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時代はデジタルシフト戦略:定義から企業事例、マーケティングアイデアまで


デジタルシフト(Digital shift)は、ビッグデータといった概念やIoT、AI(人工知能)といったデジタル技術の本格的な活用によって多くの情報が統合可能になり、一度に取り扱える情報が増えることをいいます。時代の潮流をあらわすキーワードのひとつで、これからの企業戦略とマーケティングは、このデジタルシフトなしには語れません。コロナ禍以降はデジタルシフトの重要性はより高まっていると言えます。






デジタルシフトの定義と、そのマーケティング、大手企業のとっているデジタルシフト戦略の事例をご紹介します。



【目次】




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デジタルシフトの定義とは



デジタルシフトを定義するならば、それは各情報が統合されたことにより、個人が扱える情報量が増えたことといえるでしょう。
なぜ情報量が増えたのかといえば、スマートフォンによって個人がアクセス可能な情報が格段に増えたためです。手のひらのツールでサイト検索やマップ検索ができるようになり、得た情報から電話やメールを使って問い合わせできる、今では日常的な光景ですが、スマホが普及する以前にはこうしたことはできませんでした。



また、購買行動を例にとっても、スマホ「前」とスマホ「後」、その違いは歴然としています。これまで、商品を購入したい消費者は、情報を得る場が雑誌やチラシといった紙媒体か実店舗しかありませんでした。しかしここ10年ほどの間に急速にネット環境は進化し、店舗のサイトやモール型ECサイト、SNSなど情報を得る場が増えています。そうした膨大な情報は、手のひらにあるスマホで見たい時にすぐチェックすることができます。



こうした情報を組み合わせれば、いち消費者であっても比較的すぐに公式の製品情報、販売されているECサイト、購入した人のレビューをスマホだけで取得することができます。
膨大な情報を技術革新によって比較的容易に取得できるというのは企業も同じで、AIやIoTを活用してビッグデータの分析をおこなったり、より効果的なメディア戦略について考えることが必要な時代に入っているということがいえます。



コロナ禍におけるデジタルシフトの意義



2020年以降に世界中が直面しているコロナ禍において、感染症対策として在宅勤務の推奨、非対面でのコミュニケーションの増加が著しく、消費者のデジタル化は従来よりも速いスピードで進みました。企業よりも消費者がデジタルシフトしている状態となったのです。



市場ニーズに応えるためにも、デジタルシフトは企業が取り組むべき喫緊の課題となっています。



メディアのデジタルシフトとは



こうしたデジタルツールの進化にともない、広告業界の数字にも大きな変化があらわれています。
電通が公表した「2018年 日本の広告費」データによると、2018年の総広告費は6兆5,300億円でした。そのうち、インターネット広告費は1兆7,589億円です。ほかの広告費が前年比90〜98%程度なのに対し、インターネット広告費は前年比116.5%と、5年連続の二桁成長を記録、一方で出版系の広告は前年比87.2%と減少傾向がみられました。



電通はこの数字を、市場の「構造変化の真っただ中」とみなしており、今後もインターネット広告やマスメディア由来によるデジタル広告費が増えるという予想を立てています。



ちなみにマスメディア由来のデジタル広告費とは、新聞デジタル、雑誌デジタル、ラジオデジタル、テレビメディアデジタルの4つをさします。これはマスコミ四媒体事業社が主体になって提供するインターネットサービスに関する広告費をいい、それぞれの広告費とは別に数字を出しています。



このことから、インターネット以外のマスコミ媒体も積極的にデジタル活用に向けて舵を切り始めており、デジタルに特化した部門やコスト、マーケティング、プロモーションをおこなっていることが分かります。



参考:電通「2018年 日本の広告費」
http://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2018/



メディアとネットの融合:デジタルシフトマーケティング



マーケティングにもデジタルシフトという思考が広がっていくにつれ、従来の広告区分は意味をなさなくなる可能性があります。
現代は、多くの情報にかんたんにリーチする機会をもっている人が大半。これまで無名だった商品が、CMを流したり雑誌に載ったりすることで全国誰もが知る人気アイテムになるということも起こりにくくなっています。一方で、SNSの口コミだけがパワーをもったり、インスタグラマーやユーチューバーといったインフルエンサーだけが強大な影響力をもつわけでもありません。



