共通ポイント戦国時代を小売店はどう生きるか~共通ポイントに加盟すべき業種とは?~
10月1日に楽天のRポイントがスタートしました。
小売店は、共通ポイントとどのように向き合うべきでしょうか。
ポイントの仕組みの普及と比例するように、消費者の財布の中には次々にポイントカードが増えていきました。誰もが森永卓郎さんのようにポイントを使いこなせれば良いのですが、実際には
「気がついたらポイントの有効期限が過ぎていた・・・」
「使いたいのに家にポイントカードを忘れてしまった・・・」
といったように、消費者へ煩雑さと面倒さを与えるようになってしまいました。
そうした流れを受けて登場したのが共通ポイントでした。前述のTポイント、Pontaポイント、Rポイントです。
※各ポイントの特徴は既に各所でまとめられているので、割愛します。
加盟店は自社で煩雑なポイントプログラムを管理する必要がなく、消費者も複数のポイントを1つに統合できるなどのメリットがあり、動向が注目されています。
しかし、特定の共通ポイントが利用できるということは、裏を返せばその他の共通ポイントが利用できないということを意味します。これは、別の共通ポイントを貯めている顧客の来店を鈍らせるというデメリットともなりえます。ポイントを細かく使い分ける消費者の場合、各共通ポイントのカードを保持するので問題ないでしょうが、その場合、顧客にとってはどこの店舗へ行こうがいずれかのポイントを貯めることができるため、差別化の効果は薄まってしまいます。
(http://ascii.jp/elem/000/000/939/939089/)
Tポイントの加盟店になった場合、この5,000万人を顧客と考えることができます。これは、自社だけのポイントサービスで達成することは難しい数字です。PontaでもRポイントでも同じですね。
とはいえ、この顧客情報は加盟店が自由に利用するできるものではなく、あくまでも運営会社であるCCCによって管理され、顧客情報は一切公表されません。実際にTポイントの加盟店向けには、「貴社(店)でTカードをご利用になったT会員の“所在地・利用ポイントの状況・リピート率・購入単価”の四つを月単位でお知らせしております。」との記載があり、利用できる情報は限定的となっています。(Tポイントサービス新規加盟店募集! – 良くある質問:http://www.tpoint-ag.com/faq.html)
管理する運営会社には、カードを利用した様々な業種の顧客の行動・購買履歴が集まります。そういった情報を一部利用させてもらうことができる、というイメージが一番近いと思います。
以上のように、メリットはたしかにあるものの、業種や事業規模によって、共通ポイントへ加盟すべきかどうかは変わります。
購入頻度、購入金額、商品に独自性があるかという、3つの観点で表を作成してみました。
このように、業種・業態によりとるべき選択肢は変わります。逆に上記に当てはまらない業種は、共通ポイントという選択は、最適ではないと考えます。
本当に商品やブランドに力があれば、ファンの心を掴んで離さないはずです。ポイントサービスはあくまでもおまけという位置づけでしょう。本当に魅力的なら、多少手間がかかっても、消費者はインセンティブを感じてポイントサービスを利用するでしょう。
チェーン店用のPOSとしても、「楽天ポイント連動POS」も登場しており、早くも店頭のレジでもポイントの利用が可能となっています。
しかし、いろんなブランドを利用できる共通の仕組み(CATやINFOXのような仕組み)を構築され、複数のブランドを利用することができるようになりました。ポイント業界においても、貯めるのは別々でも、どのポイントも共通して利用できる仕組みがいずれ登場するのではないかと考えています。クレジット決済代行サービスならぬ、「ポイント決済代行サービス」のようなものが登場するかもしれません。そうなれば、どのポイントでも利用できるという”共和国”化も実現するかもしれません。
共通ポイント業界は、Rポイントの参入により、運営各社による「一番利用されているポイント」の地位争いが激化していくはずです。現在の勢力図がどう変動するかに注目したいところです。
時はポイント戦国時代。小売店はそれぞれの生き方を考えてみるべきではないでしょうか。
※お詫び・訂正:10/23 16:49
公開当初、「ローソンが運営するPontaポイント」と表記しておりましたが、正しくは株式会社ロイヤリティ マーケティング様による運営となります。ローソン社は共通ポイントPontaの提携会社となりますので、訂正させていただきました。申し訳ございませんでした。
楽天PointClub:http://point.rakuten.co.jp/rpointcard/カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営するTポイント、株式会社ロイヤリティ マーケティングが運営するPontaポイント、そして楽天のRポイントという3つのポイントによる、戦国時代の到来と言われています。
小売店は、共通ポイントとどのように向き合うべきでしょうか。
ポイントサービスの変遷~店舗個別のポイントから共通ポイントへ~
そもそものポイントの役割は、「次回ポイントが使えるので、またうちのお店を使ってくださいね」という消費者へ再来店を促すためのインセンティブの1つでした。ポイントの仕組みの普及と比例するように、消費者の財布の中には次々にポイントカードが増えていきました。誰もが森永卓郎さんのようにポイントを使いこなせれば良いのですが、実際には
「気がついたらポイントの有効期限が過ぎていた・・・」
「使いたいのに家にポイントカードを忘れてしまった・・・」
といったように、消費者へ煩雑さと面倒さを与えるようになってしまいました。
そうした流れを受けて登場したのが共通ポイントでした。前述のTポイント、Pontaポイント、Rポイントです。
※各ポイントの特徴は既に各所でまとめられているので、割愛します。
※参考:今さら聞けない共通ポイント Tカード(Tポイント)、Pontaカード(Pontaポイント)、Rポイントカード(楽天スーパーポイント)の歴史から徹底比較共通ポイントとは、その名の通りいろんなお店で共通して貯めたり、使うことができます。個々の加盟店で考えると、自分の店で貯めたポイントが、他の店で使われるわけですから、必ずしも自分のお店への再来店に繋がるわけではありません。そうではなく、共通ポイントに加盟している店舗全てが1つのショッピングモールとなり、加盟店全体で顧客を囲い込みましょう、という考え方をしています。
http://www.poitan.jp/archives/7019
加盟店は自社で煩雑なポイントプログラムを管理する必要がなく、消費者も複数のポイントを1つに統合できるなどのメリットがあり、動向が注目されています。
小売店は共通ポイントへ加盟すべきか?
