アリババとシェアを二分する中国のIT大企業Tencent(テンセント)
テンセントは中国版LINE「WeChat」、FacebookのようなSNSプラットフォーム「QQ」を開発、運用している企業です。
世界のゲーム会社への出資、買収によって世界有数の売上高を誇るゲーム会社としても知られています。
時価総額は世界トップ10に入るも、中国当局によるゲーム規制で2018年からは下落傾向にありますが、世界的な企業であることに変わりはありません。
今回は、中国発のIT企業Tencent(テンセント)について、多彩な事業内容や世界的な影響などについて解説しました。
【目次】
「WeChat」、「QQ」アプリやゲームによる莫大な収益を上げています。創業者は米国や韓国でも大地主、富豪として取り上げられており、日本にもテンセントの子会社があります。
アリババ(阿里巴巴)の創業は1999年、代表者は馬雲(ジャック・マー)。日本では、ソフトバンクとYahoo!が主要株主であることでも知られています。
インターネットを活用することで中小企業や個人のビジネスを大きく飛躍させるのが、アリババの主軸であり、BtoB、BtoC、CtoCの各分野で他の追随を許さないサービスを提供しています。
特に、当初の事業であったBtoB EC事業はアリババの独壇場といえる状況にあり、全世界に5,340万以上の会員がいます。
ニューヨーク証券取引所で上場した2014年には、時価総額がおよそ53兆円、一時はアマゾンを超えたこともありました。IT技術を活用した企業戦略という点ではテンセントとアリババは共通点がありますが、扱う内容については大きな違いがあります。
では、テンセントについてさらに詳しくチェックしてみましょう。
また、東京都港区にもテンセントの子会社である「テンセントジャパン」があります。
先日新たに提携企業となったのが「LINE pay」です。ヤフー・ソフトバンクはアリババの「PayPay(ペイペイ)」と提携していましたが、LINEはテンセントと協業することで、インバウンド対応に一層力を入れるとみられます。
WeChat PayとLINE payが一つのQRコードで連携すると、中国と日本の両国でスムーズな決済をおこなうことができます。サービスの提供時期は2019年の早い段階と発表されており、グループ企業の韓国ネイバーによる「Naver Pay」とも連携することで、
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テンセントの主な業務内容は、次のとおりです。
無料のメッセージアプリ「WeChat(微信)」は、LINEと同じように文字や音声、写真をやりとりすることができます。
日本からもアカウントを作成できるため、インバウンド消費のプロモーションにおけるひとつの施策として活用している日本企業も少なくありません。
「WeChat」の登録ユーザー数は2015年時点で11億人を突破、2016年の月間アクティブユーザーは7億6200万人と発表されています。
2015年からは、日本でも「WeChat」によるスマホ決済サービス「WeChat Pay payment(微信支付)」が使えるようになり、百貨店などを中心にサービスを受け付けていました。
WeChat Payには銀行の口座やクレジットカードが紐づけられる仕組みで、登録ユーザーはQRコードを端末にかざすことで支払いができます。
電話やメールの延長線上にあるサービスである「WeChat」と異なる点は、アバターの作成やコミュニティの構成、オンラインゲームやミニブログができること。中国人ユーザーは、「WeChat」のアカウントをビジネスに、「QQ」のアカウントのプライベート用にと分けて運用することも多いといわれています。
「WeChat」を中国版LINEとするならば、「QQ」はFacebookやmixiに近い存在といえるかもしれません。
こちらも日本から登録が可能なため、インバウンド消費のために活用している企業があります。また、「QQ」の公式コンテンツとしては「QQお出かけニッポン(QQ出行日本)」があり、
なお「QQ」にも決済機能「QQ Wallet」が搭載されており、株式会社大丸松坂屋百貨店は化粧品売り場に限って2016年から導入しています。
しかし、テンセントにおけるゲーム関連の成長戦略は、大ヒットするゲームを次々に開発することを主軸においているわけではありません。「QQ」などの膨大な人が集まるSNS空間をまず作り上げ、その上で活気づいているSNS空間にゲームコンテンツを投下するというやり方で、成長を続けてきました。
ゲーム関連の事業は、テンセントの一部門である「Tencent Games」よって運営されています。
ヨーロッパに発売部門である「Proxima Beta」をもち、「Supercell」、「Epic Games」をはじめとする海外のゲーム開発、制作会社の株を保有し、ゲーム提供のエンターテインメントサービスとして世界中に展開しています。
主に、書籍やコミックアニメやビデオゲームといった原作の映画化を多く手がけており、中には
また、中国で大きなヒットとなったアニメーション「屍兄(Zombie Brother)」の映画化、中国の同名人気小説を原作とする「择天记(Fighter of the Destiny)」のテレビドラマ化なども手がけています。
