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2024年はこうなる!小売業界のトレンド予測7選

本メディアでは定期的に企画されている小売業界のトレンド記事。今回予測するのは、2024年時点における日本国内のトレンドです。なぜ2025年ではなく、中途半端に2024年なのか?と不思議に思う方もいるかも知れませんね。

これには二つ理由があります。一つは、前回の予測トレンド記事が2020年の東京オリンピック・パラリンピックイヤーに焦点を合わせていたことから、オリンピック周期での観測をしてみようという意図です。

もう一つは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」において提言されていた「2025年の壁」に起因しています。「2025年の壁」とは、このまま日本でDXが進まなかった場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある、という警告を意味しています。

この、2025年の壁を目前に控えた2024年時点で、小売業界はどのぐらいDXを推進できているかを、(希望的観測も含めて)予測してみようというのが、本稿を2024年の小売トレンドに照準を絞ったものにした最大の目的となります。

前置きはこれぐらいにして、早速予測を始めてみたいと思います。

目次:

  1. AIによる需要予測によって在庫リスクは限りなく低下
  2. ダイナミックプライシングによって需給のバランスがより適正に
  3. パーソナライゼーションによって、購買体験の満足度が向上
  4. 顔認証によってスマホすら出さずに手ぶらで決済
  5. スマートミラーでバーチャルフィッティングから決済まで
  6. 自動運転での無人宅配が実用化
  7. RaaSを活用したポップアップショップ急増

▼2020年のトレンド予測記事はこちら


1:AIによる需要予測によって在庫リスクは限りなく低下

様々なビジネス分野の中でも、AI導入の進捗が比較的遅いと言われている小売業ですが、DX or Dieという状況に直面しつつある今、小売企業の意識も高まり、今後はAIの活用が進んでいくでしょう。その中で要注目なのが、AIによる需要予測です。

これまでは「経験者の勘」に頼るしかなかった需要予測ですが、どれだけベテランでも勘が外れた結果、在庫を切らして販売機会をロスする、あるいは在庫を抱えすぎてしまうといったリスクは常に付きまとうものでした。

しかし、2024年時点では多くの企業が精度の向上したAIによる需要予測を導入することで、そのような在庫リスクを限りなくゼロに近づけていると予測します。

実際に現在では大手からリテールテック系スタートアップ企業に至るまで、様々な企業によってAI需要予測の研究開発が進められており、例えばNECが開発を進める「需要最適化プラットフォーム」というソリューションでは、来店客数の予測実験で誤差率7%、商品の需要予測では欠品日数0、平均ロス商品数を18.5個から12.5個に減少させたという実績を出しています。

AI需要予測の精度が上がれば、顧客としては購入希望商品の欠品がない状態が担保されるため、購買体験としては非常に満足度が高いものになります。

事業者側としては、単に在庫リスクが低減されるだけでなく、製造〜物流に至るまでを究極的に効率化できる可能性があり、大幅なコスト削減に、さらに俯瞰した視点で見れば業界全体での省エネに繋がることにもなるでしょう。

2:ダイナミックプライシングによって需給のバランスがより適正に

RFIDタグの普及と同時に、スマートシェルフ、電子棚札の導入が進むことによって、多くの小売業でダイナミックプライシングが採用されていると予測します。

市場の需要によって商品の価格が変動するダイナミックプライシングは、航空チケットなど、一部ではすでに導入されていますが、価格が変わるたびに値札を変える人的リソースが必要だった小売業では、今の所はスーパーマーケットの食品売り場でしか機能していません。そのスーパーマーケットにおいても、せいぜい1日に1回、閉店が近づいた時間帯に値札を貼り直すのが精一杯でしょう。

しかし、スマートシェルフや電子棚札、そしてAIによる適正価格の算出を活用すれば、賞味期限や閉店時間といった要素以外にも、在庫状況や需要数、他店の価格などを反映した販売価格を、適正なタイミングで何回でも自動的に表示させることが可能になります。

顧客データを活用して多様な価格設定

それだけではありません。顧客データなどを活用することでロイヤルユーザーに対してのみ割引価格を表示するなどの多様な価格設定も可能です。

事業者側としては需要予測との併用によって、より効率的なビジネス展開が可能になります。例えば地域密着型の店舗であれば、常連顧客がリピートするニッチな商品の仕入れを途切れさせることなく、万が一それが売り抜けない場合はダイナミックプライシングが発動する、といったことができるようになるでしょう。

