時代は「O2O→オムニチャネル→O2O」!?オムニチャネルの次にくるトレンドを予想してみる
O2Oとオムニチャネルでは、それぞれどのような効果があるのか実はあまり知られていないと思います。
昨年発行した「オムニチャネル構築実態レポート」の調査結果と事例から、両者の違いについて考察するとともに、オムニチャネルの次に来るトレンドについて考えていきましょう。
2013年末に「セブン&アイ・ホールディングス」が、今後5年で1000億円の投資を予定したオムニチャネル化を宣言したことで注目を集め、日本の小売企業全体がオムニチャネル化へ取り組み始めました。
しかし、オムニチャネル化に取り組むことばかりが取り上げあれ、オムニチャネル化が実際にどのような効果をもたらしているのかがメディアで取り上げられることはあまりありませんでした。
意外にも、調査を行った24社のうち4割の企業がすでにオムニチャネル化への取り組みをはじめていて、そのすべての企業が取り組みの効果を実感していると答えました。
しかし、小売の現場ではO2Oとオムニチャネルに対する認識がほとんど同じ傾向で、両者がはっきりと区別されていないことがわかりました。各社においてのO2O・オムニチャネルの定義が異なることも影響していると思われます。
O2Oは、クーポンやポイントを付与することで新規会員獲得、来店・購入頻度が増加し、集客に即効性がある一方で、客単価やリピート率の向上までは繋がっていないことがわかりました。現場では新規顧客の獲得(13%)よりも、既存顧客の囲い込み(21%)が課題だと認識されており、O2Oだけでは既存顧客を囲い込むことができないことが課題となっているようです。
自社のターゲットユーザーと異なる顧客を集め続けても一見顧客で終わってしまうため、より制度の高い顧客獲得が求められています。
一方、オムニチャネルを実現する上で重要な施策である実店舗とECサイトのポイントプログラムの共通化について、これまでポイントを共通化していなかった企業の半数が今後の共通化を検討していることから、チャネルを横断して顧客を囲い込む意識が高まっていることがわかります。
ECサイトの構築(リプレイス含む)と同時に、ポイントだけでなく、顧客情報や在庫情報などのデータ統合も進めたいというニーズは高まってきています。
来店時に本を受け取るついでに別の本を購入してもらう動きにもつながっているため、他書店に比べて実店舗における客単価が2倍に伸びています。
これまでは買い取った店舗でしか販売できなかった商品を、査定・買取と同時に全国の中古商品愛好家に向けて発信できるため、商品の売り切り率が向上しました。
今後は、Rポイントの利用先にハガキの購入・写真プリントなどを想定しており、店舗利用客数の増加を見込んでいます。RポイントカードをPOSレジで読み取ることで過去の購入履歴やオススメ商品がレコメンドされ、その情報をもとに接客の質を高めてさらなる客単価向上につなげていく予定です。
これらの事例から、店舗とオンラインが単に連動しているだけでなく、それぞれの企業のターゲットユーザーに合わせて適した施策を行っていることがわかります。
O2Oとオムニチャネルを比較してみると、初回客を集めて店舗に送客し短期的に売上を増やすにはO2O、高利益率なリピーターを囲い込みあらゆるデータを統合することで長期的に売上を増やすにはオムニチャネルが優れていることがわかります。
今後、オムニチャネルシステムが完成・定着化すれば、リピーターや利益率の高い顧客の獲得と囲い込みが可能になり、長期的な売上と利益増加につながることが予想されます。
そしてその先には、オムニチャネルで得られたデータを活かし、自社の顧客を精度高く見極めた上でより利益率の高いO2O施策(自社ターゲットにマッチした新規顧客獲得)が登場するのではないでしょうか。
中堅小売の・外食企業は「広くたくさんの」顧客を集める時代から、「自社に適した」顧客を選ぶ時代へと変化していくことが予想されます。
昨年発行した「オムニチャネル構築実態レポート」の調査結果と事例から、両者の違いについて考察するとともに、オムニチャネルの次に来るトレンドについて考えていきましょう。
実は誰も知らない?「オムニチャネル」が注目されたその後
オムニチャネルというキーワードは2012年ごろから最新マーケティング手法として世界的に認知され始めていました。2013年末に「セブン&アイ・ホールディングス」が、今後5年で1000億円の投資を予定したオムニチャネル化を宣言したことで注目を集め、日本の小売企業全体がオムニチャネル化へ取り組み始めました。
しかし、オムニチャネル化に取り組むことばかりが取り上げあれ、オムニチャネル化が実際にどのような効果をもたらしているのかがメディアで取り上げられることはあまりありませんでした。
小売の現場では、「O2O」≒「オムニチャネル」
オムニチャネル化の実態を把握するために、2014年1月から約半年かけて小売の現場に直接足を運び、小売企業24社4885店舗でのオムニチャネル構築実態を調査しました。意外にも、調査を行った24社のうち4割の企業がすでにオムニチャネル化への取り組みをはじめていて、そのすべての企業が取り組みの効果を実感していると答えました。