原作ありきの作品から制作をスタートさせ、今後はオリジナル映画やアニメーションなど、独自の作品を開発することにも注力していくとしています。
2018年1月には、
しかし、2018年10月までの段階で2200億ドル、日本円にしておよそ24兆8700億円を失っており、トップ5はおろかトップ10から滑り落ちています。テンセントの失った時価総額は、ほかの企業よりも額が大きく、1月から38%下げ、過去最長の下落を続けています。
これには、
もともと、中国ではゲームを発売するために政府の許可を得なければなりませんでした。
許認可が下りるかどうかは、
具体的な規制内容は、
WHO(世界保健機関)は、ゲームにのめり込む人々を「ゲーム障害」と定義づけ、「ゲーム障害」を疾病を認定しました。
こうした動きに対応すると株価下落は避けようのないことではありますが、テンセントは手をこまねいているわけではありません。スクウェア・エニックスと戦略的提携関係を構築するなど、外部の市場を見据えつつ、株価回復に向けてさまざまな戦略を展開させています。
映画やビデオゲーム、ファッションなどの文化的なカテゴリに焦点をあてて、さらなる海外展開の足がかりにするとしています。
BBC(英国放送協会)、英国ファッション評議会、英国政府観光庁などと提携し、デジタル文化産業においてクリエイティブなプロジェクトを生み出す考えです。具体的な金額や内容は明かされていませんが、英国のゲーム会社に連続的な投資もおこなっています。
ただし、英国のEU離脱が決定となった今、テンセントと英国の提携がヨーロッパ全体の経済にどの程度影響を及ぼすかどうかは未知数といえるかもしれません。
今後の動きに注目です。
世界のゲーム会社への出資、買収によって世界有数の売上高を誇るゲーム会社としても知られています。
時価総額は世界トップ10に入るも、中国当局によるゲーム規制で2018年からは下落傾向にありますが、世界的な企業であることに変わりはありません。
今回は、中国発のIT企業Tencent(テンセント)について、多彩な事業内容や世界的な影響などについて解説しました。
【目次】
- 中国発の世界最大ゲーム・アプリ会社「Tencent(テンセント)」
- 世界的に影響力を持つテンセント
- メッセンジャーやSNSアプリを基盤にゲームや映画、アニメまで:テンセントの業務内容
- テンセントの時価総額:中国ゲーム規制と経済の減速が負の連鎖?
- テンセントと英国が文化提携:ファッションや映画分野での協力か
中国発の世界最大ゲーム・アプリ会社「Tencent(テンセント)」
テンセント(騰訊)は、中国広東省を本拠地とする持株会社です。「WeChat」、「QQ」アプリやゲームによる莫大な収益を上げています。創業者は米国や韓国でも大地主、富豪として取り上げられており、日本にもテンセントの子会社があります。
テンセントとは
テンセントの創業は1998年、現在のCEOである馬化騰(マ・カトウ/マー・フアテン)が起業しました。馬化騰は、ポニー・マーという英語名を名乗ることもあり、世界的な富豪としてその名が知られています。アリババとは
テンセントについて詳しくみていく前に、最強最大のライバルといえる巨大企業アリババについて補足的にふれておきます。アリババ(阿里巴巴)の創業は1999年、代表者は馬雲(ジャック・マー)。日本では、ソフトバンクとYahoo!が主要株主であることでも知られています。
インターネットを活用することで中小企業や個人のビジネスを大きく飛躍させるのが、アリババの主軸であり、BtoB、BtoC、CtoCの各分野で他の追随を許さないサービスを提供しています。
特に、当初の事業であったBtoB EC事業はアリババの独壇場といえる状況にあり、全世界に5,340万以上の会員がいます。
ニューヨーク証券取引所で上場した2014年には、時価総額がおよそ53兆円、一時はアマゾンを超えたこともありました。IT技術を活用した企業戦略という点ではテンセントとアリババは共通点がありますが、扱う内容については大きな違いがあります。
では、テンセントについてさらに詳しくチェックしてみましょう。
世界的に影響力を持つテンセント
出資で影響力を増大:テンセントの子会社
テンセントの子会社には、米国のインディーズゲーム・ショーや国際的なゲームフェアでの受賞歴があるデベロッパーである「NEXT Studio」、中国情報通信研究院(CAICT)と中国通信標準化協会(CCSA)の共同開催である「Trusted Blockchain Summit 2018」で「ブロックチェーンの信頼性評価認証」1位を獲得した「Tencet FiT」、2018年10月に米国での上場を申請した音楽配信子会社などがあります。また、東京都港区にもテンセントの子会社である「テンセントジャパン」があります。
・テンセントジャパン
http://tencentjapan.com/
LINE payがテンセントと提携!日本の企業とも関わりは深い
テンセントは、2011年から2018年現在までに、- GREE
- KDDI
- バンダイナムコ
- 集英社
- ガンホー・オンライン・エンターテイメント
- ミクシィ
- カプコン
- 任天堂
- ソニー・ミュージックエンタテインメント
- スクウェア・エニックス
- LINE
