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中国No.2の巨大ECサイトJD.com(京東商城/ジンドン)、企業との戦略的パートナーシップ提携と技術開発を続ける理由

中国No.2の大手ECサイトと言われている「JD.com(京東商城、ジンドン)」は着実に規模を拡大させています。

2017年度の営業利益は3643億元(約6兆2,591億円)、純利益は50億元(約860億円)超えという驚異的な数字を叩き出しています。

中国のEC事業者にとって最大のイベントである「独身の日(W11, 毎年11月11日に行われるキャンペーン)」の期間中だけで1,271億元もの売上がありましたが、毎年会社創設日に行われるイベントの「京東618」では前年比30%増の1,199億元の売上高を記録しました。

今回は成長を続けるJD.comについて深く掘り下げていきたいと思います。

目次

JD.com 京東商城(ジンドン)とは?

画像出典:JD.com


JD.comは1998年6月18日に設立されたインターネット通信販売サイト。元々はPC周辺機器を販売するJD Multimediaという名前でスタートしました。

現在はPC周辺機器だけではなく、生鮮食品、アパレル、家電、生活用品など幅広いジャンルの商品を取り揃えており、膨大な商品点数を誇ります。JD.comが大きく拡大した理由は、商品の品揃えの豊富さもそうですが、自社の巨大な倉庫を各地に構えている点と物流ネットワークが発達している点です。スピーディな配送サービスによって顧客の満足度を高め、さらなる配送の効率化のために新しい技術への投資に積極的です。

ユーザの変化とアクティブユーザの増加

2018Q1の財務諸表の発表によると、2017Q1-Q4のアクティブユーザー2.925億人という結果に対し、2017Q2-2018Q1のアクティブユーザー3.018億人と3%の増加を記録しました。

JD.comは元々PC周辺機器の販売から始まったため3C(コンピュータ、コミュニケーション、コンシューマ・エレクトロニクスの意味。コミュニケーションはスマホや携帯電話などを指す)の取り揃えが豊富で男性ユーザが多いとされてきましたが、近年は化粧品や衣類など取り扱い商品が増えたことから女性ユーザも増加しました。

時期に合わせたキャンペーンも行っています。
今中国ではサッカーの人気が高まっていることから、サッカーの開催期間中に自宅で試合を観戦するためか中国でよく食べられているザリガニの売上が大幅に伸びたと報じられています。

戦略的パートナーシップは強敵アリババに対抗するため

JD.comはビジネスを拡大するために様々な企業と業務提携を行っています。数々の業務提携の目的は売上の増大ももちろんですが、最大のライバルであるアリババに対抗するためと言われています。過去にJD.comが発表した企業との提携では、以下のようなものがあります。


SINAとの提携

2018年4月には新浪(SINA.COM)やミニブログサイト新浪微博を運営するSINAとJD.comがデータやアクセス・コンテンツ・商品・ECなどにおいて、戦略提携を行うことを発表しました。それぞれの企業のユーザに関するデータを共有することで、双方にメリットがあります。

JD.comはSINAのウェブサイトに訪問したユーザの関連性のあるコンテンツをマッチさせるためのアルゴリズム最適化を助け、代わりにSINAはJD.comに対しアナリティクス・プラットフォームを用いて消費者行動に関する明確な洞察を得るために協力します。SINAはまたデータを活用してターゲットを絞り、そのリンクはJD.comに誘導されます。

参考:The Motley Fool
https://www.fool.com/investing/2018/04/19/jdcom-partners-with-sina-to-tackle-alibaba.aspx

Walmartとの提携

JD.comはアメリカの大手小売チェーンWalmartと2016年6月に業務提携し、新しいeコマースと小売のためのイニシアチブを確立しました。2017年7月にはさらなるパートナーシップの拡大を発表し、在庫や顧客データの統合やストアとプラットフォームの統合を進めました。具体的には米国製の商品の人気を高め、買い物客がJD.comプラットフォーム上にあるWalmartストアから商品を直接購入できるようにしました。
現在JD.comには5つのWalmartのオンラインストアがあり、JD.comからWalmart、またWalmart傘下のSam’s Club, ASDAの商品を注文することができます。

Walmart Store sign
作者 MikeMozartJeepersMedia [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], ウィキメディア・コモンズより

