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C2Mに再注目!変容する社会と消費者意識にマッチするビジネスモデル


顧客の潜在的ニーズを把握して無在庫販売できる「C2M」は、コロナによって改めてその価値が捉え直されています。



アフターコロナのC2Mは、リアルタイムなデータ活用が進み、より精緻な製造予測が立てられるようになりました。巣篭もり生活によって激増したEC需要にも、即応できるようになっています。



C2Mは2020年頃に中国のEC業界によって提唱され、大きく発展してきました。現在、よりパーソナライズされた購買体験を求める消費者が増えつつある日本でも、まだ大いに成長の余地を残すビジネスモデルといえます。



本稿では、中国におけるC2Mについて振り返りつつ、改めてデジタル革新やデータ分析がもたらす「無駄のない小売」について、C2Mの視点から捉えます。





C2Mは中国のEC業界が提唱したビジネスモデル



C2Mは「Customer to Manufactory」を略したもので、日本語では、完全受注生産型ビジネス等と表現されます。



C2Mは、消費者から直接注文を受けて製造者が製品を作るビジネスモデルのことで、2年ほど前から注目されていました。顧客のサイズにぴったり合うセミオーダーのアパレルアイテムや、色・素材の組み合わせを好みにカスタマイズしてオーダーできる家具といったものがC2Mの代表的な製品例です。



在庫を持たずに、求められる分だけを生産するスタイルの製造・販売方法で、企業が大量生産した消費者が購入するという構図と比較すると、消費者が主導権を握るビジネススタイルと言うこともできます。



C2Mは無在庫で商品を販売して、受注した分だけを生産する形なので、大量に商品を抱えておく必要がありません。また、消費者のニーズと、メーカーの認識にギャップを生じさせることなく商品を届けることができるため顧客満足度を高いまま維持できる、ブランドや企業のファンになってもらいやすいというメリットもあります。



C2Mは中国のEC業界から発祥して広がっていき、コロナによって大きく変化した現代でも再び注目する価値のあるビジネスモデルとなっています。



10年かかるデジタル改革が1〜2年のうちに完了したともいわれるコロナ後の世界を見る前に、まずは発祥国である中国の取り組みや、類似ビジネスモデルとの違いについておさえておきたいと思います。



中国EC大手の取り組み



アリババをはじめとする中国のEC大手は、家電製品、アパレル、コスメ、デジタル製品、家具といった様々なジャンルをC2Mで展開しています。



中国には、1980年以降、そして1990年以降に生まれた若年層を指す「80後」、「90後」という言葉があり、C2Mはこれらの層を主なターゲットとしています。なぜなら、この世代はインターネットから容易に情報を取得することができ、かつパーソナライズされたショッピング体験を好む傾向にあると考えられているからです。



中国のEC大手は、消費者が簡単にカスタムオーダーできるプラットフォームや、専門のサイズ測定員が顧客の元へ採寸に訪れるサービス等を開発し、「80後」や「90後」を中心としたターゲット層にアプローチしてきました。



日本でも、80〜90年代以降に生まれた世代は、ネットによる情報取得の容易さ、多様性や個性を重んじる購買体験を好むという意味でC2Mと親和性の高いターゲットといえます。



とはいえ、コロナ禍の日本においてC2Mが注目されているのは、EC利用が大きく増加したことが背景にあります。これまでECを積極的に利用してこなかった人もネットショッピングを行うようになっているので、よりニッチなニーズの商品もターゲットさえピンポイントで設定できれば売上につながっていく可能性があります。ƒ



SPA、D2C、OEMについて



C2Mと似ている、あるいは関連するビジネスモデルに、SPA、D2C、OEMがあります。



SPAは、1986年に当時の米国GAPの会長が自社の業態について紹介した「Speciality
store retailer of Private label Apparel」を略した言葉です。日本語では「製造小売業」、「製造小売」という単語で訳されます。つまり、ブランドが直営店を運営して、商品の企画・生産・販売を垂直的に行うモデルのことです。



D2Cは、企業と消費者間取引を意味するB2Cと混同されやすいワードです。D2Cは「Direct
to Consumer」の略で、製造者(企業)が主にECでダイレクトに消費者と取引をするビジネスモデルを意味します。例えば、楽天やAmazonのような大手ECモールを使わずに、自社のECサイトを運営して販売を行うモデルを指します。



OEMは、案件を受託したメーカーなどが依頼元の企業名やブランド名で製品を作ること、あるいは自社ブランドの製造を他社へ委託することをいいます。この場合、依頼主はOEM受託企業へ仕様書や原材料を提供します。英語では「Original
Equipment Manufacturing」といいます。



このOEMは、C2Mに関連があります。というのも、中国におけるC2Mでは、しばしば海外の有名ブランドのOEMを行なっているメーカーがそれをセールスポイントとして掲げて販売を行なっているからです。厳密にいえば、他社のブランド名を自社製品の品質お墨付きとして用いるのは権利的にグレーな行為となるため、世界的な有名ブランドの下請け工場が多い中国特有の事象といえるかもしれません。



ちなみに、工場から消費者へ直接販売するビジネスモデルは、F2C(Factory
to Customer)といいます。このモデルは工場で生産されている商品を直接消費者に販売するという手法で、比較的低価格の製品が多いのが特徴です。



C2Mはカスタマイズやパーソナライズといったサービスによって、特定のターゲット層にマッチした製品を手がけるところに特徴があります。言い換えれば、不特定多数をターゲットにしてロット生産した商品をC2M的に販売しようとすると、消費者とのマッチングがうまくいかなくなります。後述する「無駄のない小売」を達成するためには、ターゲットの見極めと、利用しやすいプラットフォームの構築がマストとなります。







C2Mで可能な「無駄のない小売」



C2Mは個々にマッチしたパーソナライズな受注生産です。



在庫を抱えたり、仲介業者や代理店に手数料を払ったりする必要がないため「無駄のない小売」を追求することが可能です。



では、C2Mを成功させるために何が必要なのでしょうか?