先日新たに提携企業となったのが「LINE pay」です。ヤフー・ソフトバンクはアリババの「PayPay(ペイペイ)」と提携していましたが、LINEはテンセントと協業することで、インバウンド対応に一層力を入れるとみられます。
WeChat PayとLINE payが一つのQRコードで連携すると、中国と日本の両国でスムーズな決済をおこなうことができます。サービスの提供時期は2019年の早い段階と発表されており、グループ企業の韓国ネイバーによる「Naver Pay」とも連携することで、
- 中国
- 韓国
- 台湾
- タイ
- インドネシア
PR:キャッシュレスに対応するには?スマホ決済(キャッシュレス決済)は日本で普及するか~戦国時代突入!
メッセンジャーやSNSアプリを基盤にゲームや映画、アニメまで:テンセントの業務内容
テンセントは、「WeChat」や「QQ」といった数億人規模の登録ユーザーを誇るメッセンジャーアプリ、SNSアプリを基盤として成長してきました。テンセントの主な業務内容は、次のとおりです。
テンセントの業務内容1. WeChat(微信)
テンセントの提供サービスとして有名なのが、中国版LINEともいえる「WeChat」です。無料のメッセージアプリ「WeChat(微信)」は、LINEと同じように文字や音声、写真をやりとりすることができます。
日本からもアカウントを作成できるため、インバウンド消費のプロモーションにおけるひとつの施策として活用している日本企業も少なくありません。
- nano universe
- ハウステンボス
- フェイスマスクルルルン LuLuLun
「WeChat」の登録ユーザー数は2015年時点で11億人を突破、2016年の月間アクティブユーザーは7億6200万人と発表されています。
テンセントの業務内容2. WeChat Pay
WeChat Pay(微信支付)は、2013年から提供されている中国のスマホ決済サービスです。2015年からは、日本でも「WeChat」によるスマホ決済サービス「WeChat Pay payment(微信支付)」が使えるようになり、百貨店などを中心にサービスを受け付けていました。
WeChat Payには銀行の口座やクレジットカードが紐づけられる仕組みで、登録ユーザーはQRコードを端末にかざすことで支払いができます。
- 偽札を釣銭で受け取るリスクを軽減できること
- 利用手数料がかからないこと
- アプリ内の機能で公共料金の支払いや割り勘もスマートにおこなえる
テンセントの業務内容3. QQ
「QQ」は2018年に6億人以上がユーザーとして登録している、メッセンジャー&SNSアプリです。電話やメールの延長線上にあるサービスである「WeChat」と異なる点は、アバターの作成やコミュニティの構成、オンラインゲームやミニブログができること。中国人ユーザーは、「WeChat」のアカウントをビジネスに、「QQ」のアカウントのプライベート用にと分けて運用することも多いといわれています。
「WeChat」を中国版LINEとするならば、「QQ」はFacebookやmixiに近い存在といえるかもしれません。
こちらも日本から登録が可能なため、インバウンド消費のために活用している企業があります。また、「QQ」の公式コンテンツとしては「QQお出かけニッポン(QQ出行日本)」があり、
- 観光スポット
- 飲食店/ショッピング情報
- 目的地までのルート検索
なお「QQ」にも決済機能「QQ Wallet」が搭載されており、株式会社大丸松坂屋百貨店は化粧品売り場に限って2016年から導入しています。
テンセントの業務内容4. Tencent Games
テンセントは、ゲームの売上高をみる上では、マイクロソフトやソニーを抜いています。日本を代表する国際的なゲームメーカーである任天堂と比較しても、時価総額はおよそ10倍、売上高は3倍といわれています。しかし、テンセントにおけるゲーム関連の成長戦略は、大ヒットするゲームを次々に開発することを主軸においているわけではありません。「QQ」などの膨大な人が集まるSNS空間をまず作り上げ、その上で活気づいているSNS空間にゲームコンテンツを投下するというやり方で、成長を続けてきました。
ゲーム関連の事業は、テンセントの一部門である「Tencent Games」よって運営されています。
ヨーロッパに発売部門である「Proxima Beta」をもち、「Supercell」、「Epic Games」をはじめとする海外のゲーム開発、制作会社の株を保有し、ゲーム提供のエンターテインメントサービスとして世界中に展開しています。
テンセントの業務内容5. 映画・アニメ制作
テンセントは映画部門として「テンセント・ピクチャーズ」をおいています。主に、書籍やコミックアニメやビデオゲームといった原作の映画化を多く手がけており、中には
- ワンダーウーマン(2017)
- ヴェノム(2018)
- キングコング:髑髏島の巨神(2017)
また、中国で大きなヒットとなったアニメーション「屍兄(Zombie Brother)」の映画化、中国の同名人気小説を原作とする「择天记(Fighter of the Destiny)」のテレビドラマ化なども手がけています。
原作ありきの作品から制作をスタートさせ、今後はオリジナル映画やアニメーションなど、独自の作品を開発することにも注力していくとしています。
テンセントの時価総額:中国ゲーム規制と経済の減速が負の連鎖?