デジタルシフトマーケティングにおいてもっとも重要なのは、これらを組み合わせて新しい広告スタイルを確立することです。どのような組み合わせやマーケティングが効果的なのか、それを把握するために必要なのは取得している情報の的確な分析です。
多様な価値観や細分化する流行を見極めるためには、AIを活用して新たな視点を獲得したり各部署が横断的にデータを取り扱うことが必要になるでしょう。







企業のデジタルシフト戦略とデジタルマーケティング



時代の潮流、デジタルシフト戦略について、企業はどのように向き合い取り組みを展開しているのでしょうか。
イオン、資生堂、キリンなどの事例を見ていきましょう。



事例1:イオンのデジタルシフト戦略



イオンでは、2018年から2020年にかけた中期経営計画としてデジタルシフトの取り組みをおこなっています。
この10年で働き方や家族のあり方が変わったことから、利用客のニーズが「時短」、「低価格志向」、「健康志向」にあるとして、ネットを使うことの利便性を活かしたデジタルシフト戦略を計画しています。



イオングループは17,000店舗という圧倒的なチェーン展開にくわえ、イオンカードや電子マネーといった顧客情報をのべ1億人ほど保有しているとされています。
日本の企業は保有しているデータの分析と活用こそが課題といわれていますが、イオンは保持している膨大な情報を使って、次の4つを具体的に展開してくと公表しています。



  • 新しいネットスーパーの構築
  • マーケットプレイスの構築
  • 店舗と業務のデジタル化
  • 「個」客理解のデジタル化


物流センターやプロセスセンターのロボット化といった、業務効率化ももちろんですが、イオンカードやWAON POINTなどで取得できる個人の購買記録やさまざまな顧客情報をAIなどで分析し、ビッグデータから個々のニーズをどれだけ数字化できるかがポイントになるのではないでしょうか。



参考:AEON.com「イオングループ、本気のデジタルシフトへ」
https://www.aeoncom.co.jp/recruit/



事例2:資生堂のデジタルシフトマーケティング



これまで雑誌広告やテレビCMで宣伝をおこなっているイメージの強かった資生堂も、マスメディアとデジタルの統合というデジタルシフト戦略を構想しています。
テレビや新聞に接する機会や時間は年々減少傾向にあり、多くの人が動画もニュースもスマホやPCでチェックする時代になりました。資生堂をはじめとする多くのコスメブランドがこれまで広告してきた媒体である雑誌も、電子書籍としてWeb版を購読しているユーザーが徐々に増えてきています。



しかし、新聞や雑誌と違ってテレビは全く視聴されていないというわけではありません。スマホにふれる時間が長いとされる若年層も、テレビをまったく観ていないというわけではないのです。資生堂はそのポイントに注目して、「マストデジタルの統合」を進めようとしています。
具体的に検討されている施策は、情報の一元管理とリアルタイム閲覧が可能なダッシュボードの導入です。



オウンドメディアやソーシャル情報、リサーチデータ、競合アクティビティといったこれまで分断されがちだった多様な情報を一元管理して、それらを自由かつ柔軟に組み合わせて用いることで「広告がリーチしていない層」を徹底的になくすようなプロモーションを展開しつつあります。



たとえば、テレビでCMを流した数日後にWebでアンケートを実施して、CMの認知率が低い層をターゲットにした別のプロモーションを展開したり、クラウドソーシングを利用してテレビのCMよりも低コストの動画を作成したりして、従来の広告手法よりも効果的に多くのリーチを獲得しています。
なお、こうした情報分析は、多くの消費者が不快に感じるリターゲティングを削減することにも役立てられています。