では、小売店は共通ポイントに加盟すべきでしょうか?加盟店のメリットについて考えてみましょう。メリット1:「ポイントが貯まる・使えることにより他店との差別化が図れる。」
この点はポイント運営各社がアピールしていますが、ポイントを集客・販促ツールとして利用しましょう、ということです。当然、Tポイントを貯めているユーザーからすれば、Tポイントを利用できることはメリットですので、Tポイントが貯まらないお店よりは、貯まるお店を選ぶでしょう。しかし、特定の共通ポイントが利用できるということは、裏を返せばその他の共通ポイントが利用できないということを意味します。これは、別の共通ポイントを貯めている顧客の来店を鈍らせるというデメリットともなりえます。ポイントを細かく使い分ける消費者の場合、各共通ポイントのカードを保持するので問題ないでしょうが、その場合、顧客にとってはどこの店舗へ行こうがいずれかのポイントを貯めることができるため、差別化の効果は薄まってしまいます。
メリット2:「顧客情報を利用できる」
Tポイントは、全国に5,000万人の会員がいると公表しています。(http://ascii.jp/elem/000/000/939/939089/)
Tポイントの加盟店になった場合、この5,000万人を顧客と考えることができます。これは、自社だけのポイントサービスで達成することは難しい数字です。PontaでもRポイントでも同じですね。
とはいえ、この顧客情報は加盟店が自由に利用するできるものではなく、あくまでも運営会社であるCCCによって管理され、顧客情報は一切公表されません。実際にTポイントの加盟店向けには、「貴社(店)でTカードをご利用になったT会員の“所在地・利用ポイントの状況・リピート率・購入単価”の四つを月単位でお知らせしております。」との記載があり、利用できる情報は限定的となっています。(Tポイントサービス新規加盟店募集! – 良くある質問:http://www.tpoint-ag.com/faq.html)
管理する運営会社には、カードを利用した様々な業種の顧客の行動・購買履歴が集まります。そういった情報を一部利用させてもらうことができる、というイメージが一番近いと思います。
以上のように、メリットはたしかにあるものの、業種や事業規模によって、共通ポイントへ加盟すべきかどうかは変わります。
共通ポイントに加盟すべき業種
では、共通ポイントに加盟すべき業種は、どのような業種でしょうか。購入頻度、購入金額、商品に独自性があるかという、3つの観点で表を作成してみました。
小売業種別分布
この中で、以下の3つの業種は共通ポイントに加入することで、メリットを享受できると考えます。1. 他社と同じ製品を販売しており、商品での差別化が難しい業種(コンビニ・スーパー・ガソリンetc)
消費者にとって、「このお店のこの商品が欲しい」思ってもらえるような商品を持っているのであれば、ポイントのサービスはなくても良いのです。どこで買っても同じ、と感じられているものこそ、ポイントのような「おまけ」が人の選択に影響を及ぼします。こうした場合は、共通ポイントに加入することで、同じ商品を販売している店舗に対して差別化を図ることができます。2.消費者の1回の購入額は低いが、消費者の購入頻度が低い業種(ガソリンスタンド・100円均一・リサイクルetc)
次にいつ利用するかわからない店舗のポイントカードは貯めない、という方は多いのではないでしょうか。購入頻度が低いということは、独自のポイントサービスを行なっても、利用してもらえる可能性が低いです。共通ポイントに加盟することで、他の業種と購入頻度をカバーできます。3.消費者の1回の購入額は低いが、利用頻度が高い業種(コンビニ・スーパー・ドラッグストアetc)
一度の購入金額が低い場合は、ポイントの獲得数も低くなります。しかし、利用頻度が高ければポイントは着実に貯めることができます。その場合、どこでも頻繁に利用できる共通ポイントであることが、利用を促進します。このように、業種・業態によりとるべき選択肢は変わります。逆に上記に当てはまらない業種は、共通ポイントという選択は、最適ではないと考えます。
・「共通ポイント」という選択を取らない選択
例えば、無印良品では自社でのポイントサービス(MUJIショッピングポイント)を運用しています。また、タワーレコードのポイントカードも共通ポイントとの連携していません。本当に商品やブランドに力があれば、ファンの心を掴んで離さないはずです。ポイントサービスはあくまでもおまけという位置づけでしょう。本当に魅力的なら、多少手間がかかっても、消費者はインセンティブを感じてポイントサービスを利用するでしょう。
ポイント戦国時代の行く末は?
