QRコードによるクイックオーダー+Amazon PayでECサイトの課題解決?
電話注文が基本であったテレビ通販で、ついにQRコードによる注文が導入されました。新規顧客の獲得に苦戦するテレビ通販市場では、ECサイトなど別形態との連携が課題となっています。
テレビ通販の主要顧客は中高年ですが、スマートフォンの普及により新しい取り組みがスタート。テレビ通販とECサイトの連携やIT技術の普及、今後の課題についてご紹介します。
【目次】
テレビショッピングが実施した方式は、深夜のテレビショッピング放送内でECサイトを表示させるQRコードを表示させ、視聴者にスマートフォンで読み取ってもらうというもの。
QRコードのリンク先はテレビで紹介していた商品ページで、視聴した放送局や商品のカラー・名前など10項目ほど入力する画面がダイレクトに表示されます。
そして大きな特徴は「Amazon Pay」による決済が可能という点で、クレジットカード情報を入力する必要がありません。購入者はQRコードのクイックオーダーにより、テレビショッピングで興味を持った商品をスマートフォンで購入できます。
Amazonアカウントに紐づけられた住所やクレジットカード情報を使うことで、購入者はECサイトごとに購入情報を入力する手間が省けます。最短2クリックで注文が完了しますし、Amazon Payのサイトから購入履歴も確認できます。
今や日本国内だけでも5,000万人以上の人がAmazonを利用しているため、テレビショッピングの視聴者もAmazonアカウントを持っている人が多いでしょう。いつも利用しているAmazonを使った決済なら、購入者にも安心感があります。
テレビ通販では、商品紹介とともに電話番号が表示され、購入希望者は電話を掛けて注文します。当然ながらテレビ放送直後は電話を掛ける人が増えるため、コールスタッフが対応しきれず“あふれ呼(こ)”という待ち時間が発生してしまいます。
このあふれ呼時間が長いほど注文の取りこぼしが発生して、ECサイトでいう“カゴ落ち”状態を生んでしまいます。また、やっと電話がつながったと思ったら商品が売り切れており、購入者の期待を裏切るケースも少なくありません。
テレビ通販の運営側は、自動応答システムやテレビ放送中に在庫数を表示するなどの対策を講じています。
しかし、テレビ通販を視聴している人の中には電話注文を煩わしく感じることもあるでしょう。深夜のテレビ通販ならなおさらです。
表示するECサイトページの工夫により、QRコードを読み取ったユーザーはすぐに目当ての商品ページを閲覧できます。そこに最短で2クリックで決済できるAmazon Payも導入されていることで、電話注文よりもはるかに少ない工程で注文ができます。
テレビショッピングがQRコードを使ったのは、男性向けの髭剃り商品でした。深夜のテレビ通販は会社員の利用者が多い傾向があり、寝る前に商品を見て興味を持った人も多いでしょう。
今回のケースのように、テレビ通販という形態であってもECと連動させて販売機会の損失を防ぐという戦略は、これからも広がっていくものと予想されます。
若年層を中心にテレビ離れが起きており、テレビ通販形態は新規顧客の獲得に苦戦しています。そのため圧倒的に利用者の多いECサイトへのシフトが徐々に増えている状態です。
通販・ECの国内市場は年々拡大しているものの、テレビ通販市場は微増または減少しています。今後テレビやラジオ・カタログといった形態は、ECサイトの広告宣伝として利用される可能性もあります。
オムニチャネルになると、今まで実店舗で購入していた消費者がECサイトを利用するケースも増加します。すでにオムニチャネルを導入している店舗では、実店舗・ECサイトを1つの販売形態で評価するのではなく、全体の売り上げとしてとらえています。
複数形態を連携させた販売を行う場合は、実店舗やECサイト自体が上手く連携する必要があるでしょう。形態ごとに運営者が対立しないようにするなど、組織体制も整える必要があります。
総務省の調べによると、スマートフォンの保有率は2017年時点で50代が72.7%、60代が44.6%でした。もちろん若年層に比べると保有率は減少しますが、シニア向けのスマートフォンモデルなども登場しており、およそ半数近くがスマートフォンを所持しています。
前述の富士経済の調べでは、EC市場ではPCの利用が多かったものの、2013年あたりからスマートフォンの利用も増加。それに伴い企業ではスマートフォンアプリの開発が進み、今ではプッシュ通知を使ったクーポン配信やポイント制度など、スマートフォンユーザーをターゲットにした戦略も進めています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、2018年にQRコード決済に関する調査結果を発表。QRコードによる決済の認知状況は、50代が54.8%、60代が64.4%となっています。30代が51.0%であることを考えると、若年層とほぼ変わらない認知状況と言えます。