しかし、小売の現場ではO2Oとオムニチャネルに対する認識がほとんど同じ傾向で、両者がはっきりと区別されていないことがわかりました。各社においてのO2O・オムニチャネルの定義が異なることも影響していると思われます。
「O2O」だけでは既存顧客を囲い込むことはできない
では、実感している効果はどのようなものなのでしょうか。O2Oは、クーポンやポイントを付与することで新規会員獲得、来店・購入頻度が増加し、集客に即効性がある一方で、客単価やリピート率の向上までは繋がっていないことがわかりました。現場では新規顧客の獲得(13%)よりも、既存顧客の囲い込み(21%)が課題だと認識されており、O2Oだけでは既存顧客を囲い込むことができないことが課題となっているようです。
自社のターゲットユーザーと異なる顧客を集め続けても一見顧客で終わってしまうため、より制度の高い顧客獲得が求められています。
一方、オムニチャネルを実現する上で重要な施策である実店舗とECサイトのポイントプログラムの共通化について、これまでポイントを共通化していなかった企業の半数が今後の共通化を検討していることから、チャネルを横断して顧客を囲い込む意識が高まっていることがわかります。
ECサイトの構築(リプレイス含む)と同時に、ポイントだけでなく、顧客情報や在庫情報などのデータ統合も進めたいというニーズは高まってきています。
ターゲットユーザーに合わせた施策を行う「オムニチャネル」
すでにオムニチャネル化に取り組んでいる企業や店舗革新を進める企業の事例から、実際の取り組みや効果について見ていきます。丸善&ジュンク堂書店
店舗で受け取りたい、すぐに本が読みたい、丸善&ジュンク堂が好き、といったユーザーをターゲットに「Amazonより品揃えが多く、Amazonより早く本が手に入る」システムを構築しました。オンラインで注文すると店舗で取り置きしてくれるのはもちろん、絶版本でも100店舗全店の在庫から本を探してもらうことができるため、オンライン注文ユーザーの5人に1人がこのシステムを利用しているそうです。来店時に本を受け取るついでに別の本を購入してもらう動きにもつながっているため、他書店に比べて実店舗における客単価が2倍に伸びています。
ハードオフ
全国各地の店舗で買い取った中古品をPOSレジに登録すると、自動でオンラインモールに掲載されるシステムを構築しました。このシステムでは、オンラインモールで見た商品を最寄の店舗に取り寄せ、現物を確認した上で購買を判断できるため、全国どこでも求めるものを安心して購入できます。これまでは買い取った店舗でしか販売できなかった商品を、査定・買取と同時に全国の中古商品愛好家に向けて発信できるため、商品の売り切り率が向上しました。
プラザクリエイト
2014年10月1日から開始されたRポイントを読み書きできるWindowsタブレットPOSレジを日本で初めて開発し、580店舗で既存のPOSレジからタブレットPOSレジへ切り替える大規模な店舗革新を行いました。写真が趣味の中年、高齢者のお客様が多く来店することを考え、タブレットPOSの不安感を無くすために専用の什器を作りタブレットを覆うことで、従来のPOSレジ形態の安心感を残すことに成功しました。今後は、Rポイントの利用先にハガキの購入・写真プリントなどを想定しており、店舗利用客数の増加を見込んでいます。RポイントカードをPOSレジで読み取ることで過去の購入履歴やオススメ商品がレコメンドされ、その情報をもとに接客の質を高めてさらなる客単価向上につなげていく予定です。
これらの事例から、店舗とオンラインが単に連動しているだけでなく、それぞれの企業のターゲットユーザーに合わせて適した施策を行っていることがわかります。
「オムニチャネル」の次は、”利益率の高い「O2O」”
O2Oによる新規顧客獲得が売上増加の短期的な効果を実感した企業が、次のステップであるオムニチャネルに向けて弾みをつけて取り組みはじめたのが現状です。O2Oとオムニチャネルを比較してみると、初回客を集めて店舗に送客し短期的に売上を増やすにはO2O、高利益率なリピーターを囲い込みあらゆるデータを統合することで長期的に売上を増やすにはオムニチャネルが優れていることがわかります。
今後、オムニチャネルシステムが完成・定着化すれば、リピーターや利益率の高い顧客の獲得と囲い込みが可能になり、長期的な売上と利益増加につながることが予想されます。
そしてその先には、オムニチャネルで得られたデータを活かし、自社の顧客を精度高く見極めた上でより利益率の高いO2O施策(自社ターゲットにマッチした新規顧客獲得)が登場するのではないでしょうか。
中堅小売の・外食企業は「広くたくさんの」顧客を集める時代から、「自社に適した」顧客を選ぶ時代へと変化していくことが予想されます。
この記事を書いた人
浜田 友世
エスキュービズム・ホールディングス WEB戦略室にて、デザイン・マーケティングを担当。自社製品プロモーションサイトやオウンドメディア、販促物などのディレクションやデザインを手がけています。