現状、大型家電量販のビックカメラが、2020年度末を目処に、全店舗に電子棚札を設置していくと報じられています。これは、店舗とEC間、あるいは競合店との売価のズレを修正するために大量の商品の値札を貼り替える必要があった従業員の負担軽減という側面が大きいと考えられます。これも一つのダイナミックプライシングの形と言えますし、これをキッカケに競合他社、そして他業種にも波及し、ダイナミックプライシングの実用化が加速する可能性はあるでしょう。

3:パーソナライゼーションによって、購買体験の満足度が向上

2024年時点では、多くの小売業でOMOが実現されており、それに伴いオンライン、オフラインの区別なく、あらゆる購買行動のパーソナライゼーションが実現していると予測します。

現状、すでにオンラインチャネルにおけるパーソナライゼーションは、レコメンデーションなどの表示画面を顧客ごとに変えるという形で実現されていますが、2024年にはリアル店舗におけるパーソナライゼーションが進化しているでしょう。

例えば、入店と同時にその顧客が以前から気になっていた商品の入荷情報やセール価格、クーポンなどが本人のスマートフォンに通知されたり、その顧客の購買・行動データが店頭スタッフ全員にシェアされているために、常に最適な接客を受けることができたり(顧客によっては「接客をしない」という状態が、何も言わずとも作られたり)、あるいは、普段の顧客の行動から届け先や日時を指定することなく、商品を購入した時点で自動的に宅配扱いになったり——パーソナライズされた購買体験とは、そのように受動的なものであり、顧客は、それらが緻密に計算され顧客ごとに違ったものが提供されているということにすら気づかないぐらいナチュラルなものになっている可能性もあります。

パーソナライゼーションからカスタマイゼーションへ

また、パーソナライゼーションと近しいものとして、カスタマイゼーション(顧客が能動的に欲するもの)も、2024年にはテクノロジーによって大きく進化しているものと思われます。

例えば、先日グランドオープンした渋谷PARCOに出店しているTHE NORTH FACE LABでは、これまで既製品の中からサイズや色を選ぶしかなかったアウターの完全オーダーメイドを、精度の高い「アバター試着」によって提供しています。購買前に完成品を自分が着ている姿を確認することができないというオーダーメイドの課題をテクノロジーで解決した進化したカスタマイゼーションというわけです。

アリババの創業者ジャック・マーは昨年「ニューリテール戦略は、5分間で2000着の同じ服を製造するよりも、5分間で2000種類の違う服を製造することがより重視される時代になる」と発言しましたが、パーソナライゼーション(広義の意味でカスタマイゼーションまで含む)は、まさにニューリテールの主軸となる要素と言えるでしょう。

4:顔認証によってスマホすら出さずに手ぶらで決済

キャッシュレス決済化は日本でも政府のミッションとして普及が進められていますが、現在の主流は主にモバイル決済となっています。つまり、スマートフォンを介した決済システムです。しかし2024年時点では、顔認証決済システムが実用化され普及し始めていると予測します。

例えばアリババグループではアリペイにおいて顔認証技術の開発を進め、2018年末には顔認証決済デバイス「トンボ」をリリースしています。これは、デバイスに搭載されたカメラで認識した顧客の顔とアリペイアカウントを紐づけることで決済を可能にするものです。トンボは本体サイズが比較的小型かつ導入コストも抑えられた「実用機」となっており、中国国内の小売店を対象に実際に提供が開始されています。

もともとキャッシュレス先進国だった中国ではトンボの登場をもって「顔認証決済元年」とする向きもあり、QRコード決済普及の速度感に照らし合わせてみても、そこから5年ほど遅れて日本でも実用化されるという流れは十分にあり得る流れと言えるでしょう。

実際に、国内においてもNECが2019年3月に顔認証AIエンジン「NeoFace」をクレジットカードと連動させた顔認証決済サービスのPoCを実施している他、パナソニックがファミリーマートと共同してPoCを進めるなど、様々な企業が顔認証決済の実用化を推進しています。

5:スマートミラーでバーチャルフィッティングから決済まで

これはアパレル、あるいはコスメといった業種に絞った話になりますが、リアル店舗において「鏡」が必要な業種では、ただの鏡の代わりにスマートミラーが設置され、バーチャルフィッティングや肌診断、そしてパーソナライズされた商品提案をミラーが行うと予測します。