また、これからQRコード決済を利用してみたいと回答した人は、30代が35.6%・50代が38.5%・60代が36.5%とこちらも大差がありません。
自分でスマートフォンに興味を持って所有しはじめる人もいますが、子供に勧められて購入する人もいます。スマートフォンならLINEなど無料通話アプリが利用できるため、料金を気にせずにコミュニケーションが取れます。
動画や高画質の画像など、携帯電話では重すぎるデータのやり取りもできます。今後もシニア層のスマートフォン所有率は、上昇していくでしょう。
iOS・Android両方に対応しているタッチでアプリは、App StoreやPlayストアからのダウンロードだけではありません。有料の電話番号に発信すれば、メッセージでアプリのリンクが配信されてアプリをインストールできるよう工夫されています。
アプリをインストールした後は、認証手続きやクレジットカード情報などを登録すれば完了。QRコードやAmazon Payは利用せず、独自システムで完結しています。
テレビ放送で気になった商品をスマートフォンですぐ購入できる仕組みは、ショップチャンネルのようにアプリを活用することもできます。アプリ内ではキャンペーンや番組情報の配信など、ユーザーに有益な情報配信にも注力しています。
専用アプリである「Krispy Kreme for APP」をダウンロードして会員登録すれば、アプリからドーナツの注文と決済までが完了します。事前予約により、スムーズな受取や人気商品のキープが可能です。
機械操作が苦手というイメージがあるシニア層をターゲットにしているテレビ通販。しかし市場の大きさの違いから、「いかにECサイトへシフトするか」という課題があります。
今回ご紹介したようなIT技術を使い、より消費者にとって利用しやすい環境を構築することも有効な手段となるでしょう。
テレビ通販の主要顧客は中高年ですが、スマートフォンの普及により新しい取り組みがスタート。テレビ通販とECサイトの連携やIT技術の普及、今後の課題についてご紹介します。
【目次】
テレビ通販業界がQRコード決済を新しく導入
ダイレクトテレショップがQRコードによるクイックオーダーを導入
2019年7月、テレビショッピングの大手である「ダイレクトテレショップ」がQRコードによる決済を導入しました。これはテレビショッピング業界でも初の取り組みで、今後はQRコードによるクイックオーダー方式が浸透するかもしれません。テレビショッピングが実施した方式は、深夜のテレビショッピング放送内でECサイトを表示させるQRコードを表示させ、視聴者にスマートフォンで読み取ってもらうというもの。
QRコードのリンク先はテレビで紹介していた商品ページで、視聴した放送局や商品のカラー・名前など10項目ほど入力する画面がダイレクトに表示されます。
そして大きな特徴は「Amazon Pay」による決済が可能という点で、クレジットカード情報を入力する必要がありません。購入者はQRコードのクイックオーダーにより、テレビショッピングで興味を持った商品をスマートフォンで購入できます。
Amazon Payとは
最近では「~Pay」というサービスが乱立していますが、Amazonでも「Amazon Pay」という支払いサービスが始まっています。しかし店頭でのキャッシュレス決済システムではなく、ECサイトで活用できるのがAmazon Payのメリット。Amazonアカウントに紐づけられた住所やクレジットカード情報を使うことで、購入者はECサイトごとに購入情報を入力する手間が省けます。最短2クリックで注文が完了しますし、Amazon Payのサイトから購入履歴も確認できます。
今や日本国内だけでも5,000万人以上の人がAmazonを利用しているため、テレビショッピングの視聴者もAmazonアカウントを持っている人が多いでしょう。いつも利用しているAmazonを使った決済なら、購入者にも安心感があります。
Amazon PayはECサイト運営側もメリットがある
決済システムはECサイトに不可欠ですが、Amazon Payは初期費用や月額費用・通信処理費用(トランザクション料)が無料なので、イニシャルコストを抑えた導入ができます。販売手数料として、デジタルコンテンツなら4.5%・物理的な商品やサービスであれば4%が発生します。参照:Amazon Pay 販売事業者様向けページAmazonの高いセキュリティ基準による決済システムは信用度が高いですし、スムーズな決済で消費者の購入意欲を下げるリスクが減少します。すでにアパレルECサイトの「SHOP LIST」やレンタルWi-Fiを手掛ける「Wi-Ho!」なども導入しており、効果の高さを実感しています。
https://pay.amazon.co.jp/merchant