答えはデータ分析、そして消費者とメーカーを結びつけるプラットフォーム等デジタル技術が握っています。



データドリブンな商品開発



データドリブンとは、勘や経験則に頼らずデータ分析に基づいて物事を決定していくことを指します。



C2Mの商品開発は、量産を前提としていません。ターゲット層のニーズにマッチする製品やサービスを、ピンポイントで狙う必要があります。それを見出すのに必要なのは勘や経験ではなく、消費者の購買履歴やサイトを訪れた時の行動といったデータを適切に活かすことです。



例えば、ある一つの製品を個人がカスタムオーダーするといっても、メーカーは無尽蔵に素材や色を用意することはできません。コストを抑えつつも顧客に求められるようなバリエーションを用意して、売上の最大化を目指す必要があります。この目標の達成に必要なのがデータ活用です。



製造者と消費者がデジタルでつながる時代



C2Mは、製造メーカーと消費者が近くつながることも醍醐味の一つです。



消費者の好みによってカスタマイズされた製品を製造メーカーの元で作り、実際に購入者の手元に届ける、この一連の流れをスムーズに進めるためには、経路のデジタル化が必要になるでしょう。パーソナライズされた受注情報を管理したり、製造から配送までをシームレスに行うために包括的なシステム構築が求められます。



実際、中国のある大手ECは、C2Mの運営システムを7年かけて開発しました。製造メーカーと消費者をダイレクトにつなぐことを成功させたそのシステムは、C2Mプラットフォーム内で、多くのOEM工場に利用されています。



さらに注文をデジタル化することで、アフターケアや二次注文といった段階も円滑に業務が行われるようになります。



コロナ禍で生まれた新たなニーズに応える



コロナは、小売店や工場のあり方を一変させました。店舗は時短営業や一時的な閉店を余儀なくされ、工場はクラスターを避けるための対策に追われています。



一方で、コロナは消費者の意識をも大きく変化させました。EC利用が広がったり、対面での購買体験がこれまでと異なる「特別」なものになったりと、買い物に対する消費者意識が変化しています。



アフターコロナのC2Mは、こうした変化した社会に即した形が求められます。



すなわち、求められているアイテムの素早い把握や、より個人に特化したバリエーション展開、データを活用したAIによる販売予測等、テクノロジーを駆使して消費者のニーズを把握する仕組みづくりが、次世代のC2Mには求められていきます。



新しいビジネスモデルのためのプラットフォーム マーケティング手法も変化



「80後」、「90後」やZ世代のニーズは多様化しています。「自分に最適なもの」、「自分のために提供されているもの」に価値を置くという消費者意識は、若年層だけでなく幅広い世代に広がっていく可能性があります。



そして、大量生産と大量消費は、SDGsの視点からも前時代的なものとみなされるようになりました。尤も、商品の廃棄は利益率を下げる要因になるので、企業としても余剰在庫を減らして製造の最適化を測るのは効率的といえるはずです。



また、それに伴って、広告をはじめとするマーケティング手法にも変化がみられます。InstagramやFacebook、TwitterといったSNSを活用する、YouTube等の動画コンテンツを用いるといった宣伝が、C2Mにも特に効果を発揮します。パーソナライズな体験を効果的にPRすべく、SNSで支持を集めるインフルエンサーを広告塔として起用する手法もあります。



他には、検索キーワードに関連して表示されるタイプのショッピング広告、セミオーダーやパーソナルな買い物を欲している消費者に向けて提示できるリスティング広告も、新しいビジネルモデルを支えるためのマーケティングツールとして有用です。



的確なパーソナライズで消費者ニーズに応えるC2M



C2Mは、自分好みにカスタマイズされた商品を比較的低価格で購入できるという点が、消費者にとって魅力的に映ります。オーダーメイドは高級志向であるという固定概念を変化させるような効率的なプラットフォームによって、メーカーはカスタマイズやセミオーダーといった購買体験を消費者に提供することが可能になります。



企業が消費者のニーズを満たすためには、消費者の好みや潜在的な望みを把握することから始める必要があります。また、消費者から選ばれるためには類似の製品を扱う大手ブランドとの差別化も求められます。



消費者に選ばれる、ひいては消費者主導といえるC2Mにおいて企業がすべきことは、消費者のニーズを余さずすくい取るシステムを整備すること、そしてそのシステムから導き出されるデータを使って迅速な販売予測を立てることです。



スピード感と一体感をもったビジネス展開が、ニーズに対する即応性をもたらしていくでしょう。