テンセントの時価総額は、2018年になるまで世界トップ10にランクインし続けていました。2018年1月には、
- アップル
- アルファベット
- マイクロソフト
- アマゾン・ドット・コム
しかし、2018年10月までの段階で2200億ドル、日本円にしておよそ24兆8700億円を失っており、トップ5はおろかトップ10から滑り落ちています。テンセントの失った時価総額は、ほかの企業よりも額が大きく、1月から38%下げ、過去最長の下落を続けています。
これには、
- 中国当局のゲーム規制
- 中国経済の減速(人民元安)
テンセントの時価総額ダウンに影響?中国のゲーム規制
テンセントの株価下落における原因の一つとして考えられているのが、中国当局が発表したゲーム規制です。もともと、中国ではゲームを発売するために政府の許可を得なければなりませんでした。
許認可が下りるかどうかは、
- 中毒性がないかどうか
- 暴力性がないかどうか
- 社会主義的な体制を脅かす内容が含まれていないかどうか
中国のゲーム規制の具体的内容
しかし、2018年10月24日をもって、この規制はさらに強化されました。現状において新たなゲームのリリースは一切できない状況になっています。専門家からはこうした凍結的な措置はすぐに解除されるのではないかという意見も出ていますが、現在のところ中国政府は沈黙を貫いています。テンセントは、こうした政府の動向に対して自主規制ともいえる措置を講じています。具体的な規制内容は、
- 2019年以降はテンセントによるすべてのゲームに年齢認証システムを導入する
- 12歳未満はプレイ時間を1日1時間に制限する
- 12~18歳まではプレイ時間を1日2時間に制限する
- プレイヤーの照合に、中国公安のデーターベースを用いる
WHO(世界保健機関)は、ゲームにのめり込む人々を「ゲーム障害」と定義づけ、「ゲーム障害」を疾病を認定しました。
- ゲームをする時間や場所などに対するコントロールの欠如
- 日常生活よりも、ゲームを優先してしまう
- 悪影響があるにもかかわらず、ゲームをやめられない
こうした動きに対応すると株価下落は避けようのないことではありますが、テンセントは手をこまねいているわけではありません。スクウェア・エニックスと戦略的提携関係を構築するなど、外部の市場を見据えつつ、株価回復に向けてさまざまな戦略を展開させています。
テンセントと英国が文化提携:ファッションや映画分野での協力か
2018年5月、テンセントは英国との提携契約を結んだことを発表しました。映画やビデオゲーム、ファッションなどの文化的なカテゴリに焦点をあてて、さらなる海外展開の足がかりにするとしています。
BBC(英国放送協会)、英国ファッション評議会、英国政府観光庁などと提携し、デジタル文化産業においてクリエイティブなプロジェクトを生み出す考えです。具体的な金額や内容は明かされていませんが、英国のゲーム会社に連続的な投資もおこなっています。
ただし、英国のEU離脱が決定となった今、テンセントと英国の提携がヨーロッパ全体の経済にどの程度影響を及ぼすかどうかは未知数といえるかもしれません。
まとめ
2018年から下落傾向にあるテンセントの時価総額。しかし、今後の中国当局の政策などによって、また状況が大きく変わることも考えられます。今後の動きに注目です。