小売業者の皆さん、ローカル市場の需要、ないがしろにしていませんか?
近年では消費者がデジタル機器を通して品定めを行ったり、実際に商品を購入したりする機会は増える一方ですが、基本的に消費者は1対1のパーソナルなサービスの提供を求めているという事実は今も昔も変わりません。しかしながら、インターネットが持つ匿名性という性質上、実際のサービスは残念ながら「パーソナル」とは程遠いのが現状です。
こう考えると、Amazonなどの大手オンライン専門小売業者が勢力を広げる中にあって、いまだに実店舗の運営に希望の光は残されているのは確かです。
この点については、ゲータレード、ペプシ、シアーズ(アメリカの百貨店)でマーケティング責任者として手腕を発揮し、現在はG/O Digitalのマーケティング主任であるジェフ・ファーゲル氏も同調しています。
マーケティング分野での経験豊富な同氏は、現在の小売業界のトレンドや成功のコツなどに精通し、2015年の業界の動きにも鋭い目を光らせています。
「オムニチャネル」という単語があちこちで聞かれるようになった現在でも、ファーゲル氏は近い範囲の消費者を重視する「ローカライゼーション」の徹底に力を注いでいます。そのような同氏がオンライン小売業界における各種ソリューションを提供するRetail Touch Pointsとの間で実施したインタビューをここではご紹介します。
Retail Touch Points (以下RTP):これまでに数多くのブランドや小売販売業者とお仕事をされてきたと思いますが、過去に小売業界に最もインパクトを与えたトレンドと言えば何が挙げられるでしょうか?ファーゲルさんにとって「この経験は自分にとって大きかった」というようなケースがあれば教えていただきたいのですが。
ファーゲル(敬称略):最近は「マーケティング」というものは大きく変化をしましたし、他に先駆けて新しいことを行うということもどんどん難しくなってきています。つまりすべてが目まぐるしく変化し、マーケティング分野におけるコミュニケーションというもののスタイルを新しい形に作り替えているのです。
現在のようなマルチチャネル隆盛の時代では、マーケティング担当にとってこれまでの概念を変えていくことが求められています。考え方、計画、準備、コミュニケーションの方法などをこれまでとは違った形で行わなければいけないわけです。例えば、特定ブランドの持つ販売力というのも以前ほどでは無くなってきているのですが、この事実に何とか対抗しようとするのではなく、現実として受け入れることが大切な訳です。
テレビを視聴するスタイルも変化し、さらにはクラウド機能を活用した新しい広告手段も続々と登場し、企業にとって今や消費者はリアルタイムでつながっており、フィードバックもその場でダイレクトに送られてくる時代なのです。そのような中で、成功のカギとなるポイントは2つあります。
1つ目は、「販売チャネルの枠組みにとらわれ過ぎない」という事です。例えば、オンラインショップのみで取り扱っている商品があったり、実店舗とは異なる価格設定で販売していたり、または店舗からの商品発送が出来ないような在庫管理システムであったりすることは避けたいところです。そうではなくて、オンラインショップと実店舗の連携をスムースにして、どのようなチャネルを通しても同じサービスが提供できるという事が重要です。オンラインショップと実店舗の壁は今や完全に取り払われつつあり、それに伴って「対Amazon」における取り組みの重要さは増す一方です。
今日の小売業者にとって、販売経路は一本の線で表されるような単純なものではなく、デジタルの世界と実際の世界での販売システムが複雑に入り組んだ迷路のような奥深さを持っています。ですから、オンライン、実店舗、マルチチャネル、オムニチャネルなどと言った言葉に固執せず、今まで以上に「消費者の方がどのような形で買い物を進めていくか決定する力がある」という事実をしっかりと把握することが何より大切になっています。その上で、どのようにすればより多くの消費者にはたらきかけることが出来るかという点が小売業者にとっての課題となってくるのです。
2つ目は、「モバイル機器は単なる販売チャネルではなく、利用者の行動傾向にも深い関連性を持っていることを認識する」という点です。確かにモバイルを利用したマーケティングは今最も注目を浴びている分野ですが、その成果を発揮させるには、消費者にとって適切かつ関連性があり、興味関心を惹かれるような広告であるということが大前提です。
言い換えるなら、消費者がモバイル機器をどのように利用しているかを理解して、その傾向に沿った形でマーケティング活動を行うという事が必要だという事です。例えば、とあるDIYショップのアプリをダウンロードして使用すると、販売商品のレビューを見ることが出来るだけでなく、店内に陳列された商品のバーコードを実際にスキャンして詳細情報を確認することもできるようになっています。このようなモバイル機器の特徴を十分に生かした発想というのは、是非多くの小売ブランドに参考にしてもらいたいところです。その際にも、基本的には販売チャネルの枠にとらわれるのではなく、消費者は単純に「買い物を楽しく円滑に済ませたい」のであって、販売チャネルの存在や意義など気にもしていないという事を肝に銘じておくことが大切です。
RTP: 巷では小売市場におけるAmazonの絶対的な存在感や販売力といったものが頻繁に話題に上りますが、実際にどのあたりが他の業者の追随を許さないのでしょうか?
