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オンライン販売への順応に成功した有名小売業者に学ぶ「オムニチャネルの考え方」

近年、イギリス国内にはこれまで実店舗メインで事業を行ってきた有名小売業者がスムースにマルチチャネル化への順応に成功し、顧客満足度の向上と売り上げ高アップを同時に実現させている例が数多くみられます。

世界中で長引く経済不況の影響を受け、ここにきて業者側としてはできるだけ効率的にセールス実績を上げることができるように様々な趣向を凝らす必要に迫られてきています。それを受けて、小売業者の間ではこれまでの「マルチチャネル」販売から「オムニチャネル」システムへと移行することで各販売チャネル間でのスムースな連携を実現し、カスタマーサービスを向上させて販売実績に反映させようとする動きが活発になっているのです。

従って、これからご紹介する「オムニチャネル革命」に成功した3社の実例の中にも、読者の皆さんの参考になる情報がたくさん隠されていると思います。

ジョン・ルイス百貨店チェーン

イギリスにおけるオムニチャネル革命を実現した先駆者との呼び声も高い百貨店チェーンのジョン・ルイスグループは、長きにわたってオンラインと実店舗における販売チャネルの効率的な融合を目指して多くの工夫を凝らしてきました。一部のビジネス専門家の中には、消費者は「ブランドのチカラ」に惹かれて商品を購入するのであって、各販売チャネルを効率化させたところであまりセールスに直結しないという見方もありますが、ここで注目しておきたいのは業界内でのオムニチャネル販売のトレンドを牽引していると言われているジョン・ルイスグループですら、実は完全なオムニチャネル販売システムを構築できているとは言えないということです。つまりイギリス国内の大手小売業者をもってしても、オムニチャネル化小売販売の真髄を極めるにはいまだに至っていないことが分かります。


(引用元:John Lewis / Matt From London
ジョン・ルイスグループの経営戦略の一環としては、小規模の「デジタルストア」を各地方に数点出店するプロジェクトをはじめ、2018年までに実店舗数を60店にまで増加させ、2020年の年間総売り上げ高を現在の10億ポンドから30億ポンドまでの成長を目標としています。

このデジタルストアにおいては、インタラクティブ・スクリーン上に表示される質問事項を通して買い物客がどのような商品を探しているかを素早く正確に割り出すなど、最新テクノロジーを駆使して効果的な店内案内を実現させることができるほか、デジタルガイド機能を採用して実際に買い物客が簡単に店内検索できるようにナビゲートすることも可能にしています。

また、壁に設置された巨大スクリーンには店内だけでなくオンライン・ショップも含めた
ジョン・ルイスグループ店舗全体において販売されている商品に関する情報が流されています。

こういった新しいスタイルの店舗は、オムニチャネル販売戦略においては「店舗」としてだけでなく、「オンライン・ショップへの誘導役」として2通りの役割を果たしているのです。

「例えば実店舗を1店オープンさせるだけで、それまでは全くつながりがなかった新しいオンライン・ショップ関連マーケットへの扉が開くことになるので、その都度ビジネス戦略の対応が必要となってきます。こうして考えると、実店舗はいくらあってもあり過ぎることはないと言えるのです」(ジョン・ルイスグループ 商品管理・ブランド戦略責任者、ピーター・ルイス氏談)

<キーポイント>

・ジョン・ルイスグループでは、オンライン販売チャネルを実店舗の代わりとして利用するのではなく、むしろ実店舗においてオンライン販売へ効率的に誘導させるようなシステムを構築している。
・小規模の販売店ではオンラインで購入できる商品がディスプレイされており、オーダーした商品に関しては店舗引き渡し、または自宅配送の選択が可能。
・購入した商品はどの販売チャネルを通しても返品が可能。
・販売箇所を特定しないこのような小売販売スタイルをしっかりとサポートするために、柔軟性に富んだITシステムを採用。

バーバリー

チェックをあしらったファッションでお馴染みのバーバリーですが、この度同社はイギリスにおいて栄えある「べスト・オムニチャネル販売業者」の称号を受けました。バーバリーのオムニチャネル販売に対するアプローチの特徴としては、洗練されたマルチチャネル・ソフトウェアを活用した「カスタマーサービス」に焦点を置いているところにあります。

