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EDI(電子データ交換 Electronic Data Interchange)とは?【徹底解説】

事務系の仕事であれば、契約書・発注書・受注書・請求書のように業務を行う上で頻繁に扱う書類があります。これらの業務の流れは取引先別に処理が異なり、ある取引先からはFAXで発注書が届いたり、また別のところからはメールの添付ファイルで届いたりとバラバラなことが多いでしょう。これが複数の企業となると、業務が煩雑になってしまいます。

企業間の商取引における便利な通信手段としてEDIがあります。
以下では、EDIとは一体何なのか、EDIの種類、EDIのメリットとデメリット、近年主流になってきているWeb-EDIなどについて説明したいと思います。

【目次】

EDIとは?

EDIはElectronic Data Interchange(エレクトロニック・データ・インターチェンジ)の略で、日本語では「電子データ交換」といいます。一言で説明すると、商取引における企業間の連絡を専用の通信回線やインターネットを介して行うものです。
上記でも述べたように各種ビジネス文書の発行などにおける業務の省略や、在庫照会、納期照会といったリアルタイムでの確認作業にも用いられています。

例えば取引先に発注を行う際、発注元が発注書のフォーマットを用いて作成します。その場合、発注書をFaxで送信するかメールで送付した後、さらに発注元か受注先が確認の電話かメールを入れるところが多いと思います。これは少々やり取りが煩雑ではないでしょうか。
EDIでは、手順は多少異なりますが、発注元が数量を入力するだけで発注作業~双方で発注確認が完了します。厳密に言うと手入力で行うものはWeb-EDIとして区別されますが、企業間の通信のやりとりにおいてある程度自動化できるものをEDIと呼びます。
Web-EDIについては後半で解説しています。

BtoBにとって欠かせない存在EDI

経済産業省は「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」において、BtoB-EC(企業間電子商取引)市場が317.2兆円規模と公表しました。これは前年比9.0%増の数字です。

また、この年のEC化率は29.6%でした。EC化率は全商取引金額に対するEC市場規模を示す割合ですが、ここにはEDIも含まれています。つまり、国内における商取引のおよそ3割がECであり、その中にはEDIも多分に含まれているということになります。
ちなみに、ECとEDIの違いは、情報のやり取りが限定的かそうでないかという点です。ECは望めば世界中のカスタマーと情報をやり取りすることも不可能ではありません。一方でEDIは決まった取引先とのみデータ共有をおこない受発注をおこなうものです。

参照:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001.html

EDIの通信方法の種類は?

EDIの仕組みとはどうなっているのでしょうか。EDIには、ある特定の企業のみとしか通信できない個別のEDIと、同業界・業種であればどの企業でも通信可能な標準EDIがあります。

個別EDI

個別EDIは特定の企業との間でしか使えないため汎用性はありませんが、企業間の合意のもと細かい条件や様式等を指定することができます。

標準EDI

一方、標準EDIはフォーマットが決まっているため、同じEDI規格を用いている他の企業との通信にも使うことができます。

VAN

さらにVAN(Value Added Network:付加価値通信網)と呼ばれるEDIに付加価値を与える通信サービスもあります。VAN はEDIのデータ形式やプロトコルの変更、通信料金の定額化など従来のEDIをより便利で使いやすくするサービスを指します。海外との通信においては国際VAN、ある特定の業界でのみ用いているものは業界VANと区別されます。

EDIのメリット

EDIを用いることでどのようなメリットがあるのでしょうか。以下にEDIを用いることで得られるメリットを挙げてみたいと思います。

業務の簡略化

EDIをいることによって一部の業務を省略することができ、文書の送付や添付ファイルを送信といった処理を行う必要がなくなります。これはペーパーレス化にもつながり、書類を送付する必要もなくなるため郵送する手間も減ることになります。また毎回同じフォーマットを用いているため、チェックがしやすくなります。