ファーゲル:Amazonの立ち位置を理解するには、数字に目を向けるのが一番です。参考までに、2013年の売上は679億ドルで、Appleの売り上げと比べると496億ドルも多くなっています。このような圧倒的な販売実績を見せられると、小売業界ではAmazonが「勝ち組」の中でもさらに群を抜いた存在である事に異を唱える者はほとんどいません。
そうは言ってもAmazonが完璧であるかというとそうでもなく、付け入るスキは確かに存在します。例えば「風邪薬が今すぐ必要だ」という買い物客の要望に、画期的なスタイルで迅速かつスムースに対応できるかというと答えは「No」です。
ですから、Amazonに対抗するには一見シンプルに思えるかも知れませんが「Amazonには出来ないサービス」に目を向けることが必要になってきます。つまり販売チャネルへのこだわりや先入観を捨て、近距離(ローカル)の消費者へのはたらきかけを様々な販売ポイントにおいて積極的に実施していくという事です。
RTP: では逆に、一般の小売業者がAmazonよりも勝っているのはどのようなところでしょうか?
ファーゲル:先ほど触れた「ローカルメインのマーケティング」というのはやや漠然としたアイデアですが、消費者の近距離範囲内にある実店舗というのは実際にAmazonのような大手企業とは一味違うサービスを提供できる可能性を秘めているのです。基本的には消費者が各種機器を使ってオンラインでどのようにして商品を検索しているかを考慮し、それに合わせたサービスを展開するようにすれば良いのです。
こう考えると、リアルタイム、ローカルメイン、デジタル化といった要素を上手に活用すれば、長期的スパンで考えた時に一般小売業者が大きく躍進するきっかけとなり得るのです。
つまり、Amazonの牙城を崩すためには、ローカルメインのマーケティングの意義というものをしっかりと理解する必要があります。
Amazonはどこにでも商品を配送できるのが特長ですが、消費者にとっては購入した商品をその場で手にすることは事実上不可能ですし、実店舗で買い物をする体験やサービスまでは再現できません。例えば、商品を自分の目で見たり触ったりといった実際に店舗に足を運ぶことで得られる体験はAmazonにも提供することはできないのです。
RTP: 2015年には大きなブームとなるであろう業界トレンドについて、今の時点で何か心当たりはありますか?
