スタバはセブンカフェとコインスペースに負けるのか
2013年、セブンイレブンが開始した「セブンカフェ」。100円で飲める本格コーヒーとして、日経優秀製品・サービス賞で最優秀賞に選ばれたり、日経MJの東の横綱に選ばれるなど、大ヒットとなりました。
セブンカフェ
http://www.sej.co.jp/products/sevencafe.html
今や、セブンイレブンだけでなく、大半のコンビニでコーヒーを飲むことができ、まさに「コンビニコーヒー」という、新しいジャンルを生み出しました。さて、ここで気になるのはコンビニコーヒーの消費が増えるほど、スタバやドトールといったコーヒーチェーンは打撃を受けるのでは無いか?ということです。
コンビニコーヒーの台頭により、コーヒーチェーンは打撃を受けるか?
セブンカフェの利用状況を見てみると、2013年12月時点で3億杯を突破しています。現在は全国の約15,800店舗に導入が完了しており、1店舗あたり1日約95杯販売しているといいます。また、最近の調査によると、コンビニ利用者のうち、コンビニコーヒーの利用者は約5割、今後の利用意向は約4割強という結果が出ています。
コーヒーチェーンへの直接的な影響がどれほどかはわかりませんが、これだけコンビニコーヒーが消費されていることを踏まえると、多少なりとも顧客は奪われていると考えられます。実際に、私の周りでもコンビニでコーヒーを買うようになってからコーヒーチェーンを利用しなくなったという声も聞きます。
コーヒーチェーンの第2の役割は「場所」を提供すること
コーヒーチェーンの価格はコンビニコーヒーに比べて割高ですが、これは「場所代」が含まれていると考えることができます。コーヒーチェーンは、コーヒーだけでなく「場所」を提供しているのです。待ち合わせ場所として。仕事場として。人それぞれの用途があると思います。しかし、勉強をする学生、集団でおしゃべりするグループ、Mac片手にドヤ顔で作業する人など、いろんな人が混在する中で、利用者の間で互いに良く思わない風潮が出てきました。
先日、こうした流れに目を付け、「コインスペース」という多目的スペースがOPENしました。
コインスペース 東急プラザ 渋谷店
コインスペースは、これまでコーヒーチェーンが提供していた「場所」に特化して提供するサービスです。10分100円で、飲食物持ち込み自由、電源・Wi-Fi完備となっています。★実際に利用してみた。
日曜の夕方ということもあり、客数は少なく、利用状況は10%程度といったところでした。店内は1階と2階に分かれており、2~4名のテーブル席や、図書館のような仕切り付きの個人スペースなどが設けられています。自動販売機のカップドリンクは自由に利用でき、iPadやノートPCを借りることもできます。2階には、会議スペースもあり、予約することで利用できるようです。利用している方はというと、買い物中の休憩とみられる方、PCを付き合わせて会議をする方、中にはワインボトルを持ち込んでいるグループもありました。
感想はというとズバリ「中途半端」でした。確かに席のタイプはいくつかあるのですが、スペースは隣接していて、特に仕切り等はありません。客数が多くなると結構ガヤガヤしそうで、あまり居心地の良い感じはしませんでした。私語厳禁スペースなどを設けるなど、明確に棲み分けを行なった方が良いと感じました。
バーコードで入店から退店までの時間が管理されている
時間制の課金なので、滞在時間も多少気になるところが、コーヒーチェーンとの違いだと感じました。ちなみにOPEN価格で15分100円だったので、約75分滞在して500円でした。コーヒーチェーンは逆襲の一手を打てるか
コンビニコーヒー、コインスペースが登場する中、コーヒーチェーンにはどんな「逆襲」が考えられるでしょうか。★商品の質・独自性の強化
安く一定の質のコーヒーがコンビニで手に入るようになった今、コーヒーチェーンはより一層商品の質の向上に力を入れていく必要があります。スイーツやモーニングについても、コンビニは強力なライバルです。「あの店だから食べられる」という商品(スタバならフラペチーノ、サンマルクならチョコクロ等)を持つ必要があります。★コンビニの領域への参入
コンビニがコーヒー業界に参入したように、コーヒーチェーンもコンビニの扱う領域に切り込めるのではないでしょうか。例えば、コンビニではネットで買った商品を受取ができます。コーヒーチェーンでもネットで購入した本を受け取れるサービスがあればいいなぁと思います。また、多くの人にとって、職場や自宅の近くなど、良く利用する店舗は決まっています。店舗で本を預かってくれると、毎日重たい本を鞄に入れる必要も無くなります。ついでに、読み終わった本は店頭で買い取ってくれたり、コーヒー券で下取り・・・なんてこともあるかもしれません。
★「場所」としての価値を高める
コインスペースを実際に利用して感じましたが、コーヒーチェーンはまだまだ「場所」としての価値があります。その価値を生かすためには、スペースを分けることが重要ではないでしょうか。喫煙と禁煙が分かれているように、仕事する人とおしゃべりする人は分けないとお互いが不幸です。店側が客を選べないのであれば、客を空間に分類してしまえばいいのです。電源もところどころにあるより、完備しているスペースと、そうでないスペースに分けてある方が、顧客にとってもわかりやすいと思います。
コーヒーチェーンは「場所」の提供者として強みを伸ばせ
コンビニコーヒーとコインスペースの登場によって、人々の求めるものが浮き彫りになったと言えます。客はおいしいコーヒーをより安く飲みたいと思っていますし、家でも職場でもない「場所」を求めています。様々な客がコーヒーチェーンを利用するようになった今、せっかくの憩いの場所を、お互いが不快な気持ちで利用するのはもったいないことです。個人経営の喫茶店が、店内でのPC作業を禁止しているのを良く見かけますが、これはこの「場所」を守るための対策と言えます。
コーヒー売るだけがゴールではない
最後に、コーヒーチェーンの代表格であるスターバックスのミッションをご紹介します。『ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由』という本の中で、「なぜスターバックスは長居する客を追い出さないのか」という問がありますが、その答えはスターバックスの掲げるミッションにあります。
「人々の心を豊かで活力のあるものにするために−−ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」スターバックスにとって、コーヒーを売ることだけがゴールではありません。確かに1杯のコーヒーで2~3時間も長居する客は、店舗の売上を下げる要因となります。しかし、その客が店内で新たな価値を生みしているとしたら、それこそがスターバックスの存在意義であると述べています。
(To inspire and nurture the human spirit–One person, one cup, and neighborhood at a time)
「顧客に良い体験を提供し、ブランドのファンになってもらう」という姿勢は、小売業にも通じるものがあります。入店から退店までの間に過ごした時間こそが、コンビニやコインスペースには決して真似できない、コーヒーチェーンの「商品」といえるのかもしれません。
この記事を書いた人
大工 峻平
エスキュービズムにて、タブレットPOSシステム導入を担当。タブレットPOS、Handyシステムの導入営業からはじまり、納品・教育・保守まで幅広い業務領域に携わっています。