参照:Amazon Pay 導入事例
https://pay.amazon.co.jp/casestudies?ld=NSGoogle
テレビ通販でありがちなデメリット
テレビ通販といえば、ネットショッピングが盛り上がる前から存在している消費スタイル。パソコンやスマートフォンが普及する前から主婦や会社員に利用されてきました。テレビ通販では、商品紹介とともに電話番号が表示され、購入希望者は電話を掛けて注文します。当然ながらテレビ放送直後は電話を掛ける人が増えるため、コールスタッフが対応しきれず“あふれ呼(こ)”という待ち時間が発生してしまいます。
このあふれ呼時間が長いほど注文の取りこぼしが発生して、ECサイトでいう“カゴ落ち”状態を生んでしまいます。また、やっと電話がつながったと思ったら商品が売り切れており、購入者の期待を裏切るケースも少なくありません。
テレビ通販の運営側は、自動応答システムやテレビ放送中に在庫数を表示するなどの対策を講じています。
しかし、テレビ通販を視聴している人の中には電話注文を煩わしく感じることもあるでしょう。深夜のテレビ通販ならなおさらです。
QRコードによるクイックオーダーでテレビ通販のデメリットを解消
QRコードによるクイックオーダーやAmazon Payを導入すれば、テレビ通販特有のデメリットを減らすことができます。消費者にとって以下のようなメリットが発生します。- クレジットカードの利用で代引き手数料が発生しない
- 住所やクレジットカード情報を電話口で伝える必要がない
- 深夜でも電話をかけず注文ができる
ECサイトへのスムーズな導入こそが成功の課題
ダイレクトテレショップは移動先のページを工夫
QRコードによるECサイト誘導を行ったダイレクトテレショップは、表示させるページを公式サイトのトップページではなく、テレビ放送で紹介した商品のランディングページにしました。表示するECサイトページの工夫により、QRコードを読み取ったユーザーはすぐに目当ての商品ページを閲覧できます。そこに最短で2クリックで決済できるAmazon Payも導入されていることで、電話注文よりもはるかに少ない工程で注文ができます。
テレビショッピングがQRコードを使ったのは、男性向けの髭剃り商品でした。深夜のテレビ通販は会社員の利用者が多い傾向があり、寝る前に商品を見て興味を持った人も多いでしょう。
今回のケースのように、テレビ通販という形態であってもECと連動させて販売機会の損失を防ぐという戦略は、これからも広がっていくものと予想されます。
通販市場はECサイトが圧倒的多数
富士経済の調べによると、通販・ECの国内市場は2019年の予測が10兆円を超えています。ECサイト・カタログ・テレビ通販といった各形態の中で圧倒的に多いのはECサイトで、全体の8割以上を占めているのです。若年層を中心にテレビ離れが起きており、テレビ通販形態は新規顧客の獲得に苦戦しています。そのため圧倒的に利用者の多いECサイトへのシフトが徐々に増えている状態です。
通販・ECの国内市場は年々拡大しているものの、テレビ通販市場は微増または減少しています。今後テレビやラジオ・カタログといった形態は、ECサイトの広告宣伝として利用される可能性もあります。
オムニチャネルは社内の組織づくりが課題
ECサイトや実店舗など複数の形態で販売を行うオムニチャネルは、IT技術の進歩とともに普及が広がっています。今回のテレビショッピングのようにECサイトとテレビ通販を連携させるなど、新しい戦略も日々増えています。オムニチャネルになると、今まで実店舗で購入していた消費者がECサイトを利用するケースも増加します。すでにオムニチャネルを導入している店舗では、実店舗・ECサイトを1つの販売形態で評価するのではなく、全体の売り上げとしてとらえています。
複数形態を連携させた販売を行う場合は、実店舗やECサイト自体が上手く連携する必要があるでしょう。形態ごとに運営者が対立しないようにするなど、組織体制も整える必要があります。
スマートフォン+QRコードは中高年も受け入れている
50代は70%以上がスマートフォンを所持している
スマートフォンの普及に伴い、キャッシュレス決済をはじめQRコードが使われるようになっています。QRコードの読み取りにはスマートフォンが必要ですが、日本は中高年のスマートフォン所有率も年々上昇しています。総務省の調べによると、スマートフォンの保有率は2017年時点で50代が72.7%、60代が44.6%でした。もちろん若年層に比べると保有率は減少しますが、シニア向けのスマートフォンモデルなども登場しており、およそ半数近くがスマートフォンを所持しています。
前述の富士経済の調べでは、EC市場ではPCの利用が多かったものの、2013年あたりからスマートフォンの利用も増加。それに伴い企業ではスマートフォンアプリの開発が進み、今ではプッシュ通知を使ったクーポン配信やポイント制度など、スマートフォンユーザーをターゲットにした戦略も進めています。