ファーゲル:いくつか挙げられますね。
まずは「ローカルをメインにマーケティング」を展開するということは、単に消費者と店舗の位置関係の事だけを指すのではなくなってきます。
消費者がこの先デジタル分野に触れる機会が増えるのは明らかですし、それに伴って広告も実際に自分に関連性のあるものを求めています。つまり、身近なところにあるお店で実際に購入できるそういった「自分にとってローカル」な商品に関する広告の需要が高まるということです。
そのためにiBeaconsや Apple Payなどの最新テクノロジーを採用している業者も多いのですが、基本的には消費者にとって関連性があり商品説明もしっかりされていて興味を惹かれるようなシステムであること、つまり消費者が各種機器を使ってオンラインで検索する際にどういう形で行う事が多いのかを考慮した上で、その傾向に対応したスタイルであるということが大前提となってきます。
次に、俗にいう「ウェブルーミング」や「逆ショールーミング」といった行為への対処が求められてきます。数年前には、気になる商品を身近な実店舗で自分の目で見てチェックしておいて購入は別会社のオンラインショップで行う「ショールーミング」行為が大問題となり、2012年にオンラインで購入された商品のおよそ50%がショールーミング行為を経てから購入されたとされています。しかし、店舗側が効果的な対応策を実施してきたことで2013年にはこの数字が30%まで下がるなど、ここ数年はショールーミング行為の数は減少傾向にあります。
確かに消費者はデジタル世界での商品購入ということに慣れてきていますが、実店舗でのスタッフとのやり取りが完全に必要とされていないというわけではありません。デジタルテクノロジーを活かしたツールは検索時間を大幅に節約し、より安く商品を購入できる機会も多くなりますが、消費者が商品を購入する際には自宅周辺3~5マイルの範囲内にある店舗に足を運ぶケースが90%を占めているのが現状です。
そしてショールーミングが「より安い価格を探す」のを目的とする一方で、オンラインで下調べをして実店舗で購入するという逆ショールーミングは「新商品の発見」を目的としています。ここに実は大きなチャンスが転がっているのです。調査の結果、消費者のうち30%は店舗で買い物をする前に自宅のコンピュータで商品のリサーチをしているということが分かっていますし、そればかりか、それ以外の25%は店舗に実際に足を運ぶ前にまず商品価格を店同士で比べてみると答えているわけですから、この行動傾向を利用しない手はありません。
RTP: では、最後に小売業者にとって2015年はここに注目するべきというアドバイスがありましたらお願いします。
ファーゲル:今年は大きな動きがあると思います。基本的には消費者により創造的なアプローチが出来る企業が勝ち組となるでしょう。広告効率という視点を超えて、より幅広く、関連性があり、ローカルをメインに絞った広告、つまり近所のお店で買えるような商品についての情報を消費者が求めるようになるのです。また小売業者にとっては、国内において「リアルタイム」「ターゲットをローカルに」「デジタルなアプローチ」といったキーワードに活路を見出すことが出来るはずです。
消費者の立場に立ってプログラム化されたコンテンツや広告を作り出すことが出来れば、一般の小売業者もAmazonに対抗できるだけでなく、ゆくゆくはAmazon流れた顧客を取り戻すことも不可能ではありません。
私からのアドバイスは至ってシンプルで、「それぞれの消費者の行動傾向や嗜好に合わせたコンテンツを作成し、オンラインショップと実店舗の境目のないスムースなシステムをどの段階においても実施して、欲しい商品がすぐ手元に届くためにローカルをメインとした迅速なサービスを実現させるようにする」という事に尽きます。
こう考えると、Amazonなどの大手オンライン専門小売業者が勢力を広げる中にあって、いまだに実店舗の運営に希望の光は残されているのは確かです。
この点については、ゲータレード、ペプシ、シアーズ(アメリカの百貨店)でマーケティング責任者として手腕を発揮し、現在はG/O Digitalのマーケティング主任であるジェフ・ファーゲル氏も同調しています。
マーケティング分野での経験豊富な同氏は、現在の小売業界のトレンドや成功のコツなどに精通し、2015年の業界の動きにも鋭い目を光らせています。
「オムニチャネル」という単語があちこちで聞かれるようになった現在でも、ファーゲル氏は近い範囲の消費者を重視する「ローカライゼーション」の徹底に力を注いでいます。そのような同氏がオンライン小売業界における各種ソリューションを提供するRetail Touch Pointsとの間で実施したインタビューをここではご紹介します。
Retail Touch Points (以下RTP):これまでに数多くのブランドや小売販売業者とお仕事をされてきたと思いますが、過去に小売業界に最もインパクトを与えたトレンドと言えば何が挙げられるでしょうか?ファーゲルさんにとって「この経験は自分にとって大きかった」というようなケースがあれば教えていただきたいのですが。
