売状況は?

5Gの恩恵を受けるためには、5Gに対応した携帯端末が必要となります。

3月27日に先陣を切るソフトバンクからは、「シャープ AQUOS R5G」、「ZTE Axon 10 Pro 5G」、「LG V60 ThinQ 5G」、「OPPO Reno3 5G」の4機種が発売されます。

それ以外のキャリアでは現時点(※2020年3月12日)でまだ具体的な対応機種の発表はありませんが、各社とも間も無く正式にアナウンスされるでしょう。

また、人気の高いiPhoneやGalaxyなどは、次に投入される新機種から5G対応になると思われます。

サービスイン直後から5Gのメリットを感じやすい部分

その特性を活かして人々の暮らしや、あるいは小売業界の在り方にも様々な変化をもたらすことが期待されている5Gですが、上述した通り、各社ともインフラの構築が先決なため、サービスイン直後は目立った事例はあまり出てこないかもしれません。

しかし、スペックが4Gとは桁違いなため、通常の使用においても至る所でその恩恵を感じられるはずです。

大容量の動画視聴

超高速、超大容量という特色により、スマートフォン上での動画視聴がかつてないほどスムーズになり、ストレスを感じることがなくなりそうです。4Gでは5分ほどかかっていた2時間程度の映画などのダウンロードならほんの数秒で済みます。

加えて、これまでスマートフォンでは視聴することができなかった4Kや8Kといったデータの大きい超高画質映像も(スマートフォンのスペックさえ許せば)スマートフォンでDLして視聴することができるのです。

クラウドゲーミング

クラウドゲーミングとは、ゲームソフトの情報処理をクラウド上で行い、それをローカルデバイスにストリーミングするサービスです。これまでの通信環境では、どうしても反応速度が遅くなり、ストレスなくプレイすることが難しかったのですが、低遅延、大量接続を可能にする5Gによって、本格的にクラウドゲーミングのサービスが実用化されると見られています。

また、eスポーツなどの大会では、主催者にとって一番怖い通信トラブルのリスクを限りなく低減し、多くの観客にライブビューイングの提供を可能にするため、5Gがeスポーツの存在価値自体を大幅に高める可能性があります。

VRやARなどの活用

これまでも、ゲームなど完全にパッケージ化されたものであれば、高品質なVRコンテンツを活用したサービスやプロモーションというものは存在していましたが、5Gであれば、それだけ大容量のデータを遅延なくリアルタイムで通信できるため、できることの幅が大きく広がります。

これはもう少し先の話になりそうですが、VRやMRはエンターテインメントの枠に止まらず、遠隔医療での手術シミュレーションや観光業界など、あらゆるビジネス領域でその真価を発揮することになるでしょう。

5Gならではのサービス具体事例

それでは、インフラが整備されたあかつきに実現できる「5Gならでは」のサービスにはどんなものがあるのでしょうか。プレサービス中の実証実験のものになりますが、具体的な事例を見ていきたいと思います。

「ラグビーW杯 2019」でのライブビューイング

NTTドコモは、2019年に開催された「ラグビーW杯 2019 日本大会」において、開幕試合となった日本vsロシアの映像を5Gでリアルタイムに転送して行う「5Gライブビューイング」を実施しました。ここで行われたのは「マルチアングル視聴」の実験です。

ライブビューイングの会場では、前方のスクリーンに映し出されるメイン映像の他、観客に配られた5G対応のスマートフォンで多視点の映像を任意に視聴することができるようになっていました。

選手に寄った「FOCUS VIEW」、ゴール裏からの視点になる「TACTICS VIEW」、選手の成績をチェックする「STATS」、そしてリプレイ映像を確認できる「REPLAY」というマルチアングルの映像を、いつでもユーザーの好きなタイミングで自由に選べるのです。

テレビなどのスポーツ中継では、カメラが数台稼働していても、どの視点の映像を映し出すかはディレクターの意志次第です。したがって、贔屓にしている選手がいつも映し出されるとは限りませんし、気になるプレイのリプレイがCMの都合などでなかなか観られずストレスになることもよくあります。

5Gによるマルチアングル視聴は、それらをいっぺんに解決してくれ、好きなスポーツをよりエキサイティングに、知らなかったスポーツに興味を持たせてくれる可能性を大きく広げてくれるでしょう。

また、これはスポーツ観戦だけでなく様々なコンサートや舞台など様々なエンターテインメントにおいても活用でき、自分で視点を決められることで、これまでになかった楽しみ方を生み出してくれそうです。

現在、全世界を災禍に巻き込んでいる感染症のせいで、様々なスポーツやコンサートが無観客で行われる流れになりつつありますが、5Gのライブビューイングは、そのようなイベントの価値を再定義できる可能性を秘めているのではないでしょうか。

列車の走行位置に応じた観光情報の提供

こちらもNTTドコモとJR九州による実証実験の事例です。

2019年の春、NTTドコモは、肥薩線人吉駅〜吉松駅区間を走行するD&S列車「いさぶろう・しんぺい」の乗客に対して5G対応端末を貸し出し、走行中の列車の窓から見える景色に応じて、様々な観光コンテンツをリアルタイムで配信する、という実験を行いました。
実験では、走行中の列車のドローンの空撮映像を視聴できるサービスも提供され、乗客は通常は見ることができない「自分が乗っている列車が目的地に向かって走っている様子」を景色と共に楽しむ、という体験を味わうことができたようです。これも、5Gの超高速、低遅延という特性が活かされてこそのサービスでしょう。

将来的には、走行中の列車の車窓をディスプレイにして、「MR(Mixed Riality、複合現実)」を用いて移り変わる風景に合わせた観光好転つをリアルタイムで表示する、というような世界観を目指しているとのこと。
しかし、このサービスが高いクオリティで実現されれば、肉眼で風景を見ることに集中しつつ、スマートフォンやガイドブックに視線を移すことなく知りたい情報も摂取できます。この斬新な体験自体を目的に列車に乗りたい観光客も増えるでしょう。

これもまた、5Gによってもたらされる観光業の新たな体験価値の提供と言えるのではないでしょうか。

小売業界でのインパクトは?

5Gは、ECや店舗での顧客体験にも大きなインパクトをもたらすでしょう。

例えば、大きなデータのやり取りが必要になる映像クオリティの高い動画をアップロードしたりダウンロードすることが苦にならなくなるため、ECサイトではこれまで以上に動画コンテンツの価値が高まります。動画をタップすることで直接購買に結びつけることが可能な動画コマースも、ECに必須のコンテンツとなるかもしれません。

5Gのリアルタイム性を持ってすれば、スキルの高い販売スタッフが場所を問わず接客することを可能にしてくれるかもしれないし、5Gによって自動運転が実用化されれば、無人宅配の実現も夢ではないかもしれません。

どのような変化が起こるにせよ、5Gが普及した先には、今は想像もしていないようなことが、フロントエンドだけでなく、バックエンド含めた小売業全体に大きなインパクトを与えることは想像に難くありません。

その流れに確実に乗るためには、システム含めた事業全体を常に見直し、時代にアジャストし続ける必要があるのではないでしょうか。