・注目すべきRポイント
Rポイントは、共通ポイントとしては最も後発なわけですが、どこまで勢力を伸ばすかが注目したいところです。その理由としては、業種も制限していないことが挙げられます。「他の共通ポイントプログラムの場合、大手のナショナルチェーンは一業種一社が基本となっていたが、特に縛りを設けるつもりはなく、提携社のスタンスに委ねるという。また、自社のポイントプログラムや競合の共通ポイントとの併用も可能となっている。すでに、提携社の「得タク」では他のポイントプログラムも含め、貯めるポイントを選択可能だ。」また、楽天市場と連動しているポイントであることも注目する点として挙げられます。多くの大企業が、自社ECサイトと店頭ポイント共通化に四苦八苦している中で、楽天市場に出店している中小の小売業者で、実店舗を持つ企業へOnline to Offlineのインフラを一気に築きました。
(http://www.paymentnavi.com/paymentnews/42933.html)
チェーン店用のPOSとしても、「楽天ポイント連動POS」も登場しており、早くも店頭のレジでもポイントの利用が可能となっています。
チェーンストア向け多機能タブレットPOSレジ
http://ec-cube.ec-orange.jp/pos/news/141001.html
・ポイント戦国時代は、共和国化して落ち着く?
個人的な見解ですが、ポイントはクレジットカードのようになっていくのでは無いかと考えています。クレジットカードは、今となっては大抵のお店でどのブランドも利用できるようになりましたが、かつては特定のブランドしか利用できない店舗が多くありました。しかし、いろんなブランドを利用できる共通の仕組み(CATやINFOXのような仕組み)を構築され、複数のブランドを利用することができるようになりました。ポイント業界においても、貯めるのは別々でも、どのポイントも共通して利用できる仕組みがいずれ登場するのではないかと考えています。クレジット決済代行サービスならぬ、「ポイント決済代行サービス」のようなものが登場するかもしれません。そうなれば、どのポイントでも利用できるという”共和国”化も実現するかもしれません。
・ポイントに求められるイノベーション
ポイントの世界にはさらにイノベーションが必要だと考えています。・ポイントカードの廃止
仮に共通ポイントを全て利用する場合、最低でも3枚のカードを保持しておく必要があります。また、現状どのお店にいってもカードを提示しなければ、ポイントを貯めたり、利用することはできません。毎回、カードをお持ちですか?と尋ねられるのも正直煩わしいですよね。カード情報をスマホアプリに組込んだり、来店するだけでポイントがたまるサービスなどもあります。利用者の利便性を高めることが、共通ポイント間の差別化にもなってくるでしょう。・利用する仕組みの整備
ポイントは貯めることも大事ですが、使えることがもっと大事です。電子マネーも普及が進んできましたが、未だに利用に時間がかかったり、ひどい時には店員に教育が行き届いておらず利用できないこともあります。より簡単に利用できる仕組みが必要です。まとめ
今回は共通ポイントに加盟すべき業種ついて考えてみました。業種・業態的に独自のポイントサービスの運営が難しい店舗は、今後共通ポイントへの加盟が進んでいくと思いますが、自社の商品・ブランドで勝負ができる小売店は、自社独自のポイントで差別化を図るべきです。さらにいうならば、ポイントとは別の方法で消費者を離さない方法を考えるべきでしょう。共通ポイント業界は、Rポイントの参入により、運営各社による「一番利用されているポイント」の地位争いが激化していくはずです。現在の勢力図がどう変動するかに注目したいところです。
時はポイント戦国時代。小売店はそれぞれの生き方を考えてみるべきではないでしょうか。
※お詫び・訂正:10/23 16:49
公開当初、「ローソンが運営するPontaポイント」と表記しておりましたが、正しくは株式会社ロイヤリティ マーケティング様による運営となります。ローソン社は共通ポイントPontaの提携会社となりますので、訂正させていただきました。申し訳ございませんでした。
この記事を書いた人
大工 峻平
エスキュービズムにて、タブレットPOSシステム導入を担当。タブレットPOS、Handyシステムの導入営業からはじまり、納品・教育・保守まで幅広い業務領域に携わっています。