ファーゲル(敬称略):最近は「マーケティング」というものは大きく変化をしましたし、他に先駆けて新しいことを行うということもどんどん難しくなってきています。つまりすべてが目まぐるしく変化し、マーケティング分野におけるコミュニケーションというもののスタイルを新しい形に作り替えているのです。
現在のようなマルチチャネル隆盛の時代では、マーケティング担当にとってこれまでの概念を変えていくことが求められています。考え方、計画、準備、コミュニケーションの方法などをこれまでとは違った形で行わなければいけないわけです。例えば、特定ブランドの持つ販売力というのも以前ほどでは無くなってきているのですが、この事実に何とか対抗しようとするのではなく、現実として受け入れることが大切な訳です。
テレビを視聴するスタイルも変化し、さらにはクラウド機能を活用した新しい広告手段も続々と登場し、企業にとって今や消費者はリアルタイムでつながっており、フィードバックもその場でダイレクトに送られてくる時代なのです。そのような中で、成功のカギとなるポイントは2つあります。
1つ目は、「販売チャネルの枠組みにとらわれ過ぎない」という事です。例えば、オンラインショップのみで取り扱っている商品があったり、実店舗とは異なる価格設定で販売していたり、または店舗からの商品発送が出来ないような在庫管理システムであったりすることは避けたいところです。そうではなくて、オンラインショップと実店舗の連携をスムースにして、どのようなチャネルを通しても同じサービスが提供できるという事が重要です。オンラインショップと実店舗の壁は今や完全に取り払われつつあり、それに伴って「対Amazon」における取り組みの重要さは増す一方です。
今日の小売業者にとって、販売経路は一本の線で表されるような単純なものではなく、デジタルの世界と実際の世界での販売システムが複雑に入り組んだ迷路のような奥深さを持っています。ですから、オンライン、実店舗、マルチチャネル、オムニチャネルなどと言った言葉に固執せず、今まで以上に「消費者の方がどのような形で買い物を進めていくか決定する力がある」という事実をしっかりと把握することが何より大切になっています。その上で、どのようにすればより多くの消費者にはたらきかけることが出来るかという点が小売業者にとっての課題となってくるのです。
2つ目は、「モバイル機器は単なる販売チャネルではなく、利用者の行動傾向にも深い関連性を持っていることを認識する」という点です。確かにモバイルを利用したマーケティングは今最も注目を浴びている分野ですが、その成果を発揮させるには、消費者にとって適切かつ関連性があり、興味関心を惹かれるような広告であるということが大前提です。
言い換えるなら、消費者がモバイル機器をどのように利用しているかを理解して、その傾向に沿った形でマーケティング活動を行うという事が必要だという事です。例えば、とあるDIYショップのアプリをダウンロードして使用すると、販売商品のレビューを見ることが出来るだけでなく、店内に陳列された商品のバーコードを実際にスキャンして詳細情報を確認することもできるようになっています。このようなモバイル機器の特徴を十分に生かした発想というのは、是非多くの小売ブランドに参考にしてもらいたいところです。その際にも、基本的には販売チャネルの枠にとらわれるのではなく、消費者は単純に「買い物を楽しく円滑に済ませたい」のであって、販売チャネルの存在や意義など気にもしていないという事を肝に銘じておくことが大切です。
RTP: 巷では小売市場におけるAmazonの絶対的な存在感や販売力といったものが頻繁に話題に上りますが、実際にどのあたりが他の業者の追随を許さないのでしょうか?
ファーゲル:Amazonの立ち位置を理解するには、数字に目を向けるのが一番です。参考までに、2013年の売上は679億ドルで、Appleの売り上げと比べると496億ドルも多くなっています。このような圧倒的な販売実績を見せられると、小売業界ではAmazonが「勝ち組」の中でもさらに群を抜いた存在である事に異を唱える者はほとんどいません。
そうは言ってもAmazonが完璧であるかというとそうでもなく、付け入るスキは確かに存在します。例えば「風邪薬が今すぐ必要だ」という買い物客の要望に、画期的なスタイルで迅速かつスムースに対応できるかというと答えは「No」です。
ですから、Amazonに対抗するには一見シンプルに思えるかも知れませんが「Amazonには出来ないサービス」に目を向けることが必要になってきます。つまり販売チャネルへのこだわりや先入観を捨て、近距離(ローカル)の消費者へのはたらきかけを様々な販売ポイントにおいて積極的に実施していくという事です。
RTP: では逆に、一般の小売業者がAmazonよりも勝っているのはどのようなところでしょうか?