顔認証技術が搭載され、顧客IDと紐づいたスマートミラーは、販売スタッフによる属人的な接客ではなく、データに基づいた客観的な提案が可能となります。顔認証決済と併用すれば、試着室でバーチャルフィッティングしながら自分で最適な商品を選び、気に入ったものをその場で決済まで完了することもできます。これは、特に人間による接客を必要としない顧客にとっては、とても居心地の良い購買体験になるでしょう。

スマートミラーについても、大手からスタートアップまで様々な企業が研究開発を進めており、できることの程度によっては実用化〜普及は時間の問題と言えます。

現状でも、メガネ販売のJINSが展開する「JINS BRAIN LAB」では、AIを搭載したスマートミラーによって、顧客が試着したメガネの「似合い度」を男性目線、女性目線でそれぞれ数値化していますが、特にアパレルやコスメなど主観と客観それぞれの視点が必要な商品においては、スマートミラーが提供する客観的なデータはコンバージョンにも少なからず影響を与えることになるのではないでしょうか。

6:自動運転での無人宅配が実用化

2024年時点では、自動運転技術がレベル4※をクリアしたサービスが複数登場し、無人での宅配が普及しはじめていると予測します。

無人宅配については世界中で研究開発に熱が入っている分野と言えます。それに応じて、国内における実証実験事例も豊富です。

例えば、自動運転技術を専門分野とする株式会社ZMPは、ローソンと共同で、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内に配達スポットを8ヶ所設置し、利用者がスマートフォンにダウンロードしたアプリからスポットと配送時間を指定して商品を注文すると、配送ロボット「CarriRo Deli」が商品を届けてくれるというPoCを行っています。

また、トヨタ自動車は、同社が開発する自動運転車「e-Palette Concept」を活用したサービス開発を、ヤマト・ホールディングス、そしてセブン-イレブンジャパンと共同して行うプロジェクトを2019年の秋から開始することを宣言しています。これによって、宅配だけでなく、徒歩圏内に店舗がない山間部における移動販売などへの応用にも期待ができるでしょう。

※自動運転レベル4の定義は「運転自動化システムが全ての動的運転タスクおよび作動継続が困難な場合への応答を限定領域において持続的に実行。作業継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない」

7:RaaSを活用したポップアップショップ急増

2019年現在、自社のリアル店舗を持たないD2C企業の隆盛が話題となっていますが、今後もその数は増えていくでしょう。そして2024年時点では、そのようなD2C企業のリアルな販売チャネルとして、自社で店舗を持つことにコストをかけるのではなく、RaaS(Retail as a Service)にアウトソースするスタイルが流行し、小規模な期間限定のポップアップショップの数が急増していると予測します。

RaaSとは、その他の◯aaSビジネスと同様に「サービスとしての小売」を提唱したビジネスモデルであり、中国の京東集団(ジンドン)も提唱しているものです。

これは、売り場のスペースや棚などを小分け、あるいは特設しつつ、そこで様々な企業の様々な商品を期間限定で販売できるインフラを提供するビジネスで、消費者のデモグラフィックデータから行動データまでを生産者にフィードバックするところまでを仕組み化しています。

これにより、D2C企業は自社店舗を持つための莫大なコストをかける代わりに、「体験」や「ストーリー」といった、消費者の心を動かす仕掛けにコストをかけることができ、よりD2Cとしてのブランド価値を高めることができるというわけです。さらに、RaaS企業からフィードバックされたデータに基づいて商品を的確にブラッシュアップすることにも期待ができます。

現状、すでに話題となっているシリコンバレーの「b8ta」や、国内における「蔦屋家電+」、そして渋谷パルコに初出店した「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」などが、このRaaSという考え方に近い業態の店舗になっていると言えるでしょう。

単にモノを販売するだけの店舗では来店を促進できない時代だからこそ、コンセプトやVMDにこだわり抜いたり、イベント的な要素と掛け合わせたポップアップショップとしての出店を可能にし、新たな顧客接点を生み出すことができるRaaSによる店舗展開は、今後も要注目です。

さいごに

いかがでしたか。
2025年の壁を目前にした2024年。どれだけの企業がDXを進められているか、今後も小売業界の動向を注視しつつ、エスキュービズムでも様々なテクノロジーで支援をおこなっていきたいと思います。

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