また、Walmartは配送サービスのJD Daojiaとも提携し、注文後1時間での配送を実現します。JD DaojiaプラットフォームでのWalmartの売上高は2017年6月には2017年1月と比較すると4倍以上増加しました。

2017年の京東618では、JD.comでのウォルマートの国際商品販売がJDのシングル・デー(11月11日)のショッピング・フェスティバルの2016年の売上と比較して4倍に増加しました。また2017年7月までに、JDのフラッグシップストアは70万近くに達しました。

参考:Reuters
https://www.reuters.com/article/us-walmart-china/walmart-opens-first-high-tech-small-sized-supermarket-in-china-idUSKCN1H90S4
参考:JD.com
http://ir.jd.com/phoenix.zhtml?ID=2288419&c=253315&p=irol-newsArticle

他企業からの投資もさかん

拡大を続けるJD.comは他企業からも注目を集めています。

中国最大のコミュニケーションアプリのWeChatを運営するTencentは、JD.comに多額の株式投資を行なっています。TencentとJD.comは戦略的パートナーシップを結んでおり、JD.comはWeChatのメッセージングプラットフォームのデータと顧客の買い物履歴を統合することでこれを活用することができます。顧客に商品の提案をしやすくなり、さらにベンダーが商品を宣伝するのに役立ちます。

またTencentとの協力でJD.comにもっともメリットがあるのはスマホで利用可能な決済手段のWeChat Payです。WeChat Payを店舗の決済で用いることによって、オンライン割引を顧客に付与する特典があります。

参考:Motley Fool
https://www.fool.com/investing/2017/10/22/jdcom-tencent-and-wal-mart-join-forces-against-ali.aspx

また、2018年6月18日にはGoogleがJD.comと戦略的パートナーシップを結んだことを発表し、550百万ドルの投資を行うことも合わせて発表されました。この提携では東南アジア地域での消費活動に目をつけたGoogleが、JD.comの併せ持ったサプライチェーンと物流の専門知識を活用する機会を狙っているものと考えられます。

参考:Google
https://blog.google/topics/google-asia/partnering-jdcom/

JD.comが技術革新に巨額投資をしている理由

JD.comは配送の効率化のために新しい技術開発への投資に対して非常に積極的です。無人配送車やドローンでの配送など、将来の実用化に向けて研究と開発を進めています。これらの技術開発はGoogleやAmazonといった大手ECサイトでも将来的な活用が期待されており、巨額の投資が行われています。実現すれば天候の変化や配送に携わる従業員の人手不足問題や業務効率の悪さを解消することにつながり、これまで以上にスピーディな配送を行うことができます。

JD.comが投資に積極的な理由は、最終的には最新技術を活用して業務における非効率な部分を解消するためと、顧客満足度を高めるためです。なかでも特に力を入れているのがAIを活用した技術開発です。

JD.comがAIに力を入れる理由

JD.comはAI家電の開発も行なっています。例えば、AI冷蔵庫は庫内にある食材を把握することができ、消費期限をユーザにリマインドしたりJD.comに注文できる仕組みがあります。冷蔵庫の中身を把握するために用いられているのはカメラと画像認識技術で、アプリを介してユーザが買い物をできるように開発されました。

同社がスマート家電を販売する理由はJD.comのサービスへのさらなる利用につなげるためです。

JD.comは家電だけではなくAIを活用した技術開発を中心にしており、AIに詳しい人材の獲得を積極的に行なっています。2017年にCEOである劉氏が語ったところによると、今後12年間で技術革新に力を入れJDを技術会社に進化させると発表しています。また、未来の小売業は単純にモノを売るだけではなく、AI冷蔵庫の例のように様々なシーンで発生するものになると語っています。

まとめ

JDは技術開発のために巨額の投資と優秀な人材の調達を行なっていますが、もう1つの目標があります。粗悪品や偽物が流通している中国ブランドの悪いイメージを払拭し、良質な商品を販売することでイメージを高め、グローバル化を図るという目標です。

JD.comは良質な商品を販売することでブランドイメージを高め、最新技術を用いてさらなる業務効率化・配送の無人化を進めていき、また迅速な配送を行うことで顧客満足度を高めて拡大していく予定です。