QRコードの認知度は9割を超える
テレビショッピングのようなテレビ通販は50代以上の利用者が多いですが、今では中高年もQRコードに対する抵抗感が減ってきました。特にQRコードは、最近サービスが急増しているQRコード決済の影響で認知度が高まっています。三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、2018年にQRコード決済に関する調査結果を発表。QRコードによる決済の認知状況は、50代が54.8%、60代が64.4%となっています。30代が51.0%であることを考えると、若年層とほぼ変わらない認知状況と言えます。
また、これからQRコード決済を利用してみたいと回答した人は、30代が35.6%・50代が38.5%・60代が36.5%とこちらも大差がありません。
参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「キャッシュレス決済の多様化の動向整理」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/pdf/caution_internet_180706_0001.pdf
スマートフォンはパソコンより直感的に使える
中高年は機械に馴染みがない人も多いものですが、スマートフォンは直感的に使えます。ATMや電車の券売機と同じくタッチパネルで操作できますし、わかりやすさに特化したモデルもあります。自分でスマートフォンに興味を持って所有しはじめる人もいますが、子供に勧められて購入する人もいます。スマートフォンならLINEなど無料通話アプリが利用できるため、料金を気にせずにコミュニケーションが取れます。
動画や高画質の画像など、携帯電話では重すぎるデータのやり取りもできます。今後もシニア層のスマートフォン所有率は、上昇していくでしょう。
クイックオーダーの導入事例は増えている
ショップチャンネルもアプリ連動をスタート
テレビ通販の大手であるショップチャンネルは、QRコードではなく専用のアプリ「タッチでアプリ」をリリース。音声ガイダンスの注文に比べて10分の1で注文できると謳うアプリでは、テレビ通販の放送中に気になった商品を手軽に購入できる仕様になっています。iOS・Android両方に対応しているタッチでアプリは、App StoreやPlayストアからのダウンロードだけではありません。有料の電話番号に発信すれば、メッセージでアプリのリンクが配信されてアプリをインストールできるよう工夫されています。
アプリをインストールした後は、認証手続きやクレジットカード情報などを登録すれば完了。QRコードやAmazon Payは利用せず、独自システムで完結しています。
テレビ放送で気になった商品をスマートフォンですぐ購入できる仕組みは、ショップチャンネルのようにアプリを活用することもできます。アプリ内ではキャンペーンや番組情報の配信など、ユーザーに有益な情報配信にも注力しています。
参照:ショップジャパン「タッチでアプリ」紹介PDF
https://www.shopch.jp/images/tk/tk1745/tk1745.pdf?il=tk1745&ic=pdf
クリスピー・クリーム・ドーナツもクイックオーダーを導入
スマートフォンアプリとECサイトの連携は、食品業界でも導入が進んでいます。アメリカ発祥で日本でもブームになったクリスピー・クリーム・ドーナツでは、2017年からアプリでドーナツの予約ができるシステム「クイックオーダー」を導入しました。専用アプリである「Krispy Kreme for APP」をダウンロードして会員登録すれば、アプリからドーナツの注文と決済までが完了します。事前予約により、スムーズな受取や人気商品のキープが可能です。
参照:クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社「簡単予約で並ばずドーナツの受取が可能に。アプリ限定サービス『クイック オーダー』」
https://krispykreme.jp/pr/pr170704.html
さいごに
QRコードのクイックオーダーをはじめ、ECサイトの運営では「いかにスムーズに注文できるか」という点が非常に重視されています。進歩するIT技術を取り入れることで、消費者の購入意欲が高まった時にすぐ注文ができれば、注文の機会損失を防ぐことができます。機械操作が苦手というイメージがあるシニア層をターゲットにしているテレビ通販。しかし市場の大きさの違いから、「いかにECサイトへシフトするか」という課題があります。
今回ご紹介したようなIT技術を使い、より消費者にとって利用しやすい環境を構築することも有効な手段となるでしょう。