中でも最も特徴的なのは、店内在庫を最小限に留め、商品ディスプレイは各アイテム1種類に限定している点ですが、これには次のような理由が挙げられます。

1.このような状況では商品購入に際して買い物客とスタッフとの個人的なやりとりが必須となり、結果的にオンライン・ショッピングには真似できない形での販売サービスを実現させることにつながる。

2.店内在庫に関してはスタッフがiPadでその場で確認できるほか、他店舗や在庫管理倉庫から取り寄せる際には、マルチチャネル対応管理用ソフトウェアを活用することで購入者の自宅へ直接配送することも可能。

3.デジタル在庫管理を採用した店舗販売システムにより、関連商品や他商品の追加販売を効果的に実現する可能性を拡大。

「(実店舗のシステムを)このようにした背景には、家で実際にオンライン・ショッピングをする時の状況が考慮されています。つまりクレジットカード片手にソファーに転がりながら、わざわざ立って列に並ぶ必要なく買い物が済ませられる、そんな快適なサービスを実店舗でも実現させようとしたのです。」(バーバリー クリエーティブオフィサー主任、クリストファー・ベイリー氏談)

<キーポイント>

・オムニチャネル販売においても、スタッフと買い物客とのやり取りといった「人対人」のサービス提供が顧客満足度アップの実現には不可欠。
・個人的な接客対応を行う事で、追加販売などセールスアップの機会が増大。
・在庫を最小限に抑えることで管理業務が簡素化。

オアシス

2014年上半期、オムニチャネル・ファッション小売業者の世界ベスト5に選ばれたオアシスは、複数のプラットフォームを通しての消費者へのはたらきかけを実現すべく様々な工夫を凝らしてきています。

その一例としては、オンラインでオーダーして店舗での受け渡しを可能にしたり、iPadを使ったPOSを採用し、マルチチャネル・ソフトウェアを活用して店舗で品切れの商品を在庫管理倉庫から直接購入者の自宅まで配送できるシステムなどがあります。

「iPadを活用することで、スタッフがオアシスのウェブサイトにアクセスして各部門における商品の在庫状況を確認し、万が一在庫切れの場合にもその場で発注することが可能になります。また、購入時にレジに並ぶ時間を短縮することができ、購入プロセス自体をモバイルかつシンプル、さらに購入者にとって楽しめるようなものに変えることができるのです。」(オーロラ・ファッション オムニチャネル・ディレクター、イシュ・パテル氏談)

<キーポイント>

・一見シンプルに思える「オンラインで商品をオーダーして店舗で受け取る」というオプションを提供することが、得てしてオムニチャネル式小売販売を成功させるカギとなり得る。
・マルチチャネル・ソフトウェアテクノロジーを活用することで、さらに一歩進んだ店舗でのカスタマーサービスを提供することが可能となる。
・オムニチャネル小売販売は、消費者にとって買い物をより「楽しい」ものとする可能性を秘めている。
「オムニチャネル販売においては、消費者は実店舗での買い物の際にも最新テクノロジーを駆使した「ワクワク感」「個人的状況に対応してくれるワンランク上のサービス」の提供など、より多くの事を求めるようになってきています。」(オアシス 代表取締役、リズ・エバンス氏談)

オムニチャネル式小売販売の台頭は、そのまま実店舗販売の終焉を意味するものにはなりませんし、オムニチャネルのシステム自体は極端に複雑化したものである必要はありません。ここで紹介したジョン・ルイスグループ、バーバリー、そしてオアシスの実例からも分かるように、達成目標を明確かつ大胆に設定し、柔軟な対応が可能なマルチチャネル・ソフトウェアのプラットフォームを採用しながら少しずつシステムを構築していくことで、販売業者側にとって大幅な投資対効果が得られるだけでなく、買い物客に対してもプラスのサービスを提供することが可能となるのです。

この記事はThree High Street Retailers That Mastered the Online Transitionを海外小売最前線が日本向けに編集したものです。