ファーゲル:先ほど触れた「ローカルメインのマーケティング」というのはやや漠然としたアイデアですが、消費者の近距離範囲内にある実店舗というのは実際にAmazonのような大手企業とは一味違うサービスを提供できる可能性を秘めているのです。基本的には消費者が各種機器を使ってオンラインでどのようにして商品を検索しているかを考慮し、それに合わせたサービスを展開するようにすれば良いのです。
こう考えると、リアルタイム、ローカルメイン、デジタル化といった要素を上手に活用すれば、長期的スパンで考えた時に一般小売業者が大きく躍進するきっかけとなり得るのです。
つまり、Amazonの牙城を崩すためには、ローカルメインのマーケティングの意義というものをしっかりと理解する必要があります。
Amazonはどこにでも商品を配送できるのが特長ですが、消費者にとっては購入した商品をその場で手にすることは事実上不可能ですし、実店舗で買い物をする体験やサービスまでは再現できません。例えば、商品を自分の目で見たり触ったりといった実際に店舗に足を運ぶことで得られる体験はAmazonにも提供することはできないのです。
RTP: 2015年には大きなブームとなるであろう業界トレンドについて、今の時点で何か心当たりはありますか?
ファーゲル:いくつか挙げられますね。
まずは「ローカルをメインにマーケティング」を展開するということは、単に消費者と店舗の位置関係の事だけを指すのではなくなってきます。
消費者がこの先デジタル分野に触れる機会が増えるのは明らかですし、それに伴って広告も実際に自分に関連性のあるものを求めています。つまり、身近なところにあるお店で実際に購入できるそういった「自分にとってローカル」な商品に関する広告の需要が高まるということです。
そのためにiBeaconsや Apple Payなどの最新テクノロジーを採用している業者も多いのですが、基本的には消費者にとって関連性があり商品説明もしっかりされていて興味を惹かれるようなシステムであること、つまり消費者が各種機器を使ってオンラインで検索する際にどういう形で行う事が多いのかを考慮した上で、その傾向に対応したスタイルであるということが大前提となってきます。
次に、俗にいう「ウェブルーミング」や「逆ショールーミング」といった行為への対処が求められてきます。数年前には、気になる商品を身近な実店舗で自分の目で見てチェックしておいて購入は別会社のオンラインショップで行う「ショールーミング」行為が大問題となり、2012年にオンラインで購入された商品のおよそ50%がショールーミング行為を経てから購入されたとされています。しかし、店舗側が効果的な対応策を実施してきたことで2013年にはこの数字が30%まで下がるなど、ここ数年はショールーミング行為の数は減少傾向にあります。
確かに消費者はデジタル世界での商品購入ということに慣れてきていますが、実店舗でのスタッフとのやり取りが完全に必要とされていないというわけではありません。デジタルテクノロジーを活かしたツールは検索時間を大幅に節約し、より安く商品を購入できる機会も多くなりますが、消費者が商品を購入する際には自宅周辺3~5マイルの範囲内にある店舗に足を運ぶケースが90%を占めているのが現状です。
そしてショールーミングが「より安い価格を探す」のを目的とする一方で、オンラインで下調べをして実店舗で購入するという逆ショールーミングは「新商品の発見」を目的としています。ここに実は大きなチャンスが転がっているのです。調査の結果、消費者のうち30%は店舗で買い物をする前に自宅のコンピュータで商品のリサーチをしているということが分かっていますし、そればかりか、それ以外の25%は店舗に実際に足を運ぶ前にまず商品価格を店同士で比べてみると答えているわけですから、この行動傾向を利用しない手はありません。
RTP: では、最後に小売業者にとって2015年はここに注目するべきというアドバイスがありましたらお願いします。
ファーゲル:今年は大きな動きがあると思います。基本的には消費者により創造的なアプローチが出来る企業が勝ち組となるでしょう。広告効率という視点を超えて、より幅広く、関連性があり、ローカルをメインに絞った広告、つまり近所のお店で買えるような商品についての情報を消費者が求めるようになるのです。また小売業者にとっては、国内において「リアルタイム」「ターゲットをローカルに」「デジタルなアプローチ」といったキーワードに活路を見出すことが出来るはずです。
消費者の立場に立ってプログラム化されたコンテンツや広告を作り出すことが出来れば、一般の小売業者もAmazonに対抗できるだけでなく、ゆくゆくはAmazon流れた顧客を取り戻すことも不可能ではありません。
私からのアドバイスは至ってシンプルで、「それぞれの消費者の行動傾向や嗜好に合わせたコンテンツを作成し、オンラインショップと実店舗の境目のないスムースなシステムをどの段階においても実施して、欲しい商品がすぐ手元に届くためにローカルをメインとした迅速なサービスを実現させるようにする」という事に尽きます。
この記事はThe Power Of Being Global And Acting Localの記事を海外小売最前線が日本向けに編集したものです。