参考:資生堂
https://www.shiseido.co.jp/



事例3:キリンの「キリンレモン」デジタルシフトマーケティング



キリンは、2018年に発売から90周年となった「キリンレモン」をリニューアルし、売上目標を2度上方修正、600万ケースとしました。
当初の売上目標は360万ケース。予想を大きく上回る嬉しい見込み違いとなっています。



この異例ともいえる売上に一役かったのが、若年層にターゲットを絞って取り組んだデジタルシフトマーケティングといわれています。
本来、飲料の広告といえばテレビのCMでしたが、これを最小限にとどめてムービーのネット配信や、ミュージシャンとのタイアップ企画とその派生ムービーの配信などをおこなったことで大きく売上を伸ばしました。



20~30代のターゲットに向けたプロモーション成功の裏には、ソーシャルメディアの口コミ分析、キリンのブランドマーケティングやプロモーション施策の評価といったデータ活用があります。
デジタル広告に注力したことだけが取り上げられがちですが、売上増のポイントはターゲットとなる消費者層の徹底的な分析とニーズの把握があるといえるでしょう。



参考:キリン「キリンレモン」
https://www.kirin.co.jp/products/softdrink/kirinlemon/



デジタルシフトとデジタルトランスフォーメーション(DX)について







バズワードにもなったデジタルトランスフォーメーション(DX)や、デジタル変革。DXやデジタル変革は、主に社内管理やシステムのデジタル活用を意味する場合が多いですが、AIやビッグデータの活用によって今取得しているデータをより深く分析し、役立てるという意味においては同じです。
デジタルシフトが進んでいる企業は、顧客からも高い評価を得られやすいため、多くの企業や事業者はデジタル化を進めていることでしょう。



しかしながら、デジタルシフト、デジタルトランスフォーメーション(DX)、デジタル変革といった言葉だけを追いかけると、却って本質は見えづらくなってしまいます。
デジタル化においてもっとも重要なことは、多様化するユーザーのニーズを分析してデータにして可視化すること、そしてそのデータを役立ててデジタル技術の進化著しい現代に合わせた価値や商品を創造することです。



これまでのビジネスでは、時間や場所の制約により実現できないことが多くありました。しかし、デジタル化によってこれらの制約からは解放されつつあります。
つまり、従来のビジネスのあり方がここ数年で大きく変わり、これまで不可能だった多くのことが可能になりはじめているのです。一方で蓄積されるデータを充分に活かしきれず、データ収集のコストに見合った情報を取得できていないという課題も、さまざまな企業でみられます。



課題を克服するためには、情報を扱うアナリストの育成や招聘によって企業のデジタル化を後押しし、まずマーケティングに反映しやすい情報管理システムを構築するのも効率的です。



デジタルシフトの鍵は消費者のデジタルシフト生活を見据えること



冒頭に戻る形になりますが、企業のデジタルシフトにとってのキーポイントは、消費者のデジタルシフトです。



普段、消費者がどのようなシーンでECを利用したり、デジタルチケットを購入するのか、また商品を購買しようと思い立った時に、どのような方法で情報収拾をするのか、どのような情報をもっとも信頼するのかといった「消費者の視点」について、デジタルシフトを軸として分析することで、企業のとるべきデジタル化や、マーケティングの方向性が見えてくるでしょう。



もっとも危険なのは、消費者の価値観と企業の価値観が乖離してしまうことです。企業の考える消費者像と実際の消費者がかけ離れていては、効果的な施策をおこなうことは絶対にできません。そのためにも、従来よりも深化させたデータ分析、活用が欠かせないのです。



まとめ



デジタルシフトは、現在多くの企業が積極的に取り組みをおこなっています。



消費者のデジタル化に対応し、コロナ禍における働き方改革と合わせ、リモートワークや非対面でのコミュニケーションが可能な環境を整えるなど、顧客や従業員のニーズに応えていくことが重要となっています。



デジタルシフトを実現した企業が今後生き残っていく確率が高いことは明らかです。



一方で、何から手をつけていいのか分からないという声もきかれ、迷走状態に陥ってしまう企業も少なくありません。まずは、企業に役立つ顧客情報の蓄積、そしてそのデータの効率的な活用からスタートしてみましょう。