タイムラグのない通信が可能

企業間の通信回線に問題がなければすぐに連絡を行うことができます。インターネット回線を用いた通信では従来のEDIよりさらに速い通信を行うことができます。インターネット回線を用いたEDIはWeb-EDIと呼ばれますが、こちらは後述します。

ミスの軽減

EDIを利用することによって、自動化により手入力がなくなる分ミスを減らすことができます。例えば複数のデータを取り込むバッチ作業であればデータ取り込みを自動で行うため業務の効率化にもなり、ヒューマンエラーによるミスの可能性も低くなります。

ペーパーレス化

EDIは企業間の業務を軽減する目的で利用されているので、伝票などの書類を発行する手間を省略することもできます。これが結果的にペーパーレス化につながり、郵送するためのコストを削減・また郵送にかかる業務を軽減することができます。

EDIのデメリット

メリットのみを挙げると便利な仕組みのように見えますが、どのようなシステムやサービスにもデメリットはつきもの。EDIを導入する上で知っておくべきデメリットについても紹介します。

取引先と共同で導入しなければ機能しない

EDIは、自社のみが導入しても機能しません。取引先が同じようにEDIを扱えなければ、いくら業務に活用しようと思っても限界があります。まだ導入していない企業にEDIをすすめてすぐに導入してもらえればよいですが、EDIの知識があまりない企業にゼロからプレゼンをして導入にこぎつけるのは、時間がかかり難しいかもしれません。


取引量が少ないとコストに見合わないこともある

EDIとは、そもそも毎日の煩雑な取引にかかわる手続きをスムーズにするためのシステムです。そのため、導入する目的は「作業効率の向上」であるべきで、コストに対してどれだけ作業効率が高まるかを慎重に計算する必要があります。
取引量が多くない企業の場合、コストをかけてまで導入するべきではないというケースも。自社の性質をよく検討した上で考える必要があるでしょう。

需要・生産・販売・在庫をEDIで管理する

EDIで受発注する双方がスピーディかつ正確なデータ交換をすることで、さまざまな計画の最適化をおこなうことができます。

  • 需要の予測
  • 生産計画
  • 販売計画
  • 在庫管理
データをチェックして数ヶ月先の必要性を予測して生産を管理したり、反対に余剰在庫が出過ぎないように調整したりということが可能になります。

従来のEDIとは異なるWeb-EDIとは?

近年ではインターネット回線を用いたWeb-EDIが主流になってきています。従来のEDIは電話回線を用いたものでしたが、Web-EDIはインターネット回線を介することにより高速でデータの送受信が可能になります。
その理由は通信速度の違いにあります。通信速度はbps(bit per second: 1秒単位のビット数)という単位で表され、1秒間にどれくらいのデータ量を送信することができるかという意味で、この値が大きくなるほど送信できるデータ量も多くなります。従来型のEDIは電話回線を用いた通信のため、Web-EDIに比べると通信速度は劣ります。以下では日本で主流の従来型EDI、JCA手順の通信速度について説明されています。
JCA手順の通信速度は2400bpsまたは9600bpsで、インターネットの通信速度に比べると理論上数百分の一と非常に低速な仕様です。企業によっては発注データの送受信に1時間以上かかることもままあります。
https://www.canon-its.co.jp/solution/edi/document/bms01/
(参考:キヤノンITソリューションズ株式会社  流通BMS特集 – 流通BMS解説)
このbpsの値が大きいほど、通信速度は速くなります。普段私たちがインターネット上で行う操作では、目安だと~10Mbpsはメールの送受信、10~100Mbpsは動画・音楽の再生やゲーム、100Mbpsは高画質の動画の再生などを問題なく行うことができます。1Mbps=100万bpsなので、これと比べると従来型のEDIが低速なことがわかります。

Web-EDIの種類

EDIの通信規格は業界・企業間において異なります。EDIが動作する条件として、同じ通信プロトコルを有していることが前提となります。EDIの規格の例としては、ebXML MS、 EDIINT AS2、 SOAP-RPC、JX手順、SFTPがあります。
これらはそれぞれプロトコルが異なり、国・エリアや業界によって用いられるEDIの種類が異なります。


Web-EDIのメリットとは?

Web-EDIのメリットは専用の通信回線を利用するEDIと違い、システムを導入する手続きをしなくてもブラウザで利用できる点です。具体的に挙げると、クラウドでデータを管理、保管、操作できること、また複雑な機器の設定をする必要がなくブラウザで操作が可能であることが挙げられます。

そして最大のメリットは、従来のEDIに比べて高速で通信が可能なことです。
従来のEDI、特に日本の小売業で広く用いられているJCA手順と呼ばれるEDIは1980年代に普及が始まってからすでに30年以上が経過しようとしています。初期に導入された機器は老朽化が進んでおり、また通信速度も現在のWeb-EDIほど早くはありません。

また近年では携帯電話の普及により固定電話を利用する人が少なくなったことから、2020年代にはPSTNがIP回線に移行することになるためシステムの入れ替えを行う必要が出てくるかもしれません。PSTNとはPublic Switched Telephone Networkの略で、公衆電話回線網つまり公衆電話や固定電話の電話回線のことを指します。
東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社(NTT東/西)は2016年9月に、現行の電話回線にかかる保守費用等の莫大な費用にたいして利用者が激減していることから、PSTNをIPへ移行する発表を行っています。

東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社(以下、NTT東西)は、PSTN※1からIP網への移行について検討を進めています。これに伴い、主に法人のお客さまがPOSシステム等のISDN対応端末でご利用いただいております「INSネット ディジタル通信モード」の提供は終了する予定です。

https://www.ntt-west.co.jp/info/support/oshirase20160912.html
(出典:NTT西日本  INSネット ディジタル通信モードの提供終了に伴う当面の対応策(補完策)「メタルIP電話上のデータ通信」に係る検証環境の提供について)
このことから従来のEDIを利用している企業でシステム自体の老朽化や、IPへの移行手続きが業務へ影響する不安から多くの企業がWeb-EDIへの切り替えを行うものと予測されます。

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO20463860Y7A820C1X11000/
参考:日本経済新聞 ISDN終了で受発注50万社影響 通信網に2024年問題

Web-EDIは標準化されていないので注意

Web-EDIは標準化されていないために個別EDIと同様、取引先ごとに別のWeb-EDIを導入する必要があります。
導入コストが安いのはWeb-EDIの魅力の一つですが、取引先が多い場合はコストがかさむ可能性もあるので、注意しましょう。


クラウド型EDIかパッケージ型か、多様化するEDI

EDI導入は、クラウド型、オンプレミス型、パッケージ型の3つが考えられます。それぞれ特徴があるため、自社に合わせた形態をチョイスすることが大切です。


クラウド型EDIツール

クラウド型は導入コストが比較的安価であり、検討してから実際に導入するまでの期間が短いというメリットがあります。なるべくコストをかけずにEDIを導入したい、短期間ですぐにシステムを導入したい、という時にはオススメです。
ただし、月額利用料などランニングコストがかかるので、長期的なコスト計算をしておかないとパッケージよりも高くつく可能性もあります。

オンプレミス型EDIツール

オンプレミス型は、インフラの整備やハードウェアの購入から整備するため、クラウド型と比較すると初期コストが高くなります。まだ自社で運用をおこなう前提なので、購入や開発に時間がかかります。
しかし、月額利用料がかからないため、長い目で見るとクラウド型よりも経済的に活用できる可能性もあります。

パッケージ型EDIツール

パッケージ型のEDIツールは、株式会社JSOL、キヤノンITソリューションズ、株式会社日立システムズなどがリリースしています。

まとめ

高速でデータをやり取りするEDIを活用することで、ビジネスのスピードは加速してくと考えられます。
EDIは1980年代から普及していきましたが、時代の変化とともにWeb-EDIはこれからますます需要が